どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

同じ釜の飯を食べたあの仲間も…第2段「ジバタ電器店の家庭内事情編」

少し遅い里帰り

深山町の商店街で、故郷の同級生だった「幸信」と久しぶりに再会した虎之助

懐かし惜しむ間もなく亀田のお婆ちゃん家へ洗濯機の配達を一緒に手伝う事となる

ご主人が亡くなられてからずっと一人暮らしの亀田のお婆ちゃん

お昼を食べていかんかと招かれるも、幸信は自宅で母親が昼食を作って待っているからと丁重に断った

「塩さばを焼くから食べておいき」と寂しそうに言っていたお婆ちゃんの言葉が虎之助の頭の中で何度も繰り返される

サイドミラー越しから坂道の下りで幸信が運転する軽トラックが見えなくなるまでずっと玄関前で見送っていた亀田のお婆ちゃん

山谷や風に揺れる稲穂の周りを飛び回る
有数のトンボの群れを眺めながら、来年は一緒に塩さばを食べてあげようと誓ったのであった

お婆ちゃんが帰り際にくれた霜だらけのアイス「パピコ」は、ジバタ電器店に到着する頃には容器が空になっていた…
おしゃぶりをしゃぶっている赤子のようにパピコの空容器をチューチュー吸いながらずっとくわえていた虎之助

切ない夏の思い出の味になりそうだ…


幸信は軽トラックを店の前に寄せて止まると

幸信
「虎助、車を裏に停めてくるけん、先に降りときや、飯食お飯!
店に入って待っといてくれな」

虎之助
「そんなんえぇ~って…実家帰るんでちょいと寄っただけやのに悪いわぁ~…」

幸信
「食べてき!食べてき!遠慮せんでかまんのよ!配達手伝ってくれて助かったし、久しぶりに話もしたいしな、はい、車降りて店に入った入った♪」

私は幸信に強く勧められるがままに、渋々と車を降りる

幸信
「店の中涼しいけん早よ入り、なんか欲しい電化製品あったら買うてや!虎助やったら大サービスするけんな♪」

幸信はそう言うと、軽トラックを「ぶぉおぉーーぉん…!」と無駄に大きなエンジン音をたてながら裏の車庫に停めに行った

私は幸信の姿を見て
「お坊ちゃんだった幸信も、すっかりおっさんになったなぁ~…」
と独り言を言いながらジバタ電器店の自動ドアを潜った

「いらっしゃいませ♪」

途端にセンサー感知をして自動音声が鳴る

虎之助
「あぁ、これこれ…
昔と変わらんなぁ~…
この「いらっしゃいませ♪」の自動音声

その自動音声に気づいた幸信のお袋さんが店の奥から出てきた

ママン
「あ!虎君おかえりぃ~!、ゴメンねぇ!幸信のお手伝いさせちゃってぇ~…、
お昼ご飯出来とるけん、お上がり!」

虎之助
「あのぉ…、幸信にも強く勧められたんですけど…
本当に良いんでしょうか…
何だか悪い気がして…」

ママン
「え!?なんで遠慮なんかするん~…
かまんのよ!お食べお食べ!
お腹すいとるやろ?
おばちゃんようけ作ったけんね~!
いっぱいお食べ~よ!」

幸信のお袋さん…姿はだいぶ老けてしまったが、昔から独自の勧め方は全然変わらんなぁ~…と思いながら店の中を遠慮しながら見渡した

すると、以前あったはずのCDコーナーが無くなっている事に気づく

虎之助
「あれ…?CD置かなくなったんですか…?」
と聞いてみると

ママン
「ほうなんよ~…、CDもさっぱり売れんなってしもてねぇ~…
こないだまで演歌のカセットテープは置いとったんやけど、もう場所とるけん置かんなったんよぉ~…」

虎之助
「あぁ~…そうですねぇ~…最近すっかりCD買う人少なくなりましたねぇ~…」

ママン
「そうやろぉ~、最近は簡単にダウンロードしたり配信してるの購入したり出来るけん、わざわざ店までCD買いに来る人なんか年間ほんの数人よ~…」

虎之助
「そうですねぇ~…、発売してから暫くするとYouTubeにアップされたりするからそれで十分だったりするんですよねぇ…
…でもやっぱり音楽は盤で聴く方が好きですね…
ダウンロードだとヘッドホン付けないとハッキリした音が聴けないし…

音楽はステレオで流して聴きたいです…
でもアパートやマンション、住宅街だと近所迷惑になる問題もありますね…」


…昔はここにレコードが並べられているスペースになっていた

深山町にはレコード店が無く、唯一LP盤(アルバム)EP盤(シングル)に、カセットテープ等の音楽商品を扱っていたのはこの「ジバタ電器店」のみであった

当時はチェッカーズ松田聖子中森明菜が大流行していて、このジバタ電器店にはチェックのシャツを来て、フミヤのヘアースタイルを真似した男子中高生に、聖子ちゃんカットや中森明菜と同じ髪形をした女子中高生達がたくさん訪れていた

たしか壁にチェッカーズの大きなポスターが張ってあったのを覚えている

あのポスターはLPを5枚まとめて購入した高校生にに譲ったらしい

今は便利な世の中になりすぎてCDを買いに来る学生も全然見掛けなくなった

アルバム発売日になると、この店には各々が好きなミュージシャンのLPを買いに来る学生に溢れかえっていた

店頭ではラジカセから最新アルバムをフルで流していて、本当にレコード屋さんさながらの役目を果たしていたこのジバタ電器店

予約すると、ポスター、下敷き、生写真
、非売品テレカ等が当たるくじ引きがアルバム一枚購入につき一回引ける特典も盛り上がったものである

ちなみにハズレ賞でもレコードクリーナーが貰える程の豪華なくじ引きだった


ママン
「コンポとかステレオとかも最近売れんけん、うちはCDラジカセまでしか置かんなったわぁ、カセットラジカセとダブルカセットラジカセはチラホラ売れるんよ」

虎之助
「あぁ~!ダブルカセットラジカセとか懐かしいですね~!
学生時代ラジカセが必需品でしたよ、
当時は高価な物だったので数年父にねだってようやく中学入学祝いで買ってもらったんです、あ!その時Nationalのダブルカセットラジカセをここで買ったんですよ!
おじさんがお祝いをかねて一万円値引きしてくれたの覚えてます!?」

ママン
「あ!ほぅなん~、もうだいぶ昔の事やろけん、おばちゃんあんまり覚えてないわぁ~!」

虎之助
「今もまだ実家にありますよ~
テープは再生すると少しスピードが早くなるので笑ってしまうんですが、ラジオ聴くのに使ってますね~」


幸信のお袋さんとすっかり昔の話で盛り上がっていると、奥から親父さんも出てきた

パパン
「なんか賑やかやのぅ…
虎君配達ありがとうなぁ、飯の用意出来とるけん、上がってお食べなさいや」

虎之助
「すみません…お招きに預かり大変恐縮です…」

パパン
「あは…あはははは…
そんな丁寧な挨拶しておかしいのう…
幸信なんか「早よご飯して!まだぁー!?」ってうるさいんぞぉ~」

ママン
「お父さん、これから何処行くん?」

パパン
「何処って…本谷さんとこに昨日頼まれとったテレビのチューナー合わせに行くんやがな…」

ママン
「えぇ~!じゃあこれからテレビのチューナー合わせるためだけに中洲まで行かないけんわけぇ!?」

パパン
「しょうがなかろうが、幸信はこれから飯食わしてやらなあかんし、本谷さんは中洲では一番うちのお得意様なんやけん、それぐらいはサービスでしちゃらんといけんわい」


ママン
「いんやぁー…ん…そんなチューナー合わせだけで中洲まで車走らせるなんて…

あ!中洲に行くんやったら、ついでに藤田さんと河久保さん家に寄って、電化製品の点検に行ってきぃや!」

パパン
「なぁんでや!こっちで修理依頼があるかもしれんけん、店にすぐ戻らないかまいげ!
行くんならお前が行けぇや!」

ママン
「私店番せないかんやろ!?
修理依頼があったら幸信に行かせたらえぇんやけん、ちょっとくらい営業してきぃや!
それとこのパンフレットも渡しとって!」

パパン
「幸信は飯食ったら虎君とお話せないかまいげ!
どうせいつもの事やけん「午後から虎助と遊ぶけん店の事頼まい!」とか言って仕事せんなるやろが!」

ママン
「虎君はご飯食べたらすぐ実家帰らないけんのやけん、幸信に仕事休ませたらいけんでしょお!?、そうやってお父さんがすぐ甘やかすけんあの子いっつもあんなんなんよ!?」

パパン
「うるさい!お前は黙っとけ!」
ママン
「・・・・・・!もう…いいわよ!勝手にして!」

段々とヒートアップしてきた突然の夫婦喧嘩にオロオロしながら

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虎之助
「あ…あのぅ…
そんな喧嘩しないで…………
どうか落ち着いて下さい…
僕はすぐ帰りますので…」

私はこういう喧嘩の対処に大変弱い

うちの両親もこのような喧嘩はいつもの事だが、余所様の夫婦になると気を使うので対処がしにくい…

そんな緊迫した空気の中、やっと跡取り息子の幸信が店に戻って来た

この時ばかりは幸信が救世主のように感じられる

幸信の両親が二人睨み合っている最中、
幸信の第一声は

幸信
「お母さぁーん!腹へったけん早よ飯にしてくれぇや!

お父さーん、わし午後から虎助と話があるけん後の仕事頼まい!」

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幸信の親父さんが言った通りの台詞が幸信の口から堂々と発せられる

この後…
ジバタ電器店の跡取り息子として両親から大事に大事に育てられた「幸信」の甘えっぷりが炸裂するのであった

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