どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

「Autumn,DramaSpecial,PART2」~柔道親父と相撲部息子の土佐日記~(最長編)

虎之助
「ケン坊・・
もう・・・行っちゃうの・・・?」


健太朗(ケン坊)
「うん・・・
俺・・もう行くよ・・・」


虎之助
「もう・・・しばらくは・・・
会えないんだよな・・・・」


健太朗
「うん・・・そうだね・・・」


虎之助
「ごめんな・・・ケン坊・・・
俺のせいで・・・・

俺が・・

俺が・・・ケン坊の人生を変えてしまったんだから・・・・」


健太朗
「もういいよ・・その話は・・・

俺はさぁ・・・逆に・・
虎助には感謝しているんだから・・」


虎之助
「ごめん・・・ケン坊・・・・
本当に・・・・ごめん・・・・

俺・・・
ケン坊が一番に目指していたかけがえのない夢を・・・

壊してしまったんだから・・・」


健太朗
「やめてくれよ・・

しばらくの別れに…
涙は厳禁だって言ったの、虎助だぞ…」


虎之助
「だって・・・だってさぁ・・・

あの出来事の他にも・・・

曽我部の事で・・・俺は・・無責任だった・・・・
知らない間にケン坊をずっと傷つけていたんだから・・・」


健太朗
「虎助・・・
本当に・・・曽我部の事・・・受け入れられないの・・・?」


虎之助
「うん・・・・
だって・・・俺は・・・・その・・・

男が・・好きな・・・

ホモだ・・から・・」


健太朗
「曽我部も・・
叶わない恋の相手に・・本気の本気で好きになってしまったなんてな・・・」



虎之助
「俺も・・・!
曽我部に頼んでみたんだよ・・・!?

・・・だけど・・!だけど・・!!」



健太朗
「もうやめろっっ!!!
それ以上は聞きたくない・・・!!!」



虎之助
「・・・!?
・・・ご・・・ごめ・・・ん・・・」



健太朗
「虎助・・
俺はもう二度と・・・
この村・・
深山町には帰らないから・・・・・」




虎之助
「どう・・・・し・・て・・・・?」



健太朗
「そう・・俺はもう・・
相撲の道を捨てたんだ・・・
今更こんなちっぽけな田舎町に・・
用はない…」



虎之助
「そ・・・それじゃあ・・・
もう・・・相撲部のみんなとも・・?」



健太朗
「もちろん…
だってもう俺達・・学生じゃないんだから・・・」


虎之助
「そんな悲しい事言うなよっ!!
俺の事が憎たらしいんだったら!俺だけ憎めばいいじゃないか!!

だから・・

正次朗に照彦・・
太や剛・・・ユキラス達と一生離れ離れになるなんて言わな・・・」



健太朗
「相撲部の話はするなっっ!!!」


虎之助
「うっ・・・!!!」




「ヴォ~~~~ン・・・プップー♪」


健太朗
「・・・バスが来た・・・

これでお別れだな・・

虎助・・・」


虎之助
「ケン坊・・!!

一生会わないなんて言わないでくれよ!!

またいつか・・
昔みたいに、山を探検したり、秘密基地作ったり、川で泳ぎながら魚つかまえたりしようよ!!」


健太朗
「もう・・・
勘弁してくれよ・・・

ウンザリなんだよ・・虎助の…
そういう子供みたいな所・・・」



「プシューー・・♪ガタタンッ♪♪」


虎之助
「ケン坊~~~っっ!?

俺ヤだよぉ~~~~~!!!(泣)

俺達…
幼馴染みじゃないかぁ~~~(泣)」


健太朗
「じゃあな・・虎助・・
そんなに泣いてると・・バスに乗ってる子どもに笑われるよ・・」


虎之助
「・・俺・・待ってるから・・・

ケン坊が・・・いつか深山町に戻って来てくれるのを・・・

絶対に・・諦めずに・・
待ってるから・・・!!」


健太朗
「虎助・・
俺さぁ・・・絶対に・・・

大きな人間になる・・・

そして・・・世界中を飛び回って・・

今まで見たことの無い景色を・・

いっぱい見てやるんだ・・・!」




虎之助
「ケ・・ケン坊・・・」



健太朗
「じゃあ・・元気でな!虎助!

おじさんとおばさんに宜しく言っといてよ!

今まで本当に…

俺を実の息子のように・・
大事に育ててくれてありがとう!ってね!」


虎之助
「ケ・・ケン坊・・・!?
ケン坊!待って!!!」



健太朗
「虎助!バイバイ!!・・・
じゃあな・・!!」



「プシューー・・・ガタタン♪♪」
「発射します♪ご注意下さい♪」


「ヴォ~~ォォ~~ォン・・・♪♪」


虎之助
「ケン坊~~~!!!
ケン坊ってってばぁ~~~~~!!!

待ってよぉ~~~~~~!!!

行かないでよぉ~~~~!!!」




僕は・・・

ケン坊が乗った

オレンジと白の伊予鉄バス

泣きながら追いかけた・・・


一番後ろの席から
ケン坊が手を振っているのが見えた・・


だけど…

バスはぐんぐんと・・
ゆるやかな深山の坂を降りて行き


やがて豆粒のように小さくなり
見えなくなってしまった・・・


このゆるやかな
深山の坂道は…

中学に入学してから
毎日ケン坊と一緒に登校していた
思い出の通学路・・・


もう二度と…

戻ることの出来ない…
青春の灯に
寂しさを寄せながら・・

僕はしばらくその場で…
泣きながら立ち尽くしていた・・・


バスが消えていった
あの道の先に…



深山中学校の入学式

ずんぐり太っている

真新しい学生服に身をまとった
二人のわんぱく坊主が・・・

楽しそうに…
つばえながら(ふざけあいながら)

若葉芽生える元気な男の子の…
登校している姿が…

涙でぼやけながら…微かに見えた…

それが…

近づくと
消えてしまう儚き幻…



まるで…
陽炎のようだった…









まだ肌寒い四月の始まり…
桜が咲き始め…


黄色い菜の花が…
終わりを迎える頃の春模様


僕はこの…

春の香り…

菜の花の香りが…
好きだった…







製作
「Kento・Graphics」


監督
「TolanosuKe」


主催
「ふんどし坊主の七転び八起き人生」







渡り鳥になって


あなたの気持ちを
抱いて飛ぶわ…

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「どこへ行くの?」かって?

見たことのない
空を見せるわ

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想いの終わりを夢みて

手紙は燃やしたけれど

叶うことない願いだけが
時間を伝って

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あなたをさらってしまいたい


春の吐息・・夏の風・・

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冷たい水面に言葉を浮かべて


涙がひとつ

さよならひとつ

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あなたがいなければ…

ただそれが・・
すべてだと・・・



淡い灯火の中で
私の瞳は熱さを増す

あなたのことが見えるように
痛みをさらして…

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あなたをさらってしまいたい

秋の鈴鳴り・・冬の吐息・・・

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微かな祈りを
両手ですくって

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涙がひとつ

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さよならひとつ

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あなたがいなければ

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ただそれが・・
すべてだと・・・

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「Autumn・DramaSpecial」
「四万十・エレジー

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歌:鬼束ちひろ「陽炎」

作詞:鬼束ちひろ
作曲:鬼束ちひろ


発売元
NAPOLEON・RECORD


JASRAC認証482569731093






僕は
車の助手席で眠っていた


ケン坊と…
あの日最後に別れたバス停の
夢を見ながら…


窓が少しだけ空いている・・


風が少し冷たくて
肌寒い…


そう…
あの日のように…

菜の花の香りがするんだ・・



だから夢を見ていたのか・・・

・・・・

だけど・・・

僕は・・

誰の車に乗っているんだろう・・

・・そして・・・

今眠っている車は・・・

誰が運転しているのかなぁ・・・


それが気づかないくらい

僕は深い眠りに
ついてしまっていたようだ・・・


「四万十・エレジー,Drama盤」

~柔道親父と相撲部息子の土佐日記
(最長編)

「おい…」


「おい・・?」


「おいってばよ!」


「起きろよ!伸一!」


虎之助
「う・・ふぁっ・・・!?」


あつし
「ふぁっ!?じゃねぇよ・・
まったくもう~・・
いびきガーガーかきながら寝やがってよ

こっちは運転してるんだからな!」



伸一(虎之助)以下から伸一と表示

「あ~~・・ごめん・~・・すっかり寝込んじゃったみたい・・・」


あつし
「この標識なんだけど、これ、左に曲がったんで良いんだよな?」


伸一
「え…?え~~~・・と、国道56号線から、四万十市に向かうから・・・


・・うん、左に曲がったんで間違いないよ、国道381号線に入るんだね」


あつし
「・・ったく!しっかりしてくれよ~~
頼りないナビだなぁ~~・・」

伸一
「あつしさん・・ごめん・・」

あつし
「こら、(あつしさん)じゃないだろ?」

伸一
「あ、そうだった・・・」


あつし
「もう忘れたんかよ…」


伸一
「忘れてないよ・・・



お父さん・・・!」





僕は
あつしさんの出っ張っていて硬いお腹を

服の上から擦るようにナデナデした


あつし
「お!そうだ!腹をナデナデされたら腹減ってきた!
丁度あそこに「かな泉」っていう料亭がある!!そこ行こうや!」


伸一
「えぇ~~~!?あの料亭~~~?
なんか高そうじゃない~~?

ねぇ…止めとこうよ~~~・・」


あつし
「いいや!あそこで食う!もう腹が減って我慢の限界だ!

なんせお前が2時間強も寝ていたおかげで俺は昼飯が食えなかったんだからな!」


伸一
「だったら…
もう少し先にファミレスの、ジョイフルがあるからそこにしようよ~・・」


あつし
「バーカ!なんでせっかく高知県まで来てるのに、わざわざ全国フランチャイズのファミレスなんかで飯食わないといけないんだよ!」


伸一
「もうわかったよ~~~
後で「高くついたがなー!」とかいって
文句言わないでよ~~~」


あつし
「だーかーら!金の心配するんじゃねぇーよ!ってんだ!
行くぞ!行くぞ!鰹のたたきがあったら絶対に食うぞ!」


そして
僕とあつしさんは、国道381号線へ曲がる交差点付近にある料亭「かな泉」へと入って行った…



「ガラガラガラガラガラ・・・♪」



あつし
「こんちはーー♪」


女将
「いらっしゃぁいまぁせぇぇ~~♪」



カコカコカコカコン・・♪

女将
「いらっしゃぁいまぁせぇぇ~~♪
かな泉へようおこしぃ~~~♪

お二人様で宜しいでしょうか~♪」


あつしさん
「おうっ!俺とコイツの二人だけや!!


女将
「はいはい♪今お冷やお持ちしますぇ~~~~♪
あちらの奥の席だと、海が一望出来て
一番眺めが宜しいですよ~♪」


あつし
「おうっ!じゃああそこにするわ!
いくぞ!伸!」

伸一
「あ・・うん・・・!」




お店は昼時なのに…

お客さんは僕とあつしさんの二人だけだった・・・


あつし
「よっこらしょっと♪
さぁ~~なぁ~~に食うかなぁ~♪」


女将
「お待たせしましたぁ~~♪
こちらお冷やと、メニューになりますぅ~~~♪」


かな泉の女将さんが持ってきたメニューを開いて・・・

僕は腰を抜かしそうになる・・


豪華新鮮一番!!
鰹のたたき定食セットが・・

¥5000
・・・・・

もっと凄いのは・・

土佐湾のピチピチ新鮮一番!!
海鮮盛り合わせ定食セット!!

¥12000
・・・・・・

嘘だろ・・・

ゼロが一桁多いよ・・


どうりで昼時なのに…

客が一組も居ないわけだわ・・・


伸一
(あつしさん・・・どうする・・?
出る・・・?)


あつし
「女将さん、ここの鰹のたたきは・・

ウマいんかいのう?」


あつしさんは堂々と女将さんにこう質問すると…


女将
「もちろんですえ…うちで扱う鰹の味と鮮度は・・

高知県で一番やと・・

・・自信を持って言えますえ」


あつし
「ほうか、じゃあ俺、この豪華新鮮一番!鰹のたたき定食セット」
にするわ!


伸一
「え、・・・!?本当に・・!?」


女将
「かしこまりました・・
これから大将が藁で焼きますけえ、少々お時間掛かりますが、宜しいでしょうか・・?」


あつし
「しょうがないのう・・・女将さん…大和撫子じゃけん・・待ったるわ!」



女将
「あらまぁ~♪お上手・・♪

え~~・・っと、そちらの息子さんはお決まりになりましたでしょうか・・・」



あつし
「おっ!さぁ~すがっ!老舗の女将さん!
よくコイツが俺の息子ってわかりましたねぇ~~♪」


女将
「わかりますえ~♪
だって息子さん・・・お父さんと、顔も体格もソックリですもの~・・♪

・・・二人が親子やっていうのは、誰が見ても一目見ただけでわかりますえ・・」


伸一
「あぁ・・やっぱり僕とお父さんって似てるんだなぁ~~~」

女将
「お二人とも、えらい体格がよろしいですなぁ・・・何か・・スポーツされてたんと違いますかえ・・?」


あつし
「俺は柔道で、息子は相撲部やったんよ!」


女将
「まぁ~~~お父さんは柔道で、息子さんは相撲されてたんですぇ~~~♪

どうりで体格がガッシリしてると思いましたえ・・♪」


あつし
「ま!コイツはすぐ泣くし、相撲もてんで弱かったんやけどねぇ~・・」

伸一
「もうっ!お父さん!!そんな勝手に喋らないでよぉ~~!!」


あつし
「この前も取っ組み合いのケンカしたら、コイツすぐ泣きよったんですわ!
今でも俺には絶対に敵わんけんのお~♪

情けない話ですやろ?がっはっはっはっはっはっは!」


伸一
「してないよっ!ケンカなんて!」



女将
「まぁ~~~よろしいじゃございませんかぁ~~♪

で…
今日は息子さんとお出かけですか?」


あつし
「俺らね、愛媛県から来たんよ
ちょっとした小旅行でな!」


女将
「息子さんと…
本当に仲がよろしいんですねえ・・

羨ましいです・・・

私の息子なんて・・実家を出てからちっとも家に帰らなくなりましたのよ、何か彼女が出来たかなんかで忙しいって…」




あつし
「女将さんの息子さん、今いくつなん?」


女将
「今年で二十二ですえ…」



あつし
「今何しとるん?」

伸一
「お父さん、失礼だよ・・」


女将
「う~~ん・・
何だか学校の先生になりたいとかなんかで、教員採用試験の勉強をしているらしいですのよ・・

教師なんて…
あの子…
本当になれるのかしらねえ・・・ホホホ・・・♪」



あつし
「~伸、お前決まったか?」


伸一
「え…?あっっ!!ごめんなさい!」

「それじゃあ僕は、この四万十川の、天然手長海老定食セット」
…にするね・・・



女将
「はい・・♪四万十川の、天然手長海老定食セット」
ですね~・・



それでは・・

…「豪華新鮮一番!鰹のたたき定食」

・・・と

四万十川の天然手長海老定食セット」

を、お持ちいたしますので…
しばらくお待ちくださえ~♪


カコカコカコカコン・・♪



あつし
「おいおい!聞いたか!俺達、どっからどう見ても、親子だってよ!

女将さん、すっかり騙されちゃってるよ♪」


伸一
「営業で持ち上げてるだけでしょ…」


あつし
「お前なぁ~~・・そんな夢の無い事言うなよぉ~~~~・・

せっかく高知県まで来てるんだぞ~~、
この店の女将さんとなんて、今後とも会う事なんてないだろう?」


伸一
「また・・一緒に来ようよ・・

何年後かでも良いからさ・・・」


「それでまた女将さんに
偽物だけどまた…
親子として堂々と演技してたらいいじゃんかさぁ…」


あつし
「今度はいつ来れるか・・

わからんしなぁ・・・」


伸一
「え・・・・?」


それから20分後ぐらいに…

あつしさんが頼んだ
「新鮮一番!鰹のたたき定食セット」
と…
僕の頼んだ
四万十川の天然手長海老定食セット」


が、漆塗りの上品な器とお椀で運ばれてきた・・


値段は高かったが…

女将さんが自信んを持って言うように、…
鮮度抜群!新鮮一番!味一番!の3拍子揃っている極上品だった…

とても満足出来る味だった…


この時の…

美味しそうに鰹のたたきを食べている
あつしさんの顔は

今でも忘れられないでいる。




それから僕たちは・・

昼飯を食べ終え、先程の道筋どおり


四万十町へと向かう

国道381号線へと・・
車を走らせて行った・・・


今日で
○ーmenのメ○ルスク○ンブルな文通欄で知り合い

メールのやり取りで計画した
内緒で高知県までの
小旅行は今日で早くも三日目

もう半日しかなかった…


土佐の道筋は
交通量の多い国道56号線から

山間、谷間、川沿いと

自然溢れる
のどかな四万十町へと
車は向かっている



次に行く目的地は

僕が高知県で一番好きになった
温泉ホテル


「松葉川温泉ホテル」だ


ここの温泉は
春は桜、夏はホタル、秋は紅葉、冬は雪景色と、四季折々の風景を楽しむ事が出来る

四万十川が露天風呂のすぐ傍を流れている高知県最高の温泉ホテルだ…




ここの温泉に入ったら

作屋から梼原町へと向かい

四国カルスト高原の麓から、国道33号線へと入れば…


後は松山市まで
一直線で帰れるようになるのだ…




伸一
「あぁ~~あ・・・
もうすぐ昼過ぎの2時・・・

楽しかったお父さんとの旅も
あと少しで終わるのかぁ~~・・・」


あつし
「・・・さみしいのう・・・
せっかく俺に、こんな可愛いドラ息子が出来たってのに・・・また明日から
いつも通りの生活が待ってるんだもんなぁ~~~・・・」


伸一
「僕・・本当に・・お父さんの息子だったらなぁ・・・」


あつし
「なぁ…お前、これからどうするんだよ・・・
俺が岡山に帰ったら・・・また○ーmenの文通欄で新しい男探すのかよ?」


伸一
「もし、僕がそうしたら・・・
お父さん・・怒る・・?」


僕は…
あつしさんの顔色を伺いながら
問いかけてみた…


あつしさん
「べつにぃ~・・好きにすりゃあ良いだろう?お前の人生だ」


僕は少しだけショックだった


ショックというよりも

もっとヤキモチを焼いてくれるのかと思って期待していたのに…

なんか
拍子抜けてガッカリしてしまった…


そして僕は

あつしさんに

心の内に秘めていた

ある決心を打ち明けてみる事に…



伸一
「あのさぁ、僕・・
今度のゴールデンウィーク


ゲイバーデビューしてみようと思っているんだ・・」



それを聞いた
あつしさんは…



あつし
「それは駄目だ・・・」


伸一
「え・・・?」


あつし
「ゲイバーなんて行ったら駄目だ!」

伸一
「な・・お父さん・・・なんでだよ・・・・

なんで○ーmenの文通欄だったらOKで、ゲイバーデビューだとNOなの…!」


あつし
「当たり前だろう・・・
ゲイバーデビューなんて絶対駄目だ!
あんな所・・お前みたいな田舎モンが行くような場所じゃないんだよ!」


伸一
「あんな場所って・・・どんな場所なの?
詳しく聞かせてよ・・・・」


あつし
「お前が知る必要なんてないんだ!
行くなと言ったら行くな!」


伸一
「なんなんだよ・・・意味がよく分かんないよ・・・」


あつし
「お前・・・ゲイバーデビューなんてしやがったら・・許さんからな!」



伸一
「じゃあもし・・・
嫌だと言ったら…
どうするな・・・?」


あつし
「嫌だと言いやがったら・・・」


「テレレレレ~♪
テレレレレ~♪テレレ~レ~~レレ~~レ~~レ~~レレ~~♪♪」
(I WiSH,明日への扉)


その時・・
僕の携帯から
着信のメロディーが流れ出した…!


伸一
「え・・・!?
母さんからだ・・・・!!」


あつし
「おふくろさん・・?」


伸一
「あつしさん・・!どうしよう!!
母さんから電話なんだけど!!」



あつし
「早く出てやれよ、普通にしてりぁあバレないから・・」


伸一
「う・・・うん・・」


あつし
「音楽消すぞ…」


「ピッ♪」


伸一
「・・もしもし・・・?
母さん・・・・?
どうしたの・・・・・?」



昌子
「あ!虎ぁ~~!?
あのねぇ~~、お父さんがぁ~~
今日、ギックリ腰になっちゃったのよぅ~~~!
今、県病院まで連れてきたんだけどねぇ~~!?
お父さん重くって、母ちゃんにはこたえるのよ、ちょっと今から県病院まで来てくれないかしら?

あんたの家からそんなに離れてないでしょう~~~??」



伸一
「えぇ~~~~今は無理だよ~~!!」


昌子
「えっ!!なんで無理なんよ!
あんた今日は日曜日で、お仕事はお休みのはずでしょお!?」


伸一
「母さん・・・
今俺ね・・・
愛媛に居ないんだよ・・・」


昌子
「えぇ~~!!?
ちょっと・・・!あんた今どこにいるのよ・・・!!!」


伸一
「こ・・・高知県・・・」


昌子
「えぇ~~~!?高知県~~!?

あんた・・・!!わざわざ高知県まで行って・・・何やってんのよ・・・!?」



伸一
「何って・・そんなの俺の自由じゃん・・・・!!
母さんには関係ないでしょお・・・!!」

昌子
「夕方までには帰れるんでしょうねえっっ!?」


伸一
「そんなの分からないよっっ!!
俺だって・・やりたい事はあるんだから!もう・・ほっといてよお~~!!」


あつし
(おい・・・お袋さんどうしたって・・・!?)


伸一
(父さんがギックリ腰になっちゃったらしくって・・・・
母さんが、今から県病院に来いって言うんだ・・・いくらなんでも無理だよ・・・
ここから愛媛まで200kmは離れているんだよ・・・・)



昌子
「ちょっと・・・!?
何話してるの・・・?
横に誰か居るの・・・!?」


伸一
「あっっ・・・・!!
え・・・っと・・・・!!」


昌子
「ちょっと・・・あんた・・
今誰と居るの・・?」


伸一
「あ・・あの・・・
そ・・・・その・・・・
ちょっと・・・!!」


昌子
「虎!!
あんた今誰と居るのよ!?
ちゃんと言いなさい!!
虎ぁっ!?」



あつし
(バッカだな!ちょっと貸せ!)


伸一
(あ・・・・・!!)


あつしさんは
僕から携帯を取り・・
・・・
母さんと話し出したのである・・・



あつし
「あーーもしもし?
お電話代わりまして、わたくし明徳で相撲を指導している教師の山下です」


昌子
「え!?明徳の先生!?
や・・山下さん・・・!?
どうしてうちの子と一緒に!?

一体…どうしたんですかっ!?」


あつし
「いやぁ~・・!伸一君が中学生の頃にね~・・、相撲の指導した事があったんですが・・・」


昌子
「ちょっと・・・貴方ねぇ・・!?


うちの子は伸一って名前じゃないわよ!!
何嘘言ってんの…!?

貴方何処の誰よ…!!言いなさい!!」


あつし
(しまった・・・・・!!
(おい!お前!本当の名前は!名前!)


伸一
(さ・・ささささ・・・・
西郷虎之助・・・!西郷虎之助だからね・・・・・!!)


あつし
「あーーもしもし、虎之助君のお母さん・・・
大変失礼致しました
ついうっかりして、わたくしの生徒である伸一君と間違えてしまいました・・・

なんせ虎之助君と伸一君は…
外観と性格がなんとなぁ~~く似ている所がありまして…いや、本当失礼・・」


昌子
「ほんっとうに・・・
貴方、明徳の教師なんでしょうね・・!!!」


あつし
「えぇ、もちろん、ちゃんと教員免許も持ってます、何なら番号を言いましょうか・・・」


昌子
「もう…いいです…
わかりました、私も疑ったりしてごめんなさい

先生、どうしてうちの子と・・?」


あつし
「来月十和村で、鯉のぼり流しがあるんですけどね、虎之助君が鯉のぼりが大好きなのを知っていたので・・

3月にハガキを送っておいたんですよ」



昌子
「まあまあ~~・・・


そうなんですよぉ~~~・・・・

あの子ったら、昔から鯉のぼりの事になると、つい見境なくなっちゃて・・・

先生本当に
すみませんねぇ~~~」



あつし
「いえいえ・・・

虎之助君が鯉のぼりをつなぐ作業を手伝ってくれたので…

わたしも助かりましたよ…

うちの生徒で、鯉のぼりに興味を持っている生徒なんて居ないものですから・・・」


昌子
「変な子でしょお~~
この年齢で、今だに鯉のぼりが好きだなんてぇ~~~・・・」


あつし
「わたしはこういう子供っぽい虎之助君、好きですよ

虎之助君は非常に涙もろいですが・・・・
普通の男の子よりも感性が豊かなんです」



昌子
「ほんっと昔から泣きベソで困ったもんですわぁ~~~~」


あつし
「あのー、お母さん

作業を手伝ってくれた虎之助君に
お礼と観光を兼ねて、松葉川温泉へ誘ったんですよ
それで…今ちょうどそこへ向かっている所なんですがね…

夕方までには必ず虎之助君を県病院までお送り致しますので・・・

どうかもうしばらくの間…

久しぶりに彼とゆっくり話をさせて貰っても宜しいでしょうかねぇ・・・・」



昌子
「あぁ~~ああ~~!!
先生、もう良いんですのよ~~!

今日はゆっくりしてってくださいな

うちの子を、そのような温泉施設に誘って頂いて・・
本当にありがとうございます~~~!」



あつし
「わたしは今から仕事で岡山へ向かいますので・・・

夕方までには必ず・・・
虎之助君をお連れ致します」


昌子
「すみませんねぇ~先生ぇ~・・

もし宜しければ・・うちの人とも会ってやってくださいな・・」


あつし
「ありがとうございます

・・ですが、わたしもフェリーの時間に間に合わせないと行けませんので…」


昌子
「そうですかぁ~~・・・
わかりました・・・・

それじゃあ先生…

うちの子を・・・宜しくお願いしますねぇ・・・」


あつし
「はい、それではもう一度、虎之助君に代わりますね」

(ほい!)

(うん…)


伸一
「もしもし・・
母さん・・・それじゃあ俺・・

そういう訳だから・・・

夕方には県病院に行くよ・・・」


昌子
「あんたねぇ~~~~!!
そういう事なら・・・・

ちゃんとハッキリ言いなさいよっ!!


まったく!いつくになっても男らしくないんだから!!


母ちゃんねぇ・・・あんたが
てっきり変な男に騙されてんのかと思っちゃったわよ!!」


伸一
「そんな訳ないでしょ!」

(実は今そうなんだけど,,,)


昌子
「先生の言うこと、しっかり聞くのよ!
いいわねぇ!?」


伸一
「うるさいなぁ・・もう・・!
子供じゃないんだから・・・!」


昌子
「それじゃあ
お母ちゃん、これから末広マートで買い物してくるから、もう切るわよ!あんた、パンか何か欲しい物ある!?」


伸一
「じゃあ…クリームパン…
買っといて…」


昌子
「はいはい、わかったわ!
じゃあ後でね!バイバ~イ♪」

伸一
「は~い…」


「ピッ♪」


伸一
「はぁ・・・
母さんったらもう・・・・・

お父さん・・・ごめんね・・・」



あつし
「がっはっはっはっはっは!!

じゃあ…クリームパン…買っといて…

だって!!がーーっはっはっはっはっはっはっは!!!」


伸一
「もう・・・そんなに笑わないでよ・・」


あつし
「お前・・虎之助って名前だったんか!?」


伸一
「そうだよ…」


あつし
「しかも名字が西郷で、フルネームが
西郷虎之助って、お前・・・!

歌舞伎役者みたいな名前持ってたんだなあ!!」


三代目!!西郷虎之助!!

今ぁぁ~~~!こぉこぉ~~にぃぃ~~てぇぇ~~~命ぅ~~名ぃ~~いたぁしんむぁますぅ~~ぅぅ~~!!ってか!?
がーーっはっはっはっはっはっはっ!」



伸一
「あつしさんこそ、やっぱり教師だったんだ!
僕は薄々は勘づいていたんだけどさ!」


あつし
「さぁ~~~~なぁ~~~~・・・」


伸一
「学校の教師で・・
柔道の指導している体育か何かの先生なんでしょ?
もう・・・・・・・
わかってるんだよ!?」



あつし
「伸、それ以上は何も言うな

言ったら頭しばくぞ、いいな♪」


伸一
「だから写真は絶対に駄目だって・・
あれだけ強く言ってたんだね…」



あつし
「しぃ~~~~らないっと♪」


伸一
「でも・・母さんとの電話の対応・・・
凄く男らしくて・・・格好良かった…」



あつし
「お前も嘘が下手クソだなぁ~~~

ああいう時は、車がパンクしちゃって…今さっきJAS呼んとこなんだ・・・って、言っときゃ良かったのに!」


伸一
「そんなの急に思いつかないよ・・・」


あつし
「しっかし!お前のお袋さん・・

キツい性格しとるの~~♪
俺の嫁より凄かったぞ~~♪」


伸一
「うちの父さんと母さん、どっちも気が荒くて、負けん気が強いから・・・

いつも喧嘩してるけど、日常で当たり前になりすぎて
数分経てばお互いにケロッ…としてるんだよ、変わってるよ…全く…」



あつし
「いぃ~~じゃねぇ~~か、夫婦がお互いに言いたい事を言い合うなんてよ・・

だから今でも変わらず・・
上手くいってんだろうな・・・」


伸一
「あ!あつしさん!
ほら!あそこ見てよ!」


あつし
「こら!今はお父ちゃんと呼べって言ってるだろ!」


伸一
「ほら!あそこに・・・
沈下橋がある!!」


あつし
「ほう~~~・・・アレが高知県四万十川に十数カ所掛かっているという・・
沈下橋か・・・初めて見たなぁ・・」



伸一
「行ってみようよ!
あの沈下橋・・・去年初めて渡った…

思い出の沈下橋なんだ・・・!」



あつし
「渡るって・・・
お前・・・そんなに時間無いんだぞ

夕方には県病院にお前を連れて行くって、お袋さんと約束しちまったんだからな・・・」



伸一
「お願い!お父さん・・

10分だけ・・・10分だけで良いから付き合ってよ・・・」



あつし
「・・ったく!しょうがねぇ~なぁ~

本当に10分だけだぞ・・・?」



僕は

あつしさんを
あの沈下橋へと強引に誘った・・

もし・・・

今このチャンスを逃したら・・・

もう二度と・・・

あつしさんと沈下橋を…
渡ることが出来なくなってしまうかもしれないと・・・

もう…

県病院での
さよならが・・・

僕とあつしさんは
永遠の別れになってしまうのではないかと・・・

心の隅っこに
隠したまま…

今は明かさないでいようと…
思った…




伸一
「あぁ~~~!何だか久しぶりに来た感じがする~~

まだ一年しか経っていないのに・・・」


あつし
「凄いよなぁ~~・・・

台風や大雨で川が増水したら

沈下橋もろとも見えなくなっちまうんだもんなぁ~~~・・・・」



伸一
「そうだよね…
今はこんなに…
ゆっくり…ゆっくりと……

水が流れている川なのにね…」




あつし
「この沈下橋に…
川から流れてきた流木や漂流物が引っかかる仕組みになってるをだってな…

昔の人の知恵って・・・
本当に凄いもんだな・・・・」



伸一
「ねぇ・・・あつしさん・・・」


あつし
「コラッ!俺はお父ちゃんだろ!?」


伸一
「あつしさん・・・
お願い・・・僕と一つ約束して欲しい事があるんだ・・・」



あつし
「どうしたんだよ・・・
そんなあらたまった顔してよ・・・」



伸一
「数年後・・・
いや・・・
十数年後・・・
・・20年後でも・・・構わないから・・・・」


あつし
「え・・・・・・?」




伸一
「いつか・・・もう一度・・・

僕と一いっしょに・・・

この沈下橋を渡ってくれないかな・・」


伸一
「今度は・・・
もっとじっくり計画立ててさ…
ゆっくりこの沈下橋で…
あつしさんと話がしたいな・・・・」



あつし
「・・・お前って奴はよ・・・

本当に・・ロマンチストだなぁ・・」


伸一
「駄目・・・かなぁ・・・」


あつし
「伸、ちょっとこっちへ来い・・・」


伸一
「なあに・・・あつしさん・・・」


あつし
「ん・・・・」

伸一
「あ・・・・」



あつし
「お父ちゃんと・・・
ここでキスしてくれたら・・・

考えといてやる…」


伸一
「・・・・・・
うん・・・・わかったよ・・・」

お父さん・・・・

でも…ちゃんと約束してよね・・・」



あつし
「おう!わかったよ!

約束するから・・・・

お父ちゃんとここでキスだ!」


伸一
「あつしさん・・・・
いや・・・・
お父さん・・・

僕ね・・・

本当に・・・



本当に…
お父さんと出会えて・・
良かった・・・



僕ね・・・

今、とっても・・・

幸せだよ・・・」



道家で学校の教師の

ガッシリ固太りおじさんの
あつしさん…



その正面に居る

同じく
ガッシリ固太りな
深山中学の弱小相撲部員…

伸一こと
西郷虎之助



日本最後の清流と言われ
土佐の山々を
清らかに流れる四万十川



幾多に掛かる

沈下橋


橋の真ん中で


二つの大きな影が…


西日の逆光に照らされながら…

今…
一つになる…



もう…
二度と一緒に来れないかもしれない…


僕は今日この日を…

いくつ歳を重ねても絶対に忘れないと…


口元の髭に…
チクリチクリと痛みを感じながら

熱い唇を
お互いに絡めあっていた…

人目も気にしないで・・・


四万十川の川岸にも

菜の花が咲いている…




川岸から…

誘われるように…

水面の風に吹かれて…
菜の花の…

香りが頬を撫でていた…








「四万十・エレジーDrama盤」

(終)