どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

虎之助・龍玄さんと・滝修行

虎之助

高校の卒業式を終え…

18歳もあとわずかとなった…
4月の初め頃…
まだ外の薄暗い朝6時…


深山町の山奥にある…
龍玄さんが修行している滝場…

「お不動の滝」

19歳の誕生日を迎える前に…

大人になった暁として…
龍玄さん直伝による指導の元…
この滝にて生まれて初めて滝修行に挑んだのである…

4月になったとはいうものの…
山桜の蕾もまだひらかない…

まだまだ寒い…
深山町の山中…

早朝により真冬並みの白い吐息…

こんなに寒いのに…

これから山奥の冷たい滝に打たれるなんて…

心臓が止まって死んじゃったらどうしよう・・・

僕は肩を屈め…
寒さと恐怖による圧迫感で
体の震えは止まなかった…

だけど…


僕の前を
狭い獣道の中…
懐中電灯を照らしながら…

堂々と登り歩いてゆく龍玄さん…


幽霊や亡霊なんて
ちっとも怖がらない…

大黒様のような神様顔

値段の高価な黒い作務衣を
いつも着ていて…

身長は低めだけど
でっぷりと太った恰幅のある体格で…
筋肉質な固太り…

作務衣の下には…
真っ白な褌を締めていた…

頭はつるんと剃られているけど…
てっぺんには毛がなくて光っている…

眉毛が髭のようで…

細い目で和やかに笑みを浮かべる…

龍雲寺の
大好きなお坊さん
龍玄和尚



僕は…
そんな龍玄さんの…
大きな背中とお尻が左右に動いている
後姿を見つつ…

白い吐息を薄暗い山中に浮かべながら…
ついていった…



しばらく歩いて…
途中左に入り…
さらに道は小さく険しい道となる…

やがて滝の水音が…

ザザザザザーー・・・・

・・・と、聞こえてきた・・・


どんどんと細い道を歩き進んで行くと…

辺りの空気はより一層ひんやりと冷たくなり、山中の冷気が僕の肌に突き刺さる


それと同時に…
滝の水音も更に強くなってくる…

龍玄さんが照らしている懐中電灯の光から…
ミスト状の水滴がふわりふわりと浮遊している…


そしてようやく…

僕と龍玄さんは…

「お不動の滝」の滝つぼ前へと
やってきたのです…


ドドドドドドーーーー・・・!!!


滝の水が下ちる水圧が強く体に伝わってくる…
僕の心は不安と恐怖でいっぱいだ・・・


龍玄さんは、懐中電灯を岩場に置き…

黒い作務衣を脱ぎだし…

真っ白な越中褌1枚だけの姿になる…

すると龍玄さんは…



龍玄さん
「虎坊や、滝に入る前に
ちょっとあの辺の隅っこでのう…
お小水しておいで…」


虎之助
「う・・・うん・・・」



龍玄さんの言う「お小水」とは…
「小便」の事を指している…

滝修行の最中に催さないように気を遣ってくれたのであろう…

僕は龍玄さんの指示の通り、隅っこの茂みで小水をした…


虎之助
「龍玄さん、終わったよ・・・」


僕は小水を終えると
小走りで龍玄さんの居る
お不動の滝の正面まで行った…


龍玄さん
「ようし…
これでもうお小水は大丈夫じゃな…?」

虎之助
「たぶん・・・
でもどうしよう・・・
滝の水、凄く冷たそうだから…
またすぐに催しそう・・・」


龍玄さん
「普段ならば
お小水なんぞいつでも構わんが・・・

お不動様のお滝で行を勤しんでいる最中じゃ話は別・・・
修行中の粗相は絶対禁物じゃからな、虎坊」


虎之助
「え・・・えぇ~~・・・・」


龍玄さん
「なんじゃ…
情けない声だしおって~・・・」



あの…
いつも優しい筈の龍玄さんから…
まさかの厳しい言葉に…
僕は思わず言葉を失った・・・


龍玄さん
「虎坊や…
そんな弱気ではお不動の滝には入れられぬぞ…」


虎之助
「り・・龍玄さぁ~・・・ん・・・
そんな事言わないでよぉ~・・・」


僕は…
龍玄さんの思いも寄らなかった厳しい発言に…
あまりのショックに泣きそうになる…


その時でした・・・


龍玄さん
「喝ぁーーーーーーーつっっ!!!」


龍玄さんは…
突然僕の正面まで来て・・・

「喝っ!!!」
・・・と、薄暗く冷たい山中で…
怒号さながらの叫び声を上げる… 


虎之助
「り・・・・・・・龍玄・・・・
・・・・さ・・・ん・・・?」


突然の出来事に…
僕は呆然と立ち尽くしてしまう…



龍玄
「虎坊はもう立派な大人になったんじゃ!
いつまでも子どものように甘えるでない!」


虎之助
「そ・・・そんなぁ~・・・
龍玄さん~・・・
怒らないでよぉ~・・・・
僕怖いよぉ~・・・」


思わず泣き出してしまう…
情けない僕・・・

それを見た龍玄さんは…
お不動様のような形相になり…


龍玄
「大の男が泣くでないっ!!!
そんな情けない心では修行の伝授は出来ぬっ!!
尻尾を巻いて山を一人で降りてくるが良いっ!!!」


虎之助
「う・・・う・・・・・
うわぁぁ~~~・・・ん・・・!!
龍玄さんどうしてぇぇぇ~・・!!!」


龍玄さん
「もう止めじゃ!!止めじゃ!!!
泣きベソ坊主に滝修行の伝授はできぬ!!
今すぐ帰るのじゃっ!!!」

怒った龍玄さんは
僕の肩を掴み、滝場から離れるように無理矢理押さえつける…

だけど、僕は意地を張ってその場を離れなかった…

こんなに情けなく泣いているのに…


そんな僕をお不動様の形相で睨みつけながら褌一丁の仁王立ち姿で…
龍玄さんは怒りながら言う・・・


龍玄さん
「このお不動様のお滝はのうっ!!
戦の落城によって瀕死の傷を負った落ち武者達が!
最後に水を求めて無念に命を終えた場所なのじゃっ!!!

そんな勇ましい男達が浄土に散っていったお不動様の滝に・・・

泣きベソ坊主は立ち入れさせぬっ!!」



そうだった・・・
このお不動の滝は・・・

落ち武者の霊を供養するために…
龍玄さんが不動明王様に、コンガラ童子とセイタカ童子を奉った場所だったんだ・・・・

それを思い出した僕は…
涙を拭いて…
鼻を啜りながら言った・・・



虎之助
「僕は山を下りない・・・!
滝修行を伝授して下さい・・・!
お・・・グズ・・・お願いします!
龍玄さんっ!!」


龍玄さんは、腕を組みながら僕の顔をお不動様の形相で睨みつけながら・・・


龍玄
「出来るのじゃな・・?」

虎之助
「・・はいっ!・・・」

龍玄
「もうメソメソ泣いたりせぬか…!?」

虎之助
「・・はいっ!・・・」


龍玄
「もうお小水の出来事を断ち切れるな!?」

虎之助
「はいっ!!・・・・」

龍玄
「これからどんなに辛い事があっても…
自分の力で立ち上がるのじゃ!いいな!?」


虎之助
「はいっっ!!!」


龍玄
「もう・・・
後ろを振り返るのではないぞ!?
前を見て進むのじゃ!」



虎之助
「はいっっ!!!」


龍玄
「よっしゃっ!
それでは虎坊に
これからわしの滝修行の作法を伝授する!!

虎坊や!すぐに服を脱ぐのじゃ!
わしが褌をしめてやろうぞ!!!」


虎之助
「はいっっ!!!」



僕はこうして・・・
滝に打たれる行者となった・・・

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