どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

「東京スクランブル」~西郷虎之助・半年間の苦悩と葛藤~

眠らない東京の夜の街で…

家にも帰らずに…

暖かい布団よりも都会の喧騒を望んで行き交う人たち

まるで現実逃避しているかのように…
周りには一切目もくれずその足を止めない…

目指す場所へとたどり着くまで…

眩しい街のネオンの光も…

長い列を作って待機しているタクシーも…

数えきれない程のスナックやクラブ、バーのテナント看板も…

ただ足早に通り過ぎてゆく…

心の片隅に隠している寂しさと孤独を…
月夜だけでも癒して欲しいから…

今夜はどれだけ飲んで…
昼間の窮屈な現実を忘れようか…

酔い潰れて…
人目もはばからず道ばたで眠ってしまうまで…

くたびれた背広とネクタイが…
生き様の哀愁を寂しく物語っているようだ…
 

やがて夜明けと共に朝を迎えたら…

夢から覚めた僕は…
ゆっくりとその重い腰をあげ…
朝日に照らされながら…
再び現実へと帰って行くだろう…

またここへ来れば良い…

今を生きる男たちの…
快楽の場所へようこそ…

新宿2丁目へ…







「東京スクランブル」

~西郷虎之助の半年間の苦悩と葛藤~

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(第3話)





新宿2丁目の夜も…
やがて夜更けを過ぎて朝が近づいてくると…

賑わいも少しづつ落ち着き…
帰る者もチラホラと出てくる…

新宿2丁目のとあるゲイバー「ロマンス」のドアの前では…
帰り支度をするお客さんを見送るママの姿が…



さとし
「ママァ~~♪
ごちそうさま~~~♪
いくら~~?」

チーコママ
「ありがとうね~~♪
それじゃあ…3700円頂きま~す♪」

さとし
「ママこれお願~い♪」

チーコママ
「は~~い♪5000円ね~♪ちょっと待ってね~~~♪」

チーコママ
「はい♪じゃ!
1300万円のお返しでぇ~~~す♪♪
ありがとう~~~♪」

さとし
「やっだ~~~!!
ママったら風呂屋のおばちゃんみた~~~い♪」


「ギャハハハハ!
やっぱりアラフィフのオネエよね~~~~!」

チーコママ
「おだまり!!」


さとし
「じゃあまた来週来ま~~~~す♪おやすみ~♪」

チーコママ
「おやすみ~~♪
ありがとうね~~♪
また聖子ちゃん歌ってね~~~~♪」

さとし
「次はあゆ歌いまぁ~す!!」

チーコママ
「ダメよ!聖子ちゃん歌うの!」

さとし
「わかったわよ!ピンクのモーツァルトね!」

チーコママ
「ど~よ!マイナーな曲選んじゃって!」

さとし
「はいはいおやすみ~♪」

チーコママ
「は~い♪さとしおやすみ~♪」

「ガチャリ・・♪」


ヨッちゃん
「あ~~眠くなってきちゃった!アタシもう帰って寝るわ、ママお勘定お願~い♪」

チーコママ
「あらぁ~~・・・
ヨッちゃんまで帰っちゃうの~~~?
寂しいわぁ~~・・・」


浩介
「慎吾、俺たちもそろそろ帰ろうか…」

慎吾
「え~~~~・・・
もう帰るの~~~・・?
まだ早いよ~~・・・」

浩介
「だってもう・・・
夜中の2時だぞ、俺も帰って寝なきゃ、明日は昼から用事があるんだ…」

慎吾
「明日じゃなくって今日でしょ、用事って何?日曜日だよ~?」


浩介
「ちょっと仕事の事でさ、取引先に連絡して納品書を渡さなきゃならないんだ」

慎吾
「そんな話聞いてない・・・・・
どうしてもっと早く言ってくれなかったの~?」

浩介
「ごめんな・・・
楽しい時間に余計な心配事をさせなくなかったんだ…
今夜はせっかくの1周年なんだしさ・・・」

慎吾
「もう~~・・・
コーちゃんのバカ…
でも…
仕事ならしょうがないね・・・・」

浩介
「ごめんな・・・
慎吾・・・」

慎吾
「チーコママ~~!
こっちもお勘定~~!」

チーコママ
「あらあらあら~~~…
アンタたちまで帰っちゃうの~~~~~・・・?」

慎吾
「コーちゃん、今日ちょっとだけ仕事があるんだってさ・・・」

慎吾がそう伝えると…
チーコママは浩介と目を見合わせた・・・

チーコママ
「コーちゃん・・・
本当に・・・
いいのね・・・・」

浩介
「ご・・・・・・
ごめん・・・・」


慎吾
「え・・・・・?
ごめん・・・・って・・
何で謝るの・・・?」

浩介
「あ・・!あっ・・!
あぁ~ぁ~ぁあ~~・・・・・!!
ごめん!!ママ!お代は一緒で!!」

チーコママ
「あっ!やだっ・・・・!アタシったら・・!!!
アハハハハハ・・・!
コーちゃん、一緒でいいのよね!はいはい♪オッケーまいどあり~~~♪」

うっかり本心を出してしまった浩介とチーコママは慌てて誤魔化した

浩介
「ママ!こ…これ!」

チーコママ
「は…は~い!一万円札ね~~♪」

慎吾
「コーちゃん!悪いよそれじゃあ!僕にもお金払わせてよ!」


浩介
「いいんだよ…!
気にするな・・・!」

チーコママ
「そうよ~~♪慎吾ちゃん、こういう時は素直にご馳走になりなるの!!
でないとコーちゃん、男として立たないでしょ~?」


慎吾
「だ・・・だってさぁ・・・コーちゃんこないだパチンコで・・・」

浩介
「うわっ!慎吾・・・!
シー・・・!シー・・!」

チーコママ
「あらっ!
コ~~ちゃぁ~ん・・・
アンタまだパチンコなんてやってんの・・・?」


浩介
「あ!あの時はちょうど職場の同僚が良い台くれたからしょうがなく…!」

チーコママ
「おバカっ!!
お金を粗末にしてたらバチが当たるわよ!」

浩介
「し・・・慎吾ぉ~・・」

慎吾
「だって~~・・・
何度言ってもコーちゃんパチンコ辞めてくれないんだもん・・・」

チーコママ
「は~~い♪2400万円のお返しで~~す!」♪

浩介
「と・・・時々しかやらないよってば・・・」

チーコママ
「あぶく銭は身につかないわよ!パチンコなんて早く足洗いなさい!」

浩介
「はいはいはい!もうしませ~~~ん!!!」





チーコママは…
真剣な眼差しで浩介を見て呟いた…


チーコママ
「コーちゃん・・・
ダメよ・・・絶対に・・・・・・
ダメだからね・・・・」



浩介
「ママ・・・・」



チーコママ
「慎吾ちゃんを・・・
守るの・・・!
わかってるわね・・・!」



浩介
「う・・・うん・・・
で・・・でも・・・」



慎吾
「どうしたの・・・?
コーちゃんもチーコママも真剣な顔して見つめ合っちゃって・・・」




「わかった~~~!
2人とも実はできてるんだ!!」

「ヒャッホ~~~~!!」

「ママがお客に手ぇ~~出したぁ~~~♪」

「恋人目の前にして三角関係発覚~~~♪」

チーコママ
「おだまり!!!
アタシとコーちゃんとは何にも無いわよっ!!(笑)」


「ギャハハハハ!!」




こうして…
浩介と慎吾は店を出た…

そして2人が居なくなったお店の中では…
浩介と慎吾の仲を良く思っていない者たちによる悪口が…
ひっそりと囁かれていた…



「なんで浩介はあの子を選んだのかしらね~・・・」

「もっと可愛い子いるのに・・・」

「絶対アタシの方がイケてるわよ・・・」

「あぁ~~・・・
浩介可愛いわよね~・・
憎めないわ~~・・・」

「あの慎吾っていう子…
ワガママでイライラするわ…ブスのくせに・・・」

「さっきスマホでコッソリ撮影したから・・・
帰ったらゲイネットちゃんねるにアップして拡散させてやるんだから・・・」

「ねぇ…足踏んだの・・・
誰・・・?」

「ア・タ・シ・・クスクス」

「バカね…浩介に気付かれてるかもよ…
なんか告げ口してたみたいだしさぁ~・・・」

「慎吾ウザいわね…」

「絶対にあの2人…
別れさせてやりましょうよ・・・」

「当然でしょ・・・」

「この新宿2丁目を歩けなくしてやるんだから!」


新宿2丁目の…
名の知れたイケメンはすぐにゲイネットちゃんねるに広がり…

その相方となった者は書き込みで相当な中傷を受けてしまうのだ…

運が悪ければ実名や職場先…
最悪の場合は住所や携帯番号等を…
一体どこから入手したのであろう個人情報を堂々と晒される事も・・・
今の時代では珍しくもないのであった・・・



もうじき夜明け前…
慎吾と浩介は・・・喧騒を逃れるように新宿2丁目を離れていった…




浩介
「慎吾…
俺…ちょっとタクシー呼んでくるからさ…
それ乗って家に帰るんだぞ…」


慎吾
「やだ・・・
帰らない・・・」


浩介
「え・・・?」


慎吾
「ねぇ・・
コーちゃん・・・
泊めてよ・・・」


慎吾は…
タクシーを呼びに行こうとしている浩介のズボンのベルトを掴んだ…


浩介
「慎吾・・・
すまん・・・
悪いけど・・・
俺…今日は仕事があるからさ・・・
また今度な・・・」


慎吾
「10時には帰るからさ・・・
ねぇ泊めて、いいでしょお~・・?」



浩介
「慎吾・・・
今日はもう遅いし…
また…今度にしよう…
な・・・?」




慎吾
「ヤダッ!
コーちゃん・・・行かないで!!」



そう言って慎吾は…
浩介の背中に抱きついた…



慎吾
「行かないで・・・!
行かないでよぉ~・・!
コーちゃぁ~~ん・・!」



浩介
「慎吾・・・
わかってくれよ・・・
俺にはやらなければいけない事があるんだ・・・」



慎吾
「コーちゃんのバカ!
今日仕事なんてウソでしょぉ!!?
僕・・・僕・・・
本当はわかってるんだから!!」



慎吾は浩介の背中で泣きながら叫んだ・・・



慎吾
「コーちゃんには・・・
ずっと・・・・
ずっと前から想ってる人がいるの・・・・・
僕・・・
知ってるんだから!!!」



浩介
「・・・・・!!?」




チーコママ
(悪い事は言わない…
早くあの子の事は忘れなさい…)




チーコママが忠告したあの一言が…
浩介の頭の中で揺らいでいる…


しかし浩介は・・・
ズボンのポケット中に潜ませている…
「西郷虎之助の復活」と表示されたビラの内容が気がかりで…

早くその真実を調べたくてしょうがないのであった…




浩介
「慎吾・・・
ごめん・・・
俺・・・もう帰らないと・・・・」



慎吾
「イヤだっ!
コーちゃん!ちゃんと説明してよぉっ!!
どうして否定しないの!?
やっぱり僕よりももっと好きな人がいるの!?」



浩介
「慎吾・・・
俺は・・・俺は・・・」



慎吾
「コーちゃん!!
僕はイヤだよ!!絶対に別れないからねっっ!!
他に好きな人がいても…
何があってもコーちゃんを渡さないんだからっ!!」



浩介
「慎吾・・・
ごめん・・・!!」



浩介は…
一言そう呟くと…
背中にしがみついている慎吾を強引に振り解き…

直ぐにその場を逃げるように走り去って行った…

残された慎吾は必死で追いかけるが・・・

浩介の体重が100kgあるとはいえ…
学生時代に野球部で鍛えた浩介にはとても追いつけず…
スクランブル交差点の真ん中で浩介を見失ってしまい

必死で泣き叫びながら浩介を呼んでいた…




慎吾
「コーちゃぁぁ~~ん!!・・・・・・
うぁぁ~~~ぁぁぁぁん!
コ~~~ちゃぁぁぁぁ~~~~ぁぁぁぁ~~んっ!」



浩介は…
泣き叫びながら呼ぶ慎吾の声がだんだん遠くなっていくのを感じても・・・

申し訳ない気持に唇を噛み締めながら走る足を止めなかった・・・

どうしてそこまで・・・
その「西郷虎之助」という男に思い入れがあるのか・・・・

そして…
2人がどういう関係だったのか・・・

大勢の人たちがスクランブルに行き交う東京では…
その真相を確かめる術は無かった…




星空が…
空に消えて… 
今ゆっくりと…
東京の夜が静かに明けてゆく…

白い吐息を吐いて走る浩介に…
夜明け前に吹く冷たい風が…
銀杏の枝と魅惑の心を揺さぶるのであった…


(第3話)終わり