どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

3.11「一松海之助おじさんと・けんとくん2」(前編)

2019年・3月11日


あの東日本大震災から

8年目の朝がやってきた





真っ暗だった空が

少しづつ
うっすらと紫色になってゆく

太陽が水平線から顔を出した途端に

水色の水面から眩しい光を反射させて

キラキラと銀色に輝いている



まだ船も浮いていない海の向こうを眺めながら
津波にさらわれた君と、家族や仲間たちのことを懐かしく想っている

もう帰ってはこないんだと・・・






それでも負けずに

君の分まで生きてゆくと

あの日誓ったけれど


誓ったけれど・・・



やっぱり・・・
君がいないのは

どんなに頑張っても
歯を食いしばってやせ我慢しても


ポロポロとこぼれる暖かい涙はとめられないよ・・・


だって・・・

僕は生きているのだから・・・


メソメソと泣いていると

小さく君の声が聞こえてくる気がして



君が心配そうに・・・
困った顔して僕を見守ってくれているかもしれない・・・

そう想うと・・・
ますます涙があふれてくるよ・・・


さみしいよ

かなしいよ

あいたいよ


今日だけは泣いてもいいでしょう?


いっぱい泣いて・・・
僕が枯れてしまいそうになるくらいまで泣いたら・・・


明日からはまた元気になるよ!

水平線から顔を出したまぶしい太陽に負けないくらいに

大きな声を出して

わっはっはっはっは!!


・・・って

笑ってやるんだ!!

天国にいる君に聞こえるくらいの大きな声で・・・




広すぎる砂浜に

1本だけの松ノ木が

今日も風に吹かれてる

新緑を迎える前の春先

その枝葉をゆらゆらと揺らせながら誓った


今日という日を忘れない

君のことも
家族や仲間たちのことだって忘れない

何年たっても忘れない

これからも僕は生きてゆく




寂しい高田松原跡地の砂浜で

1本だけで生きる「奇跡の1本松」は・・・
遠い遠い水平線の向こうから流れてきた風に吹かれながら

今日もこの町をずっと見守っている・・・









3.11

「一松海之助おじさんと、けんとくん2」
(前編)

~8years.from.the.earthquake~

イメージ 1









一松・海之助
「ふわあ~~~ぁぁ~~ぁぁぁぁあ・・・・!!
よく寝たもんじゃ・・・

さて・・と・・
朝になった事じゃし・・・
わしもそろそろ起きるとするかいのう~~・・・」



ここは陸前高田市気仙町


高田松原跡地にある「奇跡の1本松」に宿っている精霊

「一松海之助」おじさんは、震災から8年目の朝を迎えたというのに、吞気に大あくびをかいてお目覚めです・・・



一松海之助
「ふうぅ~~・・・・
海の向こうから吹いてくる風は誠に気持の良いもんじゃ~・・・♪

それにしても・・・
毎度毎度東側の水平線から顔を出す太陽が眩しゅうて敵わんわいっ!!

わしもサングラスというもんを買って掛けてみようかのう~~・・・」



1本松の精霊「一松海之助」おじさんは、朝の光が眩しすぎる事にブツブツと文句を言いながら、ゴシゴシと枝の歯ブラシで歯を磨きます・・・



「シャカシャカシャカシャカ・・♪」


一松海之助
「それにしても早いもんじゃ・・・
今日であの悲しい震災の津波から8年が経ってしもうたんかいな・・・

まだまだ避難者は51778人とたくさん居るし、行方不明者だって2533人も見つかっておらんのじゃ・・・

それでも多くの者が協力して助け合い、復興に立ち向かってくれておる・・・


ほんの小ささな思いやりで良いのじゃ・・・
みんなの力を復興への道へと繋いでおくれ・・・

そして今日という日を・・・
どうか忘れんでおくれ・・・

困っている者はまだまだたくさん居るのじゃ・・・」



「ガラガラガラガラガラ・・・」

「ペッ・・・!」




一松海之助
「あぁ~~・・・
サッパリした・・・

はて・・・

今日は悲しい日のはずじゃのに・・・

心がウキウキワクワクするのは何故じゃろう・・・」




歯を磨き終えてスッキリした海之助おじさんは、今日という日の楽しみが何だったのかを思い返してみました・・・

すると・・・



一松海之助
「あぁ~~~ぁぁぁぁぁああっ!!
思い出したあぁぁぁぁぁああっ!!

子だぬきの「けんとくん」だっ!!

ほうじゃ!ほうじゃ!ほうじゃった♪」



それは・・・
一昨年に知り合い、お友だちになった子だぬきのけんとくんでした

一松海之助おじさんは、ようやく思い出したようです・・・



一松海之助
「ちょっぴり生意気で失礼な事を言ったりもするが、とっても純粋で可愛らしい子だぬきのけんとくんじゃ!

不思議な力を持っておってのう~・・・

葉っぱを頭に乗せて呪文を唱えると、好きな物に変わるのじゃよ・・・


しかしのう~~・・・・

クックックックック・・・

カッカッカッカッカ・・・!


その呪文をというのがのう~・・・
力みながら九九を唱えるのじゃが・・・

クックックックックックックック・・・

カッカッカッカッカッカッカッカ・・・


力みすぎて・・・


「ぷぅ~♪」と・・・

おならが出てしまったのじゃよ・・・


その時の顔の表情と・・・
おならの音が愉快でおかしくてのう~・・・

ついわしは大笑いしてしもうたのじゃ・・・


けんとくんは、マツボクックリの鱗目を開けようと必死じゃたそうなんじゃが・・・

なかなか開かなくってのう・・・


一生懸命頑張ってくれたのに・・・

わしが笑ったもんじゃから・・・


けんとくん
「ふ~~んだ!!
もうマツボッコリ開けるのや~~めた!!
じぃ~じなんか大嫌い!!」

・・・と言ってのう~・・・

すねてしもうたのじゃ・・・


けんとくんは
マツボクックリをマツボッコリと呼ぶのじゃよ・・・



それでどうにか・・・
機嫌をなおしてもらおうと・・・
けんとくんを必死であやしたのじゃが・・・


なかなか許して貰えぬでのう~・・・

そこでじゃ

わしはにらめっこでもするかのように変な顔をして・・・
けんとくんに見せてみたのじゃ・・・


するとのう・・・


「プフ…クス…」

・・・と、けんとくんが少し笑ったんじゃ・・・

そこでわしは今じゃと思い・・・

けんとくんに「あ~~!けんとくんが笑ったぁ~~!!笑った笑った~~!」

・・・と、突っ込みまくってようやく機嫌をなおしてくれたのじゃ・・・

あの時は本当に大変じゃったぞい~・・・


それからのう・・・

わしはけんとくんと同じのように、頭に葉っぱを乗せて・・・
一緒に呪文を唱えたのじゃ・・・

え~~・・・っと・・・

確か~~・・・・


ににんが4~♪

にさんが6~♪

はっぱ64♪

じゃったかな~・・・?


するとマツボクックリの鱗目がのう・・・

ポンッ!・・・と

開いたのじゃ!


そしてわしは一緒に、スコップと、水の入った象さんジョーロも出してあげてのう~・・・


けんとくんはそのスコップと象さんジョーロを使って・・・

その開いたマツボクックリを植えてくれたのじゃよ・・・


優しい子だぬきじゃのう~・・・


おかげでわしの1本松のすぐとなりには・・・

小さな新しい赤ちゃん松ノ木が生えてきてくれたのじゃ・・・!


わしはその新しい生命のおかげでのう~・・・

これまで太陽が沈んでいく日暮れ時にしか姿を現せなかったが・・・


今では明るい朝や昼間でも・・・
姿が表せるようになったのじゃ・・・


実はのう~・・・

わしが宿っておるこの1本松は・・・

震災の津波で長時間海水に漬かっていた影響でのう・・・
松の根元が腐ってしまい、自然のままの姿で育てる事が出来なくなり・・・
一時撤去されたのじゃ・・・

それからこの1本松は・・・
人工的に加工されてのう・・・
半造型という形で保存されるようになったのじゃよ・・・





しかしのう・・・

自然に生きる能力を失った1本松では生命を宿しとらんせいなのか・・・

次第にわしの精霊としての力が年々弱りはじめてきたのじゃよ・・・


もうじきわしも消えてしまうのじゃろうなぁ~~・・・・

というところで・・・


子だぬきのけんとくんと出会ったという事なのじゃが・・・
おかげでわしは今でもこうして元気でいられるようになったのじゃ・・・




さて・・・

今日はそのけんとくんに・・・

年に1度だけの会える日なのじゃ・・・

すっかり忘れておったわい・・・

あれから2年経ってしもうたが・・・

けんとくんは
わしの事を覚えてくれているかのう~・・・


そして・・・

今日はわしに・・・

会いに来てくれるのかのう~・・・

なんだか心配じゃあ~~・・・」


陸前高田市気仙町の

高田松原跡地にたたずむ

「奇跡の1本松」の精霊

一松海之助おじさんは・・・

すっかり明るくなった空に

青々とした海の向こうにある
遠い水平線を眺めながら・・・


けんとくんが来てくれるのを待ちわびて・・・
大きなため息をつきました・・・


「前編終わり」