3月
桜のつぼみがまだ目を覚ます前の肌寒い季節…
吉田川の川端に咲いた菜の花の香りが...
人気の少ない静かな商店街まで...
冷たい風にのってやってきた…
ここは愛媛県
山の奥深くにある
とある小さな田舎の
「深山町」
そう…
西郷虎之助の生まれ故郷…
なんと…
こんな小さな町にも商店街があるのです...
深山商店街
そこにはいろんな個人店が立ち並ぶ…
まるで昭和で時が止まったままのような…
ちょっとレトロでへんぴな商店街…
屋根の無い開いてるか閉まっているのかよくわからないガソリンスタンド、だけどこの町唯一の給油所で潰れる心配はありません…
柴田電気「National系列の個人店」
僕の同級生であり、同じクラスだった深山中学卒の相撲部OB、柴田幸信(ユキラス)の実家が営んでいる深山町唯一の電器店で繁盛店だ…
今ではユキラスも親父さんの後を継いで一緒に働いている、今ではすっかり町の電気やさんのおじさんだ、お気楽な自由労働で大変羨ましい…
他にも深山中学卒の同級生が営む個人店が
この深山商店街には点々と…
新鮮な魚が自慢の「池田鮮魚店」
同級生で一番の運動神経を誇っていた池田竜二のお店、警備会社○○ソックに勤務していしたが退職して家を継いで働いている
パン、洋菓子店の「よしみつ屋」
誕生日にはここでバターケーキを食べて育ちました、あの脂っこいバタークリームが懐かしい…
おしゃれの衣料品「しまだ」
現在はファッションセンター「しまだ」に変更
「しまむら」ではありません、「しまだ」です
深山中学の学生服や体操着の取り扱っている貴重な深山町唯一の衣料品店なので潰れません、創業80年を越える老舗店です。
他にも小さな書店、金物屋、食堂、土産屋、雑貨屋、ボンカレーとオロナミンCのホーロー看板がいまだに残っている武智商店等々、この深山商店街には大体の生活用品は揃っています。
一時期はレンタルビデオもありましたが閉業...
ちゃんと銀行や病院、あと交番もあります。
そして…
深山町唯一のスポーツ店
「谷口スポーツ」の看板が見えてきた...
僕が今日、深山商店街へやってきたのは...
新しいトレーニングパンツを買いたかったからだ…
何故いまさらトレーニングパンツを…?
それはね...
[1年4組トレパン先生]
1年ぶりの3連休スペシャル

愛媛県の小さな田舎町
「深山町」で生まれ育った…
「西郷虎之助」
深山中学校卒業の体育教師である
前年度までは松山市内の中学校に勤務していたが、深山中学校の相撲部の指導者が居ないので、どうか指導をして欲しいと、深山中学校の校長先生の要望で新学期から母校へとUターン勤務となったのである…
深山中学相撲部員だった西郷虎之助
一応レギュラーではあったものの…
現役時代に恥ずかしい大失態をしてしまい…
数々の珍伝説を残したのは苦い思い出...
それでも負けじと体を鍛え直し…
体重は103kg~105kg辺り
まぁそれなりの体格を維持している…
つもりだ…!
身長は163cmと相変わらず低め…
タワシのような坊主頭に筋肉質な固太り体型に
昔の野球選手のようなお尻
毎日ポロシャツにトレーニングパンツで過ごしているので…
生徒のみんなからは
[トレパン先生] と呼ばれている
今日も元気にトレパンはいて深山商店街にある谷口スポーツへ...
新学期から始まる新しい学校生活に向けて...
新しいトレパンを買いにやってきました
[谷口スポーツ]
ウィーン...♪︎
虎之助
「こんばんは~」
谷口おさむ(店主)
「おや先生、いらっしゃい…」
虎之助
「おじさんこんばんは…
…今は先生なんて呼ばなくていいよ」
谷口おさむ
「そうかい、じゃあ虎くんだな」
虎之助
「そうそう、おじさんには僕が子どもの頃からお世話になったんだもん、そう呼んでくれた方が僕も童心に戻れるから良いなぁ…」
谷口おさむ
「虎くんはあの頃とあまり変わらんね、うちの息子はすっかりおっさんになったわい」
虎之助
「亮助はいるの?」
谷口おさむ
「あぁ居るよ、今テレビ見ながらメシくっとるわい、呼ぼうか?」
虎之助
「あ、御飯食べてるのか…
今呼んだら悪いね…」
谷口おさむ
「かまへんかまへん!店の仕事もろくに手伝わんと家でゴロゴロしとるばっかじゃから!
おーーーい!りょーすけやーーい!
虎くんが来とるぞーーーい!」
(カチャリン!え!?マジで!?)
おじさんが息子の亮助を呼ぶと…
奥からドタドタと走りながらやってきた
谷口亮助
「おーーー!虎之助やーーん!
まいどーー!」
虎之助
「おう!まいどーー!
亮助メシ食ってとんやろ?
呼び出して悪かったなぁ…」
谷口亮助
「かまへんかまへん!
ワシは毎日ヒマじゃけん、あがってビール飲むか!?」
谷口亮助は同じクラスだった同級生、相撲部ではないけれどユキラスとも仲が良く土曜日の夜はユキラスの家に泊まりに行ったりと今でも深交が深い、お父さんのおさむおじさんも柔らかい性格で親しみやすく、子どもの頃はよく可愛がってもらった
虎之助
「ビールなんて飲めないよー
お酒全然ダメだもん…」
谷口おさむ
「じゃあ亮助、後は頼んだぞ、ワシは風呂入ってくるから…」
谷口亮助
「おう!嫁がお湯わかしたばっかじゃけん、親父が一番風呂じゃ!お湯汚すなよ!ちゃんと体洗ってから湯船入れよ!」
谷口おさむ
「ろくに仕事もせんと毎日家でのんびりゴロゴロしとるもんが偉そうなことぬかすな!
んじゃあ虎くん、お店の閉店時間過ぎても気にせんでええからゆっくりしていってのう…」
虎之助
「おじさんありがとう、また今度ね」
谷口おさむ
「ああ、亮助や、注文したトレーニングパンツを虎くんに渡してやっておくれ…」
谷口亮助
「ああ…!あのダッサいアシックスのジャージね!笑」
谷口おさむ
「こりゃ!虎之くんは体育の先生じゃぞ、トレーニングパンツは体育教師のユニフォームじゃ、スポーツウエアにダサいとか言うんじゃない!」
谷口亮助
「はいはい、親父は早くお風呂お風呂!」
谷口おさむ
「亮助、虎くんのトレパン500円まけてあげてな、レジで価格割引と領収書渡して…」
谷口亮助
「わかった!わかった!親父
大丈夫だから早く風呂入りぃーや」
谷口おさむ
「じゃあの、虎くん
またおいでぇや…」
虎之助
「うん!また来るから!」
おじさんは店の奥の扉き、僕と亮助の2人に…
谷口亮助
「しかしまぁねぇ…
あの泣きべそだった虎之助がよ?
まさか学校の先生になるなんてねぇ…
しかも体育の先生とかさ笑
なんでそうなるんだよ
体育測定のハンドボール投げ13メートルしか飛ばなくてみんなから大笑いされたのに」
虎之助
「いいやん…
トレパンはいて学校生活おくれるなんて最高じゃん…」
谷口亮助
「そういえば…
いつも担任のジャージ見つめてたよなぁ…」
虎之助
「林田茂先生…
今また深山中学に居るんだよな…?」
谷口亮助
「居るよ、もうすっかりハゲたおっさんになったけど頑張ってるぜ、この前うちの店で注文してたジャージ買ってったぜ!」
虎之助
「え!どのメーカーのジャージ買ってったの?まさか…Kappaとか…」
谷口亮助
「そう、Kappaだよ!笑
林田は昔からKappaのジャージ好きだよなぁ~
しかも虎之助と同じ趣味の裾が細くなってるタイプのやつ」
虎之助
「亮助のお店は古いモデルのトレパンが手に入るから良いよなあ、今市内のスポーツショップでこういうスポーツウエア取り扱ってるお店なんて絶対に無いんだもん…」
谷口亮助
「ワシらの先輩だった吉金も深山中学の体育教師やってるしさ、みんなこんなへんぴな田舎でよくやってるよ」
虎之助
「え…吉金先輩も体育教師になったの!?」
谷口亮助
「そうだよ、虎之助は吉金先輩には相撲部員時代によく可愛がってもらってたろ?
良かったな、新学期からは同じ職場だぞ!?」
虎之助
「じゃあなんで相撲部の指導を吉金先輩に頼まなかったんだろう…
僕なんかよりも凄く強いのに…」
谷口亮助
「今は野球部の指導してる、吉金先輩は相撲よりも野球が好きで高校からは野球部に入部したらしいし」
虎之助
「吉金先輩はキャッチャーだっけ?」
谷口亮助
「そう、ドカベンってあだ名ついてさ」
虎之助
「あのドカベンと呼ばれた吉金先輩と...
一緒の職場で働くのかぁ…
なんか楽しみだなぁ…」
谷口亮助
「なぁーに頬っぺた赤くして喜んでんだよ気持ち悪いなぁ~
まぁ虎之助はな…あれだから…な…
しょうがないか!はっはっは!」
虎之助
「う…うるせいやい…」
谷口亮助
「残念ながら、吉金先輩は結婚して嫁と子どもがいるぞ、まぁあきらめろ!」
虎之助
「い...いいもん別に…
一緒に働けるだけで充分だい…!」
谷口亮助
「まぁーた顔真っ赤にして笑
虎之助は昔と変わらんよなぁ…
ジャージ好きなとこや林田先生と吉金先輩の事になるとデレデレするの、でも学校ではそんな仕草出すなよ、生徒はちゃんとよく見てるぞ?決して変な噂流されるような事にはなるなよ?バレたらお先真っ暗だぞ?」
虎之助
「わ…わかってらぁ…!
亮助こそ…その…言うなよ…僕の秘密…」
谷口亮助
「バーカ!言うかよ笑
言ったらこんな田舎だと3日で深山町みんなにバレるからな!」
虎之助
「あ...ありがと...
亮助が理解ある人で良かった…」
谷口亮助
「虎之助の秘密知ってるのはワシと正次郎ぐらいだからな」
虎之助
「ユキラスはどうか知らないけど…
太(ふとし)とケン坊も知ってる…」
谷口亮助
「太って…宮本太か!
懐かしいな、卒業してから会ってないけど元気か?」
虎之助
「元気だよ、大型トラックの長距離運転手してる、すっかり髭面のおっちゃんになって体臭がタバコ臭いけど…」
谷口亮助
「へぇーーっ!あいつ長距離トラックの運ちゃんやってんのか!スゲェな!
ケン坊は?学生時代お前ん家で一緒に暮らしてたよな?」
虎之助
「ケン坊なんて…
もう雲の上の人だよ…
海外でプール付きの家で暮らしてる
奥さんがいて子ども3人いる」
谷口亮助
「マジかよ!?何だそれ!笑
一体何の仕事してんだ!?
ケン坊は確か…森山健太郎だったよな!?」
虎之助
「うん…
よくわからないけど、何かのメーカーの偉い会長さん」
谷口亮助
「会ったのか!?森山と!」
虎之助
「うん…前に相撲部の同窓会したんだ…
見た目もすっかり変わって...高そうな背広着て…」
谷口亮助
「ワシも呼んでくれよぉー!
相撲部じゃないけどさぁ、同じクラスだったんだからよぉ~」
虎之助
「大変だったんだぜ、正次郎が隣の部屋の客と揉めてケンカしそうになってさぁ…」
谷口亮助
「はっはっはっは!
正次郎らしくていいな!今じゃ嫁さんの尻に敷かれてすっかり丸くなったんだぜ!」
虎之助と谷口亮助
2人の昔話は止まることなく2時間続いた
そして閉店時間もとうに過ぎてしまい
店にかけられている時計の針は夜の9時を指していた…
虎之助
「あ!もう9時か…
亮助ごめん…メシ食ってたのにこんなに長く話しちゃって…」
谷口亮助
「かまへん!かまへん!
ワシは毎日ヒマじゃけん!
んじゃ!そろそろおひらきにしますかな!」
虎之助
「注文していたトレパンある?」
谷口亮助
「届いてるぜ、アシックスのジャージな!」

虎之助
「おお!水色でカッコイイ~!」

谷口亮助
「これカッコイイかぁ~!?
結構ダサいぞ?」

虎之助
「このasicsのロゴがあるモデル欲しかったんだぁ!サンキュー亮助!」
谷口亮助
「ホントは紫でバイオレット色のが欲しかったんだろ?ゴメンな、バイオレットは在庫切れで無かったんだ、水色のスカイブルーで堪忍な…」

虎之助
「いいよ、いいよ!
このスカイブルーも欲しかったんだから!」
谷口亮助
「あともう一つ、ターコイズブルーは来週届くからな、連絡するからまた来てくれ!」
虎之助
「サンキュー亮助!
やはり持つべきものはスポーツショップの友だぜ!
ほら、この股の縫い目、ここ好きなんだよなぁ! 」

虎之助は嬉しそうに届いたトレパンの隅々まで見て至るところまでチェックする
谷口亮助
「せっかくだから今ちょっと穿いてみろよ?」
虎之助
「い…いいかな…?」
谷口亮助
「いいよ、サイズ合うか気になるだろ?」
虎之助
「じゃあ試着室に…」
谷口亮助
「ここでええわ!ワシしかおらんし笑!」
虎之助
「そっか、そうだよな!
じゃあ遠慮なく...」
虎之助は今穿いていたトレパンを脱ぎ、アシックスの真新しいトレパンに足を通した…

谷口亮助
「どうだ?キツくないか?Lサイズで大丈夫か?」
虎之助
「うん...ちょっとキツいけど、穿き心地最高だよ!ツルツル素材で気持ちいい!
股の縫い目もほら、足を開いてもしっかり頑丈に伸び縮みするよ!」

谷口亮助
「はっはっはっは…
良かったやん、しかし見た感じが古いなぁ笑」
虎之助
「ありがとう、じゃあ脱ぐね…」
谷口亮助
「もうそのまま穿いて帰れよ笑
いちいち穿きかえるの面倒だろ!」
虎之助
「そっか!それもそうだな…
じゃあ穿いたまま帰るわ…!
亮助、お会計頼む!」
谷口亮助
「へいへい!おおきに毎度ありぃ~♪︎」
.
虎之助
「いくらだっけ?」
谷口亮助
「ではでは…
7000円から500円値引き致しまして…
6500円になります毎度~♪︎」
虎之助
「はい、1万円札出してもいいかな?」
谷口亮助
「はいはいよかですよぉ~♪︎
では1万円お預かりしましてぇ~
3500円のお釣りでございま~す♪︎」
ピッピッビ♪︎チーン♪︎デデデデ♪︎
虎之助
「じゃあターコイズブルーのが届いたら連絡してな!また来るから!」
谷口亮助
「オッケー!毎度ありー!
帰り暗いから気をつけるんだぞー!」
虎之助
「うん!おやすみー!亮助またねー!」
谷口亮助
「おーう!おやすみー!またなー!」
学生時代同じふるさとで共にすごした友…
2人はあの頃に戻ったかように2時間以上昔話に花を咲かせ…
外はすっかり暗くなり夜の10時を過ぎていた…
山の間から…
澄んだ空気の深山町の空から見える星空は…
まるでプラネタリウムのように美しく...
これから始まる
これから始まる新しい母校での学校生活に胸を膨らませながら足早に深山商店街を後にした…
買ったばかりの新しいアシックスのトレパンの生地からからひんやりとした空気が足肌に伝わり、スベスベのポリエステル100%の気持ちいい穿き心地を胸の期待と共に感じるのであった…
[1年4組トレパン先生]
一年ぶりの3連休スペシャル
終