どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

どすこい!西郷虎之助の七転八倒!~虎之助・相撲大会お漏らし事件~

愛媛県支部中学相撲春場所選抜大会」


熊本ゆみ
「皆様こんにちは~!
テレビ愛媛のピチピチリポーター!熊本ゆみでぇ~す!」


石坂晃
「はいどーもー!
皆さんこんにちはー!
JOEUFMのDJでお馴染みの!石坂晃でーす!!」


熊本ゆみ
「石坂さん、本日は愛媛県支部、中学相撲春場所選抜大会の会場へやってきましたけどいかがでしょう~!」


石坂晃
「ほうやね~!
中学生ともいえどみんな体も立派やし力持ちやからね~!
プロに負けず劣らず迫力ある試合になるやろうなぁ~~!」


熊本ゆみ 
「楽しみですよね~~!!
今日は愛媛の皆様に、わんぱく中学生力士達の熱く激しい試合の様子をお伝えしていきたいと思いますので!
「愛媛っ子!ふるさといちばん!」最後まで楽しく御覧になって下さいね~!」


石坂晃
「はーい!
僕もね、いつものラジオとは違った形になりますがね、今日は中学相撲力士達の生の迫力をね、熊本ゆみちゃんと一緒に顔出しでリポーターしますんで、みんな最後まで見てーやーねぇー!」


熊本ゆみ
「石坂さん!石坂さん!」


石坂晃
「おいおい...
どしたんやぁ~...
ゆみちゃん...
そないに興奮して~・・・」


熊本ゆみ
「実は!
これからですね~!
深山町と野村町による、団体戦がもうじき始まりそうですよ~!」


石坂晃
「あ!もう始まんの!?」


熊本ゆみ
「そうですよ~!」


石坂晃
「深山中学と野村中学の対抗戦かー!
なんかいきなりやねー!」


熊本ゆみ
「そうなんですよ~!
深山中学と野村中学といえば相撲の強豪校でライバルですからね~!」


石坂晃
「愛媛の深山町といえば愛宕神社・豊作祈願の奉納相撲。
野村町といえばプロアマ対抗戦の乙相撲。
どちらも相撲で栄える町やね~!」


熊本ゆみ
「凄いですよね~!
もう究極の戦いですよ~!
熱い火花が飛び交う激しい戦いになること間違いなし!!」


石坂晃
「おぉ~笑!これは楽しみやね~!
どっちが勝つんやろうね~!」


熊本ゆみ
「それでは石坂さん!
さっそく選手の声を聞いてみましょう!」


石坂晃
「はーい!
それじゃあ僕らも行きますか!!」


熊本ゆみ・石坂晃
「愛媛に突撃~♪
ふるさといっちば~~ん♪♪」


ディレクター
「はいオッケー!
一旦CM入りまーす!」


・・・・・・・・・・・・・・・・



今日の愛媛は満点の青空なり...

絶好の相撲日和になりそうじゃ...

日頃厳しい稽古で鍛えたたくましい体に...
グイッ!と締め込んだ白い廻し姿のわんぱく少年力士たち...

片足上げて四股踏めば!

お尻も丸出しなんのその!

蹲踞に構えてはっきよい!

頭と頭がぶつかって!

ゴツン!もへっちゃら男の子!


まん丸の...
くりっと坊主がめんこいな...
お日様ピカピカまぶしかな...


今日はいっぱいぶつかれよ...

今日はいっぱい転がれよ..

今日はいっぱい喜んで...

今日はいっぱい笑おうな...

今日はいっぱい泣いてよし...

涙流して強くなれ...

わんぱく力士の少年よ...

大志を抱け!

明日はきっといい天気。


かっかっかっかっかっかっかっか!


(ナレーション・森之風九朗)


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「どすこい!西郷虎之助の七転八倒!」
~虎之助・相撲大会お漏らし事件~
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今日は愛媛県支部、中学相撲春場所選抜大会。

会場の広場には多くの人が集まっている...

勇ましい体に白い廻しをグッと締め込んだ、わんぱく少年力士たちはワイワイと会場内を行き来している...

土俵の周りは相撲協会の関係者やテレビ局の記者、応援席には保護者や観戦者で溢れかえっている...


もうじき深山中学相撲部と...
ライバルの強豪校である野村中学相撲部との対抗戦が始まろうとしていた..

試合前に選手達は土俵の東と西の位置につき5人が互いに並んだ...

しかし...

深山中学相撲部員には1人選手の姿が見えないそうな...

もうすぐ試合が始まってしまうというのに何処へ行ってしまったのか...

1人選手が足りない深山中学相撲部員と...
ライバルの野村中学相撲部員達は...
お互いに顔を見合わせる...





高橋正次郎
「あのアホ...
何処に行ってしもうたんや...」


宮本太
「おーい!
ケン坊、あいつ何処行ったかしらんか?」


森山健太郎(ケン坊)
「あぁ~・・・
虎助何やってんだよお~・・・」


柴田幸信(ユキラス)
「虎助おしっこだって!」


正次郎、太、ケン坊
「なぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃい!!」


ユキラス
「うん!もうガマンできないからってさっき便所に走って行ったよ~。」



「また小便かよ~・・・
今日これで何回目だよ~・・・」


ケン坊
「虎助のバカ...
今朝薬飲んでこなかったな...!」


正次郎
「あのアホウッ!!
会場の便所は1番離れの隅っこにあるけん時間掛かるんじゃい!!」


ユキラス
「どうする~?僕が連れてこようか?」


正次郎
「クッソがぁ~~~!!
よりによってあいつが先陣のトップバッターとはのう・・・!!」



「ぎひひひ!笑
もう漏らしてたりして~♪」


正次郎
「アホンダラッ!
馬鹿な冗談ぬかすなやっ!!」

「ボカッ!」


「痛ってぇ!何で拳骨食らわすんだよ!」


正次郎
「審判!もうちょい待ってもらえまへんやろか!先陣の奴がちょっと便所行ったまんま戻って来ぃへんのや!」


審判
「なっ...!なんだってぇっ...!?
困ったなぁ...!!
後の試合が控えているし...
時間の段取りが合わなくなる...
誰か急いで連れて来なさい...!」



「どーする?俺行こうかー!
でも....
あいつの事だからな...
万一の万一で失禁してたらどーする?」


正次郎
「あわわわわわわ・・・
もしそうなったら深山中学相撲部の恥さらしやぁ~~・・・・」


ユキラス
「ねえ...
野村中がなんかこっち睨んでるよ~?」


野村中の相撲部員
「おっせーんだよっ!
早くしろやぁっ!
ボト便の肥やし臭いど田舎深山中っ!!」


正次郎
「じゃかぁぁーしいわぁいっ!!
野村中だってど田舎の過疎化農村じゃろげえっ!!
おまえらの村は乙相撲が無かったらダムに沈んでたじゃろう!!
ガハハハハハ!!」



野村中の相撲部員
「な...!
なんだとぉ~・・・!!!
信号機に屋根付きのガソリンスタンドも無いようなクソ田舎人の深山中が偉そうな口ききやがって!!」



正次郎
「ガハハハハハハハハ!!
こっちにはレンタルビデオショップがあるんやぞ!
レンタルビデオショップ♪
ビデオやぞ!ビデオ!ビデ~オ~♪
ナウいじゃろげえっ!
おめえらビデオテープ知っとるか!?
ベータやぞベータ!
あ!お前らはビデオデッキすら持ってなかったな!
ガハハハハハハハハハハハ!!」


野村中学相撲部員
「あいつらぁ~~!!
野村中を舐めやがってぇ~~~!!
こっちはLDカラオケがあるんやぞ~♪
ナウいじゃろうげぇ~!」


正次郎
「え...えるでぃ~・・・やとぉ~・・?
な・・なんやそれ・・・!?
おい...宮...
えるでぃ~・・・ってなんぞや...コソコソ」



「正次郎ぉ~・・・
どっちも田舎なんやから張り合うなよ...」


審判
「選手同士言い争いはやめなさい!!
やめやければ今すぐ試合を中止します!!」


正次郎
「ぐ・・・!
ぐぬぬぬぬぬ・・・!!
す...すんまへん....
試合中止だけは堪忍しておくれやさいやぁ~・・・審判の旦那ぁ~♪」


審判
「深山中学の選手が5分以内に戻らなければ・・・
団体戦対抗の試合は深山中学の棄権放棄とみなし、よって野村中学を不戦勝とする!!」


正次郎
「ななな・・・!!!
なんやとぉ~~~!!!
ほがいアホな話ありまっかいな!!慌」


ユキラス
「あぁ~あ...
終わった...
帰ったらスーマリ3やろっと♪」

スーマリ
(スーパーマリオブラザーズ3の略)



「クソがぁっ!
冗談じゃないぜっ!
俺あのバカ連れてくらぁっ!!」


ケン坊
「いいや!!俺が行く!!
太より俺の方が足が速いから!!」

「ダッダッダッダッダッダッ!!」 


正次郎
「お...おいっ!
ケン坊っ!!」


ユキラス
「あぁ~・・あ・・・
行っちゃった・・・
別にいいのに~・・・」



「ちぇっ!
しゃ~ないや...
あいつに任せようぜ...
ケン坊の方があのバカの扱いに慣れているしよ...」


正次郎
「た・・・!
頼んだぞぉ~・・・!!
ケン坊ぉ~・・・!!」



5分以内に虎之助を連れ戻さなければ...
深山中学相撲部員の対抗戦は棄権放棄扱いになってしまうという...

まさかの予期せぬ展開に立ち上がった...
虎之助と一緒に暮らしている...
幼なじみの森山健太郎ことケン坊は...

果たして...
便所に行ったまんま帰って来ない虎之助を...
無事に連れ戻すことが出来るであろうか...



一方その頃...
会場から遙か離れた便所には...


ワイワイワイワイワイ...
ガヤガヤガヤガヤガヤ...


虎之助
「あぁ~~・・・・
何でこんなに便所が混んでるんだよぉ~~~~~~!!」


何と...
便所は家族連れのお父さんや子ども達、今日の相撲部春場所選抜大会に訪れた観客で不運にも大混雑していたのだ...



観客、家族連れ
「お父さんおしっこー!」

「はいはい待ってねー!

もうすぐシーシー出るからねー!」

「あぁ~!腹痛ぇ~!
早くしてくれやぁ~~!!」

「はぁ~さっぱりしたぁ~!」

「あぁ!!下痢が出そう!」

「まだ出ないのかよ~・・・
クソ~~・・・!」




虎之助
「どうしよぉ~~・・・
便所が混みすぎて順番までまだ時間が掛かりそう・・・
もう我慢の限界で漏らしそうだぁ~~~~・・・
試合ももうすぐ始まりちゃうから早く会場に戻らないとまた正次郎に怒鳴られる・・・・」


虎之助は...
容赦なく襲い掛かってくる激しい尿意に限界を覚えながらも足を交互にモジモジさせながら股間を押さえて便所の順番待ちをしていた...

が・・・

そこにケン坊が全速力で走って虎之助の元へと駆けつける...


ケン坊
「虎助のバカッ!
いつまでに帰って来ないつもりなんだよ!!」


虎之助
「何だよ!ケン坊!
しょうがないだろ!?
俺だって早く戻りたいよ!!
だけど便所がずっと混んでて空かないんだよ!…」


ケン坊
「いいか!虎助!!
よく聞けよ・・・!!
あと2分で虎助が会場に戻らないと・・・!
俺たち棄権放棄扱いで試合に出られなくなるんだよっ!!」


虎之助
「そ・・・!
そんな事いきなり言われたって知らないよおっ!!」


ケン坊
「話しているヒマはないんだ!!
早く会場に戻るぞ!走れっ!!」


ケン坊は股間を廻しの上から押さえている虎之助の腕を無理矢理掴み、会場へ向かって全速力で走り出した。


ケン坊
「急げ虎助!!走れ!!」

「ダッダッダッダッダッダッダッダッ!」


虎之助
「け・・・ケン坊待って・・・!
そ・・・
そんなに走ったら・・・!!
しょ・・小便が・・・!
で・・・出ちゃう・・・!!」


ケン坊
「我慢しろっ!!」


虎之助
「そ・・・
そんなの無理だぁ~~・・・・!!
小便が漏れるよぉ~~~・・・・!!」








その頃会場は...




審判
「あと20秒です!」


正次郎
「あぁ~・・・
もうアカン・・・」


太 
「しゃぁ~ない...
春場所はあきらめて秋場所でまた頑張ろうぜ...」


ユキラス
「早く帰ってスーマリ3やりたいなぁ~」


審判
「あと10秒!!」


野村中学相撲部員
「負っ戦勝♪はいっ!負っ戦勝♪
あらよっ!!」


審判
「7・6・5・4・・・
もうダメだな・・・」


正次郎
「ち・・・!!
チックショ~~~っ!!!」


観客
「あっ!戻って来たぞっ!!ガヤガヤ」


ケン坊
「おぉーーーーーいっ!!
待ってくれぇーーーーーーっ!!」


正次郎
「よっしゃああああああっ!!!
ギリギリセェーーーーーフッ!!!」


ケン坊
「し・・・審判っ・・・!
と・・・と・・・と・・・
虎助を連れて来ましたぁっ!!
こ・・・これで試合を・・・!
ハァッ...!ハァッ...!ハァッ...!」


審判
「ふぅ・・・
ちょうど0秒・・・
まぁ・・・いいだろう・・・」



正次郎
「このアホンダラッ!!
皆に迷惑ぎり掛けやがってぇっ!!」



「あっぶねーあっぶねー・・・
俺の足ならアウトだったな・・・
ケン坊お疲れサンキュー!!」


ユキラス
「あぁ~あ...
別に戻って来なくても良かったのに...
帰ってスーマリ3やりたかったなぁ...」


ケン坊
「ハァッ...ハァッ...ハァッ...
さぁ...虎助....
すぐ試合だからな...ハァ...ハァ...」



虎之助
「ハァッ...!ハァッ...!ハァッ....!
ま・・・待ってよ・・・ハァハァ...
お...俺...ハァハァ....
まだ....便所で小便してないんだよぉ...」



審判
「西郷虎之助くん・・・」


虎之助
「ハァ...ハァ...
も・・・もうダメ・・・
しょ...小便が出る...我慢出来ない・・・
ハァ..ハァ...」


審判
「西郷虎之助君っ!!!」


虎之助
「は・・・
はひっ・・・・!ビクッ!」


虎之助が息をきらしていたその時...

突然審判から怒号のよう呼びつけられ、思わずビビる虎之助...


審判
「君一人のために皆が迷惑してるんだ!
早く5人整列して!!」


ケン坊
「虎助早く並べ...
こっちだよ...」



「やれやれ怒られた...」


正次郎
「先陣はお前なんじゃ!
しっかりせいアホウッ!」


ユキラス 
「審判怖いなぁ...」


虎之助
「だ・・・
だって・・・
まだ小便が・・・」


審判
「えー!皆様!
大変長らくお待たせしました!
これより・・・・!
深山中学相撲部対野村中学相撲部の団体戦による対抗試合を行います!!」
 
観客
「わぁーー!!キャーキャー!!
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!」


審判
「選手並んでぇー!!」


野村中学相撲部員・深山中学相撲部員
「はいっ!!!」


審判
「礼っ!!」


野村中学相撲部員・深山中学相撲部員
「お願いしまぁーーーすっ!!!」



審判
「東!
野村中学・廣田貴司(たかし)!!」


廣田貴司
「はいっ!!!」


野村中学相撲部員
ひろたぁーー!!
きばっていけーっ!!」


審判
「西!!
深山中学・西郷虎之助!!」


虎之助
「・・・・・」


審判
「西郷虎之助ぇっ!!
早く土俵に上がってぇっ!!」


虎之助
「え・・・・
だって・・・」


正次郎
「アホかいやっ!!
サッサと返事せんかいっ!!」


ケン坊
「虎助何やってんだよ・・・!
早く返事して土俵に上がれよ・・・!」


太 
「何だよお前...
さっきから泣きそうなツラして...

まっ!まさかっ!!お前っ!!」


虎之助
「だって俺・・・
本当に小便が漏れそうなんだけど・・・」



「さっき便所で済まして来たんじゃないのかよっ!?」

 
虎之助
「まだ...
小便してない...
俺...便所で順番待ってたのに...
ケン坊が急に走ってきて無理矢理連れて来られたから結局行けなかったんだ...」


太 
「な...なんだと~!?
おいっ!
この試合ダメだぁっ!
中止にしないとっ!!」


審判
「西郷君っ!! 
いい加減にしないかっ!!
早く土俵に上がれっ!!」


痺れを切らした審判は...
ついに虎之助の腕を怒り任せに掴み...
土俵内へ上げてきた...


審判
「白線の前に立って!!」


虎之助
「あ・・・あの・・・
そ・・・その・・・」


ついに尿意が我慢の限界を超えた虎之助...
審判の顔を涙目で訴えるかのように見つめるものの、その本心には気づいてはもらえなかった...


審判
「礼っ!!」


虎之助
「う・・・うぅ~・・・
うぇぇ~・・・ぇぇえん・・・!」


野村中学相撲部員
「おいっ!なんかあいつ・・・
赤い顔して泣いてるぞー!!
ギャハハハッ!変なやつー!!」


審判
「西郷君!!
試合前だというのに...
何メソメソ泣いてないるんだ!!
早く礼してっ!礼っ!!」


虎之助
「あ・・・あ・・・あぁ・・・」


虎之助は...
審判に怒鳴られながらしょうがなく...
礼をした...




もうダメだ...

あと1分も我慢できない...

今から便所に走っても間に合わない...

僕はまた大勢の前で...
とんでもない大失態を晒してしまうのか...

こんな相撲大会の晴れ舞台に...

廻しを締めたまま...

う...ぐしっ...ぐしっ...!

これから起こる悲劇の幕開けが現実となってしまう...

そう思った僕は...
礼をしたまま泣いていた...

僕の目から溢れた涙は... 
頬から鼻の頭を伝い...
一滴が土俵の白線の上にポツン...と落ちていった...



「ケン坊...
これマズいぞ....!
あいつまだ便所で小便済ませてきてないってよ!!」


ケン坊
「1試合だけ・・・!
負けてもいいから1試合だけの辛抱だ…
我慢しろ虎助!!」



正次郎
「虎之助ぇぇーーーっ!!
野村中のアホどもに負けるなよぉー!!
おもいっきり頭ぶちかましてやれいっ!」



審判
「両者構えてっ!!!」



虎之助
「う・・ぐっ!・・あ・・ぐうっ・・・!
ハァッ・・・ハァッ・・・・!!」


一瞬だけ気を緩めてしまった股間に力をグッ...!っと入れたのだが...!!

廻しの前袋の中で陰茎の先からおしっこが尿道から水鉄砲のようにジュバッ!...と漏れ出してしまった!!


「あっ・・・!!」




その状態で...
体を震わせながら...
どうにか頑張って構える姿勢をとるために足を開いたその時...




再び前袋内の陰茎から水鉄砲のような放尿がまたジュバッ!っと2度3度・・・
どうにか膀胱に力を入れる・・・

しかしダメだ・・

もっと溢れ出して・・・

溢れ・・・



ジィィィィィィィィワァァァァァァァァァァーーーーーーーー・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・



僕はとうとう...
尿意の限界を迎えてしまった...

構えの姿勢をとるために....
足を大きく開いて...

腰を深く下ろして...

土俵の白線の前に左手をついたその時でした...
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ポト.....

ポト...ポト....

ポト...ポトポトポト....


僕の開いた両足の真ん中に...
雫が土俵の土へと滴り落ち....

だんだんと廻しの前袋内がジワジワジワ~と暖かくなっていく...

もう...
下腹部をグッ...!と膀胱に力を入れても尿道を通るおしっこが止まらない...

だんだんと視界は涙でボンヤリと霞みだし...
体はさらに激しくブルブルと震わせながら...



「も...もうダメだ...!!
これ以上我慢できない...!!」


プツ・・・っと...

緊張の糸が切れる...

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僕はここであきらめてしまい...

下腹部に力を入れるのをやめた...


その瞬間...
廻しの前袋からは盛大に...!!
「ジュバァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーー・・・!!!!!!」
と我慢していたおしっこが溢れ出す音が鳴りだした...

そして...
「ビチャ!ビチャビチャ・・・!!
ボタタタタタタタタタタタッ・・・!!」

廻しから溢れ出した大量のおしっこは...
容赦なく勢いをつけて土俵に滴り落ちていく...
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審判もようやく僕の異変に気づいたようでマイクを土俵に投げ捨て...
僕に警告するかのように...
耳元で何か叫びながら伝えている...

ショックで放心状態だった僕は...
あまりハッキリとは覚えてはいない...

でも...

「あぁ~~あ・・・!
中学生にもなってこんなこと....!!」

....と言っていたような気がする...

そして...
僕の正面で構えていた...
廣田貴司君は...

あまりにも突然な大失態に...
呆気にとられた表情をしていました...

それから審判が慌てて僕を後ろから両脇を抱えて立ち上がらせると...

下腹部への意識はとうに脱力していた僕は...

膀胱いっぱいに我慢していた大量のおしっこを全て漏らしてしまいました...

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「ジュジョォォォォォォォーーー!!!
ビジャァァァァァァーーーー!!!」

廻しの前袋からおしっこが更に勢い増して盛大に溢れ出し...

「ボタボタボタボタボタボタ!!!
ジュワジョッオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーー・・・・!!!」

・・・と・・・
周囲にも隠しきれない程に溢れ出す激しい失禁音...

ずっと我慢していた大量のおしっこは...
まるで滝のような勢いで股間から太股を伝いながら足元へと流れ落ちて止まらない...

僕が立っている足元周りには...
じわじわじわぁぁ~~・・・っと・・
生暖かいおしっこが瞬く間に水たまりとなって広範囲に広がってゆく...

そして廻しの雲材帆木綿の生地から染み出したおしっこの匂いはまた独特で...

鼻を突くようなしょっぱい香りとなって辺りに広がってゆく・・・



とうとうやってしまった・・・
恥ずかしいなんてものではない・・・



僕は悔しさに顔を真っ赤にして...
歯で唇をギユッ...!と噛み締めながら... ショックで呆然と立ち尽くす事しか出来なかった...

うつむいて...
その様子をぼんやりと涙目で見つめながら羞恥心と無念と屈辱と敗北感だけが心身に深く刻まれてゆく...

本当に自分が情けない... 
だけどどうしてもおしっこが我慢できなかったんだ...

相撲大会でお漏らしをしてしまった中学生の相撲部員なんて聞いた事がない...
こんな大勢の人が見ている土俵の真ん中で...





春先の...
まだ寒い4月の風が吹いている相撲競技場...

廻しを締めたまま我慢できずに漏らしてしまった大量の小便が...
皮肉にもこんなに暖かいなんて知らなかった...
次第に僕の足元からはゆらゆらと白い湯気が立ち篭める...




晴れ舞台のはずだった相撲大会...
短く刈り上げた男らしい坊主頭...
厳しい稽古で日々鍛え上げた逞しい体に...
グイッと勇ましく締め込んだ廻し一丁の相撲部男児は...


残念な事に...
おろしたての新しい白い稽古廻しも...
大量の尿失禁で濡らしてしまい...
恥ずかしながらも股間部の前袋はグッショリと黄金色に染まっている...


僕は無様にも足元へと溜まってゆく尿失禁の湖を見ながら...

まるで幼稚園児のように...
声を上げて泣きじゃくっていました...。




つづく...

どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

ウィーーー・・・ン・・・

テレレ...♪テレレ...♪テレレ...♪

古びた自動ドアが開き、来客を察知して単調な効果音が3回繰り返して鳴る...


「おや...いらっしゃい...」


お店の入り口付近にあるレジの番台で...
退屈そうにテレビを見ている店主らしきおじさんがこちらを見てそう言った...


「皆の衆や..
.一年振りじゃのう...」

「かっかっかっかっかっかっか!」


わしの名前は...

ナイトショップ「ふくろう」の店主。

「森之風九朗」じゃ...

皆はちゃんと覚えておったか?

昨年の始めに登場したからわかるよのう?

2つ前の記事じゃから嫌でもわかるわな!

かっかっかっかっかっかっか!


先ずは...新年の御挨拶じゃ...

皆様、新年あけましておめでとう御座います、本年も宜しくお願い致します。

...と言っても、このブログも...
わしの店もこの通り閑古鳥じゃ!

かっかっかっかっかっかっか!


さて、昨年は「おやちゃいぼうず」のうり坊が来てくれたが、今年は見えんのう...

実はのう...
今、虎之助は今必死で年始めの記事に投稿さるイラストを描いてるそうじゃが、正月の三が日まで間に合いそうにないんで、急遽別の年始め用の記事を書く事になったそうじゃ...


さて...
今回はどんなお話になるとやら...

早速本題に入るとするかのう...

かっかっかっかっかっかっか!



「どすこい!西郷虎之助の七転八倒!」

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2022年 1月1日

紅白歌合戦が終わって...
ゆく年くる年が始まってしばらくすると...

僕は毎年のように分厚い新聞を配る...

寒波の中、白い息をあげながら...
丁重に新聞を折り曲げ...
各々のお宅にあるポストや新聞袋へと配って行く...

今年で丁度20回目となる...

僕は人生の半分近くも...
新聞を配って来たんだなぁ...

冷たい風を受けながら...
今年で4年目となる...
ポンコツ丸3号」と共に住宅地や田畑を周る...

除夜の鐘を突く音が鳴っていた...

ほのかに護摩たきの香り...
片手薬師のかな...

新聞販売店から3回分けでようやく全ての新聞を配り終わる...
今年も雨が降ることなく無事に終えた...

この20年間...
元旦に雨が降られた経験は一度もない...

ジャージのポケットに潜らせといた100円玉を...
冷くなった手で取り出し...
100円均一の自動販売機で、ホットココアを買った...

取り出し口から出すと...
僕はココアの缶を両手で握りしめ...
冷たい頬に当てたりして暖をとる...

すぐに飲まずに、お腹のところに入れて...
ポンコツ丸に乗ってそのまま帰る...


...はずだったが....

僕は急遽公民館へと向かい...
広場にポンコツ丸を停める...

そしてジャンパーを脱ぎ...

足を広げ...腰を深く落ろすと...

右足を上げ...

ドスンッ!と力強く下ろす...

今後は左足を上げて...

ドスンッ!と...また力強く下ろす...:

僕は四股踏みを始めたのだ...

20回程繰り返すと...
寒かった体が...
ぽかぽかと暖かくなり...
額から汗が流れ始める...

四股を100回踏み終えると...

今後は摺り足を繰り返し...
繰り返し行った...

どうしてこんなことを始めたのかというと....ね....




「深山町公民館相撲稽古道場」


高橋正次朗(以下正次朗)
「えーー・・・
深山中学相撲部OB会・及び深山町相撲連盟の会長を代表致しまして...
新年の御挨拶を....

深山町の相撲連盟の皆様、深山中学相撲部OBの方々、現役中学相撲部のみんな、わんぱくちびっ子力士のみんな、いつも応援してくれている諸君!!

新年あけまして...
おめでとうございます!!!」


他の皆
「おめでとうございます!!!」


正次朗
「昨年、一昨年と、コロナウィルスの影響で、深山町の相撲行事、県大会、全国大会、青年部春の選抜戦、秋の奉納相撲の、全てが中止となり、相撲栄える深山町として、誠に残念な年となってしまいました、しかし....
深山町では、これまでのコロナ感染者はゼロ人でした、それが実り、ようやく今年2022年より、全ての相撲行事が実行される事が叶いました....!!」


拍手喝采
「パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!」


正次朗
「2022年元旦、本日こうして深山町の相撲連盟やOB会の方々、現役中学相撲部員、わんぱくちびっ子力士たちと初土俵に集まって頂いた事、誠に喜ばしく思います!」


正次朗
「本年は深山町の相撲の繁栄を願いまして....先ずは...
一本締めーーーーーー!!!」


正次朗
「いよぉぉぉぉぉぉぉーーーー!」

全員
「パァンッ!!!」

正次朗
「みんな頑張れよぉぉおおお!!」

全員
「パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!」


正次朗
「さて!深山町相撲関係者の皆様...
久しぶりだとは思いますが...
本日は懐かしい男を連れてきましたので紹介致します!!
.

私の古き同級生の仲間...
西郷虎之助でごさまいます!」


正次朗
「さぁ虎之助ぇ!こっち来いやぁ!!」


西郷虎之助(以下虎之助)
「え・えぇぇぇ・・・・!!!」


正次朗
「早よ前に来んかいや!!虎之助ぇ!」


虎之助
「い・・・いいよぉ・・・」


正次朗
「しばらく皆と顔合わせんかったんやから早よ来て御挨拶しろや!!」


虎之助
「いいってば・・・
なんでこっちに振るんだよ・・・」


正次朗
「何をオカマみたいにもじもじしとんや早よ来い!この野郎!やっと元旦の初土俵に顔だして来おったからな!!」




正次朗は嬉しそうに嫌がる僕の手首をギッュ!と強く掴んで前に連れて行った...



正次朗
「さぁ虎之助ぇ!皆様に御挨拶じゃ!
ほれ!しばらく振りじゃろうが!
コラッ!ちゃんと前向け!!」


虎之助
「う・・・うぅ・・・」


高橋恵(正次朗の奥さん)
「虎くぅ~~~ん♪
頑張って~~~~~~♪」


虎之助
「あ・・・あ・・・・
あ・・・あの・・・そ・・・
そ・・・その・・・・・」


相撲連盟の人々
「虎之助って、西さん家の息子かいや」

「はじめさんとこの息子や、ほれ農家の」

「はじめさんは奉納相撲で横綱になった人や、気難しい人じゃけんあまり皆とは話さんけどのう...」

「親父さんは誠はんやったわいなぁ...」


深山町の古い相撲連盟の御老人方々が僕の噂をヒソヒソしだす...
さらに....


深山中学相撲部OBの連中

「虎之助ー!大丈夫か~??
ちゃんと小便行ったか~~??」

「またおしっこ漏らすんじゃないか~?
ギャハハハハハ...」

「思い出さすなよ...!笑っちまうだろ!」

「ほら、あいつだよ...
入学式の時...やらかした奴だよ...!」

「あいつ大会の閉会式でもやらかしたんだぜ...!」

「親父さんと相撲連盟の前会長さんに怒られてわんわん泣いてたよなぁ!!笑」

「見ろよ...
顔が半べそになってるぜ...
あいつ今漏らしてるんじゃないのか?」


これだから相撲部OBの連中と顔をあわすのが嫌なんだ...
僕をみる度に過去の失態を掘り返して笑い話す奴ら...

大体僕の噂をするOBの連中は深山町から出ていない田舎の人間、都内に就職して1週間で逃げ帰って来た奴だっている、結局深山町でしかデカい顔出来ないから地元に戻ってきたんじゃないか...

そんな情けない奴らに...
何で僕が笑われないといけないんだ...


僕は顔を赤らめて何も言えないでいると...



柴田幸信(以下ユキラス)
「みんな静かにしないか!
今虎助が話そうとしてるんだから!」


僕は突然その声にハッ...とした...

後ろの方で腕を組みながら...
がっしり太い体格の親父が厳しい表情で僕の方を見ている...
泥に汚れた稽古廻しを逞しい体にしっかり締め込んで...

その姿は以前の甘ったれボンボンだった頃とは違い、結婚して父親となったかつての同級生...

ユキラスだった...

ユキラスは5年前に...
深山町に引っ越してきた市原海斗くんの母親である市原美智子さんと結婚した。

ユキラスは美智子さんを大切にし、海斗くんを実の息子のように愛情を注ぎ、強く厳しく逞しく育てた。

深山町ちびっ子相撲クラブに入った頃は...まだ小学5年生だった海斗くんも今では高校生になり...
小さかった体も、今ではユキラスの身長を抜いて175cm体重は95kgと大きな体に成長した、深山中学相撲部ではキャプテンを務めた。

そして...
昨年ユキラスと美智子さんの間に...
可愛らしい男の子が誕生した...

名前は「柴田孝太郎」

(正次朗が金太郎と提案したが却下された)


僕の知らないうちに...
ユキラスはすっかり親父の顔になっていた...


そんなユキラスと僕は...
些細な言い争いから大喧嘩をして絶縁状態が続いている...

それは3年前、父に酒米工場の手伝いを1日頼まれた時...
父が乗ったフォークリフトの爪先に吊り下げた米袋が落下して腕が下敷きになり、大怪我を負って入院していた時だった...

お見舞いに来たユキラスが言った一言に腹を立ててしまい、僕はユキラスに言ってはいけない事を言い放ってしまったのだ...

病院で大喧嘩をして、僕とユキラスは正次朗にもぶん殴られ、それから「お前とはもう絶交だ!」
泣きながら病室のドアをバンッ!と開けて走り去ってから...
今日まで僕とユキラスは一度も口を交わす所か合っていなかった...

それから腕の具合も奇跡的に回復して、今日こうして十数年振りに元旦の初土俵に顔を出したのは...

ユキラスと仲直りするためだったんだ...

昨年の12月28日の夜、正次朗に電話で僕の思いを全て話した...

すると正次朗は..:


正次朗
「よっしゃ!わかった!
虎之助の気持ちはよう分かった...
わしが協力しちゃるけえ、新聞配り終えたら深山町に帰って来い!
そしてお前も深山中学相撲部の一員なんやから、今年は元旦の初土俵が久しぶりに行われるさけぇ!
堂々と参加して!ちゃんと皆にも挨拶せえよ!ええな!」


虎之助
「うん...
わかった...
今年は参加する...」


正次朗
「なんや~!
弱気やなぁ~・・・!?」


虎之助
「あの...さぁ...」


正次朗
「あぁ~ん...?」


虎之助
「ユキラスさぁ...
まだ怒ってる...?」


正次朗
「さぁ~のぅ...
あいつも昨年チビが生まれたけん...
それであれこれ忙しそうやぞ~」


虎之助
「ほ...ほうなんかぁ...
とうとう...あいつも...
本物の父親になったんだなぁ...」


正次朗
「お前一人だけやぞ!
独身は・・・!」


虎之助
「もういいって...
結婚の話は...しないでよ...」


正次朗
「ほじゃけんお前は曽我部と結婚しとったら良かったんじゃ...
そうすれば今頃チビの一人や二人ぐらいこさえて幸せに暮らせとったのにのう~・・・」


虎之助
「もう遅いし切るよ...
明日も朝早いから...」


正次朗
「また逃げやがって...」


虎之助
「だって....」


正次朗
「だってじゃないわい!あほう!」


虎之助
「じゃあ切るよ...」


正次朗
「廻し忘れんなよ!
ちゃんとあるんか!?
無いんなら道場の汚いやつになるけど貸し出し用のやつ準備しておくぞ!」


虎之助
「九桜3号買った...」


正次朗
「おろしたては硬いけん...
わしが締めるの手伝ってやらい!」


虎之助
「うん...
ありがとう...」


正次朗
「大丈夫じゃけんのう!
心配すなや!
絶対にユキラスと仲直り出来るさけぇのう!!」

虎之助
「うん...」


正次朗
「じゃあの!
気いつけて来いよ!」


虎之助
「あ...うん...」


正次朗
「おう!おやすみ!
わしから切るからな!」


虎之助
「うん...
おやすみ...」


「ピッ...♪」


通話はとうに3時間は過ぎていた...

僕はスマホの通話画面から待ち受け画面に切り替え、しばらくジッ...と眺めながら...

2個の目覚まし時計の針がサクッ...サクッ...サクッ...と...
暗い部屋で刻み鳴っている音だけが聞こえた...






正次朗
「ほれ、虎之助ぇ!
ユキラスもちゃんと聞いとるぞ!
お前の思っている事を今ここで吐き出せ!!」



僕は今、十数年振りに...
この深山町公民館相撲稽古道場で...

裸の体に真新しい廻しを締め込み...
相撲連盟、深山中学相撲部OB、深山中学現役相撲部、深山町わんぱくちびっ子ちびっ子力士、保護者や関係者の皆の前に立っている...

今言わなくちゃ...
ここで逃げたら...


みんながこっちを見ている中...
腕を組んで厳しい表情のユキラスと目が合った...


虎之助
「ぼ..
.僕は...」


震える体に...
真っ赤になった半べそ顔で...
僕は唇をグッと仁王像のように瞑ると...

静かに口を開き...

僕の思いを打ち明けた...


「続く」


西郷虎之助2022年
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新春!虎之助スペシャル!!「丑年の年賀状」

おやおや...?

いらっしゃい...

寒いのによう~来てくれましたのう...


え~・・・先ずは
年が明けたという事でご挨拶を・・・

当ブログへお越しの皆様...

「新年あけましておめでとうございます」

本年も御贔屓願います...


・・・と

挨拶をしたのは良いのじゃが・・・

肝心の管理人がおらんのだわな~・・

ん・・・・?

わしが誰かって・・・?

かっかっかっかっか!

わしはのう~・・・

ナイトショップ「ふくろう」の店主

「森ノ風九朗」じゃ...

皆の衆よ・・・

久しぶりじゃのう!!

この通り、わしはピンピンしとるぞい!

かっかっかっかっか!

まぁ...
わしなんてのう~・・・
元気なだけが取り柄の太ったオヤジじゃよ・・・

・・・・ん!?

知らんとや・・・・!?

はぁ~~~~~~・・・・

なんとも寂しいもんじゃのう~・・・

Yahoo!ブログ時代はレギュラー出演していたわしを知らんとは・・・

このブログの読者層も...
すっかり変わってしもうたんじゃのう~・・・

無理もないわな~・・・

ブログをYahoo!からはてなに移籍してからは・・・
すっかり更新が途絶えてしもうとるんやからのう~~・・・

今日もこの通りもぬけの殻の閑古鳥じゃ・・・

ほんにどうしたものかのう・・・

はぁ~・・・



・・・と
森ノ風九朗が小さく溜息をついた時でした・・・


おじさん・・・!!
ふくろうのおじさん!


自分の名を呼ぶ子どもの声が・・・!


風九朗
「おやおや・・・!
その声は・・・
うり坊じゃな・・・!」


うり坊
「うんっ!おいら、おやちゃいぼうずのうり坊だい!」


風九朗
「はて、うり坊や・・・
姿が見えぬが・・・
どこにいるのじゃ・・・!」


うり坊
「おじさん!あのね!
おいらたち、おやちゃいぼうずの絵を描いてもらえないから姿が出せないんだいっ!」


風九朗
「おやおや・・・
そういう事じゃったのか~・・・
かわいそうに・・・」


うり坊
「あのね、これからみんなに...
おやちゃい村に来てもらいたいんだ・・・!」


風九朗
「ありゃりゃ・・・
わしの出番はもう終わりかや・・・
せっかく久しぶりに出演出来たというのに・・・」


うり坊
「おじさんごめんなさい・・・
でも...おいら...どうしても絵を描いてもらいたいんだ...」


風九朗
「かっかっかっかっか!
なぁ~・・んにも気にせんでかまわんよ・・・!
じゃがのう~・・・
うり坊や・・・
先ずはみなさんに新年のごあいさつじゃよ...」


うり坊
「うんっ!!みんな!あけてまし、おでめとうごまいざすっ!!」


風九朗
「・・・・・・・・・。

うむっ...まぁ...よかろう...
ではうり坊や...
行っておいで~・・・」


うり坊
「うんっ!
おじさん!じゃあねー!!」


風九朗
「さてと...
わしもそろそろ店を開ける準備をするかのう~~・・・
初売りじゃ!
お客なんて1人も来やせんがのう!
かっかっかっかっかっかっかっか♪」


うり坊はおやちゃい村へ行き...
ナイトショップ「ふくろう」の店主
森ノ風九朗は重いお尻を上げ...
初売りの準備に取りかかった...












「おやちゃいぼうず」







おやちゃい村の「安養寺」

このお寺には...
独り身の和尚様と、虎丸という村の力士が...
ひっそり2人で暮らしておったとさ...


戦の最中に親を失い...
まだ子どもだった虎丸を和尚は引き取り、寺の坊主にしようと大事に育てた・・・
しかし・・・
虎丸はたいそうなわんぱく小僧で和尚の手にはとても負えず...

しかし力だけは村のどの男達よりも強く...
おやちゃい村の豊作を願う愛宕山奉納相撲では見事横綱になり力士となる。

さらに畑の作物を運ぶ力人としても活躍してくれるので、和尚は虎丸を寺の坊主にするのは諦めたそうな・・・


さて...
安養寺の和尚と虎丸の元へ帰ってきたうり坊は・・・



うり坊
「おしょうしゃま~~!
おしょうしゃま~~~!!」


和尚
「おや...?
うり坊や...
おかえり、今日はどこまで遊びに行っておったのじゃ?」


境内の鐘をついていた和尚が...
にっこりと福々しい笑みを浮かべながら...
うり坊にやさしく問いかけた...


うり坊
「あのね!
ふくろうおじさんのとこに行ってたんだ!!」


和尚
「ふくろういおじさん・・・?
はて・・・変わった名の者じゃのう・・・
村の者では無さそうじゃが...
あまり見知らぬ者と関わると...
危ない目に遭うかもしれぬ・・・
うり坊主や...
今度からは気をつけるのじゃぞ...?」


うり坊主
(あ・・・そうだ・・・!
おしょうしゃまは、ふくろうのおじさん知らないんだ・・・!)
「お・・・!
おしょうしゃま!!
と・・・虎丸は~~?」


和尚
「虎丸ならまだ畑の収穫から戻って来ておらんが・・・
まぁ...
そろそろ帰って来る頃じゃろう...」



・・・と和尚がそう言った時じゃった・・・



虎丸
「おーーーーーーーい!
和尚ーーーーっ!
今帰ったぞーーーーー!!」


米俵と野菜などの作物を両肩に抱えた大きな体の虎丸が山門を潜り...
のっし...のっし...と境内をがに股で歩いて来た...


和尚
「虎丸や...
おかえり、今日も畑の収穫ご苦労じゃった...」


虎丸
「今日は百姓から米俵1俵、野菜は大根、人参、ゴボウ、獅子唐辛子もろうたわい!がっはっはっは!」


和尚
「ありがたや...
天地の恵み、万民の労苦に感謝し...
ありがたく頂きます...南無南無...」


虎丸
「はぁ~~~・・・あ・・・
わしはもうクタクタじゃ~・・・..
和尚、米俵と野菜はわしが倉に運んどくからのう...
すぐ風呂の火焚いておいてくれ...」 


和尚
「風呂ならもう火ぃ焚いて熱まっとるよ、うり坊と一緒にお入り...」


うり坊
「虎丸!おかえり!!」


虎丸
「なんじゃ、ちび助!
そこにおったんかいや....
わし気づかず踏みつぶすとこじゃったわい。」


うり坊
「おいら...!ちび助じゃないもんっ!
うり坊っていうんだいっ!!」

虎丸
「ちびじゃからちび助でいいんじゃ!ちび助!ほれ、風呂はいるぞ!!」


うり坊
「虎丸のいじわるっ!!
おいら...虎丸大好きだけど...
ちび助ってバカにするから大きらい!!」


虎丸
「がっはっはっはっはっは!!
大好き言うたり、大きらい言うたりお前はようわからんやっちゃのう~
やいっ!ちび助!お前はちび助がお似合いじゃ!」


うり坊
「うわぁぁ~~~~~~~~~・・・ぁあんあんあんあん!!!
またちび助ってバカにする~~~~~!!
虎丸のいじわる~~~~!!」


虎丸
「ああぁぁ~~~・・・あ・・・
またちび助が泣き出した~~・・・
うるさいのぅ~~~~・・・
もう~・・・」


虎丸に「ちび助」とバカにされ...
とうとううり坊が泣き出してしまいました・・・

すると・・・



「ポカッ!」



虎丸
「いてっ!!」


和尚
「このバカもんっ!!
うり坊は仏様の申し子じゃぞ!!
いじわるすると仏様のバチが下るぞ!!」


虎丸 
「お・・・
和尚ぉ~~・・・・
またわしに拳骨かまして・・・」


和尚 
「ちゃんとうり坊に謝るのじゃっ!!」


虎丸 
「あぁぁ~~ぁぁ~~ぁぁ・・・
めんどうじゃのう~~・・・」


うり坊
「うぇぇ~~~・・ぇぇ・・・ん!
ひっく!ひっく・・・!」


虎丸 
「・・・・・・・・・・・。
す・・・すまん・・・
悪かったわい・・・
謝るからのう~・・・
ほじゃからもう泣くなや・・・
ちび助よぉ~・・・」


うり坊
「また、ちび助って言った!!
虎丸のバカッ!
おいらもう・・・
もう・・・」


・・・・と
うり坊が泣きながら虎丸にそう言った時じゃった・・・



フワッ・・・・
・・・・と


突然うり坊が消えてしまったとさ・・・

 


虎丸
「わわわっ!!!
ちび助が消えてしもうたぞっ!!」


和尚
「な・・・なんとまぁ~・・・」



風の吹かれた笹の葉と共に消えてしまったうり坊に驚く和尚と虎丸・・・



虎丸
「お・・・おい・・・
ちび助・・・・
どこに行ってしもうたんじゃ・・・」


和尚
「・・・・・・・・
仏様がうり坊を連れ戻してしもうたんじゃろう・・・
虎丸がうり坊にいじわるするから・・・」


虎丸
「そ・・・そん・・・な・・・
わ・・・わし・・・・
そんなのイヤじゃ・・・」


虎丸の目からは大粒の涙がボロボロとあふれ出す・・・


和尚
「バカもん・・・
今さら泣いてもうり坊は帰ってこん・・・」


虎丸
「お・・・和尚・・・
ど・・・どうにかしてくれ・・・
本堂でお経唱えたらまたうり坊が帰ってくるかもしれん・・・
なぁ・・・ 
グスッ・・・グシッ・・・
う・・・うぅ~~・・・
和尚・・・たのまいや・・・」



和尚
「うり坊はのう・・・
戦で無くなった子どもの魂を畑の作物に与えた座敷わらしじゃ・・・
いくらわしが本堂でお経を唱えても・・・
うり坊は2度と現世には現れまい・・・」


虎丸
「いやじゃ・・・
いやじゃあぁぁ~~~・・・!」


虎丸は大粒の涙と鼻水を垂らしながら和尚の肩につかまり震えながら訴えた・・・


和尚
「・・・・・・・
虎丸や・・・
どうして素直になれなんだ・・・
本当はうり坊が好きでたまらんのじゃろう・・・?」


虎丸
「・・・・・・・
だって・・・だって・・・
ちび助が・・・いっつもわしに付いてくるのが可愛くてしょうがないから・・・
つい...
いじわるしてしまったんじゃ・・・・」



和尚
「素直に可愛がってあげたなら...
一緒に過ごせたのにのう~・・・
わしもうり坊が来てくれてから本当に心温まる毎日を過ごせて幸せじゃった・・・
仏様に毎日お経で感謝をお唱えしたのじゃ・・・」


虎丸
「わ・・・わし・・・!!
探してくるっ・・・・!!」


虎丸は泣きながら...
うり坊を探しに行こうとするが...


和尚
「かぁぁーーーーーーつ!!(喝)」


虎丸
「うひっ!」ビクッ・・・!!


和尚
「虎丸や・・・
探しても無駄じゃ・・・
もう現世にうり坊はおらん・・・
あきらめるのじゃ・・・」


虎丸
「い・・・
い・・・・
いやじゃ・・・・
いやじゃ・・・・
そんなのイヤじゃああぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああっっ!!!」



日はすっかり西に沈み...

まっかな夕焼け空のなか...

カラスと虎丸の泣き声が...

暗くなりゆくおやちゃい村の山々に
大きく響き渡りましたとさ・・・






うり坊は...
どこへ行ってしまったのでしょう...




あたたかい風が吹いている...
広い大草原の草たちがサラサラと波のように揺らめくなか・・・.

うり坊の姿がありました・・・


おや・・・?
うり坊だけではないようです・・・

ここはどこなのでしょう・・・










「チャイルドホーム」







ねぇ...

君は知ってるかい...?

遙か遠い星の彼方に・・・

動物たちが仲良く暮らす惑星があるんだ・・・


そう...

ここは...
アニマルプラネット...




ようこそ...

「アニマルランド」へ...





広い広い大草原のまんなかに...

親のいない子どもたちが仲良く暮らしている...
 
赤いとんがり帽子が目じるしの...
孤児院施設の修道院...

「チャイルドホーム」がありました...


このとんがり帽子の...
チャイルドホームで...

子どもたちがどんな暮らしをしているのでしょうか...

みんなでちょっぴりのぞいてみましょう...














「ただいまーー!!」

玄関から元気な男の子の声が聞こえて来ました...


この子はだれなのでしょう...?



けんと
「ただいまーーーーー!!
ああ~~!消防士さんごっこ楽しかったなぁ~!!」



けんとくん
5歳の元気なタヌキの男の子です。



ひとみお姉ちゃん
「けんちゃんお帰りなさ~・・・
ああーー・・・!!
けんちゃんまたどろんこだらけになってー!!」


けんと
「えへへ♪
消防士さんごっこしてたらころんじゃった♪
ひとみお姉ちゃん、おやつは~?」



ひとみお姉ちゃん
「こら!けんちゃん。
どろんこだらけじゃダメだぞ!
おやつはお風呂にはいってから!」



けんと
「えぇ~~・・・!
はやくおやつ食べたいよ~~~!」



ひとみお姉ちゃん
「今日のおやつはね!
ヨーグルトゼリーにお星さまのクッキーだよ!
お風呂はいらないとあげな~い!」



けんと
「わあっ!
ヨーグルトゼリーに、お星さまのクッキー!?
おいしそう!!」


ひとみお姉ちゃん
「はやくお風呂にはいらないと・・・
みんなが食べて無くなっちゃうぞ~~~・・・?」


けんと
「わっ!わっ!わっ!
やだやだやだぁ~~~~!!
ぼく、お風呂はいってくる~~!」


ひとみお姉ちゃん
「よろしい!
タオル用意してるからね~~!」


けんと
「はぁ~~~~・・・い!
ちゃんとぼくのぶんのおやつとっといてね~~~!!」


ひとみお姉ちゃん
「はいはい♪
うふふ・・・
けんちゃんったらわんぱく坊主なんだから・・・」


エプロンをしてるのは...
ミケ猫のひとみお姉ちゃんです... 

小学6年生でみんなの中で1番年長さんの12歳。

お菓子やお料理を作るのが大好きな女の子、みんなの頼れるお姉さんです。



「ただいまー」


またまた男の子が帰ってきました。



ぽん太
「ただいまー
ひとみお姉ちゃん、おやつー!」



ひとみお姉ちゃん
「あら!ぽんちゃんおかえり!
今日ははやかったじゃない!」



ぽん太
「だってー・・・
けんちゃんと、ほのぼの湖で遊ぼうと思ったのにさ、消防士さんごっこがいいって、幼稚園のお友だちん家へ行っちゃったんだもん、ぼくひとりじゃあつまんないや・・・」



ひとみお姉ちゃん
「ぽんちゃんはお絵かきしてたんでしょう?
けんちゃんは消防士さんに憧れてるからしょうがないよ・・・
大きくなったら消防士さんになるんだってさ!」




ぽん太
「ぼくはお絵かきが好きなんだもん、消防士さんごっこなんてやだもーん」



ぽん太
お絵かきが大好きなタヌキの男の子、7歳の小学1年生です。



ひとみお姉ちゃん
「でもさ...
ぽん太はよく...
ほのぼの湖のほとりで居眠りしちゃうでしょう?
お姉ちゃん、夕方むかえに行くのが大変だっんだから~」 




ぽん太
「ひとみお姉ちゃん、今日のおやつなに~♪」



ひとみお姉ちゃん
「うふふふ・・・♪
ぽんちゃん、おてて洗ってきたら教えてあげる~♪」



ぽん太
「えぇ~~~~!?
もったいぶらないで教えてよ~~!」



ひとみお姉ちゃん
「だめ~~!
ちゃ~んと... 
おててを洗ってからじゃないと教えてあげなぁ~~~い!」





「ひとみお姉ちゃーん!
おてて洗ってきたよ~~~♪
おやつ食べて良いよね~~~♪」




今度は...
けなげな女の子の声が聞こえてきました...



みぃー子
「えへへ♪
わぁ~~~い♪みぃー子がおやつ1番のりだもんね~~~♪♪」



みぃー子
とっても走るのが速い...
うさぎの女の子、8歳の小学2年生です。




ひとみお姉ちゃん
「みぃーちゃん!
ちょっとお姉ちゃんにおててを見せてご覧なさい...!」




みぃー子
「えぇ~~!やだやだやだぁ!
おやつはやく食べたぁ~~~い!」




ひとみお姉ちゃん
「みぃーちゃん!ちゃんと石鹸でおてて洗ってないでしょう!?
おやつはまだダメッ!
ぽんちゃんと一緒におてて洗ってきなさい!」




みぃー子
「えぇ~~~~~~・・・!
そんなぁ~~~~・・・!!」




ぽん太
「ぼく先におてて洗ってきまーす!」



ぽん太はダッシュで洗面所へ行ってしまいました...



ひとみお姉ちゃん
「あ!みぃーちゃん!
早くしないとぽんちゃんにおやつ食べられちゃうぞ!!」



みぃー子
「あぁーーーっ!!
ぽんちゃんずるーいっ!!」



みぃー子はぽん太を追って、洗面所へ走って行きました。





「たっだいまぁーーーー!!!
あー腹へったーー!!
ひとみ姉ちゃん!おやつ!おやつー!!」


またまた元気な男の子の声が玄関から響きました。

今度は、けんと、ぽん太より...
もっともっとやんちゃ坊主な男の子です。



たいち
「ひとみ姉ちゃーん!
おやつあるんでしょーー!?
早く!早く!おれ腹ペコなんだよー!!」


サッカーが得意な男の子...
イタチのたいち...
9歳の小学3年生です...。


ひとみお姉ちゃん
「キャーーー!!
たいち・・・!
どうしたのよそのユニフォーム!!
まっっ黒じゃないっ!!」


たいち
「だって昨日雨ふっただろ?
グラウンドが水たまりだらけだったんだよ!
しょうがないじゃん!」


ひとみお姉ちゃん
「冗談じゃないわよっ!!
そんな泥だらけのユニフォームでおやつ食べたら台所が汚れちゃうじゃない!
たいちも今すぐお風呂にはいって!
じゃないとおやつあげない!!」



たいち
「えぇぇぇーーーーーーっ!!
めんどくさいなぁっ!!
ちょっとだけ食わせてよっ!!
おれ腹へってんだよ!」




ひとみお姉ちゃん
「だーーーーーーーーーーめっ!
台所を誰がおそうじすると思ってんのよ!!
早くユニフォームも洗濯するからぬいでぬいで!!」



たいち
「ちぇっ・・・!!
うるさいなぁ~・・・
わかったよもう~・・・」



ひとみお姉ちゃん
「はぁ~~~ん・・・
やだよもぉ~~~・・・・
泥だらけのまっ黒なユニフォーム・・・
私のエプロンが汚れちゃう~・・・」



たいち
「おれが風呂から出るまでおやつ残しておいてくれよ!?
絶対にぽん太やみぃー子たちに食べさせたらダメだかんな!!」




たいちはそう言いながらユニフォームを脱いでパンツ一丁でお風呂場へ向かいました・・・



ひとみお姉ちゃん
「あっ!たいち~~!
今お風呂にけんちゃんがはいってるから、ついでにけんとの体もよぉ~く洗ってあげてね~~~!!」



たいち
「うげっ・・・!
風呂にけんとがいるのかよ!!
あいつ風呂の中ではしゃぐから困るんだよなぁ~~~・・・」



ひとみお姉ちゃん
「たいちだって小さい頃は暴れて大変だったんだから!
たいちはお兄ちゃんなんだから、頑張って♪」



たいち
「あぁぁぁぁ~~~・・・
ついてねぇ~~~・・・
めんどくせぇ~~なぁ~~・・・」



・・・と
たいちが面倒くさそうにパンツ一丁でお風呂場へ向かったその時でした・・・





「キャアッ・・・!!」


たいち
「え・・・・・!?」


たいちが女の子の驚いた声に気づきました・・・





フレア
「た...
たいち...
パンツ1枚で何してるの・・・?」





たいち
「げっ・・・・!!
フ・・・フレア姉ちゃん・・・!!」






フレア
「あ...
たいちのパンツ...
キャプテンタイガー...?
アニメの...?」





たいちのパンツはサッカーアニメ
「キャプテンタイガー」のブリーフなのでした・・・





たいち
「うわぁぁぁぁぁああああああああああああああああああっ!!!
フレア姉ちゃん見るなよぉっ!!!」




フレア
「たいち...
可愛らしいパンツはいてるのね...
...」




たいち 
「うわぁぁぁぁぁああーー!!
見るなったら見るなーーーーー!!」




たいちは真っ赤な顔をして...
パンツ一丁の姿で...
お風呂場へ走って行きました...




フレア
「・・・・・
そんなに恥ずかしがることないのに...」




フレア
ピアノを弾くのが好きなトイプードルの少女...
10歳の小学4年生です。
エメラルドグリーンの瞳がとても美しく、王国のお嬢さまなのではとの噂がある。



ひとみお姉ちゃん
「たいちったらぁ・・・
私の前だと平気でパンツ一丁になるクセに・・・・
フレアの前だと妙に意識してるのか、オーバーに恥ずかしがるのよね~・・・」




フレア
「たいち..
いつもそう...
みんなの前では...
やんちゃでぶっきらぼうだけど...
私とふたりだけの時はとっても素直でおとなしいの..
なんでだなんだろう...」




ひとみお姉ちゃん
「たいちはきっと...
フレアのことが好きなんだよ...」




フレア
「そうなのかな...」 




ひとみお姉ちゃん
「そうなのよ・・・・!」





フレア
「私たちは...
血のつながった兄弟ではないけれど....

私とたいちでは種族が違う....

それでも...いいのかな...?」




ひとみお姉ちゃん
「好きに種族も兄弟も関係ないよ・・・!
たいちはフレアを本当のお姉さんとして甘えたいのよ・・・

私には...
たいちの気持ちがわかるんだ...」






ぽん太
「ひとみお姉ちゃ~~ん!
おてて洗ってきたよ~~~!!」



みぃー子
「今度はちゃんと石鹸でゴシゴシ洗ったもんね~~~♪
ひとみお姉ちゃん!
おやつはやく~♪」



ひとみお姉ちゃん
「よーし!えらい!えらい!
それじゃあ!
おやつにしよっか!!」



みぃー子
「わぁ~~~~~~い!!
やったぁ~~~~~~!!」



ぽん太
「ねぇ!
ひとみお姉ちゃ~ん!
今日のおやつなぁ~~にぃ~?」




ひとみお姉ちゃん
「.お姉ちゃん、頑張ったんだからね~~~!
今日のおやつは...
ヨーグルトゼリーと、お星さまの形をしたクッキーだよ!!」



みぃー子
「わぁ~~~い♪
ヨーグルトゼリーにお星さまのクッキーだぁ!!」


ぽん太
「ねぇ...
ひとみお姉ちゃん...
けんちゃんと...
たいちお兄ちゃんは~~・・・?」




ひとみお姉ちゃん
「けんちゃんと...
たいちは...
泥だらけだったから...
今ふたりでお風呂はいってるよ~♪.

あ・・・そうだ!
フレア・・・
マリア先生は・・・・?」



フレア
「マリア先生なら...
熊八先生と....
もっくんを呼びに行ったよ...」



ひとみお姉ちゃん
「あーーーー・・・・
すっかり忘れてたーー・・・・

たしか熊八先生...
もっくんに相撲の稽古つけてたんだ・・・・」






その頃...
修道院の裏にある土俵では...

熊八先生と、もっくんが相撲の稽古に明け暮れていました...



熊八
「よーーしっ!こいっ!!」


もっくん
「は・・・はいだなモォ~~~!」



熊八
「おうしっ!!
どぉすこぉぉーーぉぉぉいっ!!」


もっくん
「ど・・・どぉすこいなんだなモォ~~~~~!!」


「バチィーーー・・・ッン!!」




熊八
「ほらっ!どうしたぁっ!?
押しが弱いぞおっ!!
怖がるんじゃない!!
おもいっきりぶつかってこいっ!」



もっくん
「ブモォ...!ブモォ...!ブモォ...!
ど・・ど・・・どぉすこぉぉーーーーぉぉいなんだモォ~~~・・・!」




熊八
「.だめだっ!
まだまだ押す力が足りないぞっ!
そんな押しじゃあ中学では通用しないぞっ!!」




もっくん
将来アニマル大相撲の横綱力士を目指す、心優しい力持ち。
体は大きいですが、11歳の小学5年生です...



熊八先生
「チャイルドホームの院長先生であり、修道院の神父さん。

学生時代はアニマル相撲大会で優勝して横綱にもなった。

不器用な性格で怒るとこわいが、みんなの良きお父さんの役割を果たしている。

副院長のシスター
「マリア先生」に想いを寄せてはいるものの、不器用な性格たる故...
素直になれずいつもケンカばかりする。

体重150kg、ヒグマの38歳






「はぁ・・・・
何だか気まずいなぁ・・・・」



熊八先生と、もっくんの...
相撲の稽古を...
チャイルドホームの壁から...
心配そうに見つめるシスターがいました・・・



マリア先生
「相撲の稽古の途中で...
女の私が止めに入るのも...
何だか場違いな感じもするし...
でも・・・
もっくんだって・・・
いくら力持ちっていったって...
まだ小学5年生なんだし...
そろそろ厳しすぎる稽古を...
なんとか止めさせないと...」




マリア先生
「チャイルドホームの副院長であり、修道院のシスター。

聖アニマル女学院出身。
フィアンセがいたが病死、以後このチャイルドホームにて副院長、及びシスターとして生活する。

普段はおとなしいが、短気で怒りっぽく、熊八先生とケンカすると見境無くなり、よく子どもたちを困らせる。

熊八先生に想いを寄せつつも、元フィアンセの存在も忘れられず、生涯を独り身で負えるか心を揺るがす。

子どもたちの良きお母さんの役割を果たしている・・・つもりではある...。

体重???ヒグマの33歳





もっくん
「ぶ・・・ぶ・・・ぶ・・・
ブモォ~~~~~・・・ン・・・
ブモォモォモォモォ~~~~・・・・・ン・・・!泣」



もっくんは...
自分の不甲斐なさが悔しくて...

とうとう泣いてしまいました...




熊八
「おやおや...?
どうしたもっくん...?
あれぐらいの稽古で泣きベソか?」




もっくん
「グスンッ・・・!
お・・・
お・・・おいら・・・・
も.・・・もう・・・
ムリなんだなモォ~~・・・ン泣」




熊八先生
「もっくん...
そんな情けない事言うな...

先生は怒ってるんじゃない...

もっくんには誰よりも強いお相撲さんになって欲しいから・・・

今のうちに厳しい稽古をつけているんだぞ....


もっくんは将来...
アニマル大相撲の横綱力士になるんだろ?」




もっくん
「うん...
...だなモォ~・・・」



泣きながら小さく首を縦に振るもっくん....


それを見ていたマリア先生は...




マリア先生
「あぁ・・・
もっくん・・・
あんなに傷だらけになって・・・
あんなに涙を流して・・・

それでも夢をあきらめない・・・

もっくん・・・
頑張るのですよ・・・
神はあなたを見守っています・・・
そして私も祈ります・・・
もっくんに...
神の御加護を...

アーメン....」





熊八先生
「はふぅ~・・・
困ったなぁ~・・・」


熊八先生は...
メソメソ泣いているもっくんを見て...
小さなため息をもらした...

相撲の稽古になると...
つい我を忘れて熱くなってしまう悪い癖が出てしまった...

指導者、教育者として...
まだまだ経験不足なんだと深く反省する・・・


私は子どもたちの父親なんだ・・・

それなのに・・・

愛情が足りなかった・・・




熊八先生
「今日の稽古はもうおしまいにしよう・・・
なぁ?もっくん・・・?」




もっくん
「グスン・・・・グスンッ・・・」





熊八先生
「よーーし...
今日の稽古はこれまでおしまい・・・
さぁ...もっくん...

一緒にお風呂にはいって...
ひとみお姉ちゃんが作ったおやつを食べよう・・・!

な・・・!!」




もっくん
「・・・・ブモォ・・・
グシッ・・・・ブシッ・・・!」




熊八先生
「ごめん・・・
もっくん・・・
先生の稽古・・・
ヘタクソだよな・・・」



熊八先生は...
肩を落とし...
もっくんに厳しすぎた稽古指導をしてしまった事を...
謝った....



それを聞いたもっくんは・・・・




もっくん
「どぉすこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!!!」


「ズドォーーーーーーーーォオンッ!!!」



突然!
もっくんは鼻から「フンッ!」と息を吹き出すと・・・
熊八先生の胸元目掛けておもいっきりぶつかっていったっ!!!



熊八先生
「ぐっうっはぁあっっ・・・!!!」



もっくん
「お・・・おいら・・・!!
お・・・おいら・・・・!!!
おいら・・・!!!
絶対に横綱力士になんだなモォッ!
横綱になって・・・
土俵入りする姿を・・・・!!!


熊八先生に見せてあげるんだなモォッ!!!


だから・・・!
だから・・・!!

もっと厳しい稽古をつけて欲しいんだなモォーーーーーッ!!

熊八先生・・・!!!
もう絶対に・・・!!!

謝ったらダメッ!なんだなモォッ!!!」



もっくんは...
普段は温和で優しく...
強気な事は言わない性格ですが...


熊八先生の...
申し訳なさそうに謝ったひと言を聞いて...
今日初めて自分の意思をハッキリ言ったのでした・・・!!!



熊八先生
「ぐっ・・・・!!!
凄い・・・なんて力強い当たりだ・・・!!!
ここまでの当たりは学生力士時代でも感じた事が無いぞ・・・!!!


・・・・・・!!

こいつぁ~強くなるぞぉ~~!!!

アニマル相撲界最強の横綱になる!!

ようしっ!!
こうなったらわしも手加減はせんぞぉっ!!
遠慮せず...
おもいっきりぶつかってこいっ!!!」



もっくん
「どぉすこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉいっ!!!」


「ズドォーーーーーーーンッ!!!」




マリア先生
「あぁ...
なんてずばらしいのでしょう...

あきらめない心...

夢に向かって全力でぶつかっていく無限の可能性...

もっくん...

あなたは今...
とても幸せな時を生きているのですよ...

夢が叶うその日まで...
私も神に祈ります...

もっくんに神の御加護を...

アーメン...」



夕暮れに染まるチャイルドホームに...
激しい相撲の稽古の激しい音と呼吸が鳴り止まず...
日が沈む...
あかね空に遠く響きわたりました...



「おわり」




けんと
「ねぇー、ひとみお姉ちゃ~ん」


ひとみお姉ちゃん
「なぁ~に...?
けんちゃん...」



けんと
「熊八先生と、マリア先生と、もっくん・・・・
おやつ食べないのかなぁ~・・・?」


ひとみお姉ちゃん
「さぁ~・・・
どうしたんだろうね~・・・」


みぃー子
「わたし食べてあげてもいいよ!」


ぽん太
「あー!!
みぃー子お姉ちゃんいっけないんだーー!!!」



たいち
「ひとみ姉ちゃん、そろそろ晩ごはん作んないと・・・」



フレア
「はい...
たいち...
ユニフォームと...
パンツ...
洗濯、乾燥出来たよ...」



たいち
「あぁっ!!
フレア姉ちゃん!!
やめろよ!恥ずかしいなぁ!」



みぃー子
「あーーーー!
たいち兄ちゃんのパンツ、アニメのキャプテンタイガーだぁっ!!!」


ぽん太
「あはははははは!!」


けんと
「ぎゃははははははは!!」











いかがでしたでしょうか...
久しぶりの虎之助ワールドは...


それでは最後に...

丑年の年賀状イラストを御覧下さい。



年男もっくんと、おやちゃいぼうず

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どすこい!
太刀持ちのおやちゃいぼうず!!
「たまさぶろう」でごわす!
(たまねぎ)
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はっきよい!
露払いのおやちゃいぼうず!
「そうたろう」だべ!
(ほうれん草)
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おら、懸賞旗を持った呼び出しのおやちゃいぼうず。
「いもさく」だぁ~~♪
(じゃがいも)
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にぃ~~ぃぃ~ぃしぃぃぃ~~♪
もう次郎のもっくん~~~♪
見合って見合ってぇ~~~♪
わいは行司のおやちゃいぼうず
「とんとん」やでぇ~!!
(ししとう)
f:id:toranosuke110:20210104070045j:plain


おいらは横綱
おやちゃいぼうず!!
うり坊だいっ!
(赤瓜トマト)
アニマルランドのもっくん!
お相撲の稽古
頑張ってね!!

もっくん
「うり坊くん、応援してくれて...
ありがとうなんだなモォ~~~!
おいら大きくなったら・・・
アニマル大相撲の横綱力士になるんだなモォ~~~~!!!」
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もっくん
今年は丑年だ!
がんばれ!!


2021年
西郷虎之助
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あの日僕へ3(予告編)と~夢幻の世界へ御招待~

寒くて長い冬が...
ようやく終わりを迎える頃...

菜の花の香りが...

風にのせて僕の鼻先をくすぐってきた...

思わず大きなくしゃみをして...

春の夕映にできた僕の長い影を見たとき...

幼かったあの頃をふと思い出す...






~思いつきおまけ短編集~
「夢幻の世界へ御招待」

(第一話)






僕の名は「田中幸彦」40歳

妻、子供2人

万年ヒラの商社サラリーマンだ...





毎日毎日忙しくて....

時間の流れを忘れて生きていると...

夢や目標を持ち...
未来へ向かって足早に歩いている足を...
なんとなく辞めたくなる時がある...


逃げられない社会で...

重い責任をいくつも背負い...

必死に這いつくばって生きていくことが...

本当に僕の幸せなんだろうか...



僕の子供の頃の夢は...

野球選手だった...

だけどそんな夢も叶うはずもなく...

見積書と報告書がたくさん詰まった安物のカバンを片手に...

硬いコンクリートで舗装された歩道を走って...

得意先のオフィスビルへと向かい...

ひたすら赤の他人に頭を下げる毎日が続いてく...




(田中の心の叫び)

ちっ!馬鹿野郎が....!

それぐらいわかってんだよ...!

この頭でっかちのハゲ!!

まったくよ...!

こいつの嫁の顔がどんなのか...
一度拝んでみたいもんだぜ...!



僕はまた...

深々とお辞儀をして...

ロビーの入り口を出る...

そしてまた...

次の得意先のオフィスビルへと向かって走ってく...


もう...
嫌だ...こんな人生...

疲れた...
何もかも忘れて何処か遠くへ逃げたいよ...

とうとう情けない弱味を口走ってしまった僕...



その時だった...


合同庁舎の駐車場に咲いている...
満開の桜が...

風に乗せてハラハラと舞い散り...

僕はまるで...
映画のワンシーンのような桜吹雪に包まれた...


あぁ...
綺麗だなぁ...

もう桜が散り頃の季節になっていたのか...


僕は走っている足を止め...
ゆっくりと目を閉じた...


すると...




あれ...?

ここは...

僕が再び目をあけた時....


目の前に広がるのは...

どこまでも広く続いてくだんだん畑に...

深々と緑溢れる山々...

一本の細い田んぼのあぜ道の真ん中に立っている僕は...

生まれ育った故郷にいたんだ...


あ!僕の体が...!!


学生服に身をまとい...
頭には学生帽...

肩掛けカバンを下げている...


ど...

どうなってんだ...!?

中学生に戻ってるじゃないか!!




田中く~~~ん!!
待ってよ~~~~!!



え....?


誰か女子中学生が僕の方へと駆けつけてくる...



ハァハァ...
田中くん、一緒に帰ろう!



え....誰だよ...

って!・・・おいっ!!

お前・・・!
確か2年の時同じクラスだった...
「深沢ゆきえ」じゃねえかよっ!!



深沢
「そ~だよ?
私、深沢ゆきえだよ、今さら何言ってんの?田中くんったら変なの!」



田中
「お....お前....
確か山中と結婚したはずなのに....
何で....」



深沢
「山中くん?
やだー!なんで私が山中くんと結婚しなきゃならないのよ!?
私...山中くんなんて...大っ嫌い!!」



田中
「何いってんだよ...
山中に泣きつく程に惚れてたくせによ...!
あいつん家は親父が大手企業の上役部だから玉の輿でウハウハだったじゃねーかよ!!」


深沢
「失礼ね!私、結婚は本当に好きな相手じゃないとしないんだもん!!
お金目当てで結婚なんて、バカみたい!」


田中
「よく、言うぜ...
外車にベンツに海外旅行...
ブランドもんいっぱいちらつかせやがってよ!」


深沢
「もう!田中くんったら~~・・・
さっきから何訳の分からないこと言ってんのよ!」



田中
「お前は金につられた女なんだよ...!」



深沢
「べーだ!そんな意地悪聞かないもーん♪
私は山中くんなんかより...
田中くんの方が理想の旦那さんだも~ん♪」



田中
「あぁっ!?
何言ってんだよっ!!
お前みたいな金づる女と誰が一緒になるかよっ!
バーーーカッ!!」



深沢
「ひ...ひどい...
わ...私...
た...田中くんの事.....好きなのに...
あぁ~・・ん・・あんあんあ~~ん・・・泣!!」



田中
「ば...!バカッ...!!、泣くなよ!こんな所で!」



深沢
「グスン....
じゃあキスして!!キッパリ」



田中
「はぁっ!?キスぅ~!?
バカかよお前はっ!!」



深沢
「う...グスン...
いいもん...また泣いちゃうから...」



田中
「わ...!わかったよもうっ!
キスしてやりゃあ~いいんだろっ!!」



深沢
「うん♪」


田中
「いいか・・・
一度だけだからな・・・」


深沢
「はやく・・・
して・・・」


田中
「じ...じゃあ...
目をつむれ....」



深沢
「うん...」


田中
「よ...よ~し....
じゃあ...いくぞ....」


深沢
「うん...」


田中
(ドキドキドキ・・・)


深沢
「・・・・」


田中
「ぐっ・・・!!」


僕は深沢の肩に手を掛けて・・・
思い切って目をつむった・・・


そして・・・


あ・・・・


あれ・・・・??


僕が再び目を開けると・・・

合同庁舎すぐ横の歩道の真ん中に立っていた・・・



な・・・

何なんだよ・・・

さっきの幻覚は・・・

夢か・・・?


どうやら元の世界に戻ったようだ・・・


足元を見ると...

道道に落ちた桜の花びらが...

風に吹かれてふわりと舞い上がった...



あーーあ・・・

せっかく深沢ゆきえとキスするチャンスだったのによー・・・



足元の桜がサラサラと風に流されてゆく・・・

僕は歩道をゆっくりと歩き出し・・・

小さな声で・・・

一人つぶやいた・・・



バカだなぁ・・・

どうしてあいつを振っちまったんだろう・・・



本当は好きだったんだ・・・

だけど素直になれなくて・・・

あの時...

もし本当の気持ちを打ち明けていたら.・・・








「あら、田中くんじゃない?」




突然後ろから・・・

僕の名前を呼ぶ女性の声が・・・!



え・・・?
って振り返ってみると・・・


黒光りした真っ黒な高級ベンツの窓から顔を出して手を振る女性・・・

その正体は・・・



「田中くんでしょ?久しぶりじゃない!私よ私!」



高級ベンツの窓から手を振っている女性・・・


スタイリストにヘアアレンジを施され・・・

パステルカラーのソフトな仕上がりのナチュラルメイクに・・・

大胆に胸元が見える純白のシルクワンピースでドレスアップしたセレブなマダム・・・


あの深沢ゆきえだった・・・



田中
「なっ・・・!
何処の奥様かと思えばよ・・・

セレブの深沢ゆきえじゃねーか・・・

綺麗にドレスアップなんかしやがって・・・
何の用だ?」




ゆきえ
「あら...いやだ...

久しぶりに会ったのに...
そんな冷たく遇うことないじゃい...

それに私...
今は山中ゆきえよ...
失礼しゃちゃう...」



田中
「ふんっ!
何か御用ですか...
山中グループの御婦人様よ!」



ゆきえ
「ウフフ...
偉そうな口の利き方も相変わらずね...
ところで田中くん...
今何してるの?」



田中
「な・・・何って・・・
見りゃわかるだろ・・・?
仕事だよ!仕事・・・!」



ゆきえ
「また営業回りかしら?
不知火コーポレーションも今は経営不振で大変よね~・・・
あなたの会社、大丈夫なの?ウフフ♪」



田中
「うるせえよっ!
だから今こうやって、必死でオフィスビルを周ってんだろーが!」



ゆきえ
「あら...コワイ顔しちゃて...
ホント昔とちっとも変わらないわね...
営業マンがそんな生意気な態度だと...
いつまで経っても得意先から契約してもらえないわよ?」



田中
「う・・・!!
うっせーよっ!!
余計なお世話だ!!

何不自由なく暮らしているセレブの奥様には関係ねーだろ!」




ゆきえ
「ねえ田中くん...
これから主人が開催する、山中グループ専属会社のパーティーに向かう所なんだけど・・・」




田中
「専属会社のパーティーだぁ~?」



ゆきえ
「よかったら、あなたも来ない...?」



田中
「はぁっ・・・!?」



ゆきえ
「主人と・・・
久しぶりに会ってみたらどうかしら...?」




田中
「さっきも仕事中だって言ったろ!
何をバカなこと・・・!」




ゆきえ
「いいじゃない...
たまには一流シェフの作った世界のグルメ料理食べましょうよ
山中グループの名前出したら、あなたの会社もきっとOKしてくれるはずだわ...」



田中
「バーーーカ!
これだからマダムはわかってないよな!

そんな理由で会社抜けたりしたら信用失っちまうよ...
今が踏ん張り時なんだ!
これまでの努力が台無しになったらどうするんだ...!」



ゆきえ
「雇われのヒラ社員は大変よね~!
田中くんは営業マンなんだもの...
忙しくてパーティーなんかに現を抜かしている暇なんてないわよね...
あ~残念、美味しいシャンパンもあるに!」




田中
「なんだとこのぉっ!!」





運転手
「奥様...
そろそろ急がないとお時間が...」



ゆきえ
「あらごめんなさい...」



プッ♪プーー♪



田中
「早く行けよバーカ!
後ろ車が待ってるぞ!」



ゆきえ
「出してちょうだい」



運転手
「はい、奥様...」




ゆきえ
「じゃあ田中くん、忙しい時にごめんなさいね」




田中
「まったく...
いい迷惑だよ!」




ウィーーーーー・・・ン・・・





ゆきえ
「田中くん...
営業周り頑張ってね!
契約取れるといいわね、さようなら...」




田中
「じゃーな、セレブの奥さん」




ウォォォーー・・・・ン・・・♪




僕は・・・
真っ黒な高級ベンツが出るのを・・・
ただ悔しい思いで眺めていた・・・




これで良かったんだ・・・

これで・・・






一方ベンツの車内では・・・


運転手
「奥様...先ほどの男性との御関係は...」



ゆきえ
「・・・・・・」



運転手
「申し訳ございませぬ奥様...
わたくし大変御無礼を申し上げまして...

差し支えなければと思ったのですが...」




ゆきえ
「あの男はね・・・」




運転手
「あ...
はい...」




ゆきえ
「私の・・・・
初恋の男だったの・・・」




運転手
「は....
さようでございましたか...

ありがとうございます...
わたくしなんぞに心の内を話して頂いて...

ですが心配御無用ですぞ奥様...

旦那様には...御内密にしておきますので....」





ゆきえ
「バカな男よ・・・
私を振ったするから・・・

ちょっと意地悪しちゃった・・・」




運転手
「奥様には旦那様がふさわしいと
わたくしは思いますぞ...」




ゆきえ
「スッキリしたわ!
あの男に・・・
私との格差を見せつけてやったの・・・」




運転手
「同じ男のわたくしならわかります...
あの男性...
奥様を見て...大変悔しい思いをした事でしょうな...」




ゆきえ
「フンッ...
私の勝ちね...」




運転手
「もちろんです...
奥様は山中グループ会長である旦那様の...
御婦人なのですから...」




ゆきえ
「男はやっぱり・・・
経済力よね・・・

いつまで経ってもヒラの雇われ社員では...
主人の足元にも及ばないわ・・・」




運転手
「誠でございます奥様...」




ウォォォーーーーー・・・・ン・・・







そして・・・

ゆきえが乗った高級ベンツが・・・
交差点を右に曲がり見えなくなると・・・



田中
「バーーーカ!!
バーーーカ!!バーーーカ!!
バァァーーーーーーーーーーーーーァァカッ!!
2度と現れんな!!金に目が眩んだ銭ゲバ女が!!
いつか山中に捨てられろっ!!!」


ハァ....ハァ...ハァ....


僕は息を切らしながら・・・
ふと腕時計へと目をやると・・.


やっべっ!!!
もう15時半かよっ!!

早く湧永商事のビルに急がないと!
アポイントの時間に遅れちまう!!

僕は慌てながら...

見積書と報告書がたくさん詰まったカバンを抱え...

再び走り出したのであった...




厳しい現実社会の中で・・・

重い責任をたくさん背負い・・・

僕はこれからも・・・

この街で・・・

忙しい毎日を生きていくだろう・・・



いつかは訪れる・・・
夢幻のような安らぎの世界へと旅立つ日まで・・・













(終わり)






あの日僕へ3(仮)
(予告編)




マー坊
「ねぇ、虎にーちゃん」



虎之助
「んー?どうしたマー坊?」



マー坊
「どうして虎にーちゃんの、おちんちんには毛が生えてるの?」



虎之助
「んん~~・・・
それはだなぁ~~・・・
おちんちんが風邪をひくからかなぁ~?」


マー坊
「じゃあボクのおちんちんには、どうして毛がないの?寒くて風邪ひいちゃうよ~?」


虎之助
「う~ん・・・
マー坊のおちんちんはね、まだ小っちゃいから風邪ひかないんだよ・・・」


マー坊
「どうしておちんちんが小っちゃいと、風邪ひかないの~?」


虎之助
「マー坊のおちんちんは、皮を被ってるでしょ?
あったかいから風邪ひかないんだよ~」


マー坊
「ふ~~~ん・・・
そうなのか~~・・・
皮を被ってると、風邪ひかないんだね!」


虎之助
「大きくなったら、皮を脱ぐだろう?
それで寒くておちんちんが風邪ひきそうになるんだ!」


マー坊
「だから虎にーちゃんのおちんちんには毛が生えてるんだね!」


虎之助
「えっへん!そうなのだ!」


マー坊
「ボクにも早くおちんちんに毛が生えてこないかなぁ~?」


虎之助
「大丈夫だよ!
マー坊も、きっと大きくなったらおちんちんに毛が生えてるからさ!」


マー坊
「ほんとう~?」


虎之助
「本当だよ!」


マー坊
「ボクのおちんちんに毛が生えてたら、虎にーちゃんは1番で見せてあげる!」


虎之助
「にーちゃん1番で見せてくれるの?
楽しみだな~!」


マー坊
「うんっ!!」



僕を「お兄ちゃん」と呼んでくれたのは...

ケン坊の8つ歳下の弟「将弘」(まさひろ)

通称「マー坊」だった...

ケン坊とマー坊は

僕のお向かいに家があるんだけど...

親父さんが出稼ぎ労働者のため、家には殆ど居なかったので...

幼い頃から僕の家に住んでいたのです...

なのでマー坊は本当の弟のように可愛がっていました...

マー坊も、僕を「虎にーちゃん」と呼び、とても懐いてくれたので...

マー坊の前ではいつもお兄ちゃんぶって、弱い所や泣いている姿はなるべく見せないようにしていました...

そんなマー坊を肩車した時の思い出を...

ちょっぴり思い出してみました...


「お兄ちゃんと肩車」
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誕生日シリーズ第4弾!!2年振りに発信!

ふんどし坊主の山あり谷あり七転八倒

・・・を御覧の皆様こんばんは!


今・・・

日本中・・・
いや・・・

世界中を地獄に貶めようとしている

「新型コロナウィルス(COVID-19)」


ブログ御覧になられている皆さんは大丈夫でしょうか・・・?

一月前までは・・・

私自身も・・・まぁ大丈夫だろう・・・

時間が解決してくれる・・・

と・・・ 

見えないウィルスを甘く見過ぎていました・・・


しかし・・・

大好きなドリフターズのメンバー

コント界の巨匠
志村けんさんがお亡くなりになりました・・・

コロナウィルス陽性反応から・・・
その期間はわずか10日足らず・・・

志村けんさんは、滋養強壮剤の「キヨーレオピン」の愛飲者だったのは、以前から知っていましたし・・・

近年ではタバコも辞め、お酒の量も減らし
健康には気をつけていたはずなのに・・・

70歳という・・・
まだまだ活躍出来たはずの年齢でしたが・・・

静かに極楽浄土へと旅立ってしまいました・・・

残念な思いが募るばかりです・・・


この速報に、多くの方が悲しみ・・・

志村さんの御冥福を祈る間にも・・・

ウィルスの感染は容赦なく広がり続け・・・

悲しむ余裕すら与えられない程の速さで今なお感染者は増え続けています。

問題はウィルスだけではありません・・・

東京オリンピックが来年に延期・・・

飲食店や夜のお店は続々廃業・・・

学校は休校期間が延長・・・

マスクが店舗から消えて買えない状況・・・

緊急事態宣言が出ても出社しなければならない方たち・・・

医療機関はいっぱいで検査も受けられず・・・



まさか・・・
2020年が・・・
こんな年になるなんて・・・
思わなかった・・・


来週、再来週と感染者はもっともっと増え続けます

日本はこれからどうなってしまうのでしょうか・・・

終わりが見えない恐怖と不安・・・

私もいつ感染するかわかりません・・・

敵は見えないウィルス・・・

防ぎようがない・・・

今の私に出来ることといえば・・・

やはりブログを書く事しか出来ません・・・



そこで!!

4月11日

今日は虎之助の誕生日です!!

皆さん御存知でしたか?


誕生日ということは・・・


久しぶりに・・・

あのシリーズを書きます!

いえ!描きます!!

さて・・・

今でも虎之助が忘れられない!!

・・・という、究極の七転び八起きマニアの皆さんに朗報です!!

コロナウィルスで暗くなったあなたを少しでも明るい光を・・・!!!


西郷虎之助の誕生日の感動?シリーズ台4弾!!

製作決定!! 

昨年は平日で時間もとれなく、あからさまな手抜きで終わってしまいましたが・・・

今年は久しぶりにやりますよ!!

さすがに今日中は無理でしたが、只今必死に描いて製作中でございますので・・・

もうしばらくお待ち下さい!!

今回はこれまで以上の出来栄えになるかも!?

2016年に配信された第一弾シリーズのリメイク版イラストや、深山中学相撲部のお馴染み5人のチャルメラーズ軍団等も廻し姿で登場!!

まだ完成がどうなるかは未定ですが、コロナウィルスに負けないよう久しぶりに奮闘しますので、是非皆さん覗いてやって下さい!!

早くて明日か、遅くて来週末になりますので、皆さんもコロナウィルスに負けないよう待っていてね!!


愛媛県立深山中学校入学式
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愛媛県中学相撲大会(団体戦)
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3.11~9th year hope~「空からふってきたものは...」

なんでも知ってるつもりでも...

世の中には知らないことがいっぱいあるんだよ...


(おでんくんのパクり)


2020年 3月 11日


あの東日本大震災から...
今日で9年の時が流れました...


長かったような気がしたけれど...

思い返してみれば速かったような...

来年で10年になるなんて...

時の流れが瞬きする間にどんどん過ぎてゆく...

でもそれはあなたが一生懸命生きたから...

気づかなかった...

幸せな時間を過ごしてきたのかな...


だって...
9年前で時間が止まってしまった人が...
この町にはたくさん居るのだから...


笑ったり、泣いたり、怒ったり

生きているからできるんだ...

今日は大切なあの人と...

暖かい体で触れあえる喜びと幸せを...

一緒に感じたいな...







3.11~9st year hope~

「空からふってきたものは...」(完全版)

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東日本大震災から...

今日で9年目となる...

3月11日の朝を迎えた...

この陸前高田市高田松原で...

遙か遠くまで見渡す限りに続いてゆく砂浜に...

空に向かってグンと伸びてくシルエット...

希望の象徴を表す存在感に...

今日もこの場所へと...

皆がやってくる...

これが...


「奇跡の一本松」



太陽が東の方から顔を出し...

朝日の光が広い水平線を...
キラキラと照らします...


海から砂浜へと吹き抜ける風...

この地を見守る「一本松」の青葉が...
ザワザワと音をたてて揺れている..


まだ冷たい風が...
静けさの中...

松の青葉の揺れる音...
遠くから聞こえる小さな波の音が.... 

広い砂浜を優しく撫でるようにささやいている.....
...




そんな静寂な朝の中...

まだ周囲に誰も居ない早朝の高田松原に...

ある親子2人の姿が見えてきました....




真奈美(まなみ)
「父さぁーーーーーん!
早くーーーーーーーーーー!!
こっちだよーーーーーーーー!!」



猛(たける)
「ハァ・・!ハァ・・!ハァ・・・!
お・・・おぉ~~~・・・い・・・!
ま・・真奈美~~~・・・・・!
は・・・・走るのだけは・・・!
勘弁してくれよ~~~・・・・!!」



真奈美
「もうっ!父さんったら!
ゆうべビールなんか飲んでるからへばっちゃうのよ~~!」




「はぁ~~~~・・・!しんどい・・・!
ハァ・・ハァ・・・ハァ・・・・
父さん・・・
心臓がパンクしそうだよ・・・!」



真奈美
「父さんが最近太って体重増えたの知ってるんだからね!
年齢も40歳とっくに過ぎてるんだから、いい加減体の事考えておかないと次の健康診断引っかかっちゃうぞ~~!」




「あぁ~~~~!!
さては真奈美~~~~!!!
父さんの健康診断結果通知みたなぁ~~!!」



真奈美
「血圧と尿酸値が高めの肥満型だってさ!
このままだと、生活習慣病になるかもねー!」





「ふんっ!
父さんはまだまだ生活習慣病なんかにならないぞ!
習慣にしているウォーキングだって、しっかり頑張ってるんだからな!」



真奈美
「やだっ!父さん!?
ズボンのお尻が破けてるよ!!」




「え・・・えぇっっ!?
まさかっっ!!」



真奈美
「なぁ~~んてね!!
ウッソぴょ~~~~~ん♪♪」





「このやろ~!(怒笑)
親をからかいやがって~~~!!」



真奈美
「ははぁ~~ん♪
ここまでお~~~いで~~~だ!!」




「こらぁ~~~~!!
逃げるな!!待て~~~~!!」





他愛のない親子の会話...

仲良くじゃれ合う仲の良い父親と娘...


まだ日が登り始めたばかりの広い海辺に...

吹き抜ける風と...
小さな波の音...

2人の楽しげな笑い声が...
遠い砂浜まで届きそう...





陸前高田市高田松原にある

「奇跡の一本松」へ...

朝一番のりでやってきたのは...




本条真奈美(15歳)と...

本条猛(43歳)の...

父親と娘の親子でした...





「さぁ鬼ごっこはもうおしまい!
真奈美、父さんと一緒に並んで...」



真奈美
「はーーい!
・・・お祈りの前に・・・
希望の鐘・鳴らすね・・・」



カラァ・・ン♪
カラァン♪カラカラァン♪カラァ~ン♪


真奈美は...
海風に吹かれながら...
一本松の横にある「希望の鐘」を鳴らすと...

高田松原の砂浜一辺が優しい音色に包まれる...

左右に揺れる金色の鐘が...
朝日に照らされキラキラ眩しい光を放ちながら揺れている...



真奈美と猛は2人並ぶと...

手を合わせ...

そっ...と目をつむった....


真奈美は4月に入学する高校の真新しい制服を着て...

猛は高校の入学式に着ていく為...
新しくオーダーメイドに仕立て上げた紺の背広を紳士に...


9年前の3月11日...

津波で亡くなった...

真奈美の母親であり...

猛の妻...

本条恵子(けいこ)に...

祈りを捧げた...






静まり返る中...

祈りを捧げる2人...

頭上から松の葉が...
風でザワザワ....

砂浜一辺の波が...
ザザァ...ザザァ....

制服と背広が...
風ではためく音...



2人は9年目の想いを祈った

愛する恵子へ...





2011年・3月11日


あの日...

僕たちは...

当たり前の生活をしていた...

よくあるありふれた...
仲の良い夫婦...

真奈美がまだ6歳の頃...

卒園式が終わったら...

4月から晴れてピッカピカの1年生...

恵子は真奈美の卒園式と入学式には...







3月11日の朝



恵子
「真奈ちゃーん!
ごはん食べ終わったら、幼稚園に行く準備してねー」


真奈美
「え~~!
まだテレビ見た~い!」



恵子
「もう幼稚園に行く時間だから、テレビはもうおしまい、ごはん終わったらすぐにお着替えする!
わかった~?」



真奈美
「うぅ~~~~ん・・・
やだぁ~~~~・・・」



恵子
「真奈ちゃ~~・・ん・・・.
もうすぐ1年生でしょ~・・?
学校へ行くようになったら、朝もっと早起きしないといけないんだぞぉ~~?」



真奈美
「えぇ~~~・・・
そんなの真奈やだぁ~~~・・・」



恵子
「えぇ~~~・・・?
じゃあもう1年・・・
幼稚園通わないといけなくなるぞ~~~?
せっかくパパがピンク色の可愛いランドセル買ってくれたのに~~~~?
それでもいいの~~~?」



真奈美
「はぁ~~~い・・・
ママごちそうさま~~~・・・
真奈、お着替えしてくる~~~・・・」




恵子
「は~い、よく食べました~~♪
真奈ちゃんは良い子だね~~~♪
制服と靴下、ハンカチ、もう出してあるから、お着替えGO♪」




真奈美
「は~~~~い!」




「おーーーい!
おーーーい!恵子ー!
ネクタイがうまく締められないんだ...
ちょっと手伝ってくれよーー!」



恵子
「ちょっと!あなた!?
まだ着替え済んでなかったの!?
早く支度しないと、会社遅刻するでしょ!?」




「わかってるよ~~・・・!
でもワイシャツの糊付けが硬くて..
1番上のボタンが止まらないんだ!
これじゃあネクタイが締められないよ~!
恵子早くしてくれー!」



恵子
「もう~!
しょうがないひとね~~~!
ほら、貸してごらん・・・!」 




「はぁ~~~・・・
もう~~~・・・・
頭痛ぇ~~~~・・・
ラクラする~~~・・・」



恵子
「ゆうべビールばかり飲むからよ!」




「なぁ~恵子~・・・
俺の財布と携帯と鞄はーー?」



恵子
「ちゃんと玄関に置いてるわよ~」




「え・・・
えへへへ・・・すまんなぁ~・・・」




恵子
「ちょっ・・・!!
口が超く・さ・い!!!

あなたっ!?
ちゃんと歯磨きしたのっ!?」




「もういいじゃねぇ~かよぉ~~・・・
遅刻しそうなんだからさぁ~~~・・・
通勤中にキスミントガム噛むから大丈夫だって!」



恵子
「あ~~やだやだ!
私、歯も磨かない不潔な夫となんて・・・」





「お・・・
夫となんて・・・?」 



恵子
「ふふ~~・・・ん・・・」




「な・・・なんだよぉ~・・・」




恵子
「いってらっしゃいの・・・

キスしてあげないもんね~~~だ♪」





「お・・・
おいおい~・・・
そりゃあないだろぉ~~・・・・」



恵子
「だぁ~~~~~めっ!
ちゃんと歯を磨いてくれるまで・・・
キスはおあずけ!!

はい!ネクタイ出来上がり!」




「わかったよ!
今から急いで磨いてくるから・・・
ちょっとそこで待っといてくれよな!」



恵子
「髭もしっかり剃っといてね~♪
私ジョリジョリ痛いの嫌だから!」




「お・・・おうっ!
恵子にはかなわんなぁ~~・・・」


ドテドテドテドテドテ・・・













何気ない朝の日常...

寝ぼすけな僕は...

朝が弱くてなかなかベッドから起きられない...

それでも君は...

毎朝ちゃんと僕を起こしに来てくれて...

台所で美味しい朝食を用意してくれたんだ...

真奈美の面倒も任せっきりで...


本当に...

ズボラでダメな夫だった...


だけど僕は...
本当に...

本当に幸せだったよ...

恵子・・・

・・・

僕は君を・・・










恵子
「ほら、あなた...
おサイフ、携帯電話、ハンカチに鞄・・・
大丈夫?忘れ物ないわよね?」




「まだひとつ...
忘れているぞ~~~・・・?」



恵子
「・・・・・・?
・・・何よ・・・
もう持って行く物は全部持ったでしょ?」




「・・・・・・・・・・・・・・・
んーーーーーーーーーーーーー・・・・」



恵子
「んふふふ・・・
もう~・・・
あなたったら~~・・・
しょうがないな~~・・・・・・」











「チュ❤」







真奈美
「あぁ~~~~~~~!!
ママとパパがチューしてる~~~!!」









それが...
君との...


最後のキスになるなんて...



そして...




恵子
「ねぇ...あなた...
今日金曜日だから、お仕事早く終わるんでしょ?」





「おうっ!
新しい企画の案件も目処が立たった事だし...
今日は残業もなく早く帰れるぞ!!」




恵子
「じゃあ...
今晩の夕飯、何がいい?」




「そうだなぁ~・・・
今日は寒いから、恵子の作ったアツアツの...」







「ロールキャベツが食べたいな!」







恵子
「ロールキャベツね!
オッケー!
ちょっと下ごしらえが面倒だけど...
まぁいいわ!任せといて!!」





「多めに作っといてくれよな~~♪」




恵子
「わかってるわよ♪」




「それじゃあ・・・」



恵子
「うん・・・」






「行って来まーーす!」 



恵子
「行ってらっしゃーーい!
気をつけねー!」





・・・・・・





これが....

恵子と交わした...

最後の言葉だった....





9年間・・・

僕と真奈美・・・

2人3脚で生きてきたよ・・・


まだ幼かった真奈美を...
男手1人育てるのは...
想像を絶する苦労だった...


父親と娘という関係は...

言ってみれば男と女...

いくら親子であれど...

性別の違いによって...

絶対に踏み入れる事の出来ない大きな壁があるんだよ...

真奈美が小学校高学年になる頃には...

何度も衝突したし...

母親の役割がどれほど必要か...

身をもって刻まれたよ...


だけど...

今こうして真奈美と一緒に...

君を想い...

祈りを捧げてる...


6歳だった真奈美も...

15歳になり...

4月から高校生だよ...


僕もすっかり43歳...

中年の親父になってしまって...

だけど...

僕と真奈美の中に残っている...

君と過ごした思い出の記憶は...



あの日で止まったままなんだ...



いつも明るくて...

いつも優しくて...

いつも朗らかで...

いつも活発で...

いつもキレイで...

いつも笑っている...

そんな君の姿が...



そんな恵子の姿しか・・・・・












真奈美
「父さん...
泣いてるの・・・?」





「あ・・・
真奈美...
ごめん...
父さん...
恵子の事...
色々思い出しちゃってな・・・」




真奈美
「いいよ・・・
今日ぐらい泣いてもさ...
神様は許してくれるよ...」





「神様かぁ・・・
もし本当に居てくれたら...
父さんは・・・
恵子を天国から連れてきてもらいたいなぁ...」





真奈美
「父さん・・・
海・・・
キレイだね・・・」





「うん・・・
キレイだね・・・
海の光が眩しいな・・・」




真奈美
「こんなにキレイな海なのに...
まっ黒な津波がこの砂浜一辺にあった松の木を押し流してしまうなんて・・・
何だか信じられない・・・」





「7万本もあった松の木を...
この1本だけを残して...」




真奈美
「あれ・・・?
ちょっと父さん!父さん!
あそこ!見てよ!」





「真奈美...
どうしたんだ...?」




真奈美
「ほら!父さん!
一本松のふもと見てよ!」



真奈美が指差す一本松のふもとをへ...
猛が目を伏せるやると...




そこには・・・
小さくてかわいらしい...
新芽の松の木が生えていました...

この松の木は...

誰が植えたのだでしょう...




真奈美
「わぁぁ~~~~~!!
こんなに小さな松の木が生えてるよ~~~!!
かわいい~~~~~!!!」





「またずいぶんと小さな松の木だな・・・
こんなの前は無かったよな気がするけど・・・?」






と・・・

2人が小さな松の木に夢中になっている...
その時でした・・・



パラパラパラ・・・
と何か・・・
雨のような雫が降ってきました・・・




真奈美
「え・・・!?
ちょっと父さん・・・!?
雨降ってきたんだけど・・・!?」



猛 
「わっ・・!わっ・・・!
なんだなんだなんだ~~・・・!!
急に雨が降るなんておかしいぞ~!?」




2人は突然の雨に...
慌てながら空を見上げると・・・



真奈美
「変なの~~・・・
雲なんてほとんど無いのに・・・」





「こんな晴れた日に雨なんて...
考えられないよ...
きっと...
松の木の若葉に付いていた朝露か何かの水滴が...
風に揺られて降ってきたのかもしれないな...」





2人が上から降ってきた...

謎の雫に不思議がっていると・・・

真奈美はある異変に気がついて大声をだした・・・





真奈美
「ちょっと父さーーんっっ!!!」





「な・・・!
何だよ真奈美・・・!!
急に大声出したりしてー!!
父さんびっくりするじゃないかー!!」




真奈美
「この雨みたいな水滴・・・!!

おしっこの匂いがするんだけどっっ!!!」





「おしっこ~・・・?
今の雫がかぁ?
ははは!まさかぁ~~・・♪」


クン...クン...クン...クン...


・・・と

猛も背広の袖を嗅いでみると・・・




「う・・・うわ・・・!
うそだろ・・・!?
これ・・・・!
本当に小便の匂いがする・・・!!」




真奈美
「でしょーーーっ!?
この匂いは間違いなく・・・
おしっこよっっ!!!」




「うっへっ!!
くっさいな~~!!
せっかくオーダーメイドした背広に小便かけられるなんて冗談じゃないぞ!!」



真奈美
「私だってー!!
今日母さんに高校の制服見てもらおうと思って着てきたのにーっ!!
こんなの最悪だよーっ!!」





「鳥の大群とか飛んでなかったよな・・・?」




真奈美
「もうっ!ヤダー!!
父さん!早く帰ろうよー!!
早くクリーニングに出さないと匂いが染みついちゃう!!」





「父さんだって・・・
このオーダーメイドしたスーツ高かったんだぞ!」





真奈美
「私帰るっ!!
父さん早くしてよ!!」




「待てよ真奈美ー!
走るのだけは勘弁してくれー!!」




怒りながら...

奇跡の一本松を後にした真奈美...

それを慌てて追いかける猛...



陸前高田市...
高田松原の空は...

冷たい雪の降っていた...
9年前のあの日とは...

うって変わって良い天気...







恵子...

天国から見ているかい...?

僕と真奈美は...

こんなに元気だよ...

まだまだ真奈美の気苦労が絶えない...
毎日が続きそうだけど...


君の分も...

しっかりと生きていくからね...



いつか真奈美が結婚して...

バージンロードを真奈美と一緒に歩く日が来るまでは...

気が抜けそうにないかな~~・・・








今日は2020年の3月11日


あの東日本大震災から9年目となる日


猛の愛する妻であり...

真奈美の母親の...

本条恵子に祈りを捧げ...

しんみりと思い出に浸っていたはずが...

空から降ってきた「おしっこ」のせいで・・・

ムードが壊れてしまいました・・・


この・・・


空から降ってきた「おしっこ」は・・・


一体誰の仕業なのでしょう・・・


西郷虎之助のブログを見てきたユーザーさんなら・・・


何となくわかる・・・よね・・・?












3・11~9st year hope~
「空から降ってきたものは・・・?」


(終わり)























































恵子へ

僕は今でも君のことを

愛している。








母さんへ

4月から高校へ入学するよ!

カッコイイ彼氏が出来たら紹介するね!


真奈美