どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

ウィーーー・・・ン・・・

テレレ...♪テレレ...♪テレレ...♪

古びた自動ドアが開き、来客を察知して単調な効果音が3回繰り返して鳴る...


「おや...いらっしゃい...」


お店の入り口付近にあるレジの番台で...
退屈そうにテレビを見ている店主らしきおじさんがこちらを見てそう言った...


「皆の衆や..
.一年振りじゃのう...」

「かっかっかっかっかっかっか!」


わしの名前は...

ナイトショップ「ふくろう」の店主。

「森之風九朗」じゃ...

皆はちゃんと覚えておったか?

昨年の始めに登場したからわかるよのう?

2つ前の記事じゃから嫌でもわかるわな!

かっかっかっかっかっかっか!


先ずは...新年の御挨拶じゃ...

皆様、新年あけましておめでとう御座います、本年も宜しくお願い致します。

...と言っても、このブログも...
わしの店もこの通り閑古鳥じゃ!

かっかっかっかっかっかっか!


さて、昨年は「おやちゃいぼうず」のうり坊が来てくれたが、今年は見えんのう...

実はのう...
今、虎之助は今必死で年始めの記事に投稿さるイラストを描いてるそうじゃが、正月の三が日まで間に合いそうにないんで、急遽別の年始め用の記事を書く事になったそうじゃ...


さて...
今回はどんなお話になるとやら...

早速本題に入るとするかのう...

かっかっかっかっかっかっか!



「どすこい!西郷虎之助の七転八倒!」

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2022年 1月1日

紅白歌合戦が終わって...
ゆく年くる年が始まってしばらくすると...

僕は毎年のように分厚い新聞を配る...

寒波の中、白い息をあげながら...
丁重に新聞を折り曲げ...
各々のお宅にあるポストや新聞袋へと配って行く...

今年で丁度20回目となる...

僕は人生の半分近くも...
新聞を配って来たんだなぁ...

冷たい風を受けながら...
今年で4年目となる...
ポンコツ丸3号」と共に住宅地や田畑を周る...

除夜の鐘を突く音が鳴っていた...

ほのかに護摩たきの香り...
片手薬師のかな...

新聞販売店から3回分けでようやく全ての新聞を配り終わる...
今年も雨が降ることなく無事に終えた...

この20年間...
元旦に雨が降られた経験は一度もない...

ジャージのポケットに潜らせといた100円玉を...
冷くなった手で取り出し...
100円均一の自動販売機で、ホットココアを買った...

取り出し口から出すと...
僕はココアの缶を両手で握りしめ...
冷たい頬に当てたりして暖をとる...

すぐに飲まずに、お腹のところに入れて...
ポンコツ丸に乗ってそのまま帰る...


...はずだったが....

僕は急遽公民館へと向かい...
広場にポンコツ丸を停める...

そしてジャンパーを脱ぎ...

足を広げ...腰を深く落ろすと...

右足を上げ...

ドスンッ!と力強く下ろす...

今後は左足を上げて...

ドスンッ!と...また力強く下ろす...:

僕は四股踏みを始めたのだ...

20回程繰り返すと...
寒かった体が...
ぽかぽかと暖かくなり...
額から汗が流れ始める...

四股を100回踏み終えると...

今後は摺り足を繰り返し...
繰り返し行った...

どうしてこんなことを始めたのかというと....ね....




「深山町公民館相撲稽古道場」


高橋正次朗(以下正次朗)
「えーー・・・
深山中学相撲部OB会・及び深山町相撲連盟の会長を代表致しまして...
新年の御挨拶を....

深山町の相撲連盟の皆様、深山中学相撲部OBの方々、現役中学相撲部のみんな、わんぱくちびっ子力士のみんな、いつも応援してくれている諸君!!

新年あけまして...
おめでとうございます!!!」


他の皆
「おめでとうございます!!!」


正次朗
「昨年、一昨年と、コロナウィルスの影響で、深山町の相撲行事、県大会、全国大会、青年部春の選抜戦、秋の奉納相撲の、全てが中止となり、相撲栄える深山町として、誠に残念な年となってしまいました、しかし....
深山町では、これまでのコロナ感染者はゼロ人でした、それが実り、ようやく今年2022年より、全ての相撲行事が実行される事が叶いました....!!」


拍手喝采
「パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!」


正次朗
「2022年元旦、本日こうして深山町の相撲連盟やOB会の方々、現役中学相撲部員、わんぱくちびっ子力士たちと初土俵に集まって頂いた事、誠に喜ばしく思います!」


正次朗
「本年は深山町の相撲の繁栄を願いまして....先ずは...
一本締めーーーーーー!!!」


正次朗
「いよぉぉぉぉぉぉぉーーーー!」

全員
「パァンッ!!!」

正次朗
「みんな頑張れよぉぉおおお!!」

全員
「パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!」


正次朗
「さて!深山町相撲関係者の皆様...
久しぶりだとは思いますが...
本日は懐かしい男を連れてきましたので紹介致します!!
.

私の古き同級生の仲間...
西郷虎之助でごさまいます!」


正次朗
「さぁ虎之助ぇ!こっち来いやぁ!!」


西郷虎之助(以下虎之助)
「え・えぇぇぇ・・・・!!!」


正次朗
「早よ前に来んかいや!!虎之助ぇ!」


虎之助
「い・・・いいよぉ・・・」


正次朗
「しばらく皆と顔合わせんかったんやから早よ来て御挨拶しろや!!」


虎之助
「いいってば・・・
なんでこっちに振るんだよ・・・」


正次朗
「何をオカマみたいにもじもじしとんや早よ来い!この野郎!やっと元旦の初土俵に顔だして来おったからな!!」




正次朗は嬉しそうに嫌がる僕の手首をギッュ!と強く掴んで前に連れて行った...



正次朗
「さぁ虎之助ぇ!皆様に御挨拶じゃ!
ほれ!しばらく振りじゃろうが!
コラッ!ちゃんと前向け!!」


虎之助
「う・・・うぅ・・・」


高橋恵(正次朗の奥さん)
「虎くぅ~~~ん♪
頑張って~~~~~~♪」


虎之助
「あ・・・あ・・・・
あ・・・あの・・・そ・・・
そ・・・その・・・・・」


相撲連盟の人々
「虎之助って、西さん家の息子かいや」

「はじめさんとこの息子や、ほれ農家の」

「はじめさんは奉納相撲で横綱になった人や、気難しい人じゃけんあまり皆とは話さんけどのう...」

「親父さんは誠はんやったわいなぁ...」


深山町の古い相撲連盟の御老人方々が僕の噂をヒソヒソしだす...
さらに....


深山中学相撲部OBの連中

「虎之助ー!大丈夫か~??
ちゃんと小便行ったか~~??」

「またおしっこ漏らすんじゃないか~?
ギャハハハハハ...」

「思い出さすなよ...!笑っちまうだろ!」

「ほら、あいつだよ...
入学式の時...やらかした奴だよ...!」

「あいつ大会の閉会式でもやらかしたんだぜ...!」

「親父さんと相撲連盟の前会長さんに怒られてわんわん泣いてたよなぁ!!笑」

「見ろよ...
顔が半べそになってるぜ...
あいつ今漏らしてるんじゃないのか?」


これだから相撲部OBの連中と顔をあわすのが嫌なんだ...
僕をみる度に過去の失態を掘り返して笑い話す奴ら...

大体僕の噂をするOBの連中は深山町から出ていない田舎の人間、都内に就職して1週間で逃げ帰って来た奴だっている、結局深山町でしかデカい顔出来ないから地元に戻ってきたんじゃないか...

そんな情けない奴らに...
何で僕が笑われないといけないんだ...


僕は顔を赤らめて何も言えないでいると...



柴田幸信(以下ユキラス)
「みんな静かにしないか!
今虎助が話そうとしてるんだから!」


僕は突然その声にハッ...とした...

後ろの方で腕を組みながら...
がっしり太い体格の親父が厳しい表情で僕の方を見ている...
泥に汚れた稽古廻しを逞しい体にしっかり締め込んで...

その姿は以前の甘ったれボンボンだった頃とは違い、結婚して父親となったかつての同級生...

ユキラスだった...

ユキラスは5年前に...
深山町に引っ越してきた市原海斗くんの母親である市原美智子さんと結婚した。

ユキラスは美智子さんを大切にし、海斗くんを実の息子のように愛情を注ぎ、強く厳しく逞しく育てた。

深山町ちびっ子相撲クラブに入った頃は...まだ小学5年生だった海斗くんも今では高校生になり...
小さかった体も、今ではユキラスの身長を抜いて175cm体重は95kgと大きな体に成長した、深山中学相撲部ではキャプテンを務めた。

そして...
昨年ユキラスと美智子さんの間に...
可愛らしい男の子が誕生した...

名前は「柴田孝太郎」

(正次朗が金太郎と提案したが却下された)


僕の知らないうちに...
ユキラスはすっかり親父の顔になっていた...


そんなユキラスと僕は...
些細な言い争いから大喧嘩をして絶縁状態が続いている...

それは3年前、父に酒米工場の手伝いを1日頼まれた時...
父が乗ったフォークリフトの爪先に吊り下げた米袋が落下して腕が下敷きになり、大怪我を負って入院していた時だった...

お見舞いに来たユキラスが言った一言に腹を立ててしまい、僕はユキラスに言ってはいけない事を言い放ってしまったのだ...

病院で大喧嘩をして、僕とユキラスは正次朗にもぶん殴られ、それから「お前とはもう絶交だ!」
泣きながら病室のドアをバンッ!と開けて走り去ってから...
今日まで僕とユキラスは一度も口を交わす所か合っていなかった...

それから腕の具合も奇跡的に回復して、今日こうして十数年振りに元旦の初土俵に顔を出したのは...

ユキラスと仲直りするためだったんだ...

昨年の12月28日の夜、正次朗に電話で僕の思いを全て話した...

すると正次朗は..:


正次朗
「よっしゃ!わかった!
虎之助の気持ちはよう分かった...
わしが協力しちゃるけえ、新聞配り終えたら深山町に帰って来い!
そしてお前も深山中学相撲部の一員なんやから、今年は元旦の初土俵が久しぶりに行われるさけぇ!
堂々と参加して!ちゃんと皆にも挨拶せえよ!ええな!」


虎之助
「うん...
わかった...
今年は参加する...」


正次朗
「なんや~!
弱気やなぁ~・・・!?」


虎之助
「あの...さぁ...」


正次朗
「あぁ~ん...?」


虎之助
「ユキラスさぁ...
まだ怒ってる...?」


正次朗
「さぁ~のぅ...
あいつも昨年チビが生まれたけん...
それであれこれ忙しそうやぞ~」


虎之助
「ほ...ほうなんかぁ...
とうとう...あいつも...
本物の父親になったんだなぁ...」


正次朗
「お前一人だけやぞ!
独身は・・・!」


虎之助
「もういいって...
結婚の話は...しないでよ...」


正次朗
「ほじゃけんお前は曽我部と結婚しとったら良かったんじゃ...
そうすれば今頃チビの一人や二人ぐらいこさえて幸せに暮らせとったのにのう~・・・」


虎之助
「もう遅いし切るよ...
明日も朝早いから...」


正次朗
「また逃げやがって...」


虎之助
「だって....」


正次朗
「だってじゃないわい!あほう!」


虎之助
「じゃあ切るよ...」


正次朗
「廻し忘れんなよ!
ちゃんとあるんか!?
無いんなら道場の汚いやつになるけど貸し出し用のやつ準備しておくぞ!」


虎之助
「九桜3号買った...」


正次朗
「おろしたては硬いけん...
わしが締めるの手伝ってやらい!」


虎之助
「うん...
ありがとう...」


正次朗
「大丈夫じゃけんのう!
心配すなや!
絶対にユキラスと仲直り出来るさけぇのう!!」

虎之助
「うん...」


正次朗
「じゃあの!
気いつけて来いよ!」


虎之助
「あ...うん...」


正次朗
「おう!おやすみ!
わしから切るからな!」


虎之助
「うん...
おやすみ...」


「ピッ...♪」


通話はとうに3時間は過ぎていた...

僕はスマホの通話画面から待ち受け画面に切り替え、しばらくジッ...と眺めながら...

2個の目覚まし時計の針がサクッ...サクッ...サクッ...と...
暗い部屋で刻み鳴っている音だけが聞こえた...






正次朗
「ほれ、虎之助ぇ!
ユキラスもちゃんと聞いとるぞ!
お前の思っている事を今ここで吐き出せ!!」



僕は今、十数年振りに...
この深山町公民館相撲稽古道場で...

裸の体に真新しい廻しを締め込み...
相撲連盟、深山中学相撲部OB、深山中学現役相撲部、深山町わんぱくちびっ子ちびっ子力士、保護者や関係者の皆の前に立っている...

今言わなくちゃ...
ここで逃げたら...


みんながこっちを見ている中...
腕を組んで厳しい表情のユキラスと目が合った...


虎之助
「ぼ..
.僕は...」


震える体に...
真っ赤になった半べそ顔で...
僕は唇をグッと仁王像のように瞑ると...

静かに口を開き...

僕の思いを打ち明けた...


「続く」


西郷虎之助2022年
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