どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

「おもいでぽろりん。」虎之助・4月11日・お誕生日スペシャル~

製作
PONTA・GRAPHICS」

企画
「人生は七転び八起きスペシャル」

監督・ナレーション
「西郷虎之助」


197○年・4月11日

春がきて…

桜の花びらが風に添い…

山々が新緑の葉で青くなる頃の深山町に・・・

それはそれは…
元気な男の子が生まれました…

名前は…
「虎之助」

「龍雲寺」の和尚である龍玄さんが…

深山町に大きな産声を上げる元気な男の子に…

その名を授けました…


もう…

皆さんは…
知っていますよね…

そう…
わたくし…

「西郷虎之助」でございます…

このシリーズも早や3回目

前回の「あの日の僕へ2」からもう1年がたったのです…

大変だったんですよ~…
あれを作るのは…

出来上がった時に、もう短時間でこれ以上のものは絶対に作れない…!

…と自分で確信しました

というわけで…
今回からまた別シリーズとして始めさせて頂きますので…
まぁ…皆さん夜も遅いですが、最後までお付き合いの程…宜しくお願い致します。

さて、今回は…
私が14歳になった時の…
思い出エピソードを綴ってみました…

では…
ごゆっくりどうぞ・・・



「おもいでぽろりん。」

イメージ 2

~虎之助・4月11日・お誕生日スペシャル~


それは
中学2年生になったばかりの春でした…

まだ始業式からわずか数日、テストも終わり、授業も午前中で終了、相撲部の練習もまだ始まっていません…
なので…
学校内はどことなく穏やかであり、みんな午後から何して遊ぼうかと…
教室ではそんな話題で持ち切りでした…

そして…

今日は4月11日…
虎之助、14歳の誕生日です…

しかもその日は3時間授業の半ドン土曜日

もちろん相撲部の稽古もまだありません…

翌日は嬉しい日曜日ということで、虎之助は朝からウキウキしていました


深山中学校
「2年4組」

「キーン♪コーン♪カーン♪コーン♪」


虎之助
「終わった~♪終わった~♪帰ろうぜ~♪ケン坊!」

ケン坊
「今日は誕生日だな!
虎助!」

虎之助
「おうよ!ケーキは食えるしプレゼントもらえるし!土曜日だし!稽古ないし!人生で最高に幸せな日だぜいっ!!」

ケン坊
「まったく…虎助ったら~・・・・
今日おばちゃんが吉光ん家でケーキ買ってきてくれるんだってな!」

虎之助
「おうよ!おうよ!
吉光ん家の「吉光屋」で、バターケーキ買ってきてくれるんだ!!」

ケン坊
「あ!吉光だ!おーい!三ツ矢サイダー!」

吉光
「ゲッ!虎・健コンビ・・・
相撲部が僕に何の用だよ・・・」

虎之助
「今日俺のかーちゃんが、お前ん家のケーキ買うんだからな~!
お店の売り上げに貢献してやるんだから感謝しろよ~♪」

同じクラスの吉光将人(まさと)の家は、深山町唯一のパン・ケーキ屋さんであり、誕生日のケーキは毎年、「パン・ケーキの吉光屋」で買うのが定番でした

この「吉光屋」という店名によって、将人は「三ツ矢サイダー」という…あだ名がつけられたという…

吉光
「あぁ、今日は西郷の誕生日なんか~」

虎之助
三ツ矢サイダーも来るか?バターケーキ食わせてやるぞ?」

吉光
「いらないよ!もう食い飽きてウンザリだ、だいたいバターケーキなんてマズくて食えないよ、僕は松山市のプランタンのケーキじゃなきゃ嫌だ!」

虎之助
「プランタンって生クリームのケーキ作ってる店だっけ?」

ケン坊
「バッカだなぁ~・・
プランタンなんて金持ちが行く店だろ~?」

吉光
「そうそう!やっぱり松山市内で1番評判なのは、プランタンの生クリームケーキだよ♪
僕ん家のバターケーキなんて比べられないな!」


昭和末期のバブル経済期…
当時深山町にはケーキ店が一件だけしかなく…
町内の皆はほとんど誕生日ケーキは「吉光屋」で予約して買うのが定番であった…
しかし、「吉光屋」で作られているケーキは、油脂を使った、ネットリ食感のバタークリームケーキのみであり、生クリームケーキのようなおしゃれで美味しいケーキなんて深山町民にとっては神の領域であり、味わった事がある町内人は、ほんの一部のお金持ちの家だけであった…
吉光将人が話題に出した、生クリームのケーキを作っている「プランタン」や「一六本舗」でケーキを買うには、バスか車で松山市内まで行かなければならないのである…


虎之助
「俺…生クリームケーキなんて食った事ないからわかんねぇよ・・・」

吉光
「一度食ってみろよ~!プランタンの生クリームケーキ、すっごくうまいよ!!もうバターケーキなんかマズくて食えなくなるから」

ケン坊
「そんな事言ったって…
松山市まで行ってわざわざケーキなんか買いに行けるわけないだろ・・・」

虎之助
「そーだよ!そーだよ!
俺はバターケーキ大好きだぞ!あのマッタリしたバタークリームが旨いんじゃないか!」

吉光
「オエ~~~~ッ!!
その味覚おかしいよ!
バタークリームなんて油脂使ってるから体に悪いのに…
今だに生クリームケーキ食った事無いなんてお前ら本当に遅れてるなぁ~~!!」

虎之助
「うるせいや~~いっ!
もう三ツ矢サイダーなんて呼んでやらないよ!!」

ケン坊
「虎助~・・・
それぐらいで怒るなよ~…・・・・」

吉光
「いーよ!いーよ!
どうせお前ん家に、あの暑苦しい相撲部の連中が来るんだろ?
あんな奴らと一緒なんてゴメンだぜ!」

虎之助
「俺だって部活の奴らが来られたら嫌だよ・・・・!
でも・・・
ケン坊、どうする?相撲部の誰か誘ってみようか…?」

ケン坊
「虎助の誕生日なんだから、虎助の好きにしなよ…」

吉光
「じゃ!俺、今日父ちゃんと一緒に松山市の「伊予鉄そごう」に行くからもう帰るね~♪」

虎之助
「豪華だな~!デパートで買い物なんてよ…
じゃーなー!」

ケン坊
「俺、デパートなんて、生まれてから一度も行ったことないよ・・・」

吉光
「たまには松山市に行けよ、ど田舎深山しか知らないなんて井戸の中のカエルだぞ♪じゃーな」

ケン坊
「ふんっ!悪かったな!
どーせ俺達は田舎の中のカエルですよ!」

虎之助
「なあっ!ケン坊!
それより俺らも早く帰ろうぜ!
ケーキ♪ケーキ♪
バターケーキ!!
楽しみだなぁ~~!!」

ケン坊
「あれ?相撲部の誰か誘わないの?」

虎之助
「う~~~・・・ん…
正次郎は絶対にイヤだし…
太もダメだ!
・・・・・・・・
ユキラスぐらいかな…
誘えるの・・・」

ユキラス
「ねぇ~♪ねぇ~♪
虎助~♪、ケン坊~♪
三ツ矢サイダーと何話してたのぉ~~~?」

虎之助
「あ、ユキラス~♪
ちょうど良かったぁ~!
今日、俺ん家で誕生日会やるんだけど・・・・
ユキラスも来るか?」

ユキラス
「う~・・・ん・・
行かな~い…」

虎之助
「な…なんだよっ!
せっかく人が誘ってやったのによっ!!」

ユキラス
「だって・・・
今日は・・・
ねぇ・・・・ケン坊…」

ケン坊
「あ・・・うん・・・」

虎之助
「・・・・・・?
な・・なんだ・・・?
ケン坊とユキラス・・・
お互い見つめ合っちゃって・・・・」

ユキラス
「ボク、今日お父さんとツインファミコン買いに行くから無理なんだな~♪
虎助ごめんね~♪」

虎之助
「なんなんだよっ!
ユキラスん家は金持ちだからファミコンなんてすでに持ってるじゃないか!」

ユキラス
「い~もん♪だって、ツインファミコンは、今話題のディスクシステム搭載型なんだよ♪」

虎之助
「いーな!いーな!
電器店の金持ちは!!
すんげぇ~腹立つ~!!
ケン坊、帰ろうぜ!」

ケン坊
「う…うん・・・」


「よう!虎之助ぇ~♪
お前今日誕生日なんだってなぁ~~~~・・・?
なんなら俺、お前ん家言ってやろうか…?
誕生日ケーキ、食わせてくれよ~♪」

虎之助
「べーーーーーだっ!!
誰がお前なんて誘うもんか!!
行こう?ケン坊!帰ろうぜ!」

ケン坊
「う・・・うん・・・」


「ふん!何だよこの野郎!おチビり虎・・・」

ケン坊
「太っっ!!今日は虎助の誕生日だぞっ!!
そんな意地悪言ったら俺は許さないからなっ!!」


「うっ・・・・・・!!」

虎之助
「ケン坊・・・・・・」


「ふんっ!・・・・
なんだよ!虎助、虎助って気持ち悪りーな!
お前らつき合ってんのか?
もういーよ!誰が虎之助の誕生日なんて祝ってやるもんか!!」

ケン坊
「虎助・・・
気にしちゃダメだからな・・・帰ろう・・・」

虎之助
「う・・・うん・・・」


それから僕は…
太を誕生日会に誘わず…
ケン坊と一緒に帰りました

その帰り道・・・

ユキラスの家の「柴田電器店」のガラス越しから見える…
ナショナルの…
赤いダブルラジオカセット「ラブコール」を見た僕とケン坊は・・・」

虎之助
「いぃ~~よなぁ~~…
このナショナルの赤いダブルラジオカセット・・・
「ラブコール」
カッコイイなぁ~・・・
欲っしいよなぁ~~・・・・」

ケン坊
「定価43800円かぁ・・・・・・・
ユキラスん家で買ったら値引きしてくれるだろうから、定価よりはもっと安くなるけれど…
とても俺たちのおこづかい合わせたって買えるもんじゃないね・・・

虎之助
「コマーシャルで、「43800だから予算ばっちり♪」とか言ってるけど・・・
どこがばっちりなんだよ!って思うわい!」

ケン坊
「SANYOの「おしゃれなテレコ」なら34800円でもうちょっと安いけど…
ユキラスん家はナショナル系列店だから他のメーカー扱ってないんだよなぁ…」

虎之助
「サンヨ~♪おしゃれなテレ・コ♪だよな~♪
34800円でもまだ高いよ・・・」

あの頃は…
まだCDではなくレコード、LP・EPの時代…
もちろん中学生のおこづかいでレコード盤はもちろん、レコードプレーヤーやステレオのような高価すぎる電化製品なんて、とてもじゃないが買えません・・・
そこでレコード、アルバムカセットを持っている人に頼み込んで、カセットテープに録音してもらうのが頼みの綱だった・・・
また、ラジカセはラジオ放送やテレビ音声、外部の音や自分の声まで簡単に録音出来る所が大変魅力的であり、それはもうラジカセ1台あれば、音楽で退屈無しに遊べるといっても過言ではない程の優れ物であったのだ…

「虎之助の家」

虎之助
「ただいま~~!!!
かーちゃんケーキ~♪」

ケン坊
「おばさん、ただいま!」

昌子(虎之助の母)
「虎、ケンちゃん、おかえりなさい~
今カレーが出来たとこだから、手を洗ったら食べなさい。」

七転び八起きユーザーの皆はもう御存知であろうが説明する…
お向かいに住んでる幼なじみのケン坊、森山家では、父親がダム建築の出稼ぎ労働、いわゆるたこ部屋労働者であった為、ケン坊の家に姿はなかった…、そして母親のキヨ子さんは、農家であった西郷家の農作業を頻繁に手伝ってくれていました・・
その代償として、ケン坊とその弟、マー坊(まさひろ)の、食事やお風呂、寝泊まり等の生活全般を西郷家で共に過ごさせていたので、ほとんどケン坊の家と西郷家は族同然のお付き合いする仲であったのです。

虎之助
「かーちゃん!俺の誕生日ケーキ、買っといてくれたよな!」

昌子
「虎・・・・
あのねぇ・・・
今日お父ちゃんが・・」

虎之助
「え・・・・!?」

昌子
「今朝…コンバインで足を挟んじゃってね・・・
右足首を骨折したのよ・・・」

虎之助
「えぇーー!?父ちゃん…大丈夫なのかっ!?」

ケン坊
「それでおじさん、どうしたの!?」

昌子
「救急車呼ぶにもこんな田舎じゃ時間かかるでしょお?だからお母ちゃんが軽トラで病院まで連れてったのよ~・・・」

ケン坊
「じゃあ…おじさん…
深山済生会病院に居るんだね・・・」

昌子
済生会病院に一度連れて行って応急処置はしてもらったんよ・・・
それから相撲の会長さんの車でね、松山市内の県病院までお母ちゃんも一緒に…お父ちゃんを連れて行ってたのよ~・・・」

虎之助
「じゃあ・・・
お父ちゃん入院したの!?」

昌子
「当たり前でしょ!
足首骨折したんだから~」

虎之助
「お母ちゃん、沖田のおっさん(相撲の会長)と松山市内まで行ったって事は・・・・・
プランタンか一六でケーキ買ってきてくれたの!?」

ケン坊
「虎助ぇ~・・・・
何言ってんだよ・・・
こんな時に・・・」

ケン坊
「だって~~・・・
お父ちゃんが骨折したかもしれないけど・・・
俺の誕生日には変わりないじゃんか。」

昌子
「無いわよ。キッパリ
ケーキなんて・・・
買いに行くヒマあるわけないでしょ!」

虎之助
「えぇーーーぇえっ!
じゃあ!俺のケーキは!?今日は俺の誕生日だぞ!?なんでケーキ買ってきてくれなかったんだいっ!
もう1週間前から約束してたじゃないかーーっ!!」

昌子
「あんたねぇっ!!
なんて事言い出すのよ!!
お父ちゃんが心配じゃないのっ!?
ケーキは来週!!
それまで我慢しなさい!」

虎之助
「嫌だいっ!!!
楽しみにしてたんだぞ!
誕生日ケーキ予約してたんたまからさ!?
今から吉光屋まで買いに行ったら間に合うだろ!?」

昌子
「さっき吉光屋さんとこに電話して、来週の土曜日に変更してもらいました!」

虎之助
「なんでだよぉっ!!
じゃあ俺の誕生日会、どうするんだいっ!!」

昌子
「もうっ!この子ったら!お父ちゃんが怪我して大変な時なのにケーキ!ケーキって!!」

ケン坊
「そうだよ…!
虎助わがまま言い過ぎだぞ!!
ケーキくらい来週まで我慢しろよー!」

昌子
「ケンちゃん・・・
ごめんなさいねぇ~・・
私ね…これからまた県病院に行って、今夜から明日までお父ちゃんの看病しないといけないのよ~・・・
いっぱいカレー作っておいたから、しばらく御飯はそれで良いかしら~・・」

ケン坊
「うん、俺もマー坊もカレー大好きだから3日位続いても平気だよ!」

昌子
「キヨ子ちゃんにもちゃんと伝えてるから、もしカレーが無くなったらお願いね、うちの倉庫にお野菜がたくさんあるからどれでも使って良いよって!」

ケン坊
「うん、わかった!
おばさん、こっちの心配はいらないから、おじさんの看病してあげてよ!」

昌子
「まったく!ケンちゃんの方がしっかりしてるわ!本当お兄さんね!!
それに比べてうちの虎は子どものまんまだわ!!」

虎之助
「もういいわいっ!!
ケーキもカレーもいらないやいっ!!
お父ちゃんもお母ちゃんも大っ嫌いだぁっ!!」

僕は、母にそう言い放つと・・・
隠居にある自分の部屋に行き、布団をかぶってずっと泣いていました・・・
それは今でもはっきり覚えています・・・

今ではケーキなんて何処にでも売っているし、そんな珍しいものではありませんが・・・
あの当時は…
ケーキが食べられるのは誕生日とクリスマスのみでしたからね~・・・
すごく楽しみにしていたのでしょう・・・
誕生日のケーキ・・・
それが突然無しになってしまったのは・・・
14歳を迎えたばかりの僕にとっては相当ショックだったんです・・・

それから僕は・・・
泣き疲れてそのまま布団の中で眠っていました・・・
部屋が薄暗くなってきて…
いつの間にか夕方になった頃、ふと目を覚めましたが・・・
僕は布団から出ようとはしませんでした・・・
すると・・・・
外からガヤガヤと騒がしい声が聞こえてきます…
誰だろう・・・と気になりましたが、それでも僕は布団から出ませんでした…

マー坊
「虎に~ちゃん・・・
まだ怒ってるの~・・?」

ケン坊の弟、マー坊が僕の所にやってきました…
そして・・・・

正次郎
「ゴラァッ!!
虎之助ぇっ!!
えぇーー加減に拗ねとらんで起きんかいっ!!」


「よお~虎之助~♪
お前さっき、ケーキが無いけんってわがまま言いよったんやとなぁ~~♪♪」

ユキラス
「虎助~~♪
みんな来たんだよ~~♪
元気出して、早く母屋へおいでよ~~~♪
僕たち相撲部で、虎助の誕生日会やるよ~~♪
早く起きなよ~~~♪」

ケン坊
「虎助、お誕生日・・
おめでとう。
みんな来てくれたんだぞ、いい加減拗ねてないで起きろよ。」

ユキラス
「お母さんが作ってくれたフライドチキンとポテトサラダ、たくさん用意したからね~~♪」


「俺達も腹ペコなんやから、早くしろよな~~♪」

ケン坊
「虎助、ケーキは無いけどさ…おばさんが作ってくれたカレーに、ユキラスが持ってきてくれたフライドチキンとポテトサラダがあるよ、もう準備出来てるから来いよ…。」

僕の誕生日に…
相撲部のみんながやってきてくれたのです…
だけど…
僕はなんだか照れくさくって・・・
布団の中でタヌキ寝入りを続けていました・・・

すると…

正次郎
「こいつ絶対寝たふりしとるからな、おい!太!アレをやってやれ!」


「おう!まかせとけ!」

正次郎が言う…
太のアレとは…


「くーるまに♪ポピー♪ポピーポピー…」

虎之助
「・・・・・!!
くっく・・・・!!」

マー坊
「あ~~~♪
虎に~ちゃんのお布団が動いた~~~♪♪」


「きーもちん♪よか~♪ヨカー…ヨカー…」
↑車にポピーと同じ発音

虎之助
「かっかっか・・・
くっくっく・・・!」

ユキラス
「きーもちんよか~♪ヨカー♪ヨカー♪だって!
あっはっはっはっは!」

正次郎
「ほれ見ろ!こいつ笑いよるぞ!」 


「カ~ルビ~ぃ~のぉ~~ぉ♪ポテトチップス♪
カシュリッ♪」

虎之助
「くっひっひっひ…!
かっかっかっかっか…!」


「頑張りやぁ~~…
蚊のカッちゃん・・・」

虎之助
「けけけけけ・・・!
ひひひひひひ・・・!」

正次郎
「けけけけけ笑っとらんで・・・・
とっと起きんかいっ!!」

痺れを切らした深山町の番長、正次郎はついに…
僕が被っていた布団を引っぺがした…
僕は、太が言うコマーシャルのモノマネが非常に笑いのツボになり、泣いたり拗ねたりした時は、いつもこれで笑わかされるのでした…

正次郎
「オラァッ!!
行くぞぉっ!!」

虎之助
「ふ…ふんだ…!」

正次郎
「よーし!!
みんなで虎之助をこちょばしてやれー!!」

全員
「コチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョコチョ!!」

虎之助
「ぎゃははははは!!
ぐぎゃひひひひひ!!
や・・・・やめて・・・・やめ・・・・!
こちょばい・・・!!」

「ブビッ!!」

正次郎
「あぁー!今こいつ屁ぇこきやがったなっ!!!」

ユキラス
「あぁ~~♪
臭っさ~~~~い♪」


「臭っせぇぇぇーぇえっ!
お前クソまで出したんじゃないだろうな!!笑」

マー坊
「そーだよ~♪
虎にーちゃん、すぐにブッって!おならするんだ~♪」

ケン坊
「虎助が、お風呂入ってる時にやったのは、もっと臭いんだぞ~・・」

正次郎
「虎之助ぇっ!!
さぁ!行くぞー!!
トロトロすんなっ!!」

こうして…
僕は相撲部のみんなに連れられて母屋へと行くと…

虎之助
「あぁーっ!!?」

龍玄さん
「おやおや…
誰もおらんから、勝手に上がらせてもらったぞい♪」

ケン坊
「龍玄さんだ・・・!
どうしたの・・・!?」

マー坊
「あ~♪
つるつる頭のおいちゃんだ~~♪」

正次郎
「おうっ!なまくら坊主のおっさんやないけぇ!」

龍玄さん
「虎坊や、これ買うてきたからみんなで仲良くお食べぇ~や♪」


「あぁーーっ!!
プランタンのケーキや!」

ユキラス
「ほんとだ~~♪
僕はいつも食べてるもんね~~♪」

虎之助
「龍玄さん・・・
これ・・・プランタンのケーキだよね・・・?」

龍玄さん
「ほうじゃよ♪
ケーキ大好きな虎坊の為に、松山市まで行って買うてきたのじゃ♪
虎坊や、お誕生日おめでとう…。」

正次郎
「お・・・おっさん!!
ま・・・まさかその作務衣着の恰好で松山市内ウロついとったんかいっ!?」

龍玄さん
「ほうじゃよ♪、わしはこの作務衣しか持っとらんのでのぅ~♪」

ケン坊
「龍玄さん・・・
もしかして・・・
このケーキって・・・」

龍玄さん
「ほれ、空けてみるか♪」


「うぉぉーーーっ!!
ケーキが白い!!
幻の生クリームケーキじゃねぇかぁぁあっ!!」

正次郎
「おっさん太っ腹やのう!だてに白フン一丁で井戸水あびとるわけやわい!!」

ユキラス
「僕はいっつも食べてるもんね~~♪」

ケン坊
「やったな!虎助!
俺達初めて生クリームケーキ食えるぞ!!」

虎之助
「あ・・・・
ありがとう・・・
龍玄さん・・・」

龍玄さん
「虎坊や、先ずはここに集まってくれたお友達に感謝するのじゃぞ・・・
友は一生の宝じゃ…」

虎之助
「う・・・うん・・・
み・・・みんな・・・
さっきは拗ねててごめん・・・今日は・・・来てくれて…ありがとう・・・。」

ケン坊
「それじゃあ正次郎、太、ユキラス、マー坊・・・
始めようよ・・・」

虎之助
「え・・・?」

正次郎
「虎之助ぇ・・・
これ、みんなからのプレゼントや・・・」

ユキラス
「今日まで内緒にしてたんだよね~~♪」


「ほらよ、俺のプレゼントは、窯焼きで作ったポスト型の貯金箱や!
虎之助、しっかり貯金しろよ、大人になってから困るぞ~~♪」

正次郎
「ワシは親父とや!
ほれ!ペポカボチャの種を使った漢方粒や、小便近いお前にや!しっかり飲んで治せよ!」

マー坊
「虎にーちゃん、はい、うる星やつらのぬり絵だよ~~♪」

ケン坊
「はい、虎助…
俺はマクセルU-1のカセットテープ3本。」

ユキラス
「虎助~~♪
僕からはこれだよ~~♪
「絶対チェッカーズ」のアルバムカセットテープ♪」

虎之助
「み・・・みんなこんなに・・・・
ありがとう!俺・・・
大切にするからな!!」

龍玄さん
「よかったのう~・・・
虎坊や・・・
こんなにお友達に慕われて・・・・
これからも…感謝の気持ちを忘れるでないぞ…」

虎之助
「う・・・うん・・・!
・・・だけど・・・・
ケン坊がくれたカセットテープとユキラスがくれたチェッカーズのアルバムカセット・・・
昔、爺ちゃんが使ってたモノラルラジカセ、もう壊れちゃったから・・・
すぐに聴けないのが残念だなぁ~・・・」
 
そう残念そうにつぶやいた僕を見て・・・
みんなはニコニコしながら顔を合わせ・・・

「じゃあ、教えてあげようか」・・・と
ケン坊が合図をする…
それは何なのだろうかと…
僕は不思議そうに首を傾げると・・・・・

ケン坊
「虎助…後ろを見てみなよ・・・」

正次郎
「本日最大のサプライズやからなぁ~~っ!!」


「まったく…うらやましすぎるぜ!!虎之助!」

マー坊
「虎にーちゃんの、お父ちゃんからのプレゼントだよ~」

ユキラス
「虎助のおじさんが僕ん家で買ってくれたんだあ~~~♪
毎度ありぃ~~~♪♪」

僕が後ろを振り返ると…
御仏壇の横に・・・
横長のダンボールが置かれていた・・・
それは・・・・!!!

虎之助
「あぁぁぁーーーっ!!
さっきユキラスん家で見たやつだ・・・・!!」

僕は今でも忘れない・・・
その横長のダンボールには・・・・
Nationalラジオカセット
「LOVE・COLE」
と表示されていて・・・
ダンボールにはそのラジカセのイラストが印刷されていたのです…

虎之助
「ウソだろうっ!!!
まさか…!まさか…!まさか・・・!!!
ナショナルのラブ・コールかよっ!!!」

ケン坊
「ごめんな…虎助…
俺達みんな知ってたんだけど…
おじさんが内緒にしておいてほしいって言ってたから…今まで黙ってたんだ…」

虎之助
「やったぁぁあぁぁぁーーーっ!!!
俺・・!今最高に幸せだよぉぉーーぉおおっ!!」

龍玄さん
「虎坊や・・・
さっき昌子はんに…
お父ちゃんもお母ちゃんも大っ嫌いって言ってたそうじゃが・・・・
どうなのじゃ・・・?」

虎之助
「うん・・・・
ご・・・ごめんなさい・・・・俺・・・明日・・
お父ちゃんのお見舞いに・・・松山市に行ってくる・・・・・!!
県病院に行ったら・・・・お父ちゃんに…
ありがとう…って・・・
ちゃんと言うんだ…!」

龍玄さん
「ほうじゃぞ!
それでよろしい!
はじめ(父の名)はんに…
しっかり感謝の気持ちを伝えてくるのじゃ♪」

ケン坊
「虎助!俺も一緒に行くよ!」
マー坊
「あ~~!お兄ちゃんずる~い!ボクも行く~!!」
正次郎
「ワシも行くからな!」

「しゃあないなぁ~…
俺も付いてってやらあ♪」
ユキラス
「じゃ僕も行こ~っと♪」

龍玄
「かっかっかっかっか!
みんな良い子じゃのう♪
では、ワシからみんなにコレをあげような…」

ケン坊
「あ!伊予鉄バスに勤務している西岡さんから貰ったバスのフリーパスチケット!!」

龍玄
「ワシはバスなんてめったに乗らんのでのう~・・
使い道が無いのじゃ…
みんなでお使いや~♪」


「おっしゃー!!
ただで松山市行けるぜ!」

正次郎
「え~のう!坊さんは檀家さんからアレコレもらえてのう~!」

ケン坊
「ありがとう龍玄さん!
これすごい助かるよ!」

ユキラス
「それ、僕ん家にもあるもんね~♪」



マー坊
「ねぇ~~~・・・
ボクお腹すいちゃった~
早くケーキとごちそう食べようよ~~・・・」

龍玄
「ようし~♪
食べる前に、記念撮影じゃ♪ほれ、みんなケーキの前に集まれ~~♪」

正次郎
「そのカメラも檀家さんからもらったな!!
このぉ!なまくら坊主めっ!!(笑)」

龍玄
「かっかっかっかっか!
良かろう~♪
悔しかったらお前さんも坊主になれ♪」

ケン坊
「虎助は主役だから一番前だぞ!ほら、ナショナルのラブコール持って!」

ユキラス
「1年間無料保障ついてるから、保証書無くしちゃダメだよ~~♪」

マー坊
「あ~~ん、不良のお兄ちゃ~~ん、ボク写らないよ~~~!
抱っこして~~♪」

正次郎
「よーーーし!!来い!」 

マー坊
「わぁ~~~い♪」

虎之助
「龍玄さん、準備出来たよ~~♪」

龍玄さん
「ほれじゃあ行くぞ~♪」


「はい♪皆さん笑って♪マルチーーーーズ♪」

カシャリ♪

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欲しかったナショナルのラジカセ、ラブ・コールを手にして、テーブルにはプランタンの生クリームケーキ

満面に笑みを浮かべて笑っていたあの日の泣きベソ少年が・・・
ちょっぴり大人の階段を登り始めた・・・
暖かい春の夕暮れ・・・

この14歳の誕生日…
こうしてみんなで集まって…
祝ってくれたのは…
これが最後でした・・・
今でも忘れない・・・
幸せで…楽しくて…
最高のハッピーバースディでした・・・

初めて食べたプランタンの生クリームケーキの味は・・・・
それはもう・・・

今現在は・・・
誕生日なんか来たって、ちっとも嬉しくないし…
誰かにお祝いされる訳でもなく・・・
ただ歳を重ねて老けていく・・・・

またあの頃に・・・

戻れるものなら・・・

薄暗い網戸の外から…

春蝉の鳴き声が…
僕を祝福してくれてるようだった…

~虎之助・4月11日・お誕生日スペシャル~
「おもいでぽろりん。」

~終~