どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

3.11~風のゆくえ~(第2話)「父親の大きな背中と牛乳石鹸」

これは

陸前高田市に住む

ある4人家族のおはなしです

 

大森武志

独立軽運送会社を営む36歳、学生時代は野球部に所属し、グラウンドで夢を追いかけていましたが、万年補欠でレギュラーにはなれず、大きな体格に力持ち、だけどちょっぴりお人好しで頼りない一面を持つ、一郎の良き父親、趣味は息子とのキャッチボール

 

大森和恵

イオンでレジのパート勤務の30歳の主婦、武志が正社員勤務をしていた頃に出会い、あれよあれよという間に結婚した、サッパリとしていて気が強い性格、時に頼りない武志を支える、料理の腕は今一つで姑の幸子に助けられている、趣味はカラオケで学生時代ファンだった安室奈美恵をよく歌う。

 

森一郎

大森家の長男の9歳、父親ゆずりのわんぱく坊主であり、野球が大好きな男の子だけど、ひとりっ子であるが故に甘えん坊なところもある、母・和恵が口うるさく厳しいのもあり、温厚な武志にばかり懐いている根っからのパパっ子、武志に似てスポーツは得意だが勉強は苦手である、将来の夢は野球選手

 

大森幸子

武志の母、60歳還暦だけどまだまだ元気いっぱい、ウォーキングを日課にしている、家庭菜園が趣味で庭で無農薬の野菜を育て、夕食の献立に役立てている、料理の基本は(さしすせそ)との教えで煮付けの味付けは真似できない程の腕前、梅干しや白菜漬けも熟練された味付けでご近所さんからも大評判、五木ひろしのファン。

 

とても個性豊かな4人家族は...

毎日ドタバタな日常を過ごしながらも幸せに暮らしていました...

 

そう...

あの日が来るまでは...

 

3.11~風のゆくえ~(第2話)

「父親の大きな背中と牛乳石鹸

アナログ放送

 

文・ヘタなイラスト

とらのすけ

 

おはなし・語り

森ノ風九朗

(ナイトショップ・ふくろう店主)

 

 

大森家の夜・お風呂場

 

 

バシャーーン・・・!

ザバァーーー・・・!

キャハハハハハ!

ワッハッハッハッハッハ!

 

大森家のお風呂場小窓から...

楽しそうな親子の笑い声が聞こえてきます...

 

武志

よぉーし!じゃあ一郎!

父さんの背中洗ってくれるか?

 

一郎

うん!いいよ!

お父さん背中向けて!

 

木造2階建ての古いたたずまいの家の小窓から...

楽しそうにお風呂に入っている親子の笑い声と...

モクモクと曇のような湯気が...

 

暗い夜空へと...

静かに消えていくよう...

 

三日月おつきさまと...

キラキラおほしさまたちは...

そんな暖かい2人を優しく見守っていました..

 

武志

「よっこらしょっと!」

 

武志はたくましい大きな体を下ろし...

風呂椅子にお尻をのせて座り...

一郎に背中を向けました...

 

一郎

「お父さんは牛乳石鹸でいい?」

 

武志

「おう、そうだぞ~!

牛乳石鹸で洗ってくれよ~!」

 

一郎

「わかった!牛乳石鹸だね!

ちょっと待っててね!」

 

一郎は牛乳石鹸を手に取ると、ナイロン製のボディタオルに乗せてゴシゴシと馴染ませました...

 

武志

「お!良い香りがしてきたなぁ~」

 

一郎

「お父さんは牛乳石鹸が好きなんだよね!お母さんが使ってるビオレUはキライであんまり使わないんだよね!」

 

武志

「父さんは子供の頃から牛乳石鹸で体洗ってたから、ビオレUみたいなボディソープはヌルヌルしてるから嫌なんだよなぁ~」

 

一郎

「僕も牛乳石鹸大好き!

青い箱のやつ!良い香りするもんね!」

 

武志

「牛~乳~石鹸♪良い石鹸♪」

 

一郎

「アハハハハ!父さん変な歌!」

 

武志

「これはな父さんが子供の頃な、牛乳石鹸のコマーシャルでこの歌がテレビで流れてたんだぞぉ~」

 

一郎

「ふぅーーん・・・

僕、知らないや、聴いたことないもん!」

 

大森家の風呂場には...

昔から必ず牛乳石鹸が備えてあった... 

洗面所の棚には牛乳石鹸の青箱がいくつも置かれてあり、お風呂場の石鹸が小さくなると、棚から新しい箱から石鹸を出すと... 

真新しい牛乳石鹸のあの優しい香りを嗅いだりしたものである...

 

一郎にとって...

牛乳石鹸は幼少期から父親と一緒にお風呂に入った記憶として忘れることの出来ない...

思い出の香りになっていた...

 

一郎

「よーし!泡のソフトクリームが出来た!お父さんいくよ!」

 

武志

「おう!よろしく!」 

 

ゴッシ!ゴッシ!

ゴーシー!ゴーシー!

ガッシ!ガッシ!

ゴーシュー!ゴーシュー!

ガシガシ!ゴシゴシ!

 

一郎

「うんしょ!こらしょ!」

 

武志

「ハッハッハッハッハッハ!!

何だかくすぐったいなぁ!!

一郎!もっと強く擦ってくれないと背中の垢が落ないぞ~~!」

 

一郎

「えぇ~~~!?

そんなぁ~~!!

僕...めちゃくちゃ強くやってるんだよ~~?」

 

武志

「だーめ!だーめ!

もっともっと!強くやらないと!

キャッチボールしてやらないぞぉ~~~!」

 

一郎

「やだいっ!

またお父さんとキャッチボールするんだもんっ!!

えいっ!えいっ!えいっ!」

 

武志

「一郎がんばれー!

父さんの息子だろう?

男の子なんだからしっかりしろ!」

 

一郎

「うんしょ!うんしょ!

ハァ...ハァ...ハァ...ハァ...!

えいっ!えいっ!えいっ!」

 

ガシャ!ガシャ!ガシャ!ガシャ!

ガシガシガシガシ!!

ゴシゴシゴシゴシ!!  

 

武志

「おっ!

良い感じになってきた!

一郎!気持ち良いぞ~!」

 

一郎は...

父親、武志の広くたくましい背中を一生懸命に洗いながら思いました...

 

お父さんの背中って大きいなあ...

広いなあ...たくましいなぁ...

お父さんって優しくて...

強くて力持ちだもん!

時々怒られたりするけれど...

 

一緒にキャッチボールしてくれる!

お父さん...大好き!

 

一郎にとっと父親は...

優しく強くたくましく

3拍子揃った頼れるスーパーマンのように偉大な存在なのでした...

 

 

一郎

「うーん!うーん!えーい!

ハァ...ハァ...もうダメだぁ...」

 

武志

「ハッハッハッハ!

どうした一郎!

もうギブアップか?

だらしないなぁ~♪」

 

一郎

「ハァハァ...ハァハァ...

だって...ハァハァ...

お父さんの背中...大きすぎるんだもん...ハァハァ...ハァハァ...」

 

武志

「ハッハッハッハお疲れさん!

じゃあ今度は父さんが一郎の背中洗ってやるからな~♪」

 

一郎

「えぇ~~~~!

お父さんの痛いもん...

あんまり強く擦らないでよ~?」

 

武志

「男の子がなーに弱音吐いてんだ、ほら一郎、椅子に座って背中向けるんだ、ほら...」

 

一郎

「う・・・

う~~~~ん・・・」

 

 

一郎は父親にボディタオルを渡すと、恐る恐る椅子に座ります...

そしてそのボディタオルを手にすると、武志は一郎の背中を...

 

力いっぱいに擦ります・・・

 

ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシッ!

 

一郎

「痛いっ!痛いようっ!

お父さん!もっと優しくやって!」

 

武志

「痛くない、痛くない!

男の子なんだから我慢しろ!」

 

一郎

「嫌だよもう~~!

お父さん痛い~~~!」

 

武志

「ハッハッハッハ!

情けないこと言うな!

背中は垢が溜まりやすいからキレイにしておかないとダメなんだぞ!

はい!終わり!一郎!今度は立って!」

 

一郎

「えぇ~~~・・・!

またアレやるの~~~!?」

 

武志

「そりゃあ当たり前だろう!

汚れてるんだからしっかり洗わないとな!」

 

一郎

「お父さん...

僕...恥ずかしいよ...」

 

武志

「恥ずかしいもんか!

男同士なんだから!」

 

武志は一郎を椅子から立たせると...

ボディタオルを一郎の股の間に入れ....

ゴシゴシと擦り始めました...

 

一郎

「キャッ!くすぐったい!

ギャハハハハハハッ!!」

 

武志

「こことな!

お尻の穴はバイ菌だらけだから毎日しっかり洗うんだぞ!」

 

一郎

「ヒャハッハッハッハッハ!

お父さんくすぐったいよ~!!

恥ずかしい~~~!!

もうやめて~~~笑!!」

 

武志

「ハッハッハッハ!

男の大事な所だからな…

終わったら一郎、父さんのも洗ってもらうからな~♪」

 

一郎

「えぇぇぇぇ~~~~っ!!!

お父さんの僕が洗うの~~!?」

 

武志

「当たり前だろう!

親子なんだから!!」

 

一郎

「えぇ~~~・・・

お父さんの・・・

ウインナーみたいなんだもん...」 

 

武志

「一郎もあと数年すれば、父さんみたいに立派なウインナーになるからな~♪」

 

一郎

「僕そんなんならないもーん!」

 

武志

「ハッハッハッハ!

中学生になればすぐなるぞ~

ほれ!一郎!父さんと交代だ!」

 

一郎

「うんっ!僕お父さんのウインナーとお尻の穴洗ってあげるからね!」

 

武志

「ハッハッハッハ!

一郎は良い子だな!

さすが父さんの息子だ!」

 

武志と一郎が...

楽しそうに笑っていると...

洗面所から...

 

和恵

「たけし~

お風呂まだあがらないの~?」

 

母親の和恵が武志にお風呂の磨りガラスのドア越しから声を掛けます...

 

武志

「え~・・・と・・・

あと5分くらいかなぁ~~・・・」

 

和恵

「あんまり長湯するとのぼせちゃうわよ~~・・・

夕飯冷めちゃうから早く出てね~」

 

武志

「は~~い♪了解で~す♪」

 

和恵

「一郎~?

湯船に浸かって10数えたら出るのよ~・・・?

わかった~~~・・・?」

 

一郎

「はぁ~~~~い!

今お父さんのお尻とウインナー洗ってるからちょっと待っててね~♪」

 

和恵

「ウインナ~・・・?

・・・ってちょっとお!!

たけし!一郎に変なこと教えないでよね!!」

 

武志

「ち・・・ちがうよ~・・・!

一郎とウインナー食いたいな~って話してたんだってば!」

 

和恵

「もう!

何がウインナーよ!!

馬鹿じゃないかしら!」

 

幸子

「まぁまぁ和恵さん...

良いじゃないの...

父親と息子なんだから...」

 

和恵の声を聞いた姑の幸子がやって来て言いました...

 

和恵

「やだお義母さん~・・・

聞いてたの~~~~・・・?」

 

幸子

「たけし、一杯だけビール

出してあげるから、早くお風呂出なさい、長湯は血圧に悪いですよ...」

 

武志

「おふくろ!本当か!?

いやっほうー♪♪

ビールだ♪ビール♪」

 

和恵

「もう~~・・・

お義母さんったら甘いんだから~・・・」

 

幸子

「和恵さん...

夫に我慢を無理強いさせるのは夫婦仲に毒なのよ...

一杯ぐらい許してあげましょう...

ね...?」

 

和恵

「しょうがないなぁ~・・・

一杯だけ許してやるか・・・」

 

幸子

「ありがとうね...和恵さん...」

 

和恵

「いえいえ...

お義母さんには普段からお世話になってますから...」

 

幸子

「一郎ちゃ~ん!

早くお風呂出なさいと...

おはぎあげませんよ~~♪」

 

一郎

「わぁ~~~~!

待っておばあちゃ~~ん!

お父さんのお尻とウインナー洗ってお風呂に浸かって10数えたらすぐ出るから~~!」

 

幸子

「フッフッフ・・・!

ウインナーですって!

可笑しい・・・!」

 

和恵

「お義母さんったらもう~~・・

そんな笑わないでよぉ~~・・」 

 

幸子

「ほんと...

幸せねぇ...

天国のおじいさんにも一郎の健気な声を聞かせてあげたい...」

 

和恵

「お義父さん....

一郎が生まれる前に亡くなったのよねぇ・・・

生まれてくるのずっと...

楽しみにしてたのに・・・」

 

幸子

「そうねぇ...

せめて一度だけでも...

抱っこさせてあげたかったわねぇ....」

 

一郎

「いーち・にーい・さーん・しーい・・・」

 

和恵

「あ、一郎が10数えだした!

お義母さん、あたし...

たけしと一郎の下着とパジャマ持ってくるね!」

 

幸子

「ええ...

わたしはおじいさんにおはぎをお供えしてきますね...」

 

そう言いながら..

和恵と幸子は洗面所を後にました...

 

一郎

「しーち・はーち・くーう・じゅう!!」

 

武志

「よぉーーーしっ!

一郎出るぞーー!!」

 

ザバァーーーーーーッッ!!

 

一郎と武志が湯船から出てくると...

お風呂場のドアがガラガラと開き...

洗面所は2人からあがる湯けむりに包まれます...

 

そして武志はバスタオルを棚から取り、一郎の体を拭きます...

 

一郎

「あーーっ!

お父さんのウインナーから湯気が出てるー!!

シャウエッセンみたいーー!!」

 

武志

「ハッハッハッハ!

父さんのウインナーはシャウエッセンかぁー!いいなぁー!立派だなぁー!

一郎のウインナーも湯気が出てるぞー!」

 

一郎

「アハハハハハハ!

僕のウインナーはねぇ~・・・

まだ小さいからお弁当に入ってる赤いウインナーだね!」

 

武志

「一郎のウインナーは丸大ウインナーかー!!

アッハッハッハッハッハ!!」

 

一郎

「ギャハハハハハハ!!

丸大ウインナーだって!」

 

ちょっぴりふざけた父と子の会話が湯気と一緒にお空へと消えてゆく...

 

3日月お月様と...

キラキラおほしさまは...

そんな他愛のない親子の笑い声をきいて...

クスクスと笑っているのでした...

 

 

幼き頃...

父親とお風呂に入った時...

このような経験をした男性は...

少なからず記憶に残っている方も居るのではないだろうか...

 

やがてその少年だった男の子も...

今では父親になり...

我が子とお風呂で背中を流し合っている方も居ることでしょう...

 

幼き頃に見た父の背中は...

とても大きく...

たくましく見えたもので...

 

おんぶをしてもらったり...

肩車をしてもらったり...

 

やがて子供は大きくなり...

父親から離れ...

おんぶをしたり...

肩車をしてもらった記憶も...

大人になるにつれて薄らいでゆく...

 

 

そして...

長い年月が経った頃...

 

ふとした時に...

父親と過ごした幼き日々を思い出し...

2度と帰らぬ...

懐かしき父親の大きな背中が...

愛しくなり...

 

涙する...

 

 

 

 

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