どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

「海之助おじさんとけんとくん3」~ぼく5年生になったんだ!~

もうすぐ3月の終わり...

出会い...別れ...門出の季節...

冬の冷たかった風も...
春の訪れとともに暖かくなり...

菜の花の香りをのせて...
真っ赤になった頬を優しくなでる...

太陽の日差しがまぶしいな...

つくしんぼうより...
お寝坊さんな桜のつぼみくん...

ようやくポツリ...ポツリと目を覚まし...
うすい桃色の花を咲かせてく...

みの虫の寝床となっていた...
寂しい枝も華やかに模様替え...

これからスタートラインに立つ人たちを...
華やかに彩りながらも...
春風とともに寂しく散ってゆく...

儚いな...







「海之助おじさんとけんとくん3」

~ぼく5年生になったんだ!~
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ここは陸前高田市高田松原の広い砂浜...

2011年の3月11日...

東日本大震災の大津波がこの砂浜を飲み込んだあの日から11年...

今日もたくさんの人たちが...
それぞれの想いを抱きながら...
この地へとやってきます...


きれいに整備された砂浜...
長いコンクリートの道の向こうには...


海辺の向こうには堤防台が設けられ...
海が見えなくなっている...


震災の年に生まれた赤ちゃんも...
今ではすっかり大きくなり...
4月からは小学5年生に...



おやおやまぁ~~・・・
ほんの少し前まで甘えん坊だったのに...
もうこんな元気盛りになったのか...

子どもの成長はほんに早いもんじゃのう~・・・

11年前...
この砂浜に1本だけ残った...

「奇跡の一本松」

この一本松に宿る精霊の...

「一松海之助おじさん」は...

ここへやってくる可愛らしい子どもたちを...
優しく見守りながら語りかけていました...

だけど...
子どもたちには海之助おじさんの声は聞こえません...
もちろん姿も人には見えないのです...

海之助おじさんは...
お父さん、お母さんと一緒に帰っていく子どもたちの後ろ姿を見つめながら...

あの子のことを思い出してました...



奇跡の一本松の横には...
小さな新しい松の木が伸びています...

その松の木は...
5年前に...

ある男の子が...
一本松の下に落ちていた...
マツボックリを植えて誕生した...
「希望の一本松」

この希望の一本松のおかげで...
海水によって根元が腐り、人工化してしまった奇跡の一本松に、精霊として宿る力が失われて.いた海之助おじさんでしたが...

見事にパワーアップして精霊としての力を吹き返したのでした...


この「希望の一本松」
を誕生させてくれた...

あの男の子...


5年前...
突然ジャングルジムからやってきた...

「けんとくん」に会いたい...!


ちょっぴり失礼で...

おとぼけさんだけど...

ぷぅ~♪っておならしちゃったり笑

不思議な魔法を使う...

泣き虫で甘えん坊で優しい...

子だぬきの...

けんとくんに会いたいぞー!!



日が暮れて...
太陽が堤防台に隠れはじめ...
海辺の広場がオレンジ色に包む中...

海之助おじさんは...
夕焼け空に向かって叫びました...


初めてけんとくんに会ったのは...
今日みたいにきれいな夕焼け空じゃった...

寂しくて...
泣いているわしを気づかってくれたんじゃ...

あの優しいけんとくんと...
またお話がしたい...

可愛らしい子だぬきのけんとくん...


太陽が堤防台に隠れ...
海辺は少しづつ暗くなり...
広場の周辺には誰も居なくなりました...


海之助おじさんは...
空をキッ!・・・と睨み上げ...


天女様よおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい・・・!!!


もう一度・・・っ!!!
けんとくんに・・・っ!!


会わせたおくれええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ・・・!!!


大きな大きな声で叫びました...


すると...
海之助おじさんの上に...

キラリと一番星が光りました...


海之助おじさん
「けんとくんや...
一番星が光っておるぞ...
もう一度わしのもとへ来ておくれ...

大丈夫...
ここは夢の中じゃ...
さぁ...おいで...」
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海之助おじさんは...
一番星に願いを届けました...
今日ここへ来てくれた...
たくさんの人たちの想いと一緒に...



その時でした・・・!!


けんとくん
「ちぃ~~~っす♪」
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なんとそこに・・・!
野球のユニフォームを着た・・・!
わんぱく盛りなたぬきの男の子がやってきたました・・・!!



その男の子を見て...
海之助おじさんはびっくり仰天!!



海之助おじさん
「な・・・!
な・・・・!!
なぬぅ~~~・・・・・!!!
なんとまあ~~~驚いた・・・!!!
しばらく見ないうちに...
すっかり大きくなりおったわい・・・!!!」


その野球のユニフォームを着た...たぬきのわんぱく坊主は...

小学5年生になる...

「けんとくん」なのです!!


けんとくん
「ちぃ~~~~っす♪
おじさん!!
久しぶりだね!!」
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海之助おじさん
「あ・・・
あわわわわ・・・

あ・・・
あの・・・その・・・

けんとくんで・・・

お間違いないのでござりますよのう~~~~~~~・・・?」


けんとくん 
「うん!そーだよ!
ぼく、けんと!!
おじさん元気そうだねっ!あはっ!」



海之助おじさん
「お・・・
おやまぁ~~~・・・
わ・・・
わしのこと・・・
覚えておいてくれとったんじゃのう~~~~~・・・」


けんとくん
「うんっ!
知ってるよ!」
 


海之助おじさん
「う・・・
う・・・
うれしいのう~~~・・・
ちゃ~~~んと..
わしのこと覚えておいてくれて・・・

グスッ・・・!

わしゃあ涙が出てきたわい・・.」



けんとくん
「もちろん!
覚えてるよ!
泣き虫でおヒゲのきちゃない精霊のおじさんでしょ?」
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海之助おじさん
「!!
・・・・・むかっ!
なんと失礼な・・・
・・・相変わらず・・・
礼儀知らずな子たぬきじゃのう・・・」


けんとくん
「おじさん、そのきちゃないおヒゲ...
ちゃんと剃らないとダメだよ~♪」


海之助おじさん
「失敬なっ!!
わしは精霊じゃからいいのっ!!
どうせ皆には見えんのじゃっ!!
 
ふ~~んだっ!
子どものけんとくんにはこの髭の良さがわからんじゃろうのうっ!」


けんとくん
「でも、おじさんのおヒゲ
きっちゃないけど、似合ってるし...
ぼくは好きだよ!!」



海之助おじさん
「う・・・
褒めてるのかバカにしとるのかどっちなんじゃい...!」


けんとくん
「でもおじさん
久しぶりだね!
しばらく会ってなかったけど・・・
今日はどうしてここに来れたんだろう・・・」


海之助おじさん
「ふふう~ん♪
それはじゃな、わしの力と頭上にある...
一番星じゃ♪
わしは一番星にいる天女様に、もう一度けんとくんに会いたいぞーーっ!!
...ってお願いしたのじゃ♪」



けんとくん
「ふーん...
よくわかんないけど、すごいね!」



海之助おじさん
「な・・・
なんかバカにされてるような・・・
興味なさげな御返答をどうも・・・」



けんとくん
「おじさんぼくね!」



海之助おじさん
「うんうん...
なんじゃ...?」



けんとくん 
「今日、リトルアニマルリーグ・ポンターズの練習試合だったんだ!」


海之助おじさん
「り・・・
リトル・・アニマル・・リーグ・・・?
ポンターズ・・・?とな...?
わしゃあ横文字苦手じゃのう~・・・」



けんとくん 
「もう~
おじさんったら~~・・・
野球チームのことだよ!
ぼくね、4年生になってからリトルアニマルリーグのポンターズに入団したんだ!」
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海之助おじさん
「ほほう~~~・・・
それで野球のユニフォーム着てるんじゃな...」


けんとくん
「そうだよ!
かっこいいでしょ~!!」


海之助おじさん
「うんうん...♪
その野球のユニフォーム...
けんとくんによぉ~く似合っとるぞい♪」




けんとくん
「それでね!
チャイルドホームに帰って...
ヒトミお姉ちゃんがおやつに作ったホットケーキを食べたらさ...
お腹いっぱいになって...
ついベッドに寝転がったら... 
いつの間にか寝ちゃったみたい~~♪」



海之助おじさん
「きっちゃな~~!!
わしのこときっちゃないヒゲって言うけど、けんとくんだってきっちゃな...!!

まったくお風呂も入らずに...!

汗と泥だらけのユニフォームのまんまベッドに寝転がって居眠りなんてしてたら...
ヒトミお姉ちゃんに怒られるぞいっ!!」



けんとくん
「エヘヘ~♪」


海之助おじさん
「エヘヘ~♪
じゃないわい!もう~笑」



沈む夕日の中...
ほんの少しだけ...
時がゆっくり流れてるよう...

海之助おじさんと...
けんとくんは...

久しぶりに会った喜びに...
ふたりの話は...
止まることなくはずみます...



海之助おじさん
「けんとくんや...
守備はどのポジションなのじゃ...?」


けんとくん 
「ぼくね!キャッチャーなんだ!」



海之助おじさん
「ほうほう~!
キャッチャーとや、ピッチャーの女房役じゃのう~
責任あるポジションじゃないかや...」


けんとくん
「女房~??
結婚なんかしてないよ~?」 


海之助おじさん
「例えじゃよ..」
遠い星の世界ではそう言われてるのじゃよ...」


けんとくん
「へんなの~
男の子どうしなのに女房なんて~...
ぼくそんなのやだ!」



海之助おじさん
「男はのう...
細かい事を気にしたらダメじゃよ...

それで...
けんとくんは何番バッターなのじゃ?」


けんとくん 
「ぼくね~・・・!
4番バッターなんだ!!」


海之助おじさん
「おおっ!!
4番バッターとは驚いた・・・!
満塁ホームランを打てばスーパーヒーローじゃぞっ!!」


けんとくん
「エッヘン!
すごいでしょ~!」


海之助おじさん
「けんとくんはキャッチャーで、パワースイング型の選手なんじゃな...」


けんとくん
「うん!
おじさん、よくわかったね!
ぼく、ミートスイング苦手なんだ!
うんと遠くまでボールをかっ飛ばすホームランの方が得意なんだよ!」



海之助おじさん
「けんとくんや...
なぜ...
野球を始めたんじゃ...?」


けんとくん
「あのね!
アニマルメジャーリーグ
「シカゴ・ブラックベアーズ」の
クーマ・モーン選手が大好きなんだ!

それでね!それでね!
球場に試合を見に行ったら、クーマ・モーン選手が打ったホームランボールが...
たまたまボクのお菓子袋にスポッ...と入って...

ホームランボールをクーマ・モーン選手に投げたらスペシャルキッズMVPとしてグラウンドに招待してくれたんだ!!」


海之助おじさん
「う~~・・ん・・・
喜ばしい事じゃが危ないのう~
もしホームランボールがけんとくんに直撃してたら大怪我じゃぞ~?」



けんとくん
「ぼく!
クーマ・モーン選手のホームランボールならケガしたって平気だもん!」


海之助おじさん
「どうしてけんとくんは...
MVPでグラウンドに招待されたのじゃ?」


けんとくん
「そのホームランボールね...
クーマ・モーン選手の...
100本目のホームランボールだったんだ!!」


海之助おじさん
「ほうじゃったのか~~・・・
あわや大惨事になりかけたが・・・
クーマ・モーン選手と触れ合う事が出来て良かったのう~・・・」


けんとくん
「うんっ!
ぼくね!クーマ・モーン選手に...
肩車してもらったんだよっ!!」



海之助おじさん
「それは良かったのう~♪
グラウンドのヒーローに肩車してもらえるなんて、一生にあるかないかの貴重な思い出なったろう~♪」



けんとくん 
「うんっ!
ぼく、大きくなったら・・・
アニマルメジャーリーグの・・・
クーマ・モーン選手のような・・・」


「野球選手になるんだっ!!!」




海之助おじさん
「・・・!!!・・・・」




けんとくん
「野球選手になって・・・
広くて大きなアニマル球場で・・・

ホームラン打つんだっ!!!」



それを聞いた...
海之助おじさんは...
けんとくんにつぶやいた...



海之助おじさん
「けんとくんは...
大きくなったら...
野球選手になりたいのかや...」


けんとくん
「うん!
そうだよ~♪」



海之助おじさん
「けんとくんや...
さっきアニマルメジャーリーグのクーマ・モーン選手に...

肩車をしてもらったって...

わしにそう話してくれたな....?」



けんとくん
「うん、話したよ~♪」



海之助おじさん
「けんとくんが...
もっと幼かった頃にも...

肩車をしてもらった事があるのを...
覚えておるかいのう~・・・」



けんとくん
「ぼくがもっと小さかった頃に...?
肩車してもらった事なんかあったっけ....!」



海之助おじさん
「よ~・・・く・・・
思い出してごらん・・・」



けんとくん
「あぁ・・・!!」


けんとくんは...
思い出しました...



海之助おじさん
「あれは確か...
小学校に入学して間もない...
ピッカピカの1年生の頃じゃったのう~・・・」



けんとくんには...
もう一つ...
たいせつな夢があったのです...

それは...

アニマル小学校の...
入学したばかりの時でした...


オレンジ色の制服を着た...
消防士のお兄ちゃんに...
肩車をしてもらったあの日を...


ぼくとおんなじ名前で...
「けんと」っていう...
消防士で...
たぬきのお兄ちゃん...



けんとくんは...
さっきまであっけらかんとした顔から...

悲しくて...
今にも泣き出しそうな表情になりました...



けんとくん
「どうしよう...
ぼく...
野球に夢中になりすぎて...
すっかり忘れちゃってた...」



海之助おじさん
「わしは覚えておったよ...
けんとくんは...

大きくなったら...

消防士さんになるのが夢じゃったのう...」



けんとくん
「う...うん...
ぼ...ぼく...

大きくなったら...
おとなになったら...

消防士さんになるんだいっ...!!」



海之助おじさん
「では...
野球選手の夢はあきらめるのじゃな...?」



けんとくん
「や...やだいっ...!!
ぼ...ぼく...!!
野球選手にもなるんだいっ!!」



海之助おじさん
「けんとくんや...
消防士さんと野球選手...
どちらになりたいのじゃ...!」



けんとくん
「どっちもなるんだいっ!
消防士さんも...
野球選手にも...

どっちもなりたいっ!!」




海之助おじさん
「けんとくんや...
それは無理なんじゃよ...」




けんとくん
「な...
なんでだよ!!
消防士さんしながら野球選手したっていいじゃんか!!」



海之助おじさん
「では野球の試合中に...
チャイルドホームが火事になったら...
どうするのじゃ...?」


けんとくん
「し...
試合を途中で抜けて...
消防士さんになって...
火を消しにいくからいいんだい!」



海之助おじさん
「けんとくんが試合を抜けせいで...
チームが負けてしまったらどうするのじゃ...?」



けんとくん
「ま...
負けないもんっ!
火を消し終わったら...
ユニフォームを着て...
また試合に出て大活躍するんだいっ!」



海之助おじさん
「けんとくんや...
野球選手をしながら消防士さんをやるなんて事は無理なのじゃよ...

どちらかを選ばなければならぬのじゃ...」



けんとくん
「い...いやだ...
グスン...グスッ...グシッ...!
ぼ...ぼく...
消防士さんにもなりたい...
でも...

野球選手にもなりたい...!」



さっきまで笑っていた...
けんとくんの頬には...
キラキラと大粒の涙がこぼれ落ちます...



海之助おじさん
「おやおや...
けんとくん...!
男の子じゃろうに...!
メソメソ泣いたりして...!
情けないぞ!」 



海之助おじさんは...
泣き出したけんとくんを...
ちょっぴり厳しく叱ります...



けんとくん
「うっ...ひっく...!
グシッ!グシッ!ズビビビ...!
お...おじさんの...
いじわる...!
どっちもなるんだいっ...!
なってみせるんだいっ...…!」




海之助おじさん
「けんとくんや...
まだまだあせることないぞ...

ゆっくりと決めていけば良いのじゃ...」
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けんとくん
「グスン...!グシッ...!ひっく...!
おじさん...
ぼく...
どうしてこんなに悲しくなっちゃうのかな...
いつもは泣いたりしないのに...」



海之助おじさん
「それはのう...
けんとくんが...
だんだんとおとなになっている証じゃよ...」



けんとくん
「グッシ...グシッ...グスン...!
ぼ..
ぼくが...
おとなになってるから...?」



海之助おじさん
「けんとくんはのう...
今....本当の夢に向かって歩き始めたのじゃ...」



けんとくん
「ほ...
本当の...
夢...?
グスン...」


海之助おじさん
「そうじゃよ...
幼い頃に見た無邪気な夢ではなく...
本物の夢へと向かっているのじゃ...

眠っている時の夢でもない...

現実の夢じゃ...

これからけんとくんは...
その現実の夢を実現させるために...

たくさん努力して...
いっぱい頑張って...
辛いことや...悲しいことを...
乗り越えなければ...
夢は叶えられんのじゃよ...

夢が夢のままで終わるのは悲しいじゃろう...?」



けんとくん
「う...うん...
ぼ...ぼく...
絶対になるんだもん...

消防士さんか...
野球選手か...
どっちになるのか...

まだ決められないけれど...

絶対に...
絶対になるんだもんっ!!」



海之助おじさん
「まだまだ時間はあるから大丈夫じゃよ...

これからいっぱい悩んで努力して...
何度つまずいても良いから...

今の気持ちを忘れずに...
夢への情熱を持ち続けるのじゃ...
そうすれば...
おのずと答えが出る日が来るからのう...」



けんとくん
「うんっ!
わかった!!
ぼく...!
もう泣いたりなんかしないよ!
消防士さんか...
野球選手になるか... 
まだわかんないけど...

今はどっちの夢を見ててもいいよね!」




けんとくんにようやく笑顔が戻りました...
ユニフォームの袖で涙と鼻水を拭くと...
ニッコリと笑ってわんぱく坊主へと早変わり...


これにはさすがに...
海之助おじさんも呆れてしまいました...


海之助おじさん
「やれやれ...
さっきまで鼻水垂らしてメソメソ泣きベソ坊主だったのに...
直ぐさまあっけらかんとしおってもう~・・・

ほんにお調子者な子だぬきじゃ!

しかし...
男の子はこれぐらいが良い...

はっはっはっはっはっは!!」




太陽が堤防台から海へと沈み...
空はうす暗いオレンジ色から...
紫色へと変わり...

とうとうお別れの時がやってきました...

けんとくんの体がうっすらと消え始めます...


けんとくん
「あ...
ぼくの体が消えていく...」



海之助おじさん
「けんとくんや...
そろそろお別れの時じゃ...
今日は会えて嬉しかったぞ...

来てくれて...
ありがとう...

ほんの一時じゃったが...
いっぱいお話して楽しかった...」




けんとくん
「なぁ~~んだ・・・
もうさよならしないといけないの・・・?

もっとおじさんと...
お話したかったなぁ...」




海之助おじさん
「そうじゃのう...

わしもまだまだ...
けんとくんに話したい事がいっぱいあったんじゃが...

太陽が沈むと...
一番星の力が消えてしまうのでのう...

またいつか...
来ておくれ...」
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けんとくん
「うん...
また来るからね!!

...でも...
どうやったら今日みたいに...
おじさんに会えるのかなぁ・・・」




海之助おじさん
「わしがまた天女様にお願いしてみるから大丈夫じゃ!!」



けんとくん
「じゃあぼくはまた、ヒトミお姉ちゃんが作ったホットケーキをお腹いっぱい食べて、汗と泥んこだらけのユニフォームのまんまベッドで居眠りしてみるね!」




海之助おじさん
「あ~~~~!!
きっちゃな~~~~い!!」



けんとくん
「おじさんのヒゲだって!きっちゃないや~~~~い!!」



海之助おじさん
「むっか・・・怒!!
大きくなったけんとくん...
なんか可愛くな~~~い!!」



けんとくん
「あはは!また怒ってる!

だけどぼく...
おじさんのこと大好きだよ!
じゃあまたね~!
さよなら~!」



海之助おじさん
「け...けんとくん...
げ...元気でのう...」



太陽は海に沈み...
暗くなった海辺をお月さまが照らします...
お空の一番星は星座の一つとなり...


けんとくんの姿は消えて...
遠い遠いアニマルランドへと帰ってしまいました...



広い砂浜の公園に...

残された...
海之助おじさんは...

けんとくんの成長した姿を見て...
とても嬉しかったはずでした...

だけど...

頭に葉っぱをのせて...
コーラやカレーライスを出して...

不思議な魔法を見せてくれていた...
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あの純粋であどけなく...
まだ幼かった頃の...
小さなけんとくんはもういない...

子どもの成長は喜ばしい事...

でも...






奇跡の一本松の根元にある...

小さな希望の一本松の若葉に...

ポツリ...
ポツリ...と...

しずくが...

ひとつ...
またひとつ落ち...

葉に乗ったしずくは...
広い広い...
満天の星空と...
まんまるお月さまを映しているのでした...

 





このお話は...

奇跡の一本松に宿る精霊...

一松虎之助おじさんと...

遠い星にあるアニマルランドに暮らしている子だぬきの...

けんとくんの...

夢のお話なのでした...




おわり























































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