どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

おとうさんとゆびきりげんまん「中編」

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自分が出しっぱなしにしていたサッカーボールで転んでしまい、足を捻挫してしまったイタズラとサッカーが大好きなイタチの男の子「たいち」
熊八先生におんぶされて、たいちの部屋へと連れていかれます

たいちは熊八先生の肩を「グッ」と強く握りしめ、顔を背中にうずめて「グスッ…ヒック…」と、みんなにバレないように、泣いているのを隠していました

たいちの部屋に着き
「ガチャリ…」「バタン…」
と、扉を明け閉めする音が聞こえます

部屋に入った熊八先生は、ゆっくりとたいちをベッドに降ろしてあげました

熊八先生
「いいか?たいち、痛くないように、ゆ~っくり降ろすからな?
「よいこらしょ…っと…」

熊八先生は、やわらかいフカフカのベッドにたいちを降ろすと、クルリと振り返り、腰を屈めてたいちの顔を覗きました

熊八先生
「たいち、大丈夫か?」

熊八先生がたいちに優しく問い掛けます

しかしたいちは熊八先生と顔を合わせようとしません

「グスッ…グスッ…」と、目に涙を浮かべながら鼻水をたらして半べそながらに、たいちは部屋のそっぽを向いて、熊八先生の顔を合わせませんでした

熊八先生
「たいち、先生ちょっぴり意地悪な事言っちゃうかもしれないけどよく聞いておくれ、」
「悪い事をすると、神様のバチが当たってみんな自分にふり返ってくるんだよ…
でもね、それは神様がお空の上からたいちの事をしっかり見守ってくれている証なんだ」

熊八先生が、ちょっぴり厳しい表情でたいちの顔を見ながら話すと…

たいち
「…熊八先生なんて…大っキライだいっ!
う…うぅ…ヒック…グスン…
うぁ~ぁ~ぁ~ぁ~ああん…!うぁんあんあんあん…!
キライだ!キライだ!大っキライだぁ~~~!!」

たいちは大声でそう叫びながら、とうとう堪えきれずに泣き出してしまいました

熊八先生は、わんわん泣いているたいちの頭にソッと手をあてて優しく撫でながら言いました

熊八先生
「たいちは先生のことが大キライなのかぁ…
う~ん…困ったなぁ…」

少し考えて熊八先生は

熊八先生
「先生…いや…、おとうさんは、たいちのことが大好きだぞ!」

熊八先生は自分を先生ではなく「おとうさん」と呼ぶと、わんわん泣いているたいちは少し「ハッ…」とした表情で熊八先生と顔を合わせました

たいち
「お…おとう…さん…?
せ…先生…、ど…どうして…?」

たいちが泣くのを抑えながら熊八先生に問いかけました

熊八先生
「たいちとわしは親子だ」

「たいちはおとうさんの可愛い自慢の息子なんだ」

「だからおとうさんは、たいちが大好き!
サッカーが得意なところも、「へっへーんだ!」とか言って、イタズラ大好きなところも
メソメソ泣いて甘えん坊なところもぜーんぶ大好きだぞ!がっはっはっはっ!」

熊八先生がいつものように「がっはっはっはっ!」と笑います

たいち
「お…!おいら…
な…泣いてなんかないもん…
あ…甘えん坊なんかじゃないやい!」

熊八先生
「泣いてないもんか、こんなに涙と鼻水たらして!
でもたいちのそんな強がりなところは男らしくていいぞ!がっはっはっは!」

たいち
「え…えへへ…グズッ…」

熊八先生に明るく励まされ、たいちも涙を流しながら笑顔になりました

熊八先生
「さぁ、たいち、みんなからとった物はどこに隠したんだ?
怒ったりしないから正直に言うんだ」

たいち
「グスン…ベッドのした…」

熊八先生がベッドのしたを覗くと

ポン太の「クロッキー帳」

ミミの「ラビーちゃん」

ハナの「日記帳」

トイレットペーパー

そしてモー治郎「もっくん」がしめていた「相撲のまわし」が見つかりました

熊八先生はベッドの下からみんなの大事な物を取りだします

熊八先生
「たいち、これは全部自分で返してあげるんだ」
そして素直に「ごめんなさい」だぞ、いいな?

たいち
「う…うぅ…ん…でも…」

熊八先生
「どうした…?」

たいち
「みんな…まだ怒ってるかなぁ~…
おいらのことなんて…もうキライになってるよね…?」

熊八先生
「がっはっはっは!なんだ、そんな心配してるのか!
大丈夫だぞ、みーんなたいちのこと大好きなんだから」

たいちはまだみんなが怒っていないか心配していましたが、熊八先生に言われて安心の表情を浮かべます

たいち
「う…うん…おいら…、ちゃんとみんなにごめんなさいする!」

熊八先生
「たいちえらいぞ!よく言った!それでこそ自慢の息子だ!
ようし…それじゃあ今夜はおとうさんと一緒に寝るか!」

たいち
「ほ…本当!?おいら先生と…いや…、おとうさん一緒に寝てくれるの!?」

熊八先生
「もちろんだ!たいちは動けないからトイレも行けないだろ?」

たいち
「おとうさん絶対だよ!ウソついたらダメだからね!」

熊八先生
「よし、おとうさんとゆびきりげんまんしよう、男と男の約束だ!
たいちもごめんなさいをちゃんと言うんだぞ!」

そう言って熊八先生は、たいちに大きな指を差し出しました

たいちも涙を手で拭いながら、熊八先生の大きな指に、自分の小さな指を重ね合わせました

「ゆびきりげんまんウソついたらお尻ペンペン、コチョコチョくすぐり泣いちゃうぞ~♪ゆびきった~♪」

熊八先生
「ようし、約束したぞ」

たいち
「うん…グスン…」

熊八先生
「さぁたいち、もう泣くのは終わりにしような、男の子だもんな」

熊八先生は、胸のポケットからハンカチを出し、たいちの涙と鼻水を優しく拭いてあげました

するとたいちは鼻をグスグス鳴らしながら

たいち
「…グスン…
トイレットペーパー…
イタズラして、おとうさんのお尻ふけなくしてごめんなさい…」

「グス…あとね…
さっきは大キライなんて言っちゃって、ごめんなさい…グスン…ヒック…」

「…ヒック…本当は…ウソだからね…
おいら…熊八先生でも、おとうさんでも、どっちもおんなじくらい大好きだからね…ヒック…グスン…ヒック…」

たいちは熊八先生に「ごめんなさい」をすると、また涙と鼻水がいっぱいあふれてしまいました

熊八先生はにっこりと優しく微笑み、あふれてきた涙と鼻水をハンカチでふいてあげました

その姿は本当の父親のようでした


…壁に掛けてある1枚の写真…、これは昨年たいちが初めてサッカー大会に出場した時のものです

ふたりともにっこり笑って幸せそう

写真の中で笑っているサッカーとイタズラ大好きな男の子、いつかは大きくなってチャイドホームを巣立って行くのです

熊八先生はその写真を目にして、「ずっと…このまんまだったら良いのになぁ…」
と、たいちの成長が嬉しくもあり、また寂しく感じてしまう切ない思いが交互に揺らめくのでした

今はメソメソ泣いているこの男の子が将来
広い広いスタジアムでボールを追いかける大リーグの選手になる日が来るかもしれません。

「中編終」