どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

「少年の初恋相手は龍玄さん」~GW端午の節句こどもの日SP~

僕の生まれ育った深山町では

5月の5日端午の節句、こどもの日が近づく一月前辺りから

男の子が生まれた家では

大きな大きな鯉のぼりと

家紋と名前入りの武者幟が

山間に囲まれた農家や民家に立てられている姿が
あちらこちらで見られたものです

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近年主流になっているベランダ用の小さなものや、高さが3~4メートル程しかないポール立て掛け式のようなものではなく

ちゃんと鯉の一匹、一匹を
匠の腕を持った鯉のぼり職人さんが
鍛練された繊細な技術で丁寧に心を込めて作られた

まさに職人の魂が籠った逸品物だったのです

家に届くと、洗濯機程の大きな木箱に、御祝いとお礼が筆で達筆で記された手書きの文が添えられています

「剛志君の、健やかな健康と元気でたくましい男の子に育ちますよう私も願っております」

鯉のぼりは立派な物ほど高級品であり、特注品になると50万~100万はするそうです

ですが、田舎に暮らす農家は山や土地を持っていてお金持ちだったのか、そんな高級品だろうがなんだろうが、特に初孫の為なら軽くポーンと一括で買います

昔はそれぐらい
農家に男の子が生まれると
後継ぎが誕生と大事にされていました

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そんな農家の一軒家の畑に立てられた鯉のぼりを

羨ましそうに眺めていた少年がいました


それは今年小学1年生になったばかりの虎之助です

虎之助は幼少から鯉のぼりが大好きで大好きで

仕方がないくらい大好きで

農家に立てられている大きな鯉のぼりが欲しくて仕方がありませんでした


虎之助の家は、代々伝わる農家であり、家の周りは田畑で十分な広さがあるにも関わらず、他の家のように
鯉のぼりを買ってもらえませんでした

虎之助は、学校の帰り道に見掛ける
剛志君の家にある
大きくて立派な鯉のぼりに魅せられて
ずっとその場所から動く事が出来ませんでした

大空を雄大に泳ぐ鯉のぼり

キラキラと光り輝いている矢車

バタバタバタ…と風ではためく武者幟を見ながら呟きました

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虎之助
「いいなぁ…剛志君家の鯉のぼり、大きくてキレイでカッコイイ、僕もあんな鯉のぼりが欲しい…

お父さんにまた頼んでみよっと…」

虎之助はゆらゆらと気持ちよさそうに泳いでいる鯉の姿を横目に見ながら
鯉のぼりを後にしました







GW
~5月5日端午の節句こどもの日SP ~

「少年の初恋相手は龍玄さん」

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ガラガラガラ←玄関の戸を開ける効果音

虎之助
「ただいまぁ~!」


昌子(母、まさこ)
「あ、虎!?
お帰り~、ゼリーあるけん手ぇ洗ったらお食べぇや」

虎之助
「えぇ~、ゼリーって、あのお仏壇にお供えしていた、かたくて不味いゼリーでしょぉ~?
美味しくないから僕いらない…」

昌子
「えぇ~!?あんたワガママやねぇ~、じゃあ雷おこし食べる?」

虎之助
「うぇ~……、雷おこしもいらない…」

昌子
「いったい何が食べたいのよぉ、あんたはぁ!?」


虎之助
「明治のもろこし村、龍雲寺のお坊さんのおいちゃんが買ってくれたの出して」

昌子
「ダーメ!あれは健ちゃんと、夕御飯食べてからのおやつなの!」

虎之助
「えぇー!あれ、僕に買ってくれたんだよ!
健坊と半分こなんて嫌だ!」

昌子
「あんたねぇ、健ちゃんはこないだグリコのキャラメル分けてくれたやろ!?
自分ばっかり欲張った事言わないの!」

虎之助
「キャラメルよりも、もろこし村のほうが美味しいもん!半分こなんてしたくない!」

昌子
「あらそう、わかった、
お母さんそんな言うこと聞かない子はキライです、もろこし村は健ちゃんに全部あげます!」

虎之助
「もう!お母さん!!
そんなのイギャーー!!」

ドタバタドンドンドン!←虎之助が地団駄を踏む効果音


西郷一(父、さいごうはじめ)
「こらぁー!虎之助!
またギャーギャーわめいてると、倉に閉じ込めるぞ!」


虎之助
「いや!いやだ!静かにするから倉だけはやめて!」


当時、家では悪さをしたり、嘘をついたり、盗みをしたりすれば
お仕置きとして、真っ暗な倉に閉じ込めらたり、灸をされるのだった



「虎之助、宿題終わらせたら、野菜洗うの手伝え
わかったな?」

虎之助
「うん、宿題終わったら野菜洗いお手伝いするけんね、鯉のぼり買ってぇ~」

昌子
「あ~もう!いややわぁ、また虎の鯉のぼり買って買ってが始まった」



「まだ鯉のぼり鯉のぼり言いよるんか虎之助は…」


虎之助
「だって!剛志君家なんか、こーんなに大きな鯉のぼり買ったんだよ!?
鯉が12匹もついてて、幟の旗が立っていて、お父さん鯉には金太郎が乗っていてねぇ!
僕だってあんなのが欲しい!
ねぇ!野菜洗うの手伝うから買ってよ!」


「やれやれ…虎之助は5月になるといつもこうなる……
隠居にじいちゃんが買ってくれた五月人形があるじゃろ!?
あれで我慢せないかん!」


虎之助
「いやだいやだいやだ!
鯉のぼり買って買って買って!ねぇ!買ってぇ~!」


「鯉のぼりなんか買わん買わん!!
早よぅ宿題終わらせて野菜洗うの手伝え!」

虎之助
「いーやぁーだぁー!!
鯉のぼり買ってくれないと野菜洗うの手伝わない!!
ぎゃあぁぁーーん!!」

昌子
「ワガママ言わんの!
健ちゃんなんか鯉のぼりが欲しいなんて言いよらんやろ!?」

虎之助
「鯉のぼり買ってぇー!!
何でも言うこと聞くからぁーーー!!
いい子にするから買ってぇぇーーー!!
ぎゃあぁぁーーん!!あんあん!うわぁぁーーん!」



「コイツはうるさい!!
来いっ!倉に入れちゃるけんのう!!」

僕はお父さんの太い腕に掴まれて、倉に連れていかれた」

虎之助
「いやっ!いやっ!!
いやぁぁぁーーー!!!
お父さんやめでぇぇーー!」


「倉におったらのう!
ご先祖様がやってきてのう!
男の子のクセにメソメソ泣いとったら、あっちに連れていかれるんぞ!」

虎之助
「いやっ!いやっ!いやっ!いやっ!いやぁーー!
こわいぃーー!暗いけんごわいぃーーー!!
おどうざぁん!やめでぇーーーー!!」

暗くて狭い倉の中が大嫌いな虎之助は、半狂乱で嫌がり泣き叫びながら抵抗した

実家の倉は、大人になった今でも苦手なのである

当時を振り返ってみて、まだ6つ7つの子供を
あんな暗くて狭い倉の中に閉じ込めるとは、なんて残酷な父親なんだろうと感じた

ガタンッ!ガタガタガッタン!バシン!←倉の戸を締める効果音


「しばらく倉ん中おりぃーや!!今にご先祖様が怒りに来るけんのう!」

虎之助
「うわぎぁぁぁああ!!
うおあうぇぇぉぅぁゎあ!!
あげでぇぇーー!!!」

ドンドンドン!!
ドンドンドン!!
ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!←倉の戸を叩きまくる効果音

倉に閉じ込められた、僕はひたすら目一杯の力を込めて土で作られた固い戸を叩きまくっていた
倉の中は暗くて何にも見えない、気持ち悪い虫もいる、以前倉の中で大きな蜘蛛が3匹這っているのを見て発狂した事がある

あんな大きな蜘蛛が、この暗い倉の中の何処かに居ると考えただけで、僕は気が狂っておかしくなりそうだった



それから数日後

父は、僕を連れて下(しも)にある従弟の家で法事のため龍玄さんを一緒に車に乗せて送迎している時だった

従弟の家へ向かう途中
左折するちょうど真ん前に
酒屋があるのだが

そこにおもちゃの鯉のぼりが小さいのと大きいのが2つ飾られてあったのだ

2つのうち、大きい方の鯉のぼりは、おもちゃタイプでも珍しい
黒いお父さん鯉に、金太郎が乗っている豪華な作りになっていて、それを見つけた僕は、興奮しながら父に言った

虎之助
「あっ!鯉のぼり!!
お父さん!さっきあのお店に鯉のぼりがあったよ!」


「また始まった…
鯉のぼりなんか買わんぞ!
これから大事な法用があるんだ、虎之助、静かにしないと車から出して置いて行くぞ!」


虎之助
「凄いんだよ!おもちゃなのに、ちゃんとお父さん鯉が黒色で、金太郎も乗っているんだ!あんなの初めて見た!!
ねぇ~…お父さん鯉のぼり買ってぇ~
おもちゃなら良いでしょぉ~…」


「買わん!って言よろうが!鯉のぼりなんかいらんいらん!」

虎之助
「だってぇ~!おもちゃであんなすごい鯉のぼり見たことないよ!
買ってぇ!僕もうお年玉いらないからぁ!!」

そして、父の横に乗っていた龍玄さんが
にこにこしながら僕に言った


龍玄さん
「虎坊や、帰りにわしが買うてやるよ、じゃから法事が終わるまで良い子で待っとりぃな」

虎之助
「ほんと!?
ねぇおじちゃんほんとに鯉のぼり買ってくれるの!?」

僕は興奮しながら龍玄さんに言った

龍玄さん
「えぇよえぇよ、あの金太郎さんが乗っていた鯉のぼりじゃな、あれぐらいわしが買うてやる、のう西さんや、帰りに吉田の酒屋さんとこに寄ってくれまいか」


「虎之助、龍玄さんは良いって言よるけどダメだからなー!」

虎之助
「なんでぇ!?おじちゃんが良いって言ってんやからいいやろー!?」


「こらっ虎之助!行儀が悪いぞ!他所様にあれ買ってこれ買って言うんじゃない!!」

虎之助
「いやだいやだいやだー!
おじちゃんに鯉のぼり買ってもらうの!」


「虎之助!!言う事聞けんのやったら下ろすぞ!!」

龍玄さん
「なんでいかんのじゃ?
鯉のぼりぐらい買うてやりなされや、西さん
虎之助も男の子なんじゃから…」


「龍玄さん~~……あんまり虎之助を甘やかしたらいけんよ~~…」

龍玄さん
「あんなに欲しがっとるんやから、かまわんじゃろうげ
西さんも、そんなに固くならんで
虎坊に大きな鯉のぼりでも買うてやったらどうじゃ?
沖田(剛志君家)さん家みたいな立派なのを買ってやったら虎坊も喜びなるよ」


「まったく…鯉のぼりなんかどうして欲しがるんか、わしにはわからん」


そして
僕は法用中も静かに大人しくして、待ちきれない程待ちに待った

帰りに父は吉田の酒屋さんとこの前に車を止めた

「虎坊や、ちょいと待っとれな」

そう言って、龍玄さんは父の車から降り
酒屋さんの入り口で
「おーい!吉田さんや」
と大きな声で呼ぶ

すると奥から吉田の主人が出てきて
「あれまあ!龍玄さん!どうしたん?」
と驚いている様子だった

そして…

龍玄さん
「吉田さんや、この鯉のぼりおくれ」

吉田の主人
「鯉のぼり!?」

龍玄さん
「西さんとこのせがれの虎坊がの、この鯉のぼりが気に入って欲しがっとるから買うてあげるんよ」

龍玄さんは信玄袋に入れていた小さなガマ口財布でお金を払っていた


吉田の酒屋さんの入り口から
おもちゃの鯉のぼりを持った龍玄さんが出てきた

僕はあの時の龍玄さんの姿は今でも鮮明に覚えている

鯉のぼり持った龍玄さんが車に入るなり
僕にあの欲しかった鯉のぼりを渡してくれた

龍玄さん
「虎坊、はい、鯉のぼり買うたぞ」

僕は後ろの後部座席から鯉のぼりを受け取り

虎之助
「ありがとう!!
ありがとう!!!りゅーげんおいちゃん!!」

龍玄さん
「良かったのう虎坊、鯉のぼりも喜んどるぞ」


「あぁ~…、龍玄さん、なんぼしたん?」

父はお金を出そうとズボンのポケットから財布を出そうとするが

龍玄さん
「あぁ~あぁ~、かまんのじゃよ!銭なんぞいらんいらん!いつも米を分けてもろとるんやから、それぐらいはお返しさせておくれ」


「悪いなぁ~…、龍玄さん…
虎之助、龍玄さんにもう一度お礼言いなさい」

虎之助
「りゅーげんのおいちゃん!鯉のぼり買ってくれて、どうもありがとう!
僕、りゅーげんおいちゃん大好き!大人になったらおいちゃんと結婚する!!」

僕は冗談ではなく
本当に嬉しくて本心でそう言いました

そして、後部座席から龍玄さんのツルツル頭に何度もチュッ!チュッ!と、キスをしていました

龍玄さんは
「かっかっか!!こそばゆいのう!虎坊や!」

と笑いながら言い

龍玄さん
「虎坊や、本当にわしと結婚してくれるんじゃのう?」

虎之助
「うん!僕、絶対にりゅーげんおいちゃんと結婚する!」

龍玄さん
「嘘じゃないな~~?」


「…大きくなったら、こんなおじさんいやだー!って言うに決まってるだろ!」

龍玄さん
「そんなことないぞ♪
虎坊はわしと結婚すんよのう~♪」

虎之助
「あぁ~、僕もう…
りゅーげんおいちゃんが好き!好き好き好き!」

僕はまた龍玄さんのツルツル頭に何度もキスをした

少し苦い香りがして、しょっぱい味だったのも鮮明に覚えている

しかしこれが
今まで全くなつきもしなかった龍雲寺の住職「龍玄和尚」にベッタリなつくようになったのはこの日からだった…




そして長い月日が経ち

幼かった虎之助も
えぇ歳こいた親父になった

2016年5月4日

昨日

虎之助は
高知県の鯉のぼりの生産地である十和村を訪れ

「鯉のぼりの川渡し」
を見に行った

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大空を気持ち良さそうに泳いでいる約500匹の鯉のぼり

虎之助
「うわぁぁ…あの鯉、長いなぁ~
秋刀魚、いや、日本昔話の歌に出てくる龍みたい…」

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「今1時50分かぁ…すぐに帰る方向に向かわないと…」

僕が十和村の鯉のぼりの川渡しに滞在していた時間は、ほんの15分程度だった…

それは暗い山道を走るのが嫌なので、なるべく明るいうちに帰れるようにする為なのである

撮影を終えて
僕は今まで見たことなかったような長い長い鯉のぼりを
照らされる眩しい太陽に目を細めながらもう一度見ていた

小学1年生になったばかりの虎之助が剛志君家の立派な鯉のぼりを

羨ましそうに眺めていた
あの頃と同じ瞳の中に

まるで龍のような黒い真鯉の鯉のぼりが
大空を気持ち良さそうに悠々と泳いでいる姿が映っていた






龍玄さん…

あの時
鯉のぼり買ってくれて
ありがとう

僕は今でも龍玄さんが大好きです…

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