どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

Boarding ~ 消防士への道~第三話「悩みの体質吹き飛ばせ!」

日本消防庁消防隊員訓練学校

数ある消防学校の中でもレベルが高く、一番規模が大きく有名であり、首都圏の中心地に佇む消防隊員憧れの地、東消こと「東京消防庁」への配属を希望する受講生もここ最近は少なくない

そんな名高い消防学校を選んでしまった虎之助

ここに集まった受講生達は皆、トップアスリート級の運動能力を備えている猛者ばかりだ

この訳数ヵ月の間、自主的にトレーニングを積んで全身の筋力、瞬発力、持久力を遥かに向上させてきた虎之助

無酸素運動ばかりだったこの重い筋肉だらけの体をここまで速筋に変えるのは相当の苦労だった

しかし、ほんの少し前まで寺院の法事で説法や巡礼の作法を学び、ひたすら経を唱えていた坊主の生活から、
別世界の消防士、消防吏員(しょうぼうりいん)になる為、故郷、愛媛から遠く離れた日本消防庁消防隊員消防学校への扉を叩いた虎之助だったが

鬼教官の大男、横田強に選ばれた人員として見抜かれたのは良いが、猛烈な罵声と虚勢を集中的に受け、幼き頃から夢見た強い思いは、頼りなく弱く小さな心へと変えられてしまった…

更に、横田教官から突然相撲勝負を強制的に挑まれ、仕方なく申し受ける事となる、虎之助が相撲経験者だったが為に、新しく深刻な試練が課せられてしまうのであった…

過去に二人の強豪を小便失禁させたという横田教官は、一体どんな取り組みを仕掛けてくるのか虎之助には恐怖で全く想像がつかなかった

ただ頭で想像するのは、大相撲の力士が小学生力士相手と遊ぶように軽くあしらうような取り組みになるような気がする

そして最後は片手で廻しを捕まれ、まるで子猫を放り投げるように土俵の外へ「ポイッ♪」と軽く投げられてしまうのだろうか…?

いずれにしよ、絶対に小便失禁だけはしたくないので、取り組み前には絶対にトイレに行っておこうと決心する

果たして、この泣きべそで強がりの意地っ張りの虎之助は、本当に消防士になれるのであろうか…?


そして横田教官との相撲勝負はどちらが勝者となるのか…?


それは聞かずとも分かる事…?かな…?






Boarding ~ 消防士への道~
第三話
「悩みの体質吹き飛ばせ!」




消防隊員訓練学校の広く長い廊下

秋も終盤に差し掛かり、廊下はひんやりと冷たい空気が漂っている

横田教官が先導しているその後ろを、受講生全員が歩いて着いて行く


ひんやりと冷たい空気が、廊下響く足音を一層高鳴らしているようだ


オレンジ色の制服に身を包んだ横田教官

その後ろ姿の背中は広く逞しく、幾度の困難を乗り越えてきた本物の「男の背中」が見えるのであった


世の消防士ファンの女性が見れば一目で惚れてしまうだろう…


伸長も190cmはある長身だ

とにかく歩くのが速い速い

伸長の低い自分は、少し小走りしないと追いつかないくらいである

広く長い廊下を歩いていると、消防学校特有の香りがする

どんな香りがするのか、言葉にするのはちょっと難しい…

何と言うかこう…

「常日頃、精神と神経を尖らせて日々を過ごしている男達」の香りがするのだ

厳しい訓練や座学に励む新人訓練生、新人研修生、さらにその新人達を指導するベテランのオレンジの制服を着た隊員や教官


毎日はりつめた空気…

気の休まる間もない…

そんな厳しい訓練学校特有の香り…

自分はここで頑張らなきゃいけないのだ…

が…

しかし…

虎之助はこういった環境や場面にめっきり弱いのである…

これからという大事な時や緊張の走る状況に限ってあの症状が出てしまう…

どんなに気持ちを落ち着かせようとするのだが、自身の体に掛かる不安や緊張が強いストレスとなり、体調がコントロール出来なくなり、頻繁に尿意を催したり、急激な腹痛に襲われてしまうのである


この症状に初めて発症したのは、あの深山中学校の入学式だった…

まだ公にはしていないが、あの日
虎之助は入学式で大勢の全校生徒、全校教師、PTA 会長、深山町相撲道場の会長を含む、来賓者達の前で人生最大の大失態をしてしまったのだ…

もし試験中や座学の授業で尿意を催してしまったらどうしよう・・・

厳しい訓練中に急激な腹痛に襲われたらどうしよう・・・


会議室の説明で横田教官は、試験や授業、又は訓練中にトイレを催したり、気分が悪くなったりしたらすぐに申し出るようにと言っていたが、果たして本当にすんなりトイレに行かせてくれるのだろうか…?

少し自分の思考で考えてみた…


もし試験中や授業中に尿意を催したら…

虎之助
「あ…あの…、横田教官…ちょっとすみません…」


横田教官
「!なんだ西郷・・・・・??」


虎之助
「あ…あの…、すみません…
どうしてもトイレに行きたくなってしまったので…
ちょっとトイレに行かせてもらっても宜しいでしょうか……?」


…と言うと……


横田教官
バンッッ!!!←教台を叩く音
「何だあぁぁぁぁぁぁあっっ!!?
その小さな喋り口調はぁぁあっ!!!

何度言ったらわかるんだっっ!!!
そんな蚊の鳴くような声で俺が何言ってるのかわかると思っているのかぁぁぁあああっっっ!!!
そんなんじゃあいつまでたっても消防隊員になれんぞっっっ!!!
西郷っっ!!!前に出て呼号と敬礼っっ!!!」


…こんな感じで言われそう・・・

…いや…絶対こうだろう…

…自分の思考は結構的中するのだ…



尿意が限界時にそんな猛烈な罵声を浴びせられて、教台の前に立って呼号に敬礼なんてやらされたら・・・


絶対に我慢できなくて漏らしてしまう…


敬礼のポーズをしたまんまでズボンから小便が勢いよく溢れだし、足元には大きな水溜まり作って皆の笑い者になるんだろうな…

そんな悲惨な姿が本当に目に浮かんでしまう

もし本当にそうなってしまったら精神的にダメージを受けて鬱病を患ってしまうかもしれない…

消防士の道もきっと諦めてしまう可能性もある…

ならば逆に大きな声でハッキリ言ったとすればどうだろう…?


訓練中のシチュエーションで思考してみる…

横田教官
「はいっっっ!!!つぎっっっ!!
8番隊員っ!!!西郷虎之助っっ!!!」

虎之助
「横田教官すみませんっっっ!!!
突然ではありますが!!お腹が痛くなったのでトイレに行かせてもらっても宜しいでしょうかっっ!!!」


横田教官
「バカかっっ!!!お前はっっ!!!
これからロープで下降しようとしてるのになんでもっと早く言わないんだっっ!!!
訓練棟にはトイレは無いっっ!!!降りるまで我慢しろっっ!!!」


虎之助
「え…?え……
でも……もう僕…
お腹が痛くて動けません………!」


横田教官
「声がちいさぁぁぁぁああいっっ!!!
サッサと降りんかぁぁぁぁああっっ!!!」


虎之助
「は…はいっっっ!!!(涙)
8番隊員っっ!!!西郷虎之助っっ!!!
出動しますっっ!!!(涙)」


…で…
下降中に下痢便漏らして皆からの笑い者…

うん…
絶対こうなる…
というよりこれ以外に考えられない…


今年の夏に、石鎚山へ低山トレッキング
した時
頂上で雷に見舞われ、急激な腹痛が襲いかかり、無事に下山したものの
便所目の前にしてギリギリアウトになってしまった経験が記憶に新しい

だがあの時は周りに誰も居なかったからさほど気にする程ではなかったが

ここは全国1レベルの高い消防庁消防隊員訓練学校なのだ

もしやらかしてしまったら各消防署に配属されても噂されてしまう恐れがある

消防という世界は体育会系の男社会だ

堂々と何を言われるかたまったものではない…


とにかく過去に失態の経験がある以上、1度は横田教官に確認をとっておいた方が良さそうだ

いやっ!

横田教官にもしそんな事を言ったりすれば…

横田教官
「なんだっ!西郷!お前漏らす心配があるのか!?
っったくっ!しょーがない奴だなぁーーー!!!←皆に聞こえるように大きな声で言う

沖田局長や副教官の鈴木さん、谷やん(谷本消防隊員)せーやん(波瀬川消防隊員)にも、西郷は漏らす心配があるからトイレの注意は厳重にと伝えておいてやるから、まぁ心配するなっ!!がっはっはっは!」


・・・・・・・・

絶対あの人(横田強)こうやって言いそう・・・!!!
いや…絶対にこう半分呆れたような人を小馬鹿にしたような口調で必ず言う!!


相談なんてとても出来ない・・・


ならば一体どうすれば良いんだ・・・


虎之助は早足で歩く横田教官の後ろを、受講生の皆と一緒に少し小走りになりながら、そんな不安要素をマイナス志向で考えてしまっていた

しかし、虎之助当の本人にとっては深刻な悩みなのである


横田教官が2階へと上がりだした

受講生達もそれに従い着いて行く


階段を2階まで上ると右に曲がった


そして真っ直ぐ進むと両端が窓になって明るくなっている渡り廊下の奥に、食堂が左側にあるのが分かる

食堂を通りすぎた廊下の突き当たりに寮部屋のドアらしき物が見えてきた

そう…

この食堂を過ぎた廊下の突き当たりが宿舎になるのである


ここが各班ごとに生活をする寮部屋になるのか…


横田教官は突き当たりを左に曲がり、1番端にある101号室の前に着くと、歩くのを止めて、回れ右をして受講生達の皆の方へと振り返る

横田教官
「よーしっ!全員いるなー!?ちゃんと皆着いてきてるなー!誰もはぐれたりしとらんだろーなー!?」


と、体育教師のような喋り口調で言うと

受講生
「はいっっっ!!!」

と、強くハッキリ返す受講生達

横田教官
「よーしっ!ここが今日から君達が各班で生活する寮部屋だ!
これから中に入って生活準備等の説明をするからなー!
しっかりルールを守って生活するようになー!」

受講生
「はいっっっ!!!」


横田教官
「君達同期は仲間でありライバルでもあり!共に同じ屋根の下で生活をして同じ釜の飯を食べる兄弟なんだという事を忘れるなっ!!!」


受講生
「はいっっっ!!!」

横田教官
「消防訓練は君達が想像している以上にずっと厳しいものとなる!
辛い訓練の日々にも同じ同期、班同士の仲間達と励まし合い
「切羽琢磨」しながらこの生活を築き上げて欲しい!」

受講生
「はいっっっ!!!」


横田教官
「そして半年後、ここにいる15人全員が無事にこの日本消防庁消防隊員訓練学校を無事に初任科を終えて卒業出来るよう私も全力で指導するつもりだ!!
全員覚悟しておけよ!この鬼教官、横田強の訓練は全国1厳しいが、これまでの教え子達は皆優秀な消防隊員となって各配属先の消防署で元気に頑張ってるぞ!

だからお前達も頑張れっっ!!!」


受講生
「はいっっっ!!!宜しくお願い致しますっっっ!!!」


横田教官
「よーしっ!全員良い返事だっ!
…だが…その前に、試験を合格しないといけなかったな!」

と言うと、横田教官は自分の方に直ぐ様視線を向ける


横田教官
「こらっ!!!西郷どんっっ!!!
まだ不安そうな面しとるけど大丈夫かっ!!(怒笑)」


虎之助 
「は…ははは…はいっっっ!!!大丈夫ですっっっ!!!」

横田教官
西郷どん!お前ホンマに大丈夫なんかぁ~(笑)
俺はお前が1番問題児の予感がして心配
しとるんぞっ!?
がっはっはっは!!」


虎之助
「は…はいっっっ!!! ありがとうございますっっっ!!!大丈夫ですっっ!!!」


横田教官
「西郷…「念ずれば花開く」
自分の力を信じ、とにかく一生懸命頑張れよ…

俺の願いだ」


虎之助 
「はいっっっ!!!ありがとうございますっっっ!!!
頑張りますっっっ!!!」


横田教官
「よしっっ!!信じてるぞっ!!
その言葉!俺は絶対に忘れんからな!」

虎之助
「はいっっっ!!!」

横田教官
「よーしっ!それでは
8番隊員、西郷虎之助!敬礼っっ!!!」

虎之助
「はいっっっ!!!8番隊員!!!西郷虎之助ですっっっ!!!」


虎之助はこの時
生まれて初めてこの地で「敬礼」をした

愛媛県、松山消防署のマスコットキャラクターの防災カバー君と同じ敬礼ポーズのように…」

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近藤真彦
「虎ちゃんほんっとに横田教官に気に入られとるね~(笑)」

藤田大輔
「ホント羨ましいですよ~♪
僕なんて全然構ってもらえないんですよぉ~♪」

匠大学
「ま、ワシが最年長やから1番問題児になるもんやと心配しとったけど…あんたがおってくれて安心したわい(微笑)」


虎之助
「あ…あはははは……(笑)
そ…そんなに注目されると恥ずかしいなぁ~…あは………あははははは(笑)」

横田教官
「がっはっはっは!!西郷どん!お前っ!顔を真っ赤にしてなぁ~にを恥ずかしがっとるんや!このアホタレッ!!(笑)」

横田教官は大声で笑ながらそう言うと僕の頭を「バシンッ!!!」と叩いた

虎之助
「痛ったっっ!!何で叩くんですかっ!急に!痛いじゃないですかっ!(笑)」


受講生
「ぎゃははははははははっ!!」

横田教官
「お前はホント笑わかしてくれるわい!
よーしっ!西郷どん!お前ちょっと皆の前で自己紹介してみろーーー!!」


虎之助
「えぇぇぇーーーーーーーっ!!!
いきなり僕だけ自己紹介ですかぁぁぁーーーーーー!?」

受講生
「あははははははは!!(爆笑)」

近藤真彦
「はーい!はいはいはい!皆さんお静かにぃー♪
これから2班代表の西郷虎之助君が自己紹介いたしますよぉーーー♪」


藤田大輔
「虎之助さん!早く早く!皆の前に立たないとダメですよ♪」


匠大学
「はーい、これより西郷虎之助君から自己紹介を発表いたしまっせー」


横田教官
西郷どん!お前良かったやないけぇ~!!
人気者じゃぞぉ!!!
よーしっ!皆拍手っ!」

受講生
「パチパチパチパチパチパチ…!!」

西郷虎之助
「あ…あの…
皆さん初めまして…」


横田教官
「こらーっ!!西郷どん!」

近藤真彦
「声が小さすぎて聞こえませーん♪」

藤田大輔
「大きな声で言わないとまた怒られますよ♪」

匠大学
「ほれ、西郷どんなんやろ?頑張ッてぇー声出さんかいやー」


西郷虎之助
「は…はは…はいっっっ!!!
皆さん初めましてっっ!!!
僕は愛媛県松山市からやって来た」





「西郷虎之助です!!!」





日本消防庁消防隊員訓練学校へ愛媛から遙々やって来た虎之助

入校当初は横田教官から突然罵声を浴びせられ、不安と恐怖と自身の精神的に患うややこしい体質により
消防隊員になる夢を少しばかり後悔してしまっていた虎之助であったが

教官としての厳しさの中にも、兄貴気質な優しさも見せ始めた横田強教官に、まだ会って間もないはずなのに、自分に親しく接してくれるようになった2班の3人と、これから同じ釜の飯を食べて、共に厳しい訓練により切羽琢磨しあう11人の頼もしい同期の「仲間」達に囲まれ

どんより暗い不安要素も一気に吹き飛び楽になっていった

自分の選んだ道はやっぱり間違っていなかったんだ

初めは怖かったし不安だらけでダメになりそうだったけれど、消防学校に来て本当に良かった

まだまだ訓練への心配はあるけれど、消防隊員を目指した者ならば誰でも通る道なんだ

とにかく今は横田教官の言った通り一生懸命頑張ろう!


僕は絶対消防士になる!


おっかない教官と14人の仲間達と共にこの場所で…


秋の終わり…
消防学校の広いグラウンドに、少しばかりのつむじ風が落ち葉を散らしながら吹き抜けていった…

第四話に続く

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愛媛県松山消防署のマスコットキャラクター「防災カバーくん」画・虎之助