まだ暖かくならない肌寒さを感じる3月の終わり頃…
僕はあの日の夜を忘れない…
あれは土曜日の夜の事…
市内の飲み屋街には仕事を終えた大人達が、あちらこちらと飲み歩く姿で溢れかえっている…
普段仕事で溜まったストレスを
ここぞとばかりに発散する大人が楽しむ夜の時間
飲み過ぎて道端で倒れこむ若い男女
頭の薄いおじさんと腕を組んで歩いている派手な服に身を纏ったお姉さん
電信柱で人前構わず嘔吐するお兄さん
高らかに声を上げて叫び歩くおじさん集団
この飲み屋街には様々な人間模様が見え隠れする…
道路脇には「空席」のランプが電灯しているタクシーの路上駐車がズラー・・・と列を作って停まっている…
タクシーに乗り込む人はほんの一握りのようだ…
今を楽しみ、今を精一杯生きている大人達…
そんな中
こういう場所には決して似つかわしくない一人の太った青年が…
この飲み屋街へとやってきたのだ…
彼の目的は
男が好きな男が見るゲイ雑誌
「○-man 」
を、勇気を出して購入する事だった…
市内の飲み屋街に佇む一軒のナイトショップ「さ○ら」
あの日はたまたま弁当を買おうと寄っただけだった…
だけどその偶然が…
僕を新しい未知の世界へと導いたのだ…
アダルトコーナーの一番隅に置いてあった雑誌…
その表紙は
如何わしい表情を浮かべる下着姿の女ではなく…
短髪で筋肉隆々のガッシリ太目の男が表紙の…
ゲイ雑誌
「○-man 」だった
初めて見た
これが男が好きな男のゲイ雑誌…
本当に…あったんだ…
物凄く欲しい…
だけども買う勇気がない…
雑誌を手に取りレジまで持っていく事なんて出来ない…
でも…
今すぐあの雑誌の中身を見たくてしょいがない…
僕はあの日の夜から、およそ1ヶ月間にわたって、悩みに悩んで決断し…
ついに目的のゲイ雑誌
「○-man」を、心臓が破裂する思いで買ったのだ …
店を出た僕は、急いで居酒屋の路地裏に止めてある自転車まで無我夢中に走って行く
茶色の紙袋を両手で抱えたまま…
止めてあった自転車のかごに茶色の紙袋に入った雑誌をほうり投げ、おぼつかない手つきで鍵を解除した…
そして大きなお尻をサドルに乗せ、ペダルを力一杯踏んで自転車を徐々にスピードを上げて走らせる…
途中で交差点の信号がタイミング悪く赤になった…
しかし欲情の波と鼓動が上昇して自転車を止めることはしなかった…
もう家までなんて待ちきれない…
早く雑誌の中身が見たい
男の世界…
ゲイの世界がどんな所なのか知りたい…
とにかく今すぐ確かめたい!
僕は歴とした「ゲイ」
もう自分を受け入れたんだ
泣きべそ少年だった深山町出身の西郷虎之助が…
二十歳の青年になり
禁断の世界…
もう一つの社会…
大人の入口へと足を踏み入れた時だった…
僕は、飲み屋街から少し離れた川沿いの公園へと
自転車を猛スピードで走らせた…
本当に…
あの時の僕は
無我夢中だった…
「しまんとえれじぃ」
~僕が初めてキスした柔道おじさん~
-菜の花の香り-編
飲み屋街から700m程南方面へ向かうと「石手川」というまぁまぁ大きな川が流れている…
その川沿いには長い距離にわたって、公園や野球場、又はテニスコート等の広場が設けられている…
休日はスポーツをする老若男女や家族連れのファミリー達が賑わっている場所でもある…
しかし…
この辺り、石手川の川沿い周辺には
その昔、数えきれない程の「無縁仏」のお墓がズラー・・・っと数キロメートルに渡って祀られていたそうだ…
そして、この川沿い周辺のラブホテルや古いマンションには幽霊が出たり、心霊現象が起こる建物が多いのは地元ではかなり有名
特に○泉のア○ムスカイマンションがあった場所は、元火葬場であり、工事にあたって地中を掘った時には、たくさんの白骨が出てきたのは本当の話である
なのでこの川沿い一帯の土地は相当治安が悪い…
しかし、今の僕は川沿いにまつわる幽霊や無縁仏や白骨が掘り出された話よりも、ゲイ雑誌の事でもう頭がいっぱいだった…
T路地に差し掛かった信号を越えて、急な坂道を登れば川沿いの道に出る
そして僕はすぐ近くの公園へと入り、自転車を止めて明かりが灯っているベンチへと雑誌が入った茶色の紙袋を抱えながら向かった…
はぁ…はぁ……と激しい息切れが止まらない…
公園はやけに静かで肌寒く、白い息をちらつかせている…
毎年3月になると川辺に咲く菜の花の香りが…
興奮していた僕の心を、優しく和らげてくれているような感じがした…
明かりの灯った冷たいベンチに、そっ…と腰をかける
…お尻が濡れたように冷たい…
○-manとヤング雑誌が入ってある
茶色の紙袋の空け口を止めているセロファンテープを「ピリッ…!」と剥がす…
念願の…
そして待望の…
ゲイ雑誌「○-man 」を紙袋から取り出した…
他の2冊、カムフラージュで買ったヤング雑誌には一切目をやらずに無視する…
○-manを改めて手に取ってみると…
お店でレジに持っていった時には気付かなかったが、持ってみると以外と重い…
普通の姿勢で読むと、二の腕が疲れてくるだろう…
僕は一旦周囲をキョロキョロ見渡して人が居ないのを確認すると、○-manを膝の上に置いて表紙を眺めてみる…
○-man
表紙のイラストは、短髪のガッシリした体格で筋肉隆々の男が、つなぎを上半身の半分以上を脱ぎ、その逞しい筋肉を僕に対して誘惑しながらこちらを見つめているように思えた…
「感じるところ、すべて」
と大きな文字が目に入る
ようやく息切れも落ち着いて呼吸も整った今…
僕は「グッ…」と息を呑み、ゲイ雑誌○-manの扉を開いた…
僕のゲイLIFEは…
ここから始まったんだ…
まず目にしたのは、巻頭のグラビア写真だった
ガッシリ太目の短髪の男性が白い褌を締めて大股を開いている…
褌越しから見える、その大きくなった○ん○ん…
それを見た僕は、頭が「カァーーーー・・・!!」
と熱くなり、自然と僕の下半身に血流が集中した、そして秒数を数える間もなく僕の股間の○ん○んが「グングン」と大きく勢いを増して勃つ
自然と呼吸が「はぁ…あ……はぁ…あ…うぅ……」と淫らになってしまう
僕は興奮した…
今すぐにでもそのいきり勃った○ん○んをズボンから出してしごきたい・・・!
さらに次のページを開いてみると…
今度は、さっきの短髪のガッシリ太目の男性が、最初の写真で締めていた白褌をぼどいて素っ裸になっている…
体に巻き付いた白褌が、さらにその露な裸体を色っぽく演出している、それを見た僕の興奮度はさらに勢いを増すばかり…
モデルの男性の○ん○んは黒く塗りつぶされていて見えないのが少し残念だった…
さらに次へとページをめくってみる…
すると今度はモデルの男性がお尻をこちらに向けて自分の尻たぶを両側からつまんで開き、「お尻の穴」つまり肛門が丸見えになっている体勢でいるだ・・・!!
綺麗な色をしている肛門…
ピンクっぽい色ではっきり見えている…
まるで菊門のようだ…
昔、龍玄さんとお風呂に入った時、五右衛門風呂の平板を、上から乗っかって沈めるている龍玄さんの肛門が「チラ…」と、見えた事があった…
少し毛が生えていて、黒っぽい影に覆われていたのを今でもハッキリ覚えている…
あの時僕は、まだちっちゃな○ん○んが初めて興奮を覚えて「ピーン!」と、いきり勃ってしまい、龍玄さんから「虎坊どうしたんじゃ!?摩羅様がおっきしとるぞ!がははははは!!」と、笑いながら言っていた…
あの時の興奮が…
あの時の記憶が…
幼い頃に見たあの肛門が…
今になって鮮明に甦ってきた…
股間の○ん○んが…
ムズムズしすぎて…
欲情が抑えきれない…!
さっきまの肌寒さが嘘のように僕の体を熱くしている…
もう・・・
出してしまいたい・・・!
今僕が座っているベンチの斜め後ろには公衆便所がある…
子供の頃に見た龍玄さんの、少し毛が生えている黒い影に覆われた肛門…
○-manの雑誌に巻頭グラビアで、自ら尻たぶを両側から開いて見せている綺麗なピンク色をした肛門…
その両者の反比例する肛門が、僕の体をさらに熱くする…
僕は一旦雑誌を閉じて茶色の紙袋に「○-man」を仕舞ってベンチに置く…
そしてベンチから立つと迷う事なく小走りで公衆便所へと向かっていった…
橋を渡る車の音が聞こえる…
足元の砂が「ジャリ…ジャリ…」と摩れる音まで静かな公園に響いていた…
目の前には寂しく明かりの灯った公衆便所…
菜の花の香りがまた漂った…
僕は公衆便所の個室へ「バタン…」と静かに入る…
薄暗い個室の周囲を一通り見渡すと、便器の前に備え付けられている再生紙で作られた堅いトイレットペーパーを「カランカランカラン…!」と、手に巻き付けるようにして勢いよく取り出す…
そして僕はズボンのベルトを緩めてチャックを開くと、少し先走りで濡れた縦縞パンツから自らの勃起した摩羅を「グイッ!グイッ!」と取り出した…
「はぁ…はぁ……はぁ…!」
興奮で荒くなる呼吸…
僕は欲情に流されるがまま、勃起した摩羅を強く握り、右手を上下に素早く動かしてしごき始めた…
うっすらと赤黒い血管が浮き出た摩羅の先っぽからは、ヌットリした透明の液体が既に溢れている…
上下にしごいていると
僕のいきり勃った元気な摩羅は、その透明の液体によって全てを覆われるようになる
さらに右手を強くしごいてみると「グチュッ!グチュッ!グチュッ!グチュッ!」といやらしい音が鳴りだす…!
「あ・・・!!あぁ・・・・!出・・出るっ!!」
摩羅をしごきだしてから、まだ1分程度しか経っていないにも関わらず、すぐさま勃起した摩羅の尿道から上へ上へと精通の波が押し寄せてくる
「あ・・・!!
あ・・・!!あ・!ぁぁああーーー・・・!!!」
急いで摩羅の先っぽの尿道口にトイレットペーパーをあてがる
そして次の瞬間…!!
「ビビュッ!!!ビビッ!!」
勃起した摩羅の尿道口から勢いよく白い液体が跳ねとんだ
用意していたトイレットペーパーを押し退ける勢いで僕のいきり勃った摩羅は「ビクッ!ビクンッ!」と弾き、白い液体は便所の壁へと飛び散ってしまった…
そしてすかさず第2弾が尿道口から「ドクドクドク…!」と、用意していたトイレットペーパーでは受けきれない程の大量の白い液体が溢れだす
「はぁ…はぁ…」
「ぐっ…!はぁ…はぁ…!」
溢れ出す液体は想像以上に多かった…
どうにかトイレットペーパーを尿道口にあてがってはいたものの…
僕の手元は大量の白い液体まみれになってしまった…
「あ・・!あぁ~・・・」
「気持ち・・良かったぁ~~・・・・!」
僕は余りの気持ち良さに思わず精通の喜びを口に出してしまう…
ここまで
ほんの3分程度の早い射精だった…
こんなに気持ちの良い刺激は久しぶりだ…
初めてセン○リをこいたあの中学1年生の時以来かもしれない…
僕はそのまま手をベトベトにした状態で
しばらくの間は動く事が出来なかった…
手元に溢れている白い液体が、トイレットペーパーを伝って「ポト…ポト…」と床に落ちている…
パンツやズボンにも白い液体が付いてしまったようだ…
だけど僕は、全身の力が一気に抜けてしまい、そんな事などぜんぜん気にならないでいる…
公衆便所の中から救急車のサイレン音が、何処か遠くの街から小さく響いているのが聞こえた…
そして足元や便所の壁には
僕の溜まりに溜まった欲情の液体がたくさん飛び散っている
これが僕の
ゲイの世界へと足を踏み入れた最初の第一歩だった…
公衆便所の天上付近にある隙間から覗く星空…
便所の個室内にはアノ香りが漂っている…
「栗の花の香りによく似ているアノ青臭い香りだ…」
しかし…その瞬間…
公衆便所の隙間からは
ほのかに菜の花の良い香りが……
夜風に流されながらふんわりと優しく入ってくる…
そして僕が今しがた放出した、若く青臭い栗の花のようなアノ匂いを消し去ってくれている…
僕の若かりしマスターベーションの終わりと、ゲイの世界へ足を踏み入れた今を…
優しく祝福してくれているようだった…
3月の終わりになると、満開を迎えて川辺いっぱいに咲く黄色いじゅうたん菜の花…
毎年この季節が来ると
いつも僕をあの頃の甘い気持ちにさせてくれている…
菜の花の香り…
それは…
僕がゲイの世界に入ったあの頃、二十歳の切ない思い出の香りなのである…
写真、高知県、宇佐大橋