○-menのメイルス○ラン○ルの文通欄
岡山県
あつし
165×105×45
自分→「太目」、「筋肉質」、「短髪」
希望する相手→「太目」、「筋肉質」、「年下」
メッセージ
「子供の頃から柔道経験がある既婚者のデブ親父です
、俺と同じように武道経験があり、年下で体重90kg以上の男を希望、短髪ならば尚良し、どこか少年っぽい面影を残している弟のような可愛い子がいいな、お互い秘密厳守で!近場なら一緒に飯でも食ってその後はまったりしたいな…画像ある方は返事確実、よろしく」
ゲイ雑誌、○-menには当時、こういった出会いの文通欄、メイルス○ラン○ルというコーナーがありました
その文通欄、メイル○クラン○ルを見ていると、まぁまぁ近場の岡山県に、年上で太目のある男性のメッセージが僕の目に止まった…
岡山県の
「あつし」
という年上の男性
ちゃんとメールアドレスも表記されている…
僕が思い切ってそのアドレス先にメールを送ったのは…
まだ桜のつぼみが開く前の肌寒い春の訪れの頃でした
…
「しまんとえれじぃ」
~僕が初めてキスをした柔道おじさん~
それは僕がゲイ雑誌、○-menを市内のナイトショップ「さ○ら」で初めて見つけたあの日だった…
ガッシリ太い短髪の筋肉隆々な体格をした男の表紙…
これがゲイ雑誌…
男が好きな男が見る雑誌…
本当にあったんだ…
以前職場の偉いさんから、
「薔○族」と「さ○」というタイトルの雑誌があると聞いたことはあった…
市内のナイトショップで偶然見つけたゲイ雑誌…
「○-men 」
どうやらガッシリ太い筋肉質な男性専門の雑誌のようだ…
まさに自分の好み
そして自分も筋肉質で太めの体系
これはもう…
買うしかない…
だけど
初めて見つけた時は買えなかった…
心臓の鼓動が高まり、顔面が熱くなって胸が苦しく締め付けられたような感覚だった…
こんな雑誌…
見てはいけない…
僕は体で拒んでいる…
だけど…
心で思っている事は違っていた…
「この雑誌が見たい…」
「中はいったいどうなっているのか…」
「男の裸の写真が本当に載っているのか…」
僕の心の中で
今まで感じた事が無い程の莫大な好奇心が渦巻いて治まらない…
約1ヶ月悩んだ…
何度も夢の中であの雑誌を買う夢を見た
そして朝目覚めてガッカリする
さらに欲情がモンモンして正常な精神常態でいられない…
しかし…
僕はついに決心したのだ…
「今日こそあの雑誌を買ってやる!!!」
その日は朝からずっと購買パターンのシュミレーション
弁当を買うのは止めておこう、レジに居る時間が長くなるから…
プレ○ボーイとヤングマ○ジンに挟んで買おう
その計画に決定
土曜日の夜
僕は自転車に乗って市内の飲み屋街へ向かった
緊張しすぎて胸が苦しくなる…
街にはたくさんの酔っぱらいの大人があちらこちらと行き交っている…
みんな楽しそうで街中も賑やかで騒がしい…
だけど…
どうしてだろうか…?
何処と無く寂しさと虚しさを感じてしまうのである…
飲み屋街に佇む一件のナイトショップ「さ○ら」
ここでは仕事帰りに飲み歩くサラリーマン以外にも、スナックで働くママ、クラブのお姉さん、マスターやボーイさん達が家に帰る前にここで弁当を買っていく姿が見られる…
いわば夜の街で働く人のナイトショップだ…
そしていよいよ店の前までやってきた…
心臓はますますドキドキしている…
店内の客が居なくなった隙にタイミングを見計らって僕は急いで店に入った
今躊躇したら次は無い
頭の中は真っ白だった
だけど僕は一目散にゲイ雑誌が置いてあるアダルトコーナーへと足を早めた
例の雑誌○-menが置いてある…
さらにその両脇には別のゲイ雑誌が…
サ○ソン
B○dy
表紙をチラッとしか見なかったがサ○ソンは、でっぷり太った男、年配の恰幅の良い男性専門誌
B○dyは細くて筋肉質、又は細目の可愛い系の男性専門誌のようだ
そして僕はついに目的の雑誌、○-menを手に取り、ヤング雑誌を闇雲ながらも2冊適当に取り、速やかにレジへと直行した
「はい、いらっしゃいませー」
と、棒読みに言う店員さん、よく見ると太った髭のおじさんだった…
もしかしてこの人も…?
そう思いながらも僕はうつむき加減で財布をズボンのポケットから出す
店員のおじさんはレジのキーボードをポポポ…♪と無言で打っている…
「あ…さっき…あの雑誌の裏を確認した…」
「これで完全に自分がホモだとバレてしまった」
「この人…今僕の事をどう思っているんだろう…」
店員のおじさんは無表情、無言で3冊の雑誌を茶色の袋に入れている…
「あぁ…早くしてくれ…」
「とにかく今はこの場所から消えてしまいたい」
僕は恥ずかしさのあまり、視線をうつむき加減で斜め前に移す…
「はい、2160円」
店員のおじさんが棒読みで値段を僕に伝えた…
2200円渡す
40円のお釣りとレシートをもらう…
「やっと終わった…」
「これで…
これで見られるんだ…」
「この雑誌の中身が見れるんだぁぁぁああー!!」
そんな期待感と想像力を膨らませながら、雑誌3冊入った茶色の袋を両手に抱えて店を出る
やっと念願のゲイ雑誌を手に入れる事が出来た…
早く中身が見たくて仕方がない
家に帰るまでとても待ちきれない
そうだ…
夜も遅いし…
あそこの公園ならば誰もいない…
灯りだってある…
僕は走って居酒屋の路地裏に止めていた自転車の鍵を、おぼつかない手つきで解除する
そしてサドルに大きなお尻を乗せ、重い体をユサユサ揺らしながらも自転車のペダルを強く踏む
途中交差点の信号が赤に変わったが、待ちきれずに信号無視をした…
もう僕の欲望は押さえきれない
僕は歴とした「ゲイ」
今まで自分を誤魔化して生きてきた
だけど
もう僕は我慢なんてしない
勇気を出して扉を開けるんだ
ゲイというものは
恥ずかしいことなのか…
それとも…
ううん…
…答えはもうすぐわかる…
僕はあの先の公園で
ゲイ雑誌○-manを見てやる!
坊主頭の体重108kg
思春期を終えて二十歳の青年になった深山町寺村出身であり、深山中学相撲部員だった泣きべそ少年
西郷虎之助
そんな彼がゲイの世界へ足を踏み入れたあの夜の街と公園の明かり…
肌寒い空気と菜の花の香り
…
桜のつぼみが開くほんの手前のあの季節は…
今もずっと忘れない…
読みかけの小説に
栞を挟んだままにしている
何か忘れ物を置きっぱなしにしてしまったような…
ちょっぴり苦くてほんのり甘いグレープフルーツ
初めて男同士で恋をした
まだまだ寒い3月の終わりの春なのでした…
写真「高知県、宿毛市」