僕の一日が…
今日も始まった…
「テンテレテンテンテン♪
テンテレテンテンテン♪テンテレテンテンテン♪」
スマホのアラーム音が…
真っ暗で静かな部屋に
うるさく鳴り響く…
「あぁ～・・・あ・・・
・・・もう朝かぁ～・・・・
しんどいなぁ～～・・・・」
まだ眠い…
お外は真っ暗な朝の３時半
僕は今朝も新聞を配達するために…
重たい身体を起こす
「今日はどのジャージで配ろうかな・・・・」
毎日、毎朝
春夏秋冬、ジャージで新聞を配るのが僕の日課だ
もうかれこれ十数年間…
このような生活が続いている…
ジャージをはいたら
ポンコツ丸にまたがって…
新聞販売所へと向かう…
いつもと変わらない朝・・・
・・・だけど・・・
何かいつもとちがうんだよな・・・
・・・あ・・・・！
・・・そうだった・・・！
・・・今日は・・・
・・・４月の１１日・・・
・・・僕の・・・
・・・誕生日だった・・・
・・・すっかり忘れていた・・・
・・・今日が誕生日だったなんて・・・
今年は桜の開花が…
例年よりも１週間も遅かった…
桜は今ようやく満開に…
長く厳しい冬が…
やっと終わったんだ…
暖かい春が訪れたんだ…
配達も中盤に差し掛かった頃…
遠くに見える
石鎚山の…
山頂の山間から…
オレンジ色の太陽が昇り…
僕の顔と
満開に咲いた桜を…
眩しく照らした…
誕生日の朝を迎えてくれた太陽に…
独り言で呟く…
僕は今日…
またひとつ
おじさんになりました…
「あの日の僕へ２」
１９８○年,４月８日
とらのすけ、もうすぐ５才の
「入園式」
とらのすけ
「えぇ～～～～ん！！
うえぇぇ～～～～ぇぇえん！！」
「おかあさぁぁぁぁぁ～～～んっ！！
ようちいえんなんかいきたくなぁいよぉぅう～～～～っっ！！！」
マサ子
「とらのすけ！
いつまでもお母さんに甘えてばっかりじゃダメよ！？
もうお兄ちゃんになったんだから！」
みすず先生
「とらのすけく～ん♪
幼稚園はね、とっても楽しいよ！
お友達がい～っぱい！
先生もね、早くとらのすけくんと仲良くなりたいなぁ～・・・」
とらのすけ
「いやだ！いやだ！いやだぁ～～～！
ぼく、おうちかえる～～～～！
ようちいえんなんかいくもんか！
うえぇぇ～～～んえんえんえん！」
マサ子
「とらのすけったらぁ～・・・
泣いちゃダメよ！男の子でしょお！？」
みすず先生
「ほらほら、とらのすけくん…
あそこの女の子が、男の子のクセに泣いてる～！って笑ってるよ～？」
とらのすけ
「もうっ！ようちいえんいかない！
かえる！かえる！かえるぅ～～～！！
ひぎゃぁぁあ～～～ぁぁ～～～ぁぁああ～～～～～ぁああ～～あんあんあん・・・！！！」
今日は幼稚園の入園式
だけど
とらのすけは
お母さんとはなれたくないって…
わんわん泣きベソかいている…
と～～～っても…
甘えん坊な男の子…
名前は「とらのすけ」
強くて優しい男の子になりますようにと…
龍雲寺の
「龍玄和尚」から…
願を込めて
その名を授かりました…
・・・あれから５月になり・・・
幼稚園では
こいのぼりが
風になびいて
そよそよと…
気持ちよさそうに泳いでいます
とらのすけは
こいのぼりが大好き！
あんなに泣きベソかいたけど…
もうへっちゃらだい！！
おともだち
いっぱい！いっぱい！
いるんだもん！
こいのぼりを
たくさんのおともだちといっしょに
あげるのがたのしみ！
朝こいのぼりをあげる準備をしていたら・・・
「せんせ～～～い！！けんたろうく～ん！ふとしく～ん！ゆきのぶく～ん！まってて～～～！！
かばんおいたらすぐいくけん！！」
とらのすけはお母さんそっちのけで
こいのぼりに夢中になっています…
あれだけお母さん！お母さん！って泣いていたのにね…
だって男の子だもん！
もう、お母さんいなくったって
へいきなんだもんね！
だけど…
お母さんは
ちょっぴりさみしそう・・・
それから…
こいのぼりが泳ぐ春…
プールでまっ黒日焼けの夏…
うんどう会で、かけっこ１番の秋…
子どもは風の子雪だるまの冬…
あっという間に年長さん…
そしてまた…
春夏秋冬とすぎてしまいました…
…楽しい時間は
あっという間なんだね・・・
２年間、楽しかった幼稚園も、今日でおしまい・・・
いよいよ最後の幼稚園・・・
卒園式です…
いつのころだか…
おもいだしてごらん…
あんなこと…
こんなこと…
あったでしょう…
(歌詞・思い出アルバムより
JASRAC承認38652214586524807)
卒園式で
みんなで歌った
大きな声で…
だけど…
先生はみんな
泣いていた…
大人が泣いたのを見たのは…
この時が初めてだった…
先生とも
おともだちとも
今日でさよなら…
だけど…
きっとまた
会えるよね、だいじょうぶ！
先生の最後の一言
「先生は、やさしいとらのすけくんが大好き
お絵かきがじょうずなとらのすけくんも大好き
先生をいっぱい描いてくれたんだよ…
とらのすけくんの絵、ず～っと、ず～っと大事に持ってるからね、先生の宝物」
・・・・と
泣きながら…
言ってくれた…
僕が先生に言った
最後の一言…
せんせい…
さよなら…
ぼく、ぜったいにせんせいのこと
わすれないよ！
それから…
僕は…
またひとつお兄ちゃんになったんだ！
今日は待ちに待った入学式
龍玄おじちゃんが買ってくれた
ランドセルをしょって…
桜が舞い散る校門で大はしゃぎ！
学校には
おともだちがいっぱいだね！
もっと・・・
も～～～～～・・・っと！
いっぱいつくるんだ！
僕はピッカピカの１年生！
学校にはお友達がいっぱい！
勉強大好き！運動も大好き！
先生も大好き！給食も大好き！
跳び箱、なわとび、さかあがり
なんでもできるよ！
すごいでしょう！
毎日学校
楽しいな！！
・・・だけど
どうしてだろう・・・・
・・・いつからか・・・
・・・学校が楽しくなくなっちゃった・・・
・・・もう
・・・お勉強なんてしたくない・・・
・・・宿題なんてしたくない・・・
・・・体育・・つまんない・・・
・・・また先生に叱られちゃった・・・
・・・またあの子とケンカした・・・
・・・もう・・・
・・・学校なんて・・・
・・・行きたくない・・・
・・・そして・・・
長い長い６年間だった・・・
小学校も卒業して・・・
僕は中学生になったんだ・・
勉強やテスト
難しくって大変だ・・・
相撲部に入ったんだけど…
夕方遅くまで…
相撲の稽古…
毎日毎日
辛かった…
・・・だけど・・・
兄弟のような親友の
幼なじみ…
ケン坊と
帰りに吉田商店で買った
ダブルソーダアイス
５０円
２人で仲良くはんぶんこ
口にくわえて
話しながら帰るのが
楽しみだった…
夏の終わり
鈴虫の鳴く田んぼのあぜ道を
アイス食べながら帰った
あの日の僕…
汗臭い学生服
甘酸っぱい青春の香りだった…
相撲の稽古で
大きくなった
育ち盛りの男の子ふたり…
きゅうくつだったけれど…
毎日袖を通していた
学生時代…
僕はきっと
しあわせだっただろう…
・・・いつかきっと・・・
・・・そう思える日が来るよ・・・
あの日の僕へ・・・
今はもう…
僕には着れない…
あの汗臭い学生服が…
とても・・・
とても・・・
恋しいです・・・
