四国別格二十霊場巡礼記
第四番札所
「鯖大師本坊」
参拝日時
2013年11月
「四国一周五泊六日巡礼の旅」(三日目)
徳島県海部群海南町浅川
この寺院は、家から一番距離が離れている場所にある
四国八十八ヵ所霊場第二十三番札所「薬王寺」から、高知県の室戸岬の最端部に聳え立つ二十四番札所「最御崎寺」
海沿いの道路、国道55号線をただひたすら真っ直ぐ進まなければならない、その距離はなんと約80km
徳島県の「へんろころがし」を制覇したお遍路さんが、ここに来て再び厳しい難所に挑まなければならないのだ
この道程で脚を傷めてリタイアせざるを得ない遍路さんも多数いる
かの昔、海辺を歩いてお遍路さんは歩いていたそうだ
満ち潮や台風で海が荒れると旅の続行は不可能
引き潮、台風が過ぎるのを待つしかない
そんなお遍路さんを迎える為に立てられたと言われているのが
「鯖大師」(行基庵)
この寺院がこの場所に建てられたのには、このような歴史があったそうな…
お大師さまが旅の途中、この場所で一休みしていた時でした
向こうから、馬を連れた馬主の男がやってきたのです
パカリ…パカリ…パカリ…
馬主は力持ちで丈夫そうなガッシリした風浪の男でした
そこでお大師さまが馬主の男に問いました
お大師さま
「馬主よ、馬の背に乗っているものは魚のようじゃが…」
馬主
「塩漬けした鯖じゃ、坊さんには無用なもんだ!」
馬主の男は不機嫌そうに答えます
そしてお大師さまは、馬主の男にこう問いました
お大師さま
「その塩漬けした鯖を、私におひとつ接待して頂きたいのじゃが…」
すると馬主の男は
馬主
「ダメだダメだ!これは大事な売り物だ!一匹たりともやらんぞっ!!」
馬主の男は吐き捨てるようにそう言うと、馬を引いている縄を強く引いて先を急ごうとしました
しかし…
馬はこの長い道程の旅に疲れてしまい、元気がありません
馬主
「こら馬っ!とっとと歩け!早く町に行かなければ鯖が腐ってまうぞ!」
馬
「ヒヒィ~~ン……」
馬はお大師さまの前を通り過ぎようとした時、悲しい目でお大師さまを見つめます
それを見たお大師さまは馬主に言いました
お大師さま
「馬主よ、馬が長旅に疲れて弱ってしまっておる、休ませて水を飲ませてあげなされ」
すると馬主の男が怒りながらお大師さまに突っかかります
馬主
「うるさい坊主じゃのう!!早く町に行かなければ鯖が腐ってしまうんじゃ!
休んでる暇なんてあるもんか!!」
馬主はそう吐き捨てるように言いながらお大師さまの横を通り過ぎて行きました
馬は後ろを振り向き、お大師さまの顔を訴えるようにジッ…と見つめています
お大師さまはいたたまれない気持ちになり
歌を唄いました
「おおさかや
八坂さか中鯖ひとつ
大師にくれで
馬主の腹やむ(病む)」
すると・・・
馬主
「お…!おおおおおおおお!!」
馬主の腹が突然「ギュルギュル」となり始めました
そして・・・
馬主
「は・・腹が・・!腹が痛いぃぃいいぃぃぃいい!!!!
」
馬主の男は急に猛烈な腹痛に襲われ、慌てて松の木の影に行き下痢便を排泄しようとしましたが、褌をほどく事が出来ません
馬主の男は、この方がたいそう偉い僧侶だということに気づき
観念しました
馬主
「お・・お坊様・・!!どうか愚かな私をお許しくだされー!!
塩漬け鯖をおひとつ接待いたしまする!!!
この腹痛を治してくだされ!!お願いいたしまするー!!!」
お大師さまはもう一度
歌を唄いました
「おおさかや
八坂さか中鯖ひとつ
大師にくれて
馬主の腹やむ(止む)」
すると、先程までの腹痛がスー・・・と嘘のように治まり、馬主の男はグッタリと地面に座りました
初めに歌ったのは
「大師にくれで馬主の腹病む」
(大師に鯖もくれないで腹を病む)
という意味の歌であったが
のちに歌ったのは
「大師にくれて馬主の腹止む」
(大師に鯖をくれて馬主の腹が止む)
という歌に変えられたのだ
お大師さまは、馬主の男にお加持水をお恵みになりました
そのお加持水を男が馬に与えてやると
馬はすっかり元気を取り戻しました
馬主
「ありがとうございます、塩漬け鯖をおひとつどうぞ」
馬主の男は
お大師さまに塩漬け鯖を差し上げました
すると…
「おん・あぼぎゃ・べいろしゃのう・まかぼだらまに・はんどま・じんばらはらばりたや・うん」
お大師さまがその塩漬け鯖を持って、加持祈祷すると、鯖はビチビチと威勢良く動き出し、そして海に放してやると元気に沖へ沖へと泳いでいきました
馬主の男は、僧侶があの弘法大師様だという事に気づき、どうにか頼み込んでお大師さまの弟子にしてもらいました
男はお大師さまの傍で修行を積み、頑丈で力持ちの体を生かし、常々お大師さまの力になって勤めを果たしました
そして
お大師さま
「お前はもう充分立派になった、馬と共に、私と初めて出会ったあの所へ帰りなさい」
お大師さまにこう告げられた男は、まだまだお大師さまにお仕えしたかったが、これも試練なのだろうと受け止めました
馬主
「わかりました、お大師さま
私をここまで立派にして下さりありがとうございます、私はお大師さまと出会ったあの場所に戻ったら寺を建てます」
「長旅に疲れたお遍路さんを迎え入れ、民衆の役に立つようこれからも精進して参ります」
お大師さま
「人の心が持つ欲望は、誰にでもあるもの、厳しい修行を積んだお前ならば、きっと民に教えを解いてあげられるであろう、今まで本当にご苦労じゃった、最初に出会った場所は「馬ひき坂」と名づけるとよかろう」
馬主の男
「はっ!お大師さま、どうかこれからもお元気で…」
お大師さま
「うむ…お前もな、馬と共に仲良く過ごすのじゃぞ…ではさらばじゃ…」
こうしてお大師さまと別れた馬主の男は
馬ひき坂へと戻ると
「行基庵」現・鯖大師本坊を連立したのでありました
以後、あの辺一帯は「鯖瀬」と呼ぶようになったそうな
「終」
(注)
「このお話は、実際の鯖大師の歴史とは若干異なります
本当の鯖大師本坊の歴史ではありません」
納経の御朱印と1200年スタンプ
御本尊
弘法大師
1200年記念カラー御影
御真言
南無大師遍照金剛
通常の御影
1200年記念風景散華
おまけにくれたもの
期間限定
虎之助滝修行御影
「是大神呪」
御詠歌
かげだにも
我名を知れよ
一つ松
古今来世と
すくひ導く