どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

虎之助の中学生日記(入学式編2)

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

深山町のほぼ中心部に佇むこの深山中学校は、中山小学校、小田小学校、寺村小学校と三地区の生徒が集結するようになっている

虎之助は、今まで自分が通っていた寺村小学校が少人数生徒だったためか、中学校入学から一気に増える大人数の生徒達とこれから3年間一緒に学んでゆく事に想像以上の緊張と不安を感じていた

虎之助と健太郎はついに自分達が入学するこの深山中学校の校門前に着いた
校門には「祝,入学おめでとう」「祝,浮穴郡,深山町,深山中学校入学式」ときれいな筆で書かれた看板が立てられている、そして胸元に造花の飾りを付け、綺麗に仕立てた黒いスーツをビシッと着こなした男の先生が、これから入学式を迎える生徒達に「おはようございます!」と、野太くハッキリした声で挨拶していた

うわぁ~!すごい人数!
俺…なんか緊張してきた…

虎之助はあまりの緊張で思わず立ちすくんだ

なぁ、虎助!あそこみろよ、小田小の太(ふとし)がいるぞ、あ!あっちには中山小の伸一(しんいち)がいる!
それはかつて相撲の合同稽古で一緒に練習し、共にぶつかり合った経験がある他の学校の生徒であった、ケン坊は相手を指差しながら虎之助にそう言うと

太かぁ~…あいつ俺の廻しばかり狙ってくから厄介なんだよなぁ~…
伸一って体は細っちぃけど土俵際の粘りは強くて会長さんは評価しているんだよなぁ~…今日からあいつらと一緒になるのかぁ~、嫌だなぁ~…

虎之助はムスッとした顔で頬をポリポリ掻きながらそう言うと

あいつらだけじゃないぞ、
幸信、匠馬、友和、弘樹、哲郎、剛、照彦、正次郎
達も来てるはず、みんな相撲部に入るだろうなぁ……あぁ~あ…

ケン坊がため息をしながら呟く

強豪だらけじゃないかよ~…
…なぁ、ケン坊
やっぱり中学に入ったら相撲部入るんか?

虎之助はケン坊の方を控えめながらにチラ見すると

うん、そのつもりだよ…だって俺、スポーツといったら相撲ぐらいしか出来ないもん、虎助はどうするの?

ケン坊がそう虎之助に問うと 
…う~ん…どうしよっかなぁ~
俺そんなに相撲好きなわけじゃないし…
相撲の稽古だったら町内の道場で十分じゃないか?…と弱気に答えると

虎助は稽古に甘いところがある、いつもそうやって逃げてばかりいるから先輩や会長のおじさんに怒鳴られるんだよ、なぁ?一緒に入ろうよ!俺も協力するから!頑張って皆を見返してやろうや!

ケン坊は相撲に対して少し厳しい、しかしそれは親友である虎之助に対しての愛情でもあったのだ、しかし虎之助はケン坊のこういう所が昔から苦手で以前から耳障りに感じていた

チェッ!おまえは相撲が強いからいいよ…会長さんや先輩から一目おかれてるしな、俺なんていつも怒鳴られて泣かされるばっかだもん
虎之助はケン坊をジィー…と睨み、口を尖らせながら言う

まぁいいや、この話はあとあと!早くクラス表見に行こう!
入学式に遅れちゃう!
確か南校舎側の一階か二階だったはず、プリントにそう書いてるし、虎助、ちゃんとプリント持ってきてる?
ケン坊は一旦話を切り上げ、ハッ!としたかのように思いだし、慌てながらクラス表の確認を急いだ

ボヤボヤしてると入学式始まっちゃうよ!
俺プリント持ってきてるから早く行こう!ジッと立ちすくんでいる虎之助の肩をグイッ!と強く押したその時だった

虎之助は苦しそうな表情を見せ、ケ…ケン坊…ごめん…お…俺…さっきからすごく小便がしたかったんだ…もう我慢できない…も…漏れそう…ちょっとトイレ行ってくるから先にクラス表見に行っててくれ…!
そわそわ身震いをしながら前屈みの姿勢でケン坊に訴えかけるように言った

えぇーーーーー!?
またオシッコかよ!?これで朝から何回目!?さっきも行く途中で2回も立ちションしてたくせにおかしいよ!悪い冗談はよせやい!

驚き顔で半ば呆れ果てていたケン坊だったが、虎之助の尋常ではない顔の表情と身震いを見て、これは本気なんだという危険を察した

わかった!!
クラス表は俺が見てくる!後で何組か教えてやるから虎助は早くトイレに行ってこい!校舎の両端に各トイレがあるから急げ!漏らすなよ!

咄嗟にプリントでトイレの場所を確認しながらケン坊は、さっきとはまるで別人の怒り口調と厳しい真剣な表情で虎之助にトイレへ急ぐよう伝えた

わ…わかった…!…
じゃあトイレ行ってくる!すまん…!
…苦しそうな表情と震えた声でケン坊にそう伝えると、虎之助は人目も気にする余裕がないまま前屈みで股関を押さえながら小走りでトイレに走って行った

…その後ろ姿を見ながらケン坊はただならぬ胸騒ぎを感じ始める…

今日の虎助…いつもと様子がおかしい…今まではこんなことなかったのに…大丈夫だろうか…

親友である虎之助の身体を心配しながら、ただの取り越し苦労であってほしい…心の中でそう願うのだった
…しかし…
本当ならば華々しいはずの入学式…
まだわんぱく盛りの虎之助にこれから始まろうとしていたのは夢と希望に無限の可能性を秘めた楽しい青春の中学生活ではなく
今まで感じた事のない絶望と屈辱の日々が始まろうとしていた事を今は誰も知るよしもなかった…

さっきまでの些細な出来事は、ケン坊の悪い予感をはるかに上回る悪夢の展開が、わんぱく少年虎之助の前に立ちはだかる嵐の前の前兆にずぎなかった…