8月も終盤に差し掛かり、セミの鳴き声も熊蝉やミンミン蝉から、つくつくぼうしに変わる少し寂しい残暑の季節
目まぐるしく忙しかったお盆もようやく過ぎ、私にもやっと後れ馳せながらのお盆休みを頂いた
私は新聞を配り終えると、直ぐに朝食を食べて実家に帰る準備をする
新聞は1日お休みし、実家の深山町に一泊するのがここ数年の過ごし方になっている
しかし、以前配達していたエリアは10年間無欠勤を目標にしていたので、休刊日が重なり実家で一泊出来たのは10年間でたったの2回だけだった
今の配達エリアでは、そういった制限は止め、たまには休みを入れるようにしている
簡単な朝食をササッ…と早めに済ませ、一泊分の着替えだけを鞄に詰めた
虫除けスプレーと、液体ムヒは必需品なので忘れずに…
あ、あと礼拝セットも持っていく
(御数珠、ロウソク、お線香、輪袈裟等)
一通りの準備が出来たらガス、電気、戸締まりの確認、特に火事だけは絶対に気をつけなければならない
丹念にチェックを終え、玄関のドアの鍵をかけてさあ出発
私が今住んでいる場所から実家、深山町までは約50キロ、飛行機やJR、船等の交通機関等を利用する事なく、相棒の「ポンコツ丸」で十分行ける
ゆっくり行って2時間半といったとこだろう
ここ最近雨模様の天気だったが、今日は残暑の夏空が光る絶好の里帰り日和
ヘルメットをかぶり、荷物をカゴに入れるとポンコツ丸のエンジンを掛け、我が故郷「深山町、寺村」へと向かった
私の住んでいる町外れ地区を離れると、あっという間に田んぼだらけの風景になる
この田園風景から2級賀川の衛門橋を通り過ぎると周囲は山に囲まれてくる、さらに5キロ程走ると実家、深山町までの道程を示す国道へと入る
ここからはひたすら田舎道を一直線だ
この深山町までの道程には結構な歴史がある
かなり古いダム、山深く眠る旧道トンネル、美しい滝(滝行は出来ない)
城跡、断層、鉱山跡地、幽霊屋敷、四国88ヶ所寺院の奥の院、スキー場、ホタルの村、集落地帯等々、古い歴史が盛りだくさんだ
最初の難関である峠を超えて、頂上のトンネルを抜ければ穏やかな風景が広がってくる、たくさんのトンボが飛び回る田舎道を颯爽?と駆け抜けた
山の空気は新鮮で美味しい、少しずつ深山町の山間漂うあの故郷の懐かしい香りが漂ってきた、深山町まではあともう少し、30分もあれば到着出来る
花火大会の広場を通り過ぎる、今年も花火は見れなかったなぁ…
山間の花火は音が凄い、山から山に音が反射して体全身に音の体感を実感できるのだ、特にお腹に響く
さらに我が母校の「深山中学校」を過ぎると深山商店街へと入ってゆく、深山町に唯一信号機があるのはこの場所だけだ
この深山商店街には、ガソリンスタンド、衣料服店、和菓子屋、スポーツショップ、雑貨屋、総合病院、葬儀屋、銀行、役所、酒屋、24営業じゃないコンビニ、電器店、等々、重要なお店等はこの商店街に集まっている
深山町にはこれらの店が1店だけしかない
なので深山町の住人は皆ここで買い物や通院、所用等をここで済ますようにしている
一昔前は、本屋とレンタルビデオショップもあったが10数年前に廃業した
この深山商店街の店舗の1つに
「シバタ電器店」という個人店舗の電器店がある、主な取り扱いメーカーはPanasonic(昔はNationalだった)
ここは深山中学相撲部であり、同級生の1人だった「幸信」の家なのだ
商店街を走っているとシバタ電器店が見えてきた
…すると調度軽トラに洗濯機を積んでいる太っちょな男を発見!
そう…
その太っちょ男こそ、シバタ電器店の跡取り息子の「幸信」なのである
幸信を見つけた私はすかさず
「おーーーーーーーーーーいっっ!!」
「ユキラスーー!!(←当時のあだ名)」
「元気かぁーーーーーーーーっっ!!」
ポンコツ丸で走りながら叫んだ
…すると幸信は「~…ん?なんどぉ~…」
と、面倒さそうな顔つきをしていたが、
私に気づくと「あぁ~…っ!!」と驚いた表情へと一変する
「虎助やんけぇーっ!!ひっさしぶりやなぁっ!、今実家に戻るとこけ?」
幸信は洗濯機を1度置いて私に驚いた顔で叫んできた
虎之助
「ほぅなんよ、今実家に帰りよったんやけど、ユキラスが見えたけん驚かしちゃろうかと思うたんよ!」
幸信
「相変わらずスーパーカブで来たんかぁ~、好きやなぁ~それ!」
虎之助
「もう燃費良いし丈夫やしこれがなければワシはもう終いじゃ!
洗濯機乗せよったけど、今から配達か?」
幸信
「ほうなんよ~、亀田ん家の婆さんが年金出して買うてくれたんよ!
あそこは太っ腹やけん好きじゃ、ニコニコ現金一括払い、毎度ありぃ~♪」
虎之助
「ほぅ~、亀田さん家のお婆ちゃんがねぇ~、ジバタ電器儲かってますなぁ~!よっ!跡取り息子!」
幸信
「これ亀田の婆さん所に持っていって、接続と説明せないかんなるけん、小一時間程まっといてんか?」
虎之助
「えぇよワシもやるわ、とりあえず洗濯機乗せようや、ほんで軽トラの横乗せてくれ、亀田さん家で運ぶの手伝ぅちゃるわ」
幸信
「ほうか!そら助かる!ワシ最近腰痛めたとこやけん頼むわ!」
私と幸信は、亀田さんの洗濯機を丁重に軽トラへ乗せた、幸信は洗濯機に毛布を巻いて、その上からロープで固定する
そして幸信は、親父とお袋さんに、私が来たのと配達を手伝ってくれるのを伝えに行った
すると店の奥から親父さんとお袋さんか私をガラス越しから見つけると、笑顔で深々と会釈を交わし店の前まで出てきた
ママン
「まぁまぁまぁ!虎君~!元気ぃ~!ちょっとお父さん!寺村の虎君よ!」
パパン
「あぁ~あぁ~あぁ~、西さん所の息子さんか、すっきりした頭しとるのぉ~…」
ママン
「ホント西さんはお野菜貰ったりしてお世話になっとるんよぉ~、マァ~ちゃんは元気ぃ?」
マァ~ちゃんとは私のお袋の事である
虎之助
「あははは…実家に帰ったらいつも父と母に怒られてばっかりなんですよぉ~」
ママン
「配達手伝ってくれるん!?本当に大丈夫!?迷惑やったら無理せんでええんよ!?」
パパン
「大丈夫やわい、まだ若いし力あるんやけん~…
ワシはもうヘルニア持ちやけん重い物は全部息子に任せとるけんのぉ~、頼まい」
ママン
「じゃあ虎君!これからお昼ご飯作るけん、食べてってね!」
虎之助
「いえいえいえいえいえ…!!
そんな気を使わなくって良いですよ~!」
パパン
「遠慮なんかせんでええわい、まぁ…亀田の婆さんが首長くして待っとるけん早よ行っといで」
幸信
「虎助!準備が出来たけん行こうや」
幸信が洗濯機の固定を終えて、軽トラの窓から顔を出して言った
虎之助
「あ、それじゃちょっと行ってきますので…お昼ご飯とか用意しなくて良いですからね」
早々とそう言って軽トラの助手席に乗った
100キロ越の男2人が軽トラに乗ると…
メチャクチャ狭い…
…亀田さんとこって、結構山の上だけど……
あの坂道大丈夫か…?
私は不安ながらに幸信に言った
幸信
「大丈夫大丈夫!お父さんと2人で乗って、あの坂道登った事あるけん!
思いっきりロゥで吹かしたら楽勝よ」
幸信はそう言いながら、ギアをグッグッグッ!と動かす、その際車内が狭いため私の太股に当たる
そして「ぶぉぉおんうぉんおんうぉん!!キキキキキー!」と、重い2人を乗せた軽トラがエンジンを吹かして発車する
サイドミラーを見ると、幸信の親父さんとお袋さんが手を振って見送っていた
実家に戻るはずが同級生の家に寄り道してしまったが、幸信は昔から穏やかな性格で話しやすいから好きだ
深山中学相撲部では子分格になるが、粘り強く努力家な所があり、個人戦で他校の強豪を大苦戦の末に倒し、80キロ級で見事優勝したのだ
あの時は、体中キズだらけになり
顔は晴れ上がり、鼻血を両鼻から垂らしながらも泣いて喜んでいた姿は今でも忘れない
今回の記事の為に、幸信を描きました
前回は太だったが、今度は幸信の真相について暴きます…(;  ̄▽ ̄)ゞ
続編に乞うご期待!!