どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

Boarding ~ 消防士への道~第二話「横田教官の鋭い観察力」後編

沖田局長、鈴木副教官、そして虎之助を集中的に狙いを定めて怒号を浴びせた横田教官

たかが簡単な朝の挨拶かと思いきや、想像以上の緊迫感に、臆病で怖がりな虎之助は自分が選んでしまった別世界の夢に不安感と恐怖感が募るようになってしまった…


両親の猛反対を押しきり、地元愛媛を離れて、子供の頃からの夢だった「消防士」になるために残りの人生全てを賭け、この「日本消防疔消防隊員訓練学校」の門を叩いたが…

「人命救助」

人の命を救う仕事にこれから自分が就こうとしている

「火災消火」

住宅火災、ビル火災、工場火災、事故火災、自然災害火災

他にも火災は沢山…

人の命を一瞬にして消してしまう危険で恐ろしい灼熱の炎

人の力では敵わない熱物質「炎」に、自分が立ち向かって行かなければならない…

外っ面のカッコ良さやヒーロー的な憧れだけしか映っていなかった虎之助には、
消防士になる事への「覚悟」があまりにも無さすぎたのだ

この3年間、消防士採用試験、「一般教養試験」を猛勉強し、お寺や神社、運動公園、低山トレッキング、市営トレーニングセンターで、しっかりと体力作りや筋肉トレーニングに励んできた虎之助

これまで積み重ねしてきた努力も

実際目の当たりにした消防士へのギャップ、想像を遥かに超越した厳しさや過酷さにより、意図も簡単に打ち消されてしまうのである…


僕が選んだ道はこれでよかったんだ

消防士になって皆を見返すんだ

教官に怒鳴られたくらいで諦めない

絶対に夢を叶えてみせる

龍玄さん…

僕…頑張るからね…

それでも目標に立ち向かう小さな「覚悟」心の炎は簡単に消すわけにはいけないのだと今一度強い信念を奮い立たせた…


Boarding ~ 消防士への道~
第二話「横田教官の鋭い観察力」後編


会議室から出た皆は、受け付所にいた消防隊員から荷物を受け取る

谷本消防隊員
「はい!5番隊員、藤田大輔!」

藤田大輔
「はいっ!」

谷本消防隊員
「君若いね~!最年少だよ!羨ましい、はっはっは!試験頑張ってね!」

藤田大輔
「はいっ!ありがとうございますっっっ!!!頑張りますっっっ!!!」

波瀬川消防隊員
「若い子はやっぱり元気が良いね~!」

波瀬川消防隊員
「はい!6番隊員、匠大学!」

匠大学
「はい…」

谷本消防隊員
「どうした?こっちは元気無いけど大丈夫?体調悪いか?」

匠大学
「あー大丈夫です、いつもこんな感じなんで」

波瀬川消防隊員
「君は藤田君と反対で最年長になるが、消防学校内では常に元気でハキハキと!
これは基本中の基本だからね!試験頑張ってよ!」

匠大学
「はい!ありがとうございます!」

谷本消防隊員
「はい!7番隊員のマッチ!じゃなかった近藤真彦!」

近藤真彦
「なんスかもう~!(笑)いきなり酷いじゃないスか~(笑)!」

波瀬川消防隊員
「あれあれぇ~!?マッチの返事が無いぞぉ~?(笑)」

近藤真彦
「はいっ!7番隊員の「マッチどぇ~す
♪」これでよかとでスか?」

谷本消防隊員
「ぶっはっはっは!ぜ~んぜん似てね~!近藤君はもっとマッチのモノまね練習しろ!バカ野郎!(笑)」

近藤真彦
「うっわっ!せっかく期待に応えたのに~(苦笑)!というか僕、マッチとか全然興味ないんスよねぇ~!」


波瀬川消防隊員
「マッチは悪い男なんぞ~、知っとるか~?昔、中森明菜を騙して彼女の人生を狂わせたんやでぇ~、恨むぞぉ~若い頃、明菜の大ファンだったんだから(笑)」


近藤真彦
「そんな事言ってたら歳がバレまっせ~(笑)」

波瀬川消防隊員
「はっはっは!もう僕らはおっさんやからねぇ~(笑)
でも近藤君の「○○スよぉ~」みたいな言葉使いはこの消防学校で使っては絶対駄目だぞ、今日から禁止な!わかったか?」

近藤真彦
「はいっ!わかりましたっ!了解ですっ!」

谷本消防隊員
「お!マッチえぇ~返事するやないけ!
お前は面白いヤツや(笑)試験頑張れよ!」

近藤真彦
「はいっ!ありがとうございますっ!」

自分と同じ4班のメンバーが各々名前を呼ばれて荷物を受け取った

この受け付け所にいる消防隊員のおじさん達は、先程会議室でお話した沖田局長、横田教官、鈴木副教官の3人に比べると、気さくに面白可笑しく話かけてくれる

こんな感じで話してくれたら自分も心が和んで怖い思いする事もなかったが、やはり幹部の消防隊員がそんな甘い対応ではいけないのだろう…

荷物を受け取るのが僕の番になった

波瀬川消防隊員
「はい!8番隊員の西郷どん!」
西郷隆盛!」

虎之助
「え…?あ…は…、はい………」

波瀬川消防隊員
「あれあれあれぇ~!?さっき横田の兄さんからおもいっきり怒鳴られたのに、もう忘れたんかぁ~…?」

虎之助
「あ…!は…はいっっっ!!!8番隊員、西郷……とら……の…す…け………
・・・・で…す……」

谷本消防隊員
「あぁ~あ、もう、せーやん(波瀬川)が意地悪するから西郷どんが困っとるだろー(笑)」

波瀬川消防隊員
「はっはっは!すまん!すまん!冗談だから気にするな!
はい!8番隊員、西郷虎之助!」

虎之助
「はいっっっ!!!」

波瀬川消防隊員
西郷どんはえぇ体格しとるけど、スポーツは柔道か何かしよったん?」

やらり来た…こういった「昔何かスポーツしてた?」等の質問は、今の今まで幾度となく聞かれてたが…自分自身、実はあまり聞かれてほしくない質問なのである…

もちろんそのスポーツの専門分野で華々しい成績や結果を残せていたら、もっと自信を持って打ち明けられるが、これといってたいした結果を残せていない虎之助は後ろめたい気持ちではっきり公言することが出来ないのである

虎之助
「す…相撲を…やって…まし…た……」


波瀬川消防隊員
「おっ!西郷どん相撲しよったんか!?
ちゃんと廻し締めてか!?」

虎之助
「あ…はい…」

波瀬川消防隊員
「いつ頃まで相撲しよったん?」

虎之助
「中学までは相撲部、高校は相撲部が無かったので、町内の相撲道場に通って稽古したり、奉納相撲や個人戦に出場したりでしたが、成人を過ぎてからは殆ど稽古していません」

波瀬川消防隊員
「へぇ~いいねぇ~!僕も相撲興味あったけど廻し締めるのが恥ずかしくて出来んかったんよ!」

虎之助
「あ、廻しは慣れると結構平気になりますよ、だけど新品の廻しは硬すぎて股擦れするのが辛かったですね」

谷本消防隊員
「でも相撲しよった男にしてはちょっと頼りなくておっとりしすぎじゃないか~?
もっとこう、堂々とした男らしい気迫があった方が良いんだけどなぁ~」

波瀬川消防隊員
「そんな事ないよなぁ~西郷どん
優しさも男の強さよなぁ~!」

虎之助
「どうでしょうねぇ~……(困惑)」

波瀬川消防隊員
「今度、僕に相撲教えてくれよ!
あ!あと廻しの締め方もな!」

谷本消防隊員
「やめとけやめとけ!西郷どんに張り倒されるだけや!
それにせーやんは細いけん廻しは似合わんよ(笑)」

虎之助
「いえ…相撲って体が細い人でも強い人は相当強いんです、本人が持っている運動能力と筋力、柔軟性や素質もあるのですが、僅か70kaの男が、150kgの男を土俵の外に出したり、体に土をつける事もあります、僕は相撲が太い男性だけのスポーツになっているので、細い男性や誰でも気軽に始められる体重別のスポーツだったらもっと人気が出ると思います、沢山の男性に見るだけの相撲ではなく、土俵に入って相手と取り組み競技に参加してくれたら嬉しいです」


谷本消防隊員
「ほぅ~…頼りなさそうな男かと思いきや、ちゃんとした信念を持ってるじゃないか…
せーやん確か72kgやろ!良かったじゃないか!まだ希望はあるぜえ!」

波瀬川消防隊員
「おうよ!今日から西郷部屋に入門するからな!はっはっは!」

谷本消防隊員
「でもなぁ、西郷どんの体格は確かに立派で相撲向きかもしれんが、消防隊員になるには体重が重すぎる、その体ではまず訓練についていけない、まぁ、訓練や体重に関しては横田の兄さんがしっかり厳しく指導してくれるだろう」

波瀬川消防隊員
「さっき横田の兄さんにおもいっきり怒鳴られたの西郷どんやろ?
こっちまで罵声が筒抜けだったよ(笑)
怖かったろうけど気にするなよ、あれは最初の名物だから」


谷本消防隊員
「半泣きで返事してるのが痛々しく伝わったなあ~(笑)
でも西郷どんは横田の兄さんに「選ばれた人材」なんだ、自信を持て!」


虎之助
「え…?選ばれた人材…?て、何の事なのですか……?」


波瀬川消防隊員
「横田の兄さんは新人を見抜く事に関してはプロ中のプロ、その中の1人に見抜かれた新人は最初に罵声の洗礼を浴びせられるのがこの消防学校の名物だ、西郷どんは横田の兄さんに見込まれたんだぞ!喜べ!」


谷本消防隊員
「だが、訓練は普通の新人よりも遥かに厳しいものとなる、おそらく毎日横田の兄さんに泣かされるのは確実だから覚悟しておけよ~」

波瀬川消防隊員
「半年間の厳しい訓練を見事耐え抜けば、西郷どんは必ず立派な消防士になれる!
先ずは試験を頑張って合格するんだ!いいな!」


谷本消防隊員
「そうだ!試験頑張れよ!しっかり勉強してきたんだろ!?」

虎之助
「はいっ!3年間、ゆっくりじっくり勉強してきましたっ!
絶対に合格するよう試験頑張りますっ!」

僕は、もし試験を合格し、消防隊員の研修生になったら、横田教官からどんな厳しい訓練を強いられるかを考えると、また怖くなり弱気になってしまうので
あまり気にしないよう、今はその場しのぎにはなるが、自分が選んだ新しい道、
子供の頃から憧れていたもう1つの夢に立ち向かうよう強く返答した


その様子を、横田教官は、鈴木副教官と何やら厳しい表情でこちらを見ながら話している

一体何を話しているのだろう…

2人は僕の方をずっと見ながら何かを話している…


僕が沢山の荷物が入ったadidasのスポーツバッグを肩に掛けると、横田教官が話を止めてこちらへ向かって来た


横田教官
「コラッ!タニやん!(谷本)せーやん!(波瀬川)西郷と何をペチャクチャ話してたんだ!(笑)お前らうるさすぎるぞっ!」

波瀬川消防隊員
「兄さん!あんまり西郷どんいじめたらあきまへんでぇ~!(笑)」


谷本消防隊員
西郷どんは学生時代相撲しよったけん、怒ったら張り手や突っ張り食らわされても知らんぜぇ~(笑)」

波瀬川消防隊員
「ほうほう!今は立場が強くても、いずれは西郷どんに泣かされらい!はっはっは!(笑)」

横田教官
「お!西郷!お前、相撲しよったんか!?」

虎之助
「あ…は…はい…」

横田教官
「おい…?俺がさっき言った事、もう忘れて…」

虎之助
「は…はは…はいっっっ!!!学生時代!相撲をしておりましたっっっ!!!」

波瀬川消防隊員
「またそうやって怖がらしてからに…(笑)」


横田教官 
「お前なぁ…相撲しよった男がそんな気弱じゃいかんぞー!
俺に少し怒鳴られただけで半泣きになるぐらいじゃまだまだ駄目だっ!!
まぁ、試験合格したら毎日訓練で泣かすけどな!」

谷本消防隊員
西郷どん…コイツな…ドSやでドS…」

谷本さんが小さな声でそう囁くと

横田教官
「おうっ!俺は日本一のドSじゃいっ!
西郷!お前覚悟しておけよ!試験落ちたら承知せんからな!」

虎之助
「はいっっっ!!!頑張りますっっっ!!!」

横田教官
「ようしっ!今度俺と相撲で勝負だ!」

虎之助
「は…はいっっっ!!!」

横田教官
「俺は相撲経験は無いが、学生時代に相撲部の主将と勝負して病院送りにしたぞ!覚悟しとけよ!」

虎之助
「・・・・・・・」

横田教官
「主将は泣きながら小便漏らしやがったんだぞ!
廻しがびしょ濡れになって部員全員の前で赤っ恥かかせてやったわい!はっはっはっ!!」

波瀬川消防隊員
「この兄さん悪い奴やぞぉ~、警察署の柔道の試合で、署長を閉め技で落として大勢の前で失禁させたんやぞ~(怖笑)、その署長は大恥かいて精神病んで入院」

虎之助
「・や・・や・・やっぱり…止めておきます…絶対勝てません…」

横田教官
「ゴラァッッ!!何だその弱々しい返事はぁっっっ!!そんな逃げ腰じゃあ消防隊員にはなれんぞっっ!!」

虎之助
「は…はいっっっ!!!すみませんでしたっっっ!!!た…楽しみにしておりますっっっ!!!(泣)」

横田教官
「はっはっは!まぁ怪我せん程度じゃから心配すんな!
だが…お前も小便漏らすなよっ!主将も署長も2人揃ってチビりやがったからな、所詮弱い者の前でしか威張れない奴らなんて情けないもんよ!」

虎之助
「は…はいっっっ!!!(泣)
も…漏らさないように頑張りますっっっ!!!(泣)」

あははははは…!

数名の受講生がまた笑っている…
もう自分は完全な笑い者だ…

波瀬川消防隊員
西郷どん!試験頑張れよっ!あと横田の兄さんとの相撲もなっ!」

谷本消防隊員
「合格したら、僕らも色々アドバイスしてやるから心配するな!試験合格しろよ!」

虎之助
「はいっっっ!!!ありがとうございますっっっ!!!頑張りますっっっ!!!」

再度、自分の返事が冷たい廊下に響き渡った…

横田教官
「よぉーしっ!全員荷物は持ったな!誰も忘れ物は無いかー!?大丈夫かー!?」

受講生の皆
「はいっっっ!!!大丈夫ですっっっ!!!」

皆の返事も冷たい廊下に響き渡る


横田教官
「よーしっ!それでは今から宿舎へ向かう!全員荷物を持ってついてくるようにーっ!」

受講生の皆
「はいっっっ!!!」

皆は各々重い荷物を抱えて横田教官についていく

僕は皆に紛れながらも考え事をしながら横田教官についていった…


消防士になるどころか横田教官と相撲で勝負するなんて…

なんかドえらい事になってしまった…

もう…こうなったら試験落っこちてしまおうか…

嗚呼…龍玄さん…
どうしよう…

僕は龍玄さんの古びた写真をジャンパーのポケットから再び取り出し
それを眺めながら小便の代わりに小さなため息を漏らした…



虎之助の消防士への道は、ますます長く険しい道になってゆくのであった…

第三話へと続く…

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