どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

「しまんと・えれじぃ」~僕が初めてキスした柔道おじさん~-僕がした裏切り行為-

真っ暗な深夜の国道56号線の山道を1台のステップワゴンが走っている

昼間は交通量の多い国道だが

深夜の2時を過ぎた今時分では、対向車線のすれ違う車の量も寂しい程に少ない


きらびやかな緑色のライトが3つ上部に輝かせている車や、荷台の角にライトが点灯している車は日昼夜休まず走る大型トラックだ

外灯の少ない山道の国道だと、かなり離れた距離からでもその判別がすぐにつけられる

すれ違い様の「ブゥォーーーーン!!」という大きな爆音と風圧が
あつしさんが運転しているステップワゴンを揺らす

その度に
大型トラックの明るいライトに照らされた
あつしさんの横顔が見える


僕はその横顔を
助手席からチラ…と確認するかのように毎回見ていた

すると

僕の視線に気づいたあつしさんは
「ん~?」と言って、言葉には出さないが「どうしたんだ~?」みたいな感じで僕の方を気にして見返してくれる


その時に見る
暗闇のライトに照らされたあつしさんの横顔が

悔しいような
歯がゆいような

とにかく無性に愛しすぎて

何だか本当の父親のように僕の事を優しく見守ってくれているように思えた…

それが表現しにくい程に
沸き上がる恋愛感情と逞しい父親のような頼れる安心感の2つが入り交じっているようだった

あつしさんが
すぐ横にいてくれる…

それがもう嬉しくてたまらない…

僕は感情と欲情を抑えきれず、運転しているあつしさんの大きなお腹を

助手席から何気に手を伸ばし
服の上から「スリスリ…」と撫でた

するとあつしさんは嬉しそうにニンマリと笑みを溢し

「ん~?」と言いながら握っていたハンドルの左手を離し
僕の坊主頭を力強く撫でてくれた

あつしさんは、路肩の広場があると、そこに入り車を停車し、「ん、伸おいで、お父ちゃんとキスするぞ…」と言ってお互いが席から車内中央部、ちょうどサイドブレーキの上辺りのところで唇を合わせる


そんなスキンシップを数キロおきに路肩の広場を見つけてするもんだから
なかなか車の距離が進まない

山道に入る前までは、信号待ちでもキスをしていた

だけど今は中山町の山中を走っているので、信号機は殆ど無い

たまにあったとしても、深夜なので黄色点滅か、赤点滅になっている

きっとあつしさんも
僕と同じように
感情と欲情が抑えきれないんだろうな…

と、山から覗く綺麗な星空を見ながら考えていた

真っ暗な国道を車のライトが照らしている

その暗闇の向こう側

これから始まる楽しい旅に

昨日の僕とは違う
幸せいっぱいの明日を夢見ていた

あつしさんの走る車は
中山町を過ぎて
内子町へと差し掛かる

するとその途中、国道380号線への道路交通案内標識が見えた

「深山町、国道380号線、300メートル先を左折」
と標示されている

この先の道を左折して国道380号線へ行くと
僕の生まれ育った「深山町」がある…

実家があり
父親と母親がいる
ふるさとの「深山町」

道路交通案内標識を見た僕は、また両親の事を思い出す

300メートル先を左に曲がれば深山町へ行くんだな…
親父と母さん…
今の僕を見たらどう思うだろうか…

息子が他所の男と密会しているというのに…

しかもその相手は自分と親子ぐらい歳が離れている太った親父…

そうとも知らずに
今頃呑気に寝ているんだろうな…

親父なんて大きなイビキかいてさ…

ザマーミロ

僕を親戚連中皆で笑い者にしやがって…

所詮、貴方達なんて小さなド田舎に住んでる井戸の中のカエルにすぎないんだ…

愛のかたちは違うけれども…

僕はこれからは自分らしく正直に生きて幸せになってやる

マニュアル通りにしか
生きるルートを持ち合わせていない貴方達よ

「さよーなら」

僕は心中でそう告げた時

ちょうど国道380号線の分岐点へと差し掛かるが、車は左へ曲がる事なく、真っ直ぐ国道56号線をそのまま進んで走り過ぎて行く…

それが、今の自分の迷いのない決意のようで…

これまでの過去を断ち切れた感じがして清々しくスッキリした


今の僕にはあつしさんがいる

もう何も怖い事なんてあるもんか…

二十歳を過ぎたばかりのまだ若かった当時の僕は…

そんな愚かな希望に夢を膨らませていたのだ…

車は内子町から大洲市へと入ってゆく…
















しまんと・えれじぃ」
~僕が初めてキスした柔道おじさん~


-僕がした裏切り行為-








あつしさんの走る車は
そのまま国道56号線をひたすら真っ直ぐ進んだ



内子町から大洲市へ入り、お店の数が一気に増えてゆく

ガソリンスタンド、ベスト電気、かめやうどん、モスバーガー、ブックマーケット等の店が立ち並ぶ

深夜なのでどこも閉まっているが、やはり街中に出ると少しホッ…とする

だけどガストやスナック、居酒屋等は開いているので、夜の市内は寂しさを表しながらも明るい

そして左側に一件のコンビニ「LAWSON」の明かりが見えた

伸一(虎之助)
「お父さん、もうすぐしたら国道を左に曲がるようになるんだけど、国道197号線に入ったら、更に山奥になってお店とかは全く無い山道なんだ、取り合えずあのLAWSONが道順では最後のコンビニになるんだけど…

どうする…寄ってく…?」

僕はあつしさんがトロン温泉に居た時、コンビニに寄りたいって言ってたので一応伝えてみた

するとあつしさんは

あつし
「どうする~♪アイ○ル~♪」
と、一言ふざけて歌った後

あつし
「よっしゃ、何か食い物買っておくか、明日の朝飯もいるしな」

と、コンビニに寄っていくよう、車を左折してLAWSONの駐車場へと入った


そして車を駐車線に入れると、僕はあつしさんにこう言った



伸一
「ねぇ、お父さん、僕ねLAWSONでカメラ買おうと思っているんだ、「写るんです」、高知に着いたらいっぱい写真とろうよ」

僕がこう言うと、あつしさんは少し強めの口調で

あつし
「だめだ!写真は撮らない
、カメラなんて買ったら絶対ダメだぞ!伸!わかったな!」

突然の、予想だにしなかったあつしさんの強い口調に僕はビクッ…となる

そして、どうしてカメラがダメなのかあつしさんに聞いてみた

伸一
「え…?ど…どうしたの…
お父さん…
そんな怖い声出して…

何でカメラで写真撮るのがいけないの?」

あつし
「ダメなもんはダーメッ!
とにかくカメラで写真を撮るのは絶対禁止だ、いいな?」

伸一
「えぇ~…そんなぁ~…!せっかく思い出の旅にしたいのに…じゃあ携帯で撮影するのは…?」

あつし
「勝手に撮るのはダメだ、俺が良いって許可した時だけは一緒に撮らせてやる」


伸一
「えぇーーー…
色んな所で写真撮る計画立ててきたのに…

ねぇ~…お父さぁ~ん…一緒に写真撮ろうよぉ~~
どうしてもダメぇ~~…?」

僕は、あつしさんと一緒に写真を撮るのをどうにか許してもらおうと
甘え声を出しておねだりしてみるが…

あつし
「伸!ダメだ!って言ってるだろ!もしカメラなんて買ったら海に放り投げるからな!」


伸一
「わ…わかった…
カメラは諦める…
じゃあ…携帯では一緒に写真撮らせてよ…
一度ぐらいはさぁ…?」

諦めの悪い僕は、父親に叱られた後の子供みたいに小声の頼りない口調であつしさんにお願いしてみた

すると

あつし
「おう!1回くらいは一緒に撮ってやる、だから絶対にカメラなんて買ったらメッ!だぞ!」

伸一
「はぁ~~…い…」

少しふてくされたように返事をした

それと同時にあつしさんは先に車を出る

そして後に続くように僕も外に出て扉を閉めた

あつしさんがキーのボタンを押して「ゴトン…」という音でロックをかける

そして2人は並ぶようにしてLAWSONの入り口へと向かって行く


山奥の深夜は気温が深々と低く真冬のような寒さだ

外に出ると肌を刺すような冷たさが辛い…

カメラが買えたら
きっとこんな寒さなんて感じなかったはず…

僕は少し複雑な気持ちであつしさんと一緒にLAWSONの扉を開けた


「LAWSON♪CS .HOT ♪STATION♪」
と、店内で馴染みの店内放送音が聴こえてくる

あつしさんとこのLAWSONの店内放送を聴くなんて変な感じ…

あつしさんは、弁当、おにぎり、サンドウィッチ、菓子パン等々、迷いなしに買い物かごへと豪快に入れている

僕はその間、別のコーナーを見回していると、カメラ「写るんです」を見つけた


あ~あ…
せっかく思い出の写真撮るつもりだったのに…

なんでカメラいけないんだろう…

僕が物欲しげにカメラを眺めていると、買い物かごをパンパンにしたあつしさんがこのコーナーを回ってきた

僕は慌ててカメラから視線を外して、あつしさんに無理矢理話かける

伸一
「うわっ!凄い量!お父さん、それちょっと買いすぎじゃない!?」

あつし
「伸、何か食べたい物や飲み物があれば買うてやるからかごに入れろ」

伸一
「い、いいよぉ~…
さっきバーミヤンで晩ご飯食べたばっかりでお腹すいてないし…」

あつし
「何言ってんだ、飯食ってからもう3時間は過ぎてるぞ、明日の朝飯も買っておくんだ、遠慮なんかしなくていいんだぞ、買え!」


伸一
「う…うん…わかった…」

僕はあつしさんに強引に進められ、店内をウロウロしながらあれこれ選んでみた

伸一
「お父さーん、これ…」

僕が買い物かごに入れた物…

それは……


リポビタンD眠眠打破、ブラックコーヒー、MINTEA 」
だった

それを見たあつしさんは…

あつし
「な…なんだこりゃ…
こんな物必要か…!?」

伸一
「だって…もう深夜だし、今夜は寝るの遅くなるでしょ、明日お父さんが眠たくなった時にと思って…」

あつし
「お前なぁ~…俺の心配なんかせんで、もっと腹の足しになる物買えよぉ~…」

伸一
「だってそんなにたくさん食べれないんだもん…、僕、あつしさんの買い物かごに入っているシャキシャキレタスサンドウィッチで朝は十分だよ…」

あつし
「サンドウィッチだけなんてダメだ!
男はもっとしっかり食べないと強くなれないぞ!」

伸一
「強くなんかなれなくていんだもん…
僕、お父さんがついてるから大丈夫だよ」

あつし
「なぁ~にが、お父さんがついてるから大丈夫だよ(笑)この甘えん坊のバカ息子め!
まぁ、食い物はたくさん買ったからな、お前もこれ食えよ、カレーパンや牛丼もあるからな!」

あつしさんは少し嬉しそうにニヤけながら、食べ物でいっぱいになった買い物かごをレジに持って行った

さっき僕が選んだ眠気覚ましアイテムも、ちゃんと買い物かごに入れてくれている

僕はその笑みを見て
少しホッとしたのか…

よからぬ事を思いついてしまった

店員さんがレジを打っている間

あつしさんが財布をベストジャケットから出す

僕が横から財布を出そうとすると、やはりまた「うん!」と拒否されてしまう

こうされるのは始めから見えていた…

だけど
どうしてもすんなり全額払ってくれているのに
何も示さないのは失礼のような気がしたので
僕はムダだとわかっていてもそうしたのだった…


そして全商品のお会計をあつしさんが済ませ
大きな買い物袋2つを太い腕で軽く持ち上げると

あつし
「おい、息子!お前1つ持て!」

あつしさんにそう言われた時、僕はある行動に移る…

伸一
「あー!お父さんごめん!
僕、トイレ行きたくなっちゃった!
悪いけど先に車に乗ってて!」

あつしさん
「な!なんだよもぉ~…
クソか?小便か?」

伸一
「え…っと…両方…かな…
あはははは!ごめーん!」

あつし
「ったく…!何で買い物中にさっさと済ませなかったんだよ…

先に車に乗って待っててやるから早く行ってこい!」

伸一
「はーい♪あ、すみませ~ん、ちょっと御手洗いお借りしますね~♪」

店員さん
「あ、はい!どうぞ~♪」

僕は店員さんにトイレを貸してもらうように伝えると、一目散にトイレへと走って行く

あつしさんは、呆れながらも大きな買い物袋を両腕で持ったままお店を出ていった


僕はこのチャンスを秘かに狙っていた…


あつしさんに内緒でカメラ「写るんです」を買えるこの瞬間を待っていたのだ!!

僕は適当に小便だけ済ませて長めにトイレで待機していた

そして時を見計らって
トイレから出ると、外にいるあつしさんを見る

運良く車は離れた場所に停めている
これはあつしさんの癖なんだと悟った

トイレから出た僕は

さっきカメラを見つけたコーナーへ行き

カメラ「写るんです」を手にしてレジへと持っていく

伸一
「あ、すみません~、これもお願いします~」

店員さん
「あ、は~い♪いらっしゃいませ~♪」

店員さんにカメラを渡して、外を少し気にしながらズボンのポケットから財布を出してお会計をする

店員さん
「ありがとうございます、お客様のお会計、1020円になります~♪」


僕はお財布から1100円を出して店員さんに手渡しする


「はい、それでは1100円お預かり致しま~す♪

ピッポッパッピッポッポッピ♪

お釣り80円のお返しとなります~♪ありがとうございました~♪」



お会計を済ませ、レシートを不要箱に入れると、カメラをカーゴズボンのポケットに隠した

寝る前にリュックに入れたら多分バレないはず…



僕はあつしさんの言いつけを破ってしまった…


後でもしバレたとしても…

きっと笑って許してくれるだろうと…


その時は、旅に浮かれていたのか
言いつけを破ることさえも安易に考えていたのだ…



だけどこれが間違っていた…

僕があつしさんに内緒でカメラを購入したこと…


後に2人の仲が引き裂かれそうになる程のトラブルを招いてしまう事態が起こってしまうこと…

それが今の僕には全く想像もつかなかったのだ…




トイレに行くと嘘をついてカメラを購入した僕は

何もなかったような顔をしてあつしさんが待っている車へと向かった

「ガチャリ…」
と、ステップワゴンの扉を開けて助手席に入ると…

あつし
「ちゃんと出したか?」

伸一
「あ!うん!お父さん、待たせてゴメンね…」

あつし
「おっきいの出たんだろ?(笑)」


伸一
「何でそんな事聞くの!(笑)」

あつし
「ほら、お父ちゃんとキスだ!」

あつしさんは運転席から体を助手席の方まで寄せてきて、僕に顔を近づけてきた

伸一
「トイレ行った後なのにキスするの~!?」


あつし
「俺がバーミヤンでウ○コ
した後すぐに抱きあってキスしただろうが!」


伸一
「あ…確かにそうだった…」

あつし
「その後お前は、お父さぁ~ん!ってガキみたいに泣きわめいたんだよな!がっはっは!」

伸一
「だって!あれはお父さんがおもいっきり泣いて吐き出せって言ったから…!」


あつし
「だけど可愛かったぞ、伸…
俺な、男の子を怒ったり叱ったりするのが習慣になっているけどな、泣いてる男の子をあやすのも結構好きなんだ」

伸一
「えー!?絶対そんな風に見えない!
だって、いつも電話してたらお説教が始まるんだもん!」

あつし
「俺の父親と息子の理想はだな、生意気で反発してくるヤンチャなドラ息子を、俺がコテンパンにしてやって泣かす、ほんでもってその後、優しく抱き締めて、頭をよしよし撫でてやりながらあやしてやる、こうしたスキンシップやコミュニケーションをとる事によって、父親と息子の絆は深まっていくんだぞ」

伸一
「えぇー…!今時そんな親子いないよぉ~…?」

あつし
「じゃあお前は何で泣いたんだよ!俺に甘えたくてしょうがなかったんだろ?」

伸一
「あ…うん…
僕…お父さんに甘えたくって感情を抑えきれなかった…」

あつし
「男の子には父親の愛情が絶対に必要なんだ…

母親の愛情だけでは
男の子として何かが足りない大人になってゆく…

父親の愛情に飢えている大人の男は結構いるんだ…

これは今までの経験から言える事なんだ…」

伸一
「僕は本当の父親がいるけれど

どう頑張っても分かり合える事なんて出来なかった…

それは歳を重ねる度に
傷は深まるばかりで…」

ここまで僕が話した時

あつしさんの唇が僕の口に触れる

暖かい唇と唇
お互いに舌と舌を絡めて

ざらざらとした舌触りとほろ苦い大人の味がする

顎の無精髭が
僕の頬に当たって痛い…


もっともっとこうしていたいけれど…

このままだと朝がきてしまう…

まだまだ強く抱きあって唇を重ね合わせていたいけど…

こうしていられるのも僅か2日だけしかない…

熱く重ね合わせていた唇を

互いに離して顔を見合わせる…


あつし
「それじゃあ行こうか…」

伸一
「うん…」

あつしさんは運転席に体を戻してシートベルトを締めると
キーを回してエンジンを掛ける

スピードメーターや、カーステレオのグラフィックイコライザーが再度点灯して車内が少し明るくなり

お互いの頬が青白い光に照らされる

カーステレオからはまた

ASKAの「はじまりはいつも雨」が流れている

あつしさんは、車をLAWSONの駐車場から左折して
再び国道56号線へと出た


もうじき車は国道56号線から、高知県へと続く肱川沿いの道
国道197号線へと左折する交差点に差し掛かる

今夜の目的地は、高知県、梼原にある「雲の上温泉」の斜め前にある広い路肩の駐車場まで行くことになっている

国道56号線を真っ直ぐ走る白のステップワゴン

正面上には
道路交通案内標識の
肱川、須崎、左行、国道197号線、宇和島、直進、国道56号線、100メートル先」が見える

高知県行きへ国道まであともうひと行きだ




口数の少なくなった2人に

四国最後の名川、四万十川が流れる土佐の国「しまんと・えれじぃ」への道しるべが今ようやく記される…

カーステレオの時計はあと少しで深夜の3時を回る頃だった…