どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

「しまんとえれじぃ」~僕が初めてキスした柔道おじさん~-桜の蕾が開く頃-

日差しが眩しい春の昼下がり
今日も瀬戸内海は美しく光輝いている

少し高台に上がると今治市のシンボル「しまなみ海道」最初の架け橋「来島海峡大橋」が、光輝く海の上に悠々と姿を映しているのがよく見える

配達を終えた僕は、58番札所「仙遊寺」がある作札山の高台へと保冷車を走らせた

山の中腹にある道路脇の広場に車を停めて、「ほっかほか亭」で買ってきた「鮭弁当スペシャル」(通称シャケスペ)を袋から出してお昼にする

いつもは「コッ○ンドール」や「八○亭」、「豚太郎」等で食べる事が多いが、今日は天気も良く「来島海峡大橋」も遠くまでスッキリ見えるので、今治市の風情ある美しい街の景色を眺めながらお昼を食べる事にした

鮭弁当スペシャルを頬張りながら、先週機種変更したばかりの新しいカメラ付き携帯電話「N504is 」を取り出し、来島海峡大橋が見える方向へとカメラを向ける


僕が撮ろうとしているのは、橋の両端に立っているコンクリートの塔にある一番てっぺんの「チカッ…!チカッ…!」、とライトが光って点滅した瞬間を撮影するのが目的ただった…

タイミングを見計らって「キロキロリ~ン♪キロキロリ~ン♪」とシャッターを押すのだが、何度やっても上手くいかない…

ちょうど点滅時に上手くシャッターが押せても、画像にはその光は納められていなかった…

最新機種とはいえ、まだ30万画素というかなり低い画質であり、当時はそんな鮮明な物をとらえる性能は無いに等しかったのだ

何度も何度もリベンジを試みるも上手くいかない…

諦めた僕は携帯電話でのカメラ撮影を止めて、再び弁当を食べ始める…


窓を開けていると
作札山の緑溢れる木々の香りが風と共に入ってきた…

だけど風はまだ少し冷たい…

車から流れる地方のAMラジオ…

お昼でリクエストされた曲

それは最近ヒットして話題を集めていた

IWish の「明日への扉」だった

この曲は僕も大好きで、メールの着信音にしている

あつしさんからのメールが来たら
このメロディーが流れる…


いつの間にか
隙間空いた
心が満たされてく

この曲のプロモーションビデオには、男が男の頬にキスをするシーンがある

愛にはいろいろな形があり、決して一つなんかではない…

人を好きになるのは素晴らしいこと…

例えそれがもし同性だとしても…

愛することに変わりはない…

まるで
そう言って励ましてくれているような優しいメッセージ

聴いているだけで雫が頬を伝って落ちてしまう…

弁当を食べる手が止まった…

僕は来島海峡大橋をただ眺めている…

天気が良いはずなのに
霞んで見えなくなってしまう…

今僕は

恋に夢中になりすぎている…

相手は可愛い女性ではない…

45歳の太ったおじさん…

ついこの間機種変更したその日に
お互いに画像を送りあった…

僕はその送られてきた画像を見て…

体のが熱くなり、全身の、力が抜けていくような…
そんな感覚を覚えた…

何度も何度も
画像を見直して…

僕のタイプ
理想の男性だと確信する

画像を見る度にタメ息が止まらない…

そして相手の男性も…

僕の事が凄く
タイプだと言ってくれた…
予想以上に衝撃的だったと…

どうしても僕に一度会ってみたいと…

それから携帯電話でも番号を交換して話のやりとりをするようになり…

ついに今週の金曜日に会う約束を交わした…




そして今日がその…
待ち焦がれていた約束の金曜日…

柔道をしている「あつし」さんに
とうとう会える日がきた…

イメージ 1




僕はもう…
嬉しくて仕方がない…
幸せすぎてたまらない…

目に写る何もかもが美しく、そして愛しくも感じてしまうのだ…

もう配達は終わったし…
今日は営業サボろうっと…
のんびり過ごしてゆっくり松山市へ帰ろう…

いつもならここで昼寝するところだけど
恋する気持ちが高ぶり過ぎて眠気がない…

僕はまた
弁当を食べ始める…

ご飯がもうすっかり冷めてしまった…

車の窓から入る風もまた冷たい…

光輝く瀬戸内海…

悠々と聳え立つ来島海峡大橋

チカッ…!チカッ…!と度々光る点滅ライト…

客船の汽笛がここまで聴こえてくる…

春の日差しが眩しい…

弁当を食べ終えて空箱を膝の上に置く…

作札山、仙遊寺一帯を彩る
桜の蕾がいよいよ目を覚まし始める頃…

季節はようやく4月を迎えたのであった…

















しまんとえれじぃ」
~僕が初めてキスした柔道おじさん~
-桜の蕾がひらく頃-


今治市から松山市へ帰る
国道196号線

夕方の五時辺りに
突然携帯の着信音が鳴り響く

テレレレレレ~♪
テレレレレレ~♪
テレレ~レ~♪
レレ~レ~レ~レレ~♪
(明日への扉)

あつしさんからメールだ!

僕は保冷車を、ちょうど付近を通りかかった北条病院の駐車場へと入り駐車する

胸のポケットに入れている
携帯電話を取り出して、待ちきれない気持ちを押さえながら携帯を開いてメールを確認する

すると
あつしさんからのメール

「伸くん、お仕事お疲れさん!
俺は今から家を出て愛媛に向かうところだよ!

多分夜の10時頃にはバーミヤンに到着出来ると思う

でも、もし待たせてしまったらゴメンな(*_*)

車の後ろに布団と枕を積んどいたよ!
一緒に抱き合って寝られるようにしておいたからね!
(*^^*)

それじゃあお互い事故には気を付けような!

伸くんに会えるのを凄く楽しみにしているよ(^o^)

じゃあまた後で!」


あつしさんからのメールを見た僕は、あまりの嬉しさと興奮を抑える事が出来ず、鼻息を荒くしながら返信メールを作成する

「あつしさんこんばんは!
(^o^)
僕も今治から会社に戻っているところです

7時半には家に帰れるので、色々準備してからバーミヤンに向かいます

何時でも待ってます、遅くなっても構いませんので事故だけはしないよう安全運転で来てくださいね!(^^)

僕もあつしさんに会えるのを心待にしております

今夜は抱き合って寝ようね!
それではまた10時に…!」

と、僕は文章を興奮しながら少し震える指先で作成した、そして送信ボタンを「ピ…♪」と押す…

はぁ…
まさか本当に
あつしさんと会えるなんて…
夢みたい…

だけど、僕ものんびりしちゃいられない!

早く会社に戻って、日報やお金の集計、月曜日に商品と持っていく納品伝票を早く作成しないと!

僕は保冷車を駐車場から国道196号へ出ようとするのだが

この時間は帰宅ラッシュの時間帯だ、そのせいか道路が混んでなかなか国道に入れない…

カッチ…♪カッチ…♪と、ウインカーの音がラジオと共に車内から聴こえる…

あぁ~…もう…
急がなきゃいけないのに…

頭はもうあつしさんの事で頭がいっぱい

少しイライラが募り始めた頃
一台の大型トラックが、ライトを点滅させて合図をしてくれた

あっ!あのトラック、道を譲ってくれた!

僕はクラクションを軽く「プッ♪」と鳴らし、お辞儀をしながら車を国道へ出した

トラックの運ちゃんは、優しい人と荒い人との区別が運転ですぐにわかってしまう
この道を譲ってくれた人は、きっと優しい運ちゃんなんだと、ハンドルを握り直しながら感じた

日が長くなり始めたとはいえ、夕方になるとやはり薄暗い
なのでライトは早めに点灯する
ドライバーにとって一瞬のミスは一生ものだ
対向車や歩行者に対して十分な気配りを忘れてはならない…

僕もあつしさんと会える事ばかりに浮かれてしまわないよう運転に集中した

空の色が、綺麗なグラデーションを描いている…

上空はネイビー色に星の光が小さく輝き始める
梺の空は、まだ茜色に染まっていて、それがまた綺麗で切なくセンチメンタルに思わせてくれる…


青かった若かった…
あの時過ごした春の頃

何もかもが魅力的に映っていた

二色に分かれた空の色

まだ少し冷たい空気

潮の匂いと菜の花の香り

長い年月を過ぎた今でも
ずっと忘れられない…


あつしさんと会える事になったのは
まだ先週の金曜日に携帯で話した時だった…

~先週の金曜日、夜の12時半頃~


伸一(虎之助)
「来週の金曜日…
え…!?ほ…本当に…?」

あつし
「おうっ!本当や!」

伸一
「だ…だって…奥さんや娘さんに黙ってどうやって…」

あつし
「柔道会の師範研修っていうのがあってな、嫁には来週の金曜日から出発するっ言ってあるから大丈夫だ」

伸一
「で…でも…なんだか悪いなぁ…
奥さんと娘さんに嘘ついて会うなんて…
凄く後ろめたい気持ちになってしうなぁ…」

あつし
「じゃあ、会うの止めておくか?」

伸一
「え…?そ…それは……」

あつし
「わかった!じゃあ会うの止めよ!
伸くんに会う気持ちが無いんだったらこの話は無しだ!止め止め!」

伸一
「ま…待ってっ!
あつしさん!そんな勝手に決めないでよぉっ!」

あつし
「伸くんあのなぁ、男やったら決めるときはビシッ!と、決めなあかんのやぞ!
ビシッ!とな!」

伸一
「だ…だってぇ~…」

あつし
「なぁ~にが、だ…だってぇ~…だよ!
お前はオカマか!
あ、オカマだな、俺も伸くんも(笑)なははは!」

伸一
「う~…ん…こういう場合、どうしたら良いんだろう…」

あつし
「…まったく!
それでも元相撲部か!!
男ならもっとシャキッ!としろよシャキッ!と!」

伸一
「だって…しょうがないじゃん…
昔からこういう性格なんだもん…」

あつし
「だってもクソもない!!
俺なぁ、自分が受け持つ生徒がもし伸くんみたいな奴だったら、外に放り出しているぞっ!?」

伸一
「そ…そんな事言ったって…
あつしさん…
グスッ…う…うぅ~・・
ひ…酷いよぉ~・・グシッ!グビッ!」

あつし
「お…お前・・・!
も…もしかして・・・!
泣きよるんかぁっっ!?」


伸一
「だって…グスッ…!
あつしさん…グビッ!
性格キツそうなんだもん…」

あつし
「っったく!!
お前はなっさけない奴じゃなぁ~!!
そんなんじゃあおなごに笑われるぞっ!?」

伸一
「もう…グズッ…
みんなそうやって言う…」

あつし
「伸くんよぉ!お前のぅ!
ホモはホモでも男だったらしっかりせんといけんのじゃ!!
そんなウジウジメソメソしとったら、同じ仲間にも笑われてしまうぞっ!!」

伸一
「もういいわかった!会うの止めるよっ!!
止めればいいんでしょ!
止めれば!」


あつし
「ちょっ…ちょっと待てよぉ~!!
伸くん落ち着け!!
俺が言い過ぎた、悪かった!謝るから機嫌直してくれよ、なぁ…?」


伸一
「いいもん、あつしさん、なんだか怒ってばっかりで嫌いになっちゃった!
もう会わないも~ん!」

あつし
「そ…!そんなこと言うなやぁ~~~!!
せっかくのチャンスなんだぞ!?
今しかないんだぞ!?
それでも良いのか!?」


伸一
「うん、いい」

あつし
「あ~!もうっ!
わかったよ!俺が悪かった!言い過ぎました!
もう絶対に怒ったりしないから!
頼む!
来週会おう!な?」

伸一
「ど~しよっかなぁ~?」


あつし
「なぁ、高知へ行って、ウマい鰹のたたき一緒に食べよ?
その後景色の良い伸くんお勧めの温泉に入ってさあ!
なぁ?行こうや~!」

伸一
「じゃあ、僕のこと
好きって言ってくれたらいいよ!」


あつし
「なんだ~、お前…
さっきのはウソ泣きかよ」


伸一
「あ、ウ…ウソ泣きなんかじゃ、ないよ!」


あつし
「すまんなぁ、俺、本当の体育会系出身やから、伸くんみたいな柔らかい男の子を相手してると、ついつい怒りっぽくなってしまうんよ」


伸一
「そりゃあ、あつしさんは柔道の師範してる人だし…
僕の同級生「正次郎」はもっと酷いよ」

あつし
「伸くん、俺
伸くんが大好きだ
すごく会いたくて仕方ない…
俺は絶対に伸くんと会うからかな、いいだろ?」


伸一
「あははは、僕も
あつしさんの、強情だけど急に優しくなるところ
好きだよ

僕も…
あつしさんにすごく会いたい…
ううん…絶対に会う」


あつし
「伸くん…
そ…それじゃあ
俺と会ってくれるのか…?」

伸一
「うん!
あつしさん、どうか愛媛に来てください!そして僕と会ってください!!
宜しくお願いします!」


あつし
「お、おうっ!行ってやる!、伸くんが住んでいる愛媛松山市へ!
瀬戸大橋渡って、ステップワゴンかっ飛ばせば
愛媛なんてあっという間の楽勝じゃいっ!!」


伸一
「あ…今のところ本当に泣きそうになっちゃった…」

イメージ 2


あつし
「おいおい!大丈夫かよ!」

伸一
「グシッ…!
あははは、あつしさんと会ったら本当に泣いてしまうかも…」

あつし
「いいよ、思いっきり泣け!その108kgの体を抱き締めてやるから」

伸一
「あつしさんは105kgだから、二人同じくらいの体格だね!」

あつし
「待ち合わ場所はせどうしよっか?」

伸一
「家の近くにバーミヤンがあるんだけど、あそこなら国道沿いだから分かりやすいかも」

あつし
「松山ICと川内ICどちらで下りたら早いかな?」

伸一
「松山ICだと、道がゴチャゴチャして分かりにくくなるから、断然川内ICの方がいいと思う、下りたら左を直進するだけだし、距離は大体10kmだから両方ともそんなに変わらない…」

あつし
「わかった、俺の車カーナビないから、バーミヤンまでの道のりはネットで調べておく」

伸一
「あつしさん、本当に高速料金とか大丈夫…?
僕、半分負担するからね…」

あつし
「あーあーあーあー!
伸くんはお金の事は一切気にするな!旅費は全部俺が出す!」

伸一
「えーーっ!!そんなの悪いよーっ!!」

あつし
「あのなぁ、伸くん
俺はこれでも一端の公務員なんだぞ、2泊3日程度の旅費ぐらい大したことないよ、車中泊だしな」

伸一
「公務員の、どの部類の職種になるのかが知りたいな…」

あつし
「それは秘密」

伸一
「もしかして警察官!?
それとも消防士!?
ひょっとして学校の先生!?」

あつし
「おいおい模索するなよ!
秘密といったら秘密なの!!」

伸一
「僕は警察官か、学校の先生だと睨んでるんだけどなぁ~!」

あつし
「睨むのは俺のケツの穴だけにしてくれ…」

伸一
「えぇーっ!?
あつしさんのお尻の穴すっごく臭そう!」

あつし
「お前の臭さにはかなわんわい!!
大体ケツは皆臭いに決まっとるだろ!!」

伸一
「あつしさんに
僕のお尻の穴なんか覗かれたらイヤだなぁ~…」

あつし
「伸くんの尻穴エロい匂いがしそうだし、舐めてやろうかな~?ははは…」

伸一
「ぜ…絶対にしないでよ、そんなこと…」

あつし
「わっかんねーぞ!俺は可愛い男の子を前にすると、狼さんになってしまうからな!」

伸一
「もしそんなことしてきたら、得意の突き押しするもん…」

あつし
「狭い車内で突き押しとか止めてくれー!笑」

伸一
「あははは…、まぁ…僕は、あつしさんに敵わないだろうけどね…」

あつし
「あ、やべ!もう夜中の2時だ!ちと話しすぎたな、夜も遅いしそろそろ寝ようか?」

伸一
「あ、ゴメン…
僕もすっかり夢中になっちゃった…」


あつし
「俺は明日も朝練の指導があるからもう寝るわ
それじゃあ伸くん、遅くまで付き合わせてゴメンな、また明日メールするから、おやすみ!」

伸一
「うん、僕の方こそゴメンね、それじゃああつしさん、また明日メールするから…
おやすみ…」

あつし
「おうっ!伸くんおやすみな!
来週会えるのを楽しみにしてるから!」

伸一
「うん!僕も凄く楽しみにしてるよ!
じゃあ、あつしさん
おやすみなさい!
僕の方から切るね」

あつし
「おうっ!おやすみ!」

伸一
「うん、おやすみ~…」
「・・・・・・・・・」
「ピッ・・・」


はぁ…
また明日って言ってたけど…
もう今日になっちゃったね…

僕はあつしさんと知らぬ間に2時間も長電話していた…

なんだか目が覚めてしまいあまり眠くない…

まるで初めてメールを送ったあの日の夜のようだ…


僕はベッドの正面にある窓を開けて
外のちっぽけな夜景を眺めながら思っていた…

ほんの少し前まで
まだランドセルを背負って小学校に通っていたような気がする…

10数年後に、歳が親子ぐらい離れたおじさんと密会する事になるなんて…

当時の自分が知ったらショックで泣くだろうな…


ゴメンな…
僕はもう…
普通の男の子とは違うから…
可愛い女の子に全然興味が持てないから…
 
ゲイ雑誌の文通欄でのやりとりでお互い内緒で密会する…

もうこれ以外方法がないんだよ…

悔しいけど
自分の性を受け止めるしかないんだ…

これだけはもう…
本当に
どうにもできないことなんだ…

だって…

僕はゲイなんだから…



保冷車は松山市の国道56
号線を走らせている…

会社まで急がなきゃ…

残った仕事は30分で片付けてみせる…

帰ってアレコレ旅仕度しないと…

僕は今夜
同じ同性愛者の男性

あつしさんに会いに行く



すっかり暗くなった夜空には

街の明かりで見えにくくなった星たちが…
かろうじて輝いているように見えた…

ラッシュに紛れた光連なる車のライトが眩しすぎて…

周りの景色と街路樹の蔭が流れるように動いていた、その様子がまた人影が飛び出しているように見えるので不気味に感じる



だけど今の僕は
世界中の誰よりも幸せなんじゃないのかと勘違いしてしまう程に
心の中は浮かれてしまい、普段感じる事のない胸の鼓動が
ドク…ドク…と、脈打つように全身まで伝わってくる…

AMラジオからはまた
I Wish 「明日への扉」が流れ始めた…

車の窓を少し開けてみると…

ほんの少しまであちらこちらで良い香りを漂わせていた菜の花の香りは

もう消えてなくなってしまっていた…


ラジオのボリュームをちょっとだけ上げる…

僕は車をただジッ…と前を見据えながらただ黙々と運転していた…



もうじき桜の蕾が開く頃…

僕の恋心も

少しづつ開き始めている…

満開を向かえるのは

もうすぐのようだ…



-桜の蕾が開く頃-