どすこい!西郷虎之助の七転八倒!

「西郷虎之助の人生は七転び八起き」の筆者・西郷虎之助でございます、この度Yahoo!ブログからようやく移行致しました、初めての方も、これまでお馴染みだった方も含め、新境地でお楽しみ頂けたら幸いです、どうぞこれからも意地っぱりで泣きベソ坊主な「虎之助」をどうぞ宜しくお願い致します。

「しまんとえれじぃ」~僕が初めてキスした柔道おじさん~-春蝉の鳴き声-

あつしさんと会う
約束の金曜日の夜

ステレオの時計が9:00になったと同時に…

僕は家の戸締まりとガスの元栓を入念にチェックしてから、僅かながらな着替えと歯ブラシ等を詰め込んだ小さなリュッふクを肩に掲げて家を出る

玄関の鍵を閉める
「ガッチャリ…!」
という音が

あつしさんに会う夜の10時までの約一時間をきったカウントダウンのスタート合図のようだった…

僕の心臓は既に「ドクドクドクドク…」と波打つよに高鳴っている

初めてゲイ同士で、好きな人と会える嬉しさと緊張

早く会いたい気持ちが抑えられないもどかしさも合間ってか呼吸も荒くなってしまう…


好きな人と会う直前って

こんなにドキドキワクワクソワソワするもんなんだ…

人生でこんなに嬉しくて興奮した経験…
今までないかもしれない…

僕は家の鍵を財布の中に入れると
待ち合わせ場所のファミレス「バーミヤン」まで
暗い住宅街の細道を掻き分けるようにして歩いて行く…

家から「バーミヤン」までは約1km程離れた場所にあり、歩いて行くと、30分もあれば充分に到着する程度だ…

まだまだ時間もある

僕は嬉しくすぎる余韻に浸りながらも住宅街にある大きな公園の中をゆっくりな歩幅で抜けて行く…

公園内に植えてある桜の木

灯に照らされて、暗闇の中をぼんやりと佇んでいる…

枝の先っぽの方からは…
薄いピンクの色をした桜の花びらが…

灯を受けて美しく
華々しい表情を浮かべていた…

他の蕾も開きそうなくらいに僅かな花びらを覗かせている…

この公園の桜も
咲き始めているんだ…

僕は公園内に植えてられている桜の木の中を
少し立ち止まって見てみる…

そして枝先に咲いてある桜の花びらに
そっ…と手を触れて

「行ってくるね…」
と、小さく呟いた…

帰ってきたら五分咲きくらいにはなっているかな…

それを見たとき…
僕はどんな気持ちで旅を終えているんだろう…

僕の心の中にある
桜の花が満開になっていますように…

そしてこの桜の木も
それに負けないくらい綺麗な満開の花になって…
この公園内を美しく彩ってくれるよね…


まだ外は少し寒いけれども

春先の暖かさが感じられるようになったかな…

ツンとした草木の香りでクシャミが出そうになってしまう…

桜の花びらの香りがほんの僅かに漂っていた…

四国は明日明後日も晴れマーク
最高のデート日和をありがとう



さて…と、そろそろ行かなきゃ…

僕は溢れ出す幸福感に満たされながらも、ぼんやりとした灯に照らされている桜の木を後にして公園内を、ちょっぴり速足で通り抜ける

そして再び真っ暗な住宅街の細道へと姿を消して行った…

一人の青年が
またひとつ大人の階段を上がった夜…

誰もいなくなった公園に
取り残された春蝉が寂しそうに鳴いている

一定の音程で「ジ」と「ミ」が合わさったようなその鳴き声は…

恋に夢中になりすぎている虎之助の耳には届かなかったようだ…

風の吹かない夜…

桜を照らしている灯には数匹の小さな虫がちらつく…

静かな公園と虎之助に…
ようやく暖かい春が訪れたようだ…

















しまんとえれじぃ」
~僕が初めてキスした柔道おじさん~

-春蝉の鳴き声-








9:40
目的地「バーミヤン」へと到着した

僕は途中から小暗い住宅街の夜道を小走りで進んだ

あつしさんよりも早く着いておかないと悪いような気がしたからだった…

レストランに入って、店員さんに「禁煙席」と「待ち合わせ」を伝えると
一番奥の席へと案内される

この場所ならば色々と話が出来るから丁度良い

禁煙席を選んだのも、あつしさんと僕はタバコを一切吸わないからだ

お互い非喫煙のお陰で好都合な席を確保出来た


僕の服装は
NYヤンキースのキャップに
チェックのシャツに黒のTシャツ、緑のカーゴパンツといった服装をしている

僕はシャツの胸ポケットから携帯を取り出して
あつしさんに到着合図のメールを送った

「あつしさんへ
今、バーミヤンへ到着しました、禁煙席の一番後ろの席に座っています
僕の服装は、ヤンキースのキャップを被って、黒のTシャツにチェックのシャツを着ています
ゆっくりで良いですので安全運転で来てください(^^)」

と、メールの文章を作成して送信ボタンを、「ピ…」と押した

…すると、3分も経たないうちにあつしさんからの返信メールが届く

携帯を開いてメールを確認すると

「伸くんお疲れさん、俺も今バーミヤンの駐車場に到着したよ、これから白のTシャツと黒のベストジャケット着ているベージュのカーゴ穿いたデブ親父が入るから!」

…と、入っていた…

僕は一瞬「ドキッ!!」となり
どうしよう…
外の駐車場にあつしさんがもう来てるんだ…

禁煙席から駐車場が窓から確認が出来ない…

心臓が凄い音を出して高鳴っているのが自分でもよくわかる…
嗚呼…
緊張してたまらない…

僕はまだ心の準備が出来ていないのか、重苦しい程の不安感が急に押し寄せてきた

手をブルブルと震わせながら、携帯を「パチ…」と閉じて、チェックシャツの胸ポケットに携帯をしまっていたその時だった!!

「いらっしゃいませー」

「キラキラリ~ン♪」(入り口の効果音)

店員さんの挨拶と共に扉を開ける効果音が店内に鳴り響く…

それと同時に物凄く迫力のある太った中年男性が入り口の扉を軽々と開けて姿を現したのだ!!

それを見た僕は
息が詰まりそうになる…

「…あの太った中年男性…間違いなくあつしさんだ!!」

あつしさんは、店員さんに一言何かを伝えている…

その後、僕の方を見た!

お互いに目があってしまう

僕は全然動けない…

そして店員さんに「こちらの禁煙席でお待ちです、どうぞ~♪」と手をこちらに向けて案内されると
あつしさんは、僕を見つけてこちらを嬉しそうな表情を浮かべながらドスドスドスと重い足取りで向かって来る

あつし
「おうっ!伸くん!こんばんは!!」

「来たぞっ!!」

伸一(虎之助)
「あ・・あ・・あ・・」

突然あつしさんに威勢よく挨拶されて何も答えられない僕…

あつし
「おーい?伸くんだよな!?」

イメージ 3


伸一
「あ・・あ!!
は・・・はいっ!!」

僕は方針状態から我に返り慌てて返事をする

あつし
「ごめんな?長いこと待たせたかな?」

そう言いながら、あつしさんは僕が座っている正面に来て、その大きなお尻をシートにどっしりと下ろした

あつし
「よいこらせっと!!」

「ボスッ!!」(シートに座る効果音)


あつし
「伸くん!?どうしたんだ!?顔真っ赤になってるぞ!がはははは!」


伸一
「す…すみません…いざとなるとやっぱり緊張しちゃって…」

あつし
「何を男同士で恥ずかしがる事があるんぞ、ちょっとそのキャップ脱げ、もっと伸くんの顔をよく見せろ!」

あつしさんは僕が被っていたヤンキースのキャップを強引に頭から取るや否や、ジィー・・・っと僕の顔を見つめてきた

あつし
「こら~!笑
何を目ぇ反らしよるんぞ!」

伸一
「あ・・あの・・・
あつし・・さん・・・」

あつし
「うん、どした?」

伸一
「こ…この度は、遠路遙々愛媛まで来て頂き
ありがとうございます」


あつし
「おう、それから?」

伸一
「え……
それだけ……です…けど…」

あつし
「なんだ?それだけか?」

伸一
「う…うん………」


あつし
「伸くん!!もっとハキハキ喋らんんと!!」
「男やろうがっ!!」


伸一
「え…、あ…はい…!
すみません……
なんか緊張しすぎちゃって、うまく話せないんです…」

あつしさんは突如、眉間にシワを寄せると、太くガッシリした腕を組みながら足を大きく開いた

あつし
「伸くんは相撲部だったんだろ!?
そんな女々しい喋り方してたらな、女からも男からも舐められるぞ!!
男ならもっと堂々としてないと駄目だ!」

伸一
「だって……
元々こういう性格なんだからしょうがないもん…」

電話の時でもそうだったが、あつしさんは僕が小さい声でゴニョゴニョ話していると、急に怒りだして説教を始めるという、ちょっとした難点があった

それで僕が拗ねたり半べそになったりすると
慌てて優しくなだめてくるのがいつものパターンだったのである…

あつしさんに怒られていると、学校の先生に叱られているのと同じ感覚になる

なので僕は
あつしさんは学校の先生なのではないのかな…と一番に思っていた…

あつし
「だってじゃない!!
思っている答えはハッキリ出すんだ!!」

「今まで相撲で何を学んできたんだ!?」

伸一
「・・・・
礼儀作法と太い体になれた事ぐらいしか学んでない…」

あつし
「相撲は心・技・体!だろ!
技はどうだか知らんが、伸くんには強い心が足りないぞ!」

伸一
「心技体とか言われても…
相撲なんか町内の風習で父親から強制的に習わされてただけだし…
…僕はよくわからないよ…」


あつし
「それはお父さんが伸くんを強い男の子になってもらいたいからだろ?
伸くん相撲はな、心・技・体、このどれか一つも欠けてしまってはダメなんだ!」

伸一
「はい・・・・・」

あつし
「聞いているのか・・?」

伸一
「はい・・・」

僕はさっきまで、幸せな気持ちに道溢れていた筈なのに、あつしさんの急なお説教にちょっぴり嫌気がさしてきた…


あつし
「おっと!あんまり怒ったりしてたら、また伸くんが拗ねるといけないからもう止めておこ!
すまん!伸くん!これは俺の癖なんだ!」

伸一
「ホントいつもそう…
あつしさん好い人なんだけど、ちょっとした事ですぐ怒りだすんだもん…
やっぱり小旅行するの止めよっかなぁ~…」

あつし
「あーーっ!またそうやってすぐ拗ねるー!」

伸一
「拗ねてなんかないよ!」

あつし
「ごめんな伸くん、機嫌治してくれよー!
せっかく瀬戸大橋渡って高速道路を愛車のステップワゴンかっ飛ばして来たんだからなー!」

伸一
「あ…ごめん…そうだった…
ありがとう…さっきのは冗談だから気にしないで下さい・・・・・」


あつし
「あーーあっ!
伸くん目がうるうるしよる!!泣くなやもうっ!」

イメージ 1



伸一
「あ、僕は昔から感情が高ぶったりするとこうなってしまうんです、体質なので気にしないで下さい…」

あつし
「昔からこうって…
涙がもう溢れて流れよるやないかっ!!(慌)」

イメージ 2


伸一
「おもいっきり怒られた後に優しくされたり、ケンカして仲直りする時や、ゴメンね…って謝る時は必ず涙が出てしまうんです…」

あつし
大村崑の、オロナミンCを飲むと、眼鏡が垂れるんてすよ~!みたいなもんか!?(笑)」

伸一
「またそんな古いコマーシャルで例えたりして
じゃあ泣きながら小さな巨人です!って言ったら良いの?…(笑)」

僕はテーブルのメニュー立ての横に置いてある口拭きペーパーを2、3枚取って涙を拭いた…


あつし
「伸くんはよく見ると目が綺麗やなぁ、巨人の星のお姉さんみたいだ笑)」

伸一
「今度はアニメ(笑)?
じゃあ柱の影から覗くようにして泣かないとね…」

そんな冗談を笑ながら交わしていると
あつしさんは徐に僕の手を「グッ…!」と握ってきた…


あつし
「伸くん…
あの画像でも十分可愛かったが、実物はもっと可愛い

俺は伸くんが画像を送ってきてくれた夜…
嫁に内緒で3回抜いたんだ、便所に閉じ混もってな…
ワゴン車の後ろに布団と枕を積んできてある…
今夜は一緒に寝ような…」



伸一
「あつしさん、僕も画像を見ていて、強くて頼れそうなおじさんだなぁ…って思っていたけれど、実物はもっと迫力ありすぎてビックリしちゃった…

僕…
今夜はあつしさんに凄く甘えたい…
もしかしたら大声で泣いてしまうかもしれない…
今だってもう…
溢れ出す感情が自分でも抑えきれないんです…」


あつし
「この2泊3日、伸くんは俺の息子だ!
俺達は親子なんだ!
遠慮しなくて良い、おもいっきり泣いて甘えてこい!優しく抱き締めてやるから…」

伸一
「あ…ありがとうございます…
今夜はあつしさんに目一杯甘えます…」

あつし
「今夜は一緒に抱き合って寝ような…」

伸一
「はい…」

あつし
「俺も
伸くんを見ていると欲情が抑えきれないな…
親子だけど…
後で伸くんの○ん○ん見せてもらっても良いかな…?」

伸一
「いいよ、だって親子だもん…
僕もお父さんの○ん○ん見てみたい…」

あつし
「がははは!お父さんか!
息子から一度言われてみたかった言葉だ!」
「飯食ったら、どこか温泉に入りに行こうな!」

伸一
「うん!お父さんの大きな背中、僕がゴシゴシ洗って流してあげる…」

あつし
「おっ!嬉しいなあ!!
太ったドラ息子に背中を流して貰うの夢だったんだ!」
「伸くんのふてぶてしい背中、お父ちゃんがしっかり流してやる!
がははははは!!
力が入りすぎて痛いかもしれないけど、男の子なんだから大丈夫だな!」


伸一
「嬉しいなぁ…
僕、実父と背中の流しっこなんてやった事ないから…
凄く憧れてたんだ…」


あつし
「温泉から上がって…
寝る前にな…
その・・・・・
伸くんの○ん○ん触って良いかな…?」

伸一
「いいよ…僕もお父さんの○ん○ん触りたい…」

あつし
「がははははは!
大人しい性格だと思ったら、わりかし助平な息子だな!
伸くんにお父ちゃんの○ん○ん触られて、ビンビン元気になっちゃったらどうしよっかなぁ~……!」

伸一
「いいよ、元気になって出したくなったら僕がお父さんの○ん○んしごいてあげる!」

「だけど僕もお父さんに○ん○ん触られたら大っきしちゃいしそう…」

あつし
「心配するな、ちゃんとお父ちゃんが優しくゴシゴシ抜いてあげるから…!」
「今夜は親子で仲良くしごき合いだな!」

伸一
「なんか…
想像しただけで勃っちゃった…」

あつし
「がははははは!!
お父ちゃんなんかさっきからずーーーっとビンビン元気だぞ!ほれっ!!」

あつしさんは少しシートから重いお尻を浮かせて僕に股間を少し見せる

ベージュのカーゴパンツ越しからモッコリとテントを張った股間
僕の目にはとても勇ましく映った
そして早くあつしさんと抱き合い○ん○んをしごき合ったりしてみたいという強い衝動に刈られてしまった


あつし
「伸くん
あんまり無理な事はしないから心配するなよ
だけどな…
まず温泉に入ったり、抱き合って○ん○んをしごき合ったりする前にな、…どうしても一番最初にしておきたい事があるんだ…」

伸一
「え…なに…?」

あつし
「まず始めにだな…
伸くんと…
キスがしたい…」

伸一
「・・・・・」

あつし
「お父ちゃんとキスするのなんて…
嫌だよな……?」


伸一
「ううん、僕も…
お父さんと始めにしたかった事はキスなんだ…」

あつし
「その・・・
勢い余ってな、舌を入れたり絡ませたりするかもしれないけど……

・・・・・いいか…?」


伸一
「いいよ、僕、初めてだけど、お父さんとだったら…

濃厚なキスだって大丈夫だよ………」


あつし
「そうか…
よしっ!そうと決まれば飯食お!飯!飯!
いっぱい食べるんだろ?
何でも好きなメニュー遠慮しないで良いからジャンジャン頼め!!」

伸一
「あのね、あつしさん、今回の旅行ね…
僕、自分の費用ぐらいはちゃんと出すから、ガソリン代も半分は僕払うよ……」

あつし
「あーあーあーあー!
伸くん!今回の小旅行は俺が勝手に決めた事なんだから旅費は俺が全部出す!
だから伸くんはお財布の紐を緩めるんじゃないぞ!」

伸一
「そんなのダメだよ!僕だってちゃんと働いてるんだから…!
旅費は半分出します!」

あつし
「ダーメだ!息子が生意気言うんじゃない!
子供はお父さんに全部任せたらいいの!
金銭面でも甘えられるのは今のうちだけなんだから気にするな!」

伸一
「もう…
あつしさんは優しいんだか、厳しいんだか…よくわからない…」


あつし
「お父ちゃんはこれでも一端の公務員だ!
ボーナスもあるし有給休暇もあるし
ヘソクリだってある!!」

伸一
「いいなぁー…
ボーナスある職業なんて…

じゃあお言葉に甘えようかなぁ~…」

あつし
車中泊だからそんなに、費用は掛からないよ!
だけど高知に行ったら豪華なお食事は食うつもりだよ、特に鰹のたたきな!!」

伸一
黒潮本陣」は、太平洋が一望出来る海水温泉に、鰹のたたきを自分達で作る体験も出来るよ!」

あつし
「おお!なんか楽しそうだしうまそー!!(^o^)」

伸一
「あ・・・
色々と話しすぎちゃって、もう11時になりましたね…」

あつし
「あかん!あかん!これから飯食って、伸くんとキスした後で温泉に入ってその後は二人で○ん○んしごき合って放出したら、すぐに高知へ向かわないといけないし忙くなるな!
よしっ!急ごう!
取りあえず飯だ!伸くん、何でも良いからジャンジャン頼め!」

伸一
「じゃあ僕はラーメン、焼飯、餃子がセットになった「好好セット」にします、
あつしさんは…?」

あつし
「俺は天津飯に唐揚げと回鍋肉のセットにする!!
伸くん決まったな?もう呼び出しボタン押すぞ!」

カッコウカッコウ♪」
(呼び出しボタンの効果音)

あつし
「ドリンクバーはどうする?」

伸一
「あ、僕は水で十分だよ、あつしさんは?」

あつし
「俺も水でええわ、わざわざ珈琲やジュース取りに行くの面倒だし…時間がない…」

伸一
「じゃあ僕、これからお水持ってくるから待っててね」

あつし
「あ、悪い!
あれ、もうお父さんって呼ばないのかー?」

伸一
「なぁーんだ、お父さんって呼んで欲しかったの?」

あつし
「あつしさんよりも、俺はお父さんの方が良いな!
なんなら親父って呼んでもかまんぞ!」

伸一
「うーん…親父はもう少し慣れてからが良いな、今はまだお父さんって呼ぶから、それで良いでしょ?」

あつし
「おうっ!息子!
早くお父ちゃんに水を汲んで来てくれや!!
がははははは!」

伸一
「まったく…
お父さんは調子良いなぁ…
氷たくさんにして、お水はてんこ盛りにしておくからね!」

あつし
「おうっ!
頼んだぞ!」

あつしさんは笑顔でそう答えると、また腕を組んで大きく足を開いた


あつしさんは話している間も度々腕を組む…


柔道で鍛えた骨太で強そうな腕
服の上からでもよくわかる盛り上がった大胸筋

不揃いに生えた無精髭に、短く刈り揃えた短髪頭
後頭部のうなじには、僕と同じく頭の窪(ドンの窪)が出来ている

白いワンポイントTシャツに黒いベストジャケットにベージュのカーゴパンツ

これはゲイ専門のファッションだが、子供の頃から柔道で鍛えてきた筋肉質の固太り体型のあつしさんにはそれがまたよく似合っている


あつしさんが
当時着ていたこのファッションスタイルは

十数年後には僕が同じような服装で真似する事となるのである…

あつしさんのような強くて勇ましい男にはなれないけれども…
今でもずっと忘れる事が出来ない初めての男だったから…



週末だけどそんなにお客さんの数は多くなかったレストラン「バーミヤン

僕はドリンクバー専用の大きなグラスに氷をたくさん入れて水を汲んでいる

あつしさんに出会えて僕はもう…

例えようの無い幸せな気分に満ち溢れていた…

これから始まる高知県への小旅行…

人生でこんな楽しい思いが出来るなんて…

今まで考えた事もなかった…

緑溢れる山中の深山町で過ごした少年時代…

龍玄さんに甘えていたあの頃…

2人で龍玄さんの畑がある深山の里まで登って…

龍玄さんがお不動の滝で見せてくれた初めての滝修行…

大きな体に真っ白な越中褌に魅了された…

龍玄さんに憧れて

龍玄さんの背中を見つめて
追いかけ続けた思い出の数々は…

恋に夢中になりすぎている今の僕には

今では忘れかけた遠い過去の記憶となり薄く消えかけている…

龍玄さんだったら…
どう思うかなぁ…

水に浮かんだ氷を見つめながら僕は
ドキドキ高鳴る心臓と
あつしさんへの恋する思いが重なり

今はそんな事はどうでも良いか…
と、考えるようになっていた…

もう…
誰の声も僕には届かない…

水にいっぱい注いだグラスを両手に持って
腕を組んで大股開いて構えている男らしいあつしさんの元へ僕は向かった…


その頃

僕が通り抜けた公園には…

まだ寂しげに春蝉の一定した鳴き声が公園周辺一帯に響き渡っている…

だけど
僕にはその春蝉の鳴き声が心に届く事はなかった… 


誰も居なくなった静かな公園
深夜になり、公園内の灯りも消えて
枝の先に、ほんの少しだけ咲いた桜の花びらも…
暗闇に包まれると眠ってるようだ…

僕が居なくなってからもずっと鳴いていた春蝉も…
ようやく鳴くのをやめた…


今夜は風も吹かない静かな夜…

春蝉も今やっと眠りについたようだ…


しまんとえれじぃ
-春蝉の鳴き声-


イメージ 4